戦時性暴力被害者を記憶することが日本にとっては「政治利用」なのか。

この件。

慰安婦問題に関する資料「記憶遺産」登録へ申請

6月1日 21時39分
韓国や中国などの市民団体で作るグループが慰安婦問題に関する資料2700件余りをユネスコ=国連教育科学文化機関の「記憶遺産」に登録するため申請しました。
申請したのは、韓国や中国、台湾、それに日本などの8つの国と地域の市民団体が去年4月に結成したグループ「国際連帯委員会」です。
委員会の事務局の団長を務めるイファ(梨花)女子大学のシン・ヘス(申恵秀)教授は1日午前、ソウルで記者会見を開き、31日にユネスコに対し、「慰安婦問題」に関して市民団体が収集した資料や博物館や個人などから提供を受けた資料など、合わせて2744件を「記憶遺産」に登録するよう申請したことを明らかにしました。これらの資料は、元慰安婦の証言の記録や当時の公文書、元慰安婦が書いた本や絵画などで、シン教授は「登録することで、現在、あるいは未来に起きる女性の人権侵害防止のために多くの教訓となる」と意義を強調し、来年10月までの登録を目指す考えを示しました。
またユネスコの報道官はNHKの取材に対して「31日夜、グループの代表から申請書類が提出された。今後、提出された資料に不備がなければ正式に受理し、来年夏ごろ開かれる国際諮問委員会に向けて、順次審議が行われる」と話しています。
慰安婦問題に関する資料を巡っては、去年、中国が「記憶遺産」に登録するよう申請しましたが、登録は見送られ、これについて中国政府は「ユネスコは、関係国が共同で登録申請を行うことを奨励している」としていました。
一方、日本政府は、「記憶遺産」が政治的に利用されてはならないとして、制度の改善に向けた取り組みを始めています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160601/k10010542941000.html

最後の一文が、NHKがこの問題をどう見ているかを示していますね。いや、政府が右というのを左とは言えないからですかね。
河野談話には、従軍慰安婦について「歴史の教訓として直視」し「問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意」を表明する記載があります。

 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html

まあ、「これまでのお約束とは異なる、新しい判断」なのでしょう。

記憶遺産の政治利用の事例

こちらは産経記事。

2016.6.3 19:57

「通州事件」日本などの民間団体がユネスコ記憶遺産に登録申請

 反日活動の阻止を目指す「なでしこアクション」(山本優美子代表)など民間団体は3日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)記憶遺産への2017年の登録を目指し、「慰安婦と日本軍規律に関する文書」と、日中戦争の発端となった盧溝橋事件直後に200人以上の日本人が中国側に殺害された「通州事件」の資料などを期限までに申請したと発表した。
 「慰安婦」資料は日米の公文書など。日本枠2件は選定済みだが、複数国の共同申請は枠外でできるため米国在住日本人・日系人団体となでしこなどで申請。通州事件は「20世紀中国大陸における政治暴力の記録」として「通州事件アーカイブズ設立基金」(藤岡信勝代表)がチベット亡命政府前議員と共同申請。「慰安婦は性奴隷という誤解を解きたい」「政治利用ではなく一次資料を登録したい」などとしている。

http://www.sankei.com/life/news/160603/lif1606030029-n1.html

在米日本人右翼団体と国内の右翼排外主義団体を「日本などの民間団体」と称するのが産経らしいです。
右翼団体が政治利用している通州事件ですが、以前「通州事件関連エントリー」という記事でまとめています。藤岡信勝が代表ですから、どうせ恣意的な史料ばかり選んでるんでしょうけどね。
それはそれとして、通州事件を記憶遺産に申請することがどうして「慰安婦は性奴隷という誤解を解きたい」という話になるんですかね。どう見てもこっちの右翼団体の申請の方が政治利用でしょうに。