尿から分離に成功した「性ホルモン」
1939年のノーベル化学賞は、ひとことで言うと「性ホルモンについての研究」に対して贈られた。受賞したのはドイツの生化学者、アドルフ・ブーテナントと、クロアチアの有機化学者レオポルト・ルジチカ。
ブーテバントは女性ホルモンである「エストロゲン」や、男性ホルモンである「アンドロステロン」を世界で初めて発見した。ブーテバントはこれらをヒトの尿から分離・結晶化し、F・プレーグルの開発した微量分析法により、その構造式を定めることができた。
ルジチカは、有機化合物の分析・合成に業績があり、複雑な性ホルモンである「アンドロゲン」や、「テストステロン」を世界で初めて人工合成した。彼はその他にも、ポリメチレン類およびテルペン類といった複雑な有機化合物を多数、構造解明し、合成にも成功している。
有機化合物については、「6個以上の原子環は不安定で存在しない」という、アドルフ・バイヤー(1905年ノーベル化学賞)の説が有力であったが、彼の発見したポリメチレン(脂環状化合物)は、これを覆すものとなった。
今ではシクロヘキサンなどの脂環状化合物は常識であり、「エストロゲン」、「アンドロステロン」などの性ホルモンは、ステロイドという脂環状化合物でできていることが分かっている。
アドルフ・バイヤーは、彼の恩師である、アウグスト・ケクレの発見した、ベンゼン環(6個の原子環)が環状としては最大の有機化合物と信じたかったのかもしれない。ノーベル賞受賞者も間違えることがある。
アドルフ・ブーテナント
アドルフ・フードリヒ・ヨハン・ブーテナント(Adolf Friedrich Johann Butenandt, 1903年3月24日~1995年1月18日)はドイツ帝国ブレーマーハーフェン出身の生化学者で性ホルモン(エストロゲンとアンドロステロンの結晶単離、プロゲステロンの結晶化)研究の功績により1939年にノーベル化学賞を受賞している。受賞理由は、「性ホルモンの研究」である。またそれらの研究成果により避妊薬開発に道を開いた。
ブレーマーハーフェンとベフェアーシュテットで幼年期をすごした。アドルフ・ヴィンダウスの元、ゲッティンゲン大学でマメ科デリス属における生理学的効果を持つ化合物たるロテノンの化学構造について研究を行い卒業した。
学位取得後の1931年から女性ホルモンの研究を始め、ゲッティンゲン大学の有機化学及び生化学の研究室の指導者となった。1933年、ダンツィヒ工業大学(現グダニスク工科大学)の教授となる。1935年にはハーバード大学を視察し、1936年にはダーレムのカイザー・ヴィルヘルム研究所の生化学部部長となった。
ドイツ第三帝国では人の肝臓を使った抗生作用を研究したので現在でも物議をかもしている。1938年にはベルリン大学名誉教授となった。1939年に性ホルモンの研究でノーベル化学賞受賞が決定したが当時のナチス政権により辞退させられ、第二次世界大戦後に改めて受賞した。その後カイザー・ヴィルヘルム研究所はマックス・プランク生化学研究所となったがそこでも研究を続けた。1960年から1971年までは同研究所の所長となり、同研究所の所在地であるミュンヘンの名誉市民となった。1995年1月18日、同市で逝去、91歳。死因は非公表。(Wikipedia)
エストロゲンとは?
エストロゲン(米: Estrogen)ステロイドホルモンの一種。一般に卵胞ホルモン、または女性ホルモンとも呼ばれる。
エストロゲン(米: Estrogen)の語源は、ギリシャ語の“estrus(発情)”と、接尾語の“-gen(生じる)”から成り立っており、エストロゲンの分泌がピークになると発情すると言われたことに由来する。
卵巣の顆粒膜細胞、外卵胞膜細胞、胎盤、副腎皮質、精巣間質細胞で作られる。乳児期早期(1-3ヶ月)の女性は思春期並に分泌量が多く、小卵胞が出没するが、2歳から思春期を迎えるまでは分泌量が減少する。2歳から思春期を迎えるまでの分泌量は女性で0.6pg/ml、男性で0.08pg/mlと女性の方が高くこれが女性の思春期初来が男性より早めている原因の一つとなっている。
プロゲステロンとは?
プロゲステロン(progesterone)とは、ステロイドホルモンの一種。一般に黄体ホルモン、プロゲストーゲン(progestogen)の働きをもっている物質として代表的である。
思春期・成人女性では、卵巣の黄体から分泌されるが、妊娠時には、妊娠中期以降になると、胎盤からも分泌される。 生体内で黄体ホルモンとして働いている物質のほとんどがプロゲステロンである。
黄体ホルモンの主な働きは、女性の体、特に子宮を妊娠の準備をするように変化させ、月経周期を決めて、もし妊娠が起こった場合には、出産までの間、妊娠を維持させる役目を果たすことなどである。
テストステロンとは?
テストステロン(testosterone)は、睾丸から分泌される男性ホルモン。化学式C19H28O2、分子量288.4、化学名17β‐ヒドロキシ‐4‐アンドロステン‐3‐オン、融点155℃、結晶。
テストステロン自体は男性ホルモンとしての作用は弱く、前立腺など末梢標的細胞中に存在する5α‐レダクターゼの作用により、活性型のジヒドロテストステロンに変換され、特異的レセプターに結合して核に移り、クロマチンに結合して遺伝子の活性化を介して作用を示す。その作用は、陰茎、陰囊、前立腺、精囊などの発達を促し、筋肉や骨の成長、体毛やひげなどの発生、声変りなど男子の二次性徴を促進する。
アンドロステロンとは、男性ホルモンであるテストステロンの代謝産物の一つで、テストステロンより弱いがアンドロゲンとしての活性をもつ。
アンドロゲンとは、男性ホルモン、雄性ホルモンともいう。男性の副性器の活性の刺激、男性性欲の発達、去勢後の男性性徴の衰退の阻止などの活性を示す物質の総称で、通常はアンドロステロン、テストステロンなどの男性ホルモンを指す.
レオポルト・ルジチカ
レーオポルト・ルジチカ(ラヴォスラフ・スチェパン・ルジチカ)(Leopold Stephan Ružička, Lavoslav Stjepan Ružička , 1887年9月13日~1976年9月26日)はクロアチア(当時はオーストリア・ハンガリー二重帝国のスラボニア Szlavónia)ブコバル出身の有機化学者。後にスイスに帰化。
バーゼル大学及びカールスルーエ大学で修学し、カールスルーエ大学のヘルマン・シュタウディンガーの下で学位を取得した。
1956年にユトレヒト大学教授となり、1929年にチューリッヒ工科大学教授となる。テルペノイド、ステロイド、環状ケトンの研究で知られる。1939年にノーベル化学賞を受賞した。受賞理由は「ポリメチレン類およびテルペン類の研究」である。
テルペノイドについてのイソプレン則の提唱で特に有名。これによりテルペノイドの構造の解明に一役かった。ステロイドについては1934年に性ホルモンである、アンドロゲンの合成に成功、翌年1935年にはテストステロンの合成に成功した。環状ケトンについてはムスコンやシベトンの構造解明並びに合成に成功し、巨大な環式化合物の存在を明示した。(Wikipedia)
ポリメチレンとは何か?
ポリメチレンは、ポリエチレンなどの樹脂ではないので注意。ポリメチレンは、シクロパラフィンの別称である。 シクロパラフィンは、3個以上のメチレン基 (-CH2-) からなる脂環式化合物の総称で、CnH2n の構造で、n が、3のシクロプロパン、4のシクロブタン、5のシクロペンタン、6のシクロヘキサン、7のシクロヘプタン、8のシクロオクタンが、一般的である。
脂環式化合物は、芳香族と異なり、芳香性が無く、性質は、脂肪族化合物に似、シクロパラフィンのほかに、シクロオレフィン、テルペン、ステロイドなどが含まれる。
テルペンとは何か?
テルペン (terpene) はイソプレンを構成単位とする炭化水素で、植物や昆虫、菌類などによって作り出される生体物質である。
もともと精油の中から大量に見つかった一群の炭素10個の化合物に与えられた名称であり、そのため炭素10個を基準として体系化されている。分類によってはテルペン類のうち、カルボニル基やヒドロキシ基などの官能基を持つ誘導体はテルペノイド (terpenoid) と呼ばれる。それらの総称としてイソプレノイド (isoprenoid) という呼称も使われる。
テルペノイドは生体内でメバロン酸から生合成される。「テルペン」の語源はテレピン油であるが、実際はテレピン油に限らず多くの植物の精油の主成分である。それらは形式上2つ以上のイソプレン単位 (C5) から構成されており、イソプレン単位の数に応じて、それぞれモノテルペン (C10)、セスキテルペン (C15)、ジテルペン (C20)、セスタテルペン (C25)、トリテルペン (C30)、テトラテルペン (C40) と呼ばれる。
モノテルペンはバラや柑橘類のような芳香を持ち、香水などにも多用される。例えばリモネンはレモンなど柑橘類に含まれる香気成分であり、溶剤や接着剤原料などとしても利用される。メントールは爽やかな芳香を持ち、菓子や医薬品に清涼剤として用いられている。
参考HP Wikipedia:エストロゲン アンドロゲン 参考書籍:ノーベル賞受賞者業績辞典(日外アソシエーツ)
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