2022年 05月 21日
西南夷 |
大分以前も書いたのだが,『後漢書』巻86南蛮西南夷列伝の西南夷伝冒頭の序文には,「西南夷者,存蜀郡徼外」とある.蜀郡との方向関係は問わず,とにかく蜀郡の徼外(と言っても,郡県制の枠内だから,交州(交阯)徼外とは訳が違うのだが)にあれば西南夷.西南夷伝の最後は白馬氐だが,これは武都郡(現在の甘粛省成県附近の下辨県が治所)だから,蜀郡からすれば北方.
この一文だが,『史記』巻116西南夷列伝や『漢書』巻95西南夷両粤朝鮮伝の西南夷伝冒頭には「此皆巴蜀西南外蛮夷也」とある.『後漢書』では,蜀郡自体が中国世界の中心たる華北の西南にあって,その蜀郡の周辺の非漢族は西南夷ということになるのだが,『史記』や『漢書』では,巴蜀の西南の外部にあるのが西南夷とふうに理解できる.華北中心ではなく,巴蜀中心なのである.では対象となる種族が異なっているのかと言うと,そうでもなく,白馬氐にもふれていたりするので,序文の書き方としては『後漢書』のほうがベターなのだが,夜郎以下,貴州省・雲南省・四川省南部にあった種族と,甘粛省南部にあった種族が等しく西南夷というのはあまりにもアバウトで,「その他大勢」的な響きが否定できない.
by s_sekio
| 2022-05-21 16:23
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