深海でゴールドラッシュ!
 「まるで、金銀財宝がベルトコンベアで運ばれて来るみたいですね」ナビゲーターの竹内薫氏は言った。東日本大震災では未曾有の災害をもたらした原因。日本列島の最大の欠点が最大の長所であったとは!

 13世紀、マルコポーロによって「黄金の国・ジパング」と呼ばれた日本。現在の日本は、そんなに地下資源が豊富だとは思えない。もう資源は取り尽くされたのだろうか? そうではなかった。日本には、金銀などの貴金属ばかりか、レアメタルが集積されるしくみが備わっていたのだ。ただし集積される場所は深海。今、深海から金属資源が次々と発見され、日本が再び“資源大国”になる期待が高まっている。

 金属資源が見つかっているのは、海底下のマグマから溶け出した金属が、熱水とともに吹き出し沈殿した「熱水鉱床」。日本は、プレートの「沈み込み帯」に囲まれて海底の火山活動が活発なため、数多くの熱水鉱床があるのだ。


Hydrothermal vent

 2012年1月7日NHK放送のサイエンスZERO「深海で“ゴールドラッシュ”熱水が生んだ夢の金属資源」では、深海のプレート境界にできる“熱水噴出口”の周辺に、金銀を含んだ“熱水鉱床”が日本にたくさん発見されていることを伝えていた。解説するのは東京大学地球惑星環境学科の浦辺 徹郎教授。

 日本列島は、4枚のプレートと呼ばれる地殻の上に存在し、これが巨大地震の原因にもなっている。先日の東日本大震災では、北米プレートと太平洋プレートの境界にある日本海溝で、マグニチュード9.0の巨大地震が発生した。次は南海トラフ、相模トラフ、駿河トラフと呼ばれる3つのプレート境界での地震が心配されている。

 つまり、日本でプレート境界は憎むべきものであって、けして歓迎されるものではなかった。ところが、このプレート境界で金銀レアメタルを含む熱水鉱床が多数発見された。しかも、世界に存在する熱水鉱床のうち日本のものだけが、金銀レアメタルを多く含むという。なぜだろう?

 実は同じプレート境界でも、海嶺は、大洋の底にある海底山脈で、マントル(固体)が地下深部から上がってくる場所で、地下の鉱物にさほどレアメタルはふくまれていない。ところが海溝やトラフでは、太平洋に降り積もった海底のレアメタルが、プレート移動により、日本近海まで運ばれる。そして、プレートと海水が一緒に沈み込むことで、地下のマントルに触れ、熱水ができ、そこにレアメタルが溶け込み濃縮される。

 沖縄の海底に「黒鉱」発見!
2010年9月、銅や鉄など豊富な資源を含むとみられる「黒鉱」を日本の海洋探査船「ちきゅう」が、沖縄沖の水深約1100mの海底(沖縄トラフ)を掘削して発見した。

 黒鉱の埋蔵量としては国内で最大級の可能性がある。日本の新たな海洋資源として注目が集まる。発見されたのは沖縄諸島北西部の伊平屋北熱水域。ここは海底に300~350℃の熱水が複数の場所から噴出している。太平洋にあるフィリピン海プレートが日本列島が乗るユーラシアプレートに沈み込む一帯で、海底火山が多い沖縄トラフが広がる。

 海底に潜り込んだ海水が地球のマグマで熱せられ熱水流が噴出孔から吹き出す。熱水孔から周囲約2km、深さ数百mの地層は泥や砂でできた堆積物と軽石が交互に重なりあう。熱水は地下深くからこれらの層を横切って上昇する。軽石はすぐに溶けるが堆積物は溶けにくいので熱水が流れなくなり熱水は湖のようにたまる。

 この後、熱水が海底の近くで冷やされてとけこんでいた成分が析出し、黒鉱になる。→黒鉱には銀が含まれていることも確認され、金やレアアースが含有される可能性もあるという。これは日本のほか米国、オーストラリアなど8カ国が参加する国際プロジェクトとして海底にいる生物の研究を目的に掘削が行われていたもの。

 出てきたのは予想外の「黒鉱」だった。今回発見された黒鉱は、かつて東北地方が海底下にあったときにできたとされる黒鉱よりも埋蔵量が多い可能性が高いようだ。今後の掘削の計画は未定であるが、沖縄県沖で見つかった伊平屋北熱水域は日本の排他的経済水域(EEZ)で日本の単独資源開発が可能なそうだ。経済的に見合うかどうかは現在不明だが、レアアースの含有量次第では一躍脚光をあびるかもしれない。いずれにしても海底は未知の分野であり思わぬ発見がこれからあるかもしれない。夢の多い分野である。(日本経済新聞 2010.10.31)

 熱水噴出口と、熱水鉱床
 熱水噴出孔(hydrothermal vent)は地熱で熱せられた水が噴出する割れ目である。熱水噴出孔がよく見られる場所は、火山活動が活発なところ、発散的プレート境界、海盆、ホットスポットである。 熱水噴出孔は地球上ではふんだんにみられるが、その理由は地質学的活動が活発であることと、表面に水が大量にあることである。

 深海によく見られる熱水噴出孔周辺は、生物活動が活発であり、噴出する液体中に溶解した各種の化学物質を目当てにした複雑な生物社会が成立している。有機物合成をする細菌や古細菌が食物連鎖の最底辺を支え、そのほかにジャイアントチューブワーム・二枚貝・エビなどがみられる。

熱水噴出孔から噴出する水温は400°Cにも達するが、熱水噴出孔がある深海の水温は2°Cくらいである。深海の高い水圧によりこの高温でも水は液体のままで沸騰しない。水深3,000mで407°Cの水は超臨界状態である。塩濃度が上昇すると、臨界点は高くなる。

 熱水噴出孔によってはチムニー(煙突)とよばれる円柱状の構造物を形成することがある。超高温の熱水に溶解している鉱物が0°Cに近い海水と接触すると、接触面で化学反応が進み生成物が析出・沈殿してこのようなチムニーができる。

 深海の熱水は周囲の岩石と化学反応を起こすため、両者の成分が変化し、岩石の成分の一部が熱水に取り込まれる(溶解)。こうした熱水が深海の熱水噴出口から放出されると、急速に冷却され、溶存成分が化学的に沈殿し、熱水鉱脈が形成される。この沈殿物に金属などの有用成分が充分に含まれていると熱水鉱床とよぶ。

 日本の排他的経済水域内にはレアメタルの含有量の高いマンガンノジュールやコバルトクラストや熱水鉱床があり、開発が期待される。

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構は、2011年より資源エネルギー庁の委託により、企業2社も参加し、沖縄トラフと伊豆・小笠原諸島沖の海底の金銀やレアメタルなど深海資源を採掘する技術の実用化に乗り出す。世界初の深海採鉱ロボットで鉱石を掘り出し、パイプで母船へ送る採鉱システムを開発、約10年後の商業化を目指す。(Wikipedia)

 黒鉱とは何か?
 黒鉱(kuroko、black ore)とは、日本海側の鉱山で採掘される外見の黒い鉱石の総称である。黒い鉱石の正体は、閃亜鉛鉱(ZnS)、方鉛鉱(PbS)、黄銅鉱(CuFeS2)などであり、それぞれ亜鉛や鉛、銅などの鉱石として広く採掘された。

 黒鉱は海底へ噴出した熱水から沈殿した硫化物などが起源であると考えられている。日本国内に見られる黒鉱の大半は、新生代第三紀のグリーンタフ変動に伴って生成されている。黒鉱の周囲には金や銀などが濃集することから、江戸時代には主にそれら貴金属が、明治時代に入り精錬技術が向上するにつれて黒鉱自体が注目されるようになった。また、黒鉱は金属鉱物のみでなく、大量の沸石類や石膏、重晶石などを従う。

 日本でも黒鉱ベルト(グリーン・タフ)と呼ばれる、鉛、亜鉛、バリウム、アンチモン、ビスマスを豊富に含む鉱床が存在するが、硫化鉱と諸金属からの分離に手間がかかるために、従来はコスト的に引き合わなかったため採掘は行なわれていなかった。しかし、21世紀から始まったレアメタルの価格高騰が続いており、今後、開発する計画がある。(Wikipedia)

参考HP Wikipedia:熱水噴出口 海底熱水鉱床 NHKサイエンスZERO:深海でゴールドラッシュ!熱水が生んだ夢の金属資源

日本近海に大鉱床が眠る ―海底熱水鉱床をめぐる資源争奪戦― (tanQブックス)
クリエーター情報なし
技術評論社
黒鉱―世界に誇る日本的資源をもとめて (地学ワンポイント)
クリエーター情報なし
共立出版

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