パーキンソン症とは?
 パーキンソン症の主な症状は、安静時の手足のふるえ、手足の曲げ伸ばしが不自由になる、無動・動作緩慢などの運動症状だが、様々な全身症状・精神症状も合併する。進行性の病気だが症状の進み具合は通常遅いため、いつ始まったのか本人も気づかないことが多く、また経過も長い。

 脳内のドーパミン不足とアセチルコリンの相対的増加とを病態とする、進行性の疾患である。神経変性疾患の一つであり、その中でもアルツハイマー病についで頻度の高い疾患と考えられている。

 日本では難病(患者数の少なさと症状の重症度、長期の療養が必要なため、治療薬が高額。発病の詳細メカニズムは不明で、治療方法も未確立。特定疾患)に指定されている。本疾患と似た症状を来たすものを、原因を問わず総称してパーキンソン症候群と呼ぶ。

 根本的な治療法は2012年現在まだ確立していないが、対症的療法 (症状を緩和するための治療法) は数十年にわたって研究・発展しており、予後の延長やQOLの向上につながっている。また20世紀末ごろから遺伝子研究・分子生物学の発展に伴いパーキンソン病の原因に迫る研究も進んでおり、根本治療の確立に向けての努力が行われている。


 今回、一酸化窒素を加えることで、パーキンというタンパク質が活性化。パーキンソン病が改善することがわかった。ただし一酸化窒素を加えすぎると逆効果になることもわかった。奈良医科大学、京都大学、三重大学の研究チームの成果である。 

 一酸化窒素は、光化学スモッグや酸性雨の成因に関連する物質だが、体内でも生成し、血管拡張作用を有する。一酸化窒素を発生させるニトロ製剤は、狭心症の特効薬として広く使われている。


 パーキンソン病における一酸化窒素の役割
 加齢とともに手足の震えやこわばり、緩慢動作などの症状が出るパーキンソン病は、神経伝達物質のドーパミンを作る神経細胞の機能が損なわれ、減少することで起きるとされる。

 奈良県立医科大学の小澤健太郎准教授と京都大学の高橋良輔教授、三重大学の田中利男教授らの研究チームは、体内に存在する一酸化窒素(NO)が、パーキンソン病によって働きが低下しているタンパク質「パーキン(parkin)」を活性化することで、神経細胞の機能障害を防いでいることを突き止めた。

パーキンソン病では、神経細胞に不要なタンパク質が蓄積することで、ドーパミンの分泌などの機能を傷害すると考えられている。この蓄積する“ごみタンパク質”を分解するのが「パーキン」だ。

 研究チームは、培養したヒトの神経細胞を使って、蛍光を発するようにした“ごみタンパク質”がパーキンによってどの程度分解されるかを調べた。その結果、一酸化窒素を3時間加えた場合はパーキンの活性が増し、加えない場合の2倍ほど高い分解効果があった。

さらに、一酸化窒素を長時間加え続けると、逆にパーキンの活性が低下してくることも発見した。これは一酸化窒素が「パーオキシナイトライト」という物質に変化することでパーキンが不活性化され、細胞が機能障害を起こすことが分かったという。

 今回の研究により、一酸化窒素がパーキンソン病の発症の抑制と促進の両方に働いていることが明らかになった。「2つの作用は異なるメカニズムによるもので、一酸化窒素の細胞保護に働く作用だけを起こす薬を開発できれば、新しいパーキンソン病治療薬になることが期待される」と研究チーム。

 研究論文“S-nitrosylation regulates mitochondrial quality control via activation of parkin.(一酸化窒素はparkinの活性化を通してミトコンドリアの品質管理を制御している”は英国の科学雑誌『サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)』(オンライン版、16日)に掲載された。(サイエンスポータル 2013年7月17日)


 一酸化窒素(NO)とは?
 一酸化窒素(nitric oxide)は窒素と酸素からなる無機化合物で、化学式であらわすと NO。酸化窒素とも呼ばれる。

 化学的には銅に希硝酸を作用させたり、二酸化窒素(NO2)に水(温水)を反応させることでも生じる。常温で無色・無臭の気体。水に溶けにくく、空気よりやや重い。有機物の燃焼過程で生成し、酸素に触れると直ちに酸化されて二酸化窒素 NO2 になる。硝酸の製造原料。光化学スモッグや酸性雨の成因に関連する。また体内でも生成し、血管拡張作用を有する。窒素の酸化数は+2。

 高温で窒素と酸素が化合して一酸化窒素が生成する。自然界では主として雷や山火事によって生じるが、その発生源の大部分は、人為的理由による。人為的な発生源として、ボイラー、自動車の排出ガス、焼却炉、石油ストーブなどである。大気汚染で問題となる窒素酸化物 (NOx) の1つである。窒素酸化物は大気汚染防止法によって、排出規制が行われている。

 大気へ放出された一酸化窒素は、二酸化窒素に酸化される。

 一方、二酸化窒素は紫外線を受け一酸化窒素と原子状酸素になり、この原子状酸素がオゾンなど酸化物質(オキシダント)を生成するが、一酸化窒素が二酸化窒素に酸化される反応は、非メタン炭化水素(NMHC)が光反応により酸化した物質の存在下で加速するため、反応が連鎖的に進行し、光化学スモッグを引き起こす原因となる光化学オキシダントを生成する。

 また、窒素酸化物は、大気中の水蒸気と反応すると硝酸に変化し、酸性雨の原因となる。


 一酸化窒素の生理機能
 生体内では一酸化窒素は、一酸化窒素合成酵素 (NOS) によってアルギニンと酸素とから合成される。一酸化窒素は細胞内の可溶型グアニル酸シクラーゼを活性化してサイクリックGMP (cGMP) を合成させることによりシグナル伝達に関与する。

 免疫に関与する細胞の一種マクロファージは病原体を殺すために一酸化窒素を産生する。しかしこれは逆に悪影響を及ぼすこともある。敗血症ではマクロファージが一酸化窒素を大量に産生し、それによる血管拡張が低血圧の主因となると考えられている。

 一酸化窒素は神経伝達物質としても働く。シナプス間隙のみで働く多くの神経伝達物質と異なり、一酸化窒素分子は広い範囲に拡散して直接接していない周辺の神経細胞にも影響を与える。このメカニズムは記憶形成にも関与すると考えられている。

 一酸化窒素の生物機能は1980年代において驚くべき発見として迎えられ、一酸化窒素は1992年の「サイエンス」誌で「今年の分子」として取り上げられた。1998年のノーベル生理学・医学賞は一酸化窒素のシグナル機能の発見によりフェリド・ムラド、ロバート・ファーチゴットとルイ・イグナロに授与された。

 窒素酸化物(NO、NO2等)を吸入するとヘモグロビンの鉄が酸化されて、酸素運搬能力のないメトヘモグロビンが生成し、メトヘモグロビン血症になることがある。


 一酸化窒素の健康効果
 血管内皮は一酸化窒素をシグナルとして周囲の平滑筋を弛緩させ、それにより動脈を拡張させて血流量を増やす。これがニトログリセリン、亜硝酸アミル、一硝酸イソソルビド(5-ISMN,アイトロール®)などの亜硝酸誘導体が心臓病の治療に用いられる理由である。これらの化合物は一酸化窒素に変化し、心臓の冠動脈を拡張させて血液供給を増やす。

 発毛剤ミノキシジル(リアップ®)は cGMP 分解を抑制して毛細血管の血流量を増やす。一酸化窒素は陰茎の勃起でも働いており、やはり cGMP 分解抑制薬であるシルデナフィル(バイアグラ®)はこのメカニズムを利用したものである。一酸化窒素を気管内に吸入させることにより、肺動脈の血管平滑筋を弛緩させ、肺高血圧を改善させることができる。新生児の新生児遷延性肺高血圧や、開心術後の心臓の負荷軽減、原発性肺高血圧症の治療などに利用されるが、日本では保険適応外の先端治療扱いである。

 その後の研究で、一酸化窒素はパーキンソン病の発症にも関係していることが分かってきたが、詳しいメカニズムは不明だった。一酸化窒素がパーキンソン病を治す方向に働くのか、悪くする方向に働くのかも研究者によって異なる結果が出ていた。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:パーキンソン病 一酸化窒素


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