太陽光の熱・光を回収し効率よく発電
環境に負荷をかけない再生可能エネルギーが注目されている。しかし、風力発電やソーラーパネル発電にも課題がある。最大の課題は必要な時に必要な電力を供給できるかどうか。どちらも天候の成り行き次第という不安定さを抱えている。安定した供給を可能とするための蓄電装置も開発が進んでいるが、まだまだ高価。また、ソーラーパネルの材料には重金属が使われているため、廃棄が難しいという問題もある。
こうした問題を一挙に解決するため、太陽光熱を利用する発電・熱供給システムを理研の研究者が考案した。仕組みはいたってシンプル。太陽光の熱を効率良く集め、タンクの水を温めて蓄熱し、必要な時にこの熱を取り出して発電と給湯を行うというもの。
これまでの太陽熱発電は、ソーラーパネルで1日中太陽を追尾する必要があった。そのため、装置とモーターが必要だった。今回のシステムでは、フレネルレンズで箱をつくり、箱の中央に光や熱を集めるようにした。中央に熱交換器を設置。その下の水を温める仕組みだ。シンプルだが簡単に熱を集められる。
この温水はそのまま給湯としても使えるし、発電にも使えるのが今回のミソ。ここに登場するのが「ロータリー熱エンジン」という発電機だ。このエンジンわずか40度のお湯があれば発電するスグレモノ。どんなシステムになっているのだろうか?
朝日から夕陽まで利用の発電・給湯システム
理化学研究所と熱利用技術会社「ダ・ビンチ」(本社・奈良県大和高田市)は、高精度レンズを立体的に組み合わせて、朝日から夕陽までの太陽の光熱エネルギーを効率よく回収し、発電や給湯に利用する熱電併給システムを開発した。再生可能エネルギーの新しい可能性を開くものだという。
太陽光エネルギーを発電に利用するソーラーパネルは、実際的な光電変換効率こそ20%前後だが、▽天候によって発電量が左右される▽蓄電装置のコストが高い▽廃棄するときパネル材料に含まれる重金属を分離する技術が未確立である -- ことなどの課題がある。研究チームは、太陽光エネルギーの熱に着目し、熱交換器経由で水を温めて蓄熱し、その熱エネルギーを発電や給湯に利用するシステムを考案した。
このシステムでは、朝日から夕陽までどの角度からの太陽光も光熱エネルギーとして回収できるように、同心円状に刻んだ溝で効率良く集光できる「フレネルレンズ」のパネルを立方体状に組み合わせた。その立方体の内部にはアルミ合金でできた逆T字型の熱交換器を置き、水平・垂直のどの方向からの光熱エネルギーも逃さない構造とした。熱交換器の下には水を満たした蓄熱タンクを設け、温水の熱エネルギーを「ロータリー熱エンジン」に供給して発電機を回し発電する。
「フレネルレンズ」は透明度が高く、表面の粗さが20ナノメートル(1ナノは10億分の1)という高精度レンズで、同研究所・大森素形材工学研究室が超高エネルギー宇宙線を観測する望遠レンズとして開発中だ。「ロータリー熱エンジン」はダ・ビンチ社が開発した熱エンジンで、温水の熱で代替フロン(HFC245faなど)を気化してロータリーを回転させる。40℃-200℃の低温度域の廃熱や太陽熱を高効率で利用できるという。
今回の開発は、同研究所の「産業界との融合的連携研究プログラム」にもとづき2012年4月発足した「理研社会知創成事業イノベーション推進センター」内の「光熱エネルギー電力化研究チーム」(チームリーダー、東謙治ダ・ビンチ社長)が取り組んだ。研究チームは2013年中に、一般家庭で1日に平均的に必要となる出力1kW(キロワット)クラスのシステムを試作し、14年に10kW実証システムの完成を目指す。また、地方自治体と連携して、太陽光熱の有効利用と分散型電源の確立を目指したパイロットプラントの建設にも乗り出す考えだ。
なお、この開発システムに関して、同研究所では、一般向けシンポジウム「明るい未来の光熱エネルギー 」を1月16日午後1時から理研・和光研究所(埼玉県和光市)で開くほか、1月30日-2月1日に東京ビックサイト(東京都江東区)で開催される「nano tech 2013」(第12回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議)にも出展する。(サイエンスポータル 2013年1月11日)
薄くて軽いフレネルレンズ
フレネルレンズ(Fresnel lens)は、通常のレンズを同心円状の領域に分割し厚みを減らしたレンズであり、のこぎり状の断面を持つ。分割数を多くすればするほど薄くなるため、材料を減らし軽量にできる一方、同心円状の線が入ってしまう欠点や、回折の影響による結像性能の悪化が顕著になる。そのため、薄型化が特に有利な用途や、回折の影響を無視できる照明用などに用いられることが多い。 フランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルによって発明された。
灯台や投光器などの照明系レンズなどに用いられる。当初、フレネルは、灯台用にこのレンズを設計した。灯台用レンズは巨大であるため、通常の設計では厚みがかなり大きくなり原材料費が高いこと、重量が重くなりすぎること、製造に手間がかかることからこのレンズを考案したと考えられている。
大型の物では、フレネルレンズの周囲にリング状のプリズムをも配置した物がある。この場合、中央部のフレネルレンズだけでは屈折角が大きすぎ水平方向に向けられない外周部の光も、プリズムによる全反射も利用して曲げることにより利用することができる。プリズムへの入射光は一旦光源側に屈折し、全反射したのち再度屈折し水平方向に出射することになる(プリズムの三角の向きがフレネルレンズと逆であることに注意)。
また、カメラのフラッシュ用照明レンズとしても使用される。光源(通常はキセノンフラッシュランプ)の直前に取り付けられ、光が画面内にまんべんなく行き渡るようにカメラレンズの画角に合わせたものが選ばれる。 光学機器としては、フレネルレンズのルーペは簡易な拡大鏡などに使用されている。この種のものは無色透明なプラスチック(アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネートなど)を同心円状の溝を持つ薄板に形成することにより、平板なカードの様な形状でありながらレンズの役割を果たすようになっていることが多い。近年は断面を非球面とすることで、同心円状の溝を目立たなく、像を明るくしている製品がある。(Wikipedia)
低温域廃熱を回収できるロータリー熱エンジン
これまで、高い温度の廃熱は有効利用することができたが、低い温度の廃熱は捨てるしかなかった。このロータリーエンジンは低い温度の廃熱を有効利用できるシステムである。
ロータリー熱エンジンは、液体の蒸発と凝集を利用してランキンサイクル(蒸気による動力発生の基本サイクル)を構成した外燃式ロータリーエンジン。ロータリー熱エンジンはローター部、発電機部、蒸発部、凝縮部および作動液から構成されている。
外部からの廃熱によって蒸発部の作動液が蒸発して気体となり、ローターに入る。ローターに入った気体はローターを回転させ、エネルギーを失った後、凝縮部で液体に戻り、再び蒸発部に送られる。ローターは発電機に接続されているので、ローターの回転は発電機にて電力エネルギーに変換される。また、ボイラーなどの高圧蒸気が大量に存在する場合には、当該高圧蒸気噴出口をロータリー熱エンジンに直結させることで、ローターを直接回転させることも可能だ。
このロータリー熱エンジンは、80-200℃の低温域廃熱を回収できる技術が組み込まれており、その技術はオンリーワン。作動液を使い分けて効率的なエネルギー変換を実現!作動液としては水、エタノール、アンモニアなどを、廃熱温度に応じて使い分けることで、作動液の沸点近傍での温度差を十分に確保し、低温廃熱を効率的に電気エネルギーや機械エネルギーに再資源化することができる。
用途としては工場などの廃熱やコジェネレーション、ボイラーなどの圧力差発電などへの活用が考えられる。ゼーベック素子により電源設備不要の廃棄熱も利用可能に
廃熱回収ロータリー熱エンジンに関連して、磁性流体と磁力を利用して高効率に熱を移送する技術(マグネチックヒートポンプ)やゼーベック効果を利用した温度差発電およびサーマル・デザイン(熱構造設計)の独自技術を有し、総合的な低温廃熱回収システムを提供できる。
用途としては、ゼーベック素子により温度差発電でロータリー熱エンジンの起動電力(制御系)を賄う事で、電源設備の無い焼却炉の廃棄熱利用も
可能となる。(株式会社ダ・ビンチ)
参考HP 株式会社ダ・ビンチ:ロータリー熱エンジン 理化学研究所:太陽光・熱を回収し効率よく発電 Wikipedia:フレネルレンズ
コジェネ電力革命―暮らしにエネルギーをとりもどす | |
クリエーター情報なし | |
ダイヤモンド社 |
天然ガスコージェネレーション計画・設計マニュアル〈2008〉 | |
クリエーター情報なし | |
日本工業出版 |
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コメント一覧 (1)
イニシャルコストを回収できる代物だがこれはどうだろう?
① 太陽光に追随させるため多方面にフレネルレンズを配して
いるが、使ってない面で熱放射が酷いので却って集熱効率
を下げているのではないか?(もう一工夫欲しい)
② 集熱を温水に変えて熱交換してフロンを使った二次動力
システムでは思考実験段階で効率が悪そうである。
おそらく遠い未来にできる正解は。
① 黒曜石のような多面体結晶による集光・集熱。
② 熱音響システムにより、とりあえず一回発電。
③ ②で分離されたた冷熱と温熱を超高率熱伝導物質である
人工ダイヤを介してスターリングエンジンに伝達させてフロ
ンを使って再発電といったところか。
つくられた電力は逐次キャパシタに保存、電力の無い極地で
の二次電池充電器として重宝するかと。