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 “エコ”と“便利”は両立できる?
 2012年3月14日NHK放送の、クローズアップ現代は興味深かった。「エコ」という言葉はよく聞くが、「エコ」というとどうしても節約、我慢というイメージがある。節約を工夫して楽しめむことは大事だが、我慢ばかり続くのはあまり面白くない。

 一方、エコと同時に「便利な生活」も私たちは望んでいる。「エコ」で「便利」な生活の両立はできないものだろうか?難しそうだが、Scienceの力を借りれば可能かもしれない。現在、エコと最新テクノロジーをプラスして、環境に優しく、かつ便利で豊かな生活をするための研究がすすんでいる。それが「ブルーエコノミー」や「ネイチャーテック」と呼ばれているもの。いったいどんな科学技術だろうか?


NatureTech

 社会を変える “自然テクノロジー”
 滋賀県は去年、全国に先駆けて温暖化対策の条例と工程表を策定した。2030年までに温室効果ガスを1990年に比べ50%削減する条例を制定。工程表では予算からスケジュールに至るまで具体的に示している。削減のための手段として県が重視しているのが、地域に伝わる伝統的な暮らしの知恵。

 びわ湖と人々の暮らしが結び付いていた昭和30年代の生活からヒントを得ようというのだ。「そんな遠い遠いどっか大昔ではない、ついつい私たち子ども時代そうだったでしょうということを思い起こしてほしい。それで昭和30年代の暮らしぶりについてみんなで学ぼうよと。」と嘉田由紀子知事はいう。

 こうした政策を追い風に、新たな製品作りに乗り出す企業が現れている。紙製品メーカーで開発を担当する岡田佳美さんだ。岡田さんは、びわ湖の湖岸に生えている「よし」を利用して、封筒やノートやコピー用紙を開発した。少しざらついた独特の手触りや落ち着いた色合いが人気を集めている。

 岡田さんが頼りにしたのは、明治時代から続くよしの卸商の4代目、竹田勝博さん。よしは、かやぶき屋根やすだれの原料として使われてきた。しかし、高度経済成長とともに和風建築が減り、びわ湖のよしの需要は長らく落ち込んだまま。「どうしても すだれを編むとか、編んで売るとか、そういうことによしがあまり使われなくなって。」と竹田勝博さん。

 よしは余分な養分を水から吸い取り、びわ湖の水質の浄化に大きな役割を果たしてきた。ところが、需要が減るにしたがい、よしが生えている面積が減少。びわ湖の水質の悪化に拍車がかかった。そこで岡田さんはよしに新たな活用の場を作り、よしによる自然が環境を浄化する仕組みをよみがえらせようと考えたのだ。(NHKクローズアップ現代)

 ブルーエコノミーとは何か?
 今、こうした自然の仕組みを生かしたビジネスの開発が進んでいる。しなる竹の構造をまねた軽くて頑丈な建築資材。蚊の口の形を模した痛みの少ない注射針などさまざまな分野に広がっている。こうしたビジネスモデルをブルーエコノミーと呼び今後10年で1億人の雇用を生み出すと提唱する海外の研究者がいる。

 環境経済学者のグンター・パウリ博士は「60年代までに世界に広まっていた伝統文化を見れば、すでに人々が自然から学んでいたことが分かります。自然の見事な機能を見て、自分たちの生活に取り入れたのです。自然が多くの恩恵を与えてくれるようにこのビジネスは成長し発展するに違いありません。」

 グンター・パウリ博士は、健康に良いとか環境に良いものは高価で あるという現在の仕組みを打ち壊すという進歩的なミッションを掲げている。パウリさんは生活に必要不可欠なものは、フリーであるべきだと信じている。 1994年からこうしたビジョンを実現するビジネスモ デルを支える科学を探し始め、すべてが利用され、再生可能エネルギーが標準である自然の仕組みに感銘を受けた。

 100個の実績ある発明にもとづいて、 新しい、"グリーンより良い"ビジネスの枠組みを設計し、ブルーエコノミーと名付けた。最新の書籍である「ブルーエコノミー」は20言語以上に翻訳さ れ、日本語版には新章「コンセンサスとキャッシュによる原子力からの撤退」が追加され、間もなく上梓されます。パウリ氏は毎週革新的なビジ ネスモデルをオープンソースで発表していて、既に55のビジネスモデルをオンラインで見ることができる。パウリさんは子供向けの数冊を含む12冊以上の 書籍を出版している。

 科学の目で見る“ネイチャーテック”
 科学の目で見ると、自然からはまだまだたくさんのことが学べる。たとえば、シマウマの皮膚は、黒い部分と白い部分で9度も温度差がある。これにより、空気の密度(density)が違うので風が起こり、涼しさを保っている。ダイワハウスは、シマウマにヒントを得て、仙台に白黒のビルを建てた。

また、アフリカにあるアリ塚は、気温の安定している地下の巣穴を通して外気を取り入れるため内部は常に過ごしやすい温度に保たれている。内部の空気が暑くなると天井から排出し新たに外気を取り込むエアコン機能まで付いている。

 アリ塚の仕組みをまねた建物では、冬は冷たい外気を暖かい地下トンネルを通過させ5度ほど上昇させる。その分暖房の電力を節約できまる。夏は暑い外気を地下トンネルで冷却。さらに天井から温まった空気を放出し空気を交換する機能があるところもアリ塚から取り入れた。

 トンボの羽根は、実は航空力学の先端機能を備えている。表面の凹凸が気流に上手く乗るよう生まれながらに設計されており、昆虫のなかでも最速の飛行力を持っている。このトンボの羽根を応用して風力発電の模型を作ると、風速1mでも徐々にスピードが増し、羽根がどんどん回る。同様に比較するためにつくった一般的な模型は、風速1mでは動かないばかりか、強い風で回ると羽根が折れてしまう。しかし、トンボの羽根のほうは、いくら強く回転しても折れない。

 環境負荷を最小限に
 ネイチャーテックは、自然を科学の眼で観て、人間にとって必要なものをリ・デザインすることによって、地球への負荷をとても小さくすることができる、まったく新しいものつくりや暮らし方を提案しようとするものだ。東北大学、石田秀輝教授は次のように述べている。

 「ご存じのように、この地球の中で完璧な循環を持っているのは自然だけなんですね。 自然というのは最も小さなエネルギーで、完璧な循環を駆動しているわけです。 そのエネルギーも太陽の熱だとか、光だとか。 そういうものの中には、やっぱり知恵の宝庫なんです。 それをもう一度科学の目できちっと見て、テクノロジーとしてデザインし直したい、そうしなければいけない時代になっていると思います。」

 「やっぱり地下資源型のほうが力任せで楽なんですけども、でもやっぱりそうではなくて、さっきいった自然を、生かされて、自然をいなすだとか、そういう新しいテクノロジーの形が今望まれてるんだと思います。 本当は大きな循環があるんだけれども、われわれがその循環の中にいることを忘れてしまう、蛇口をひねると水が出る、スイッチを押すと電気が出てくる、そうやってブラックボックスをいっぱい作ってしまった。 そして結局のところ、お金という物差しと利便性という物差しだけで、計るものを計ってしまう。 だからよしの代わりにプラスチックを使ったらいいんではないかと、そうなってしまう。 だからそこのところをもう少し、われわれが大きな循環の中で生きてるんだということを考えるだけで、実はもっと豊かな暮らしがあるということを見直す必要があると思いますね。 」

 「先進国の中でこの自然観を持ってるのは恐らく日本人だけですね。 その自然観を文化に醸成していったのが例えば江戸の粋というような概念。 あるいはそこから生まれるのが、用の美といわれるような、その日用品も美しいというそういう概念ですね。 ですから、そういう概念というのをわれわれもう一回、きちっと整理をして、それが昔はよかったではなくて、それを今の世界、未来の世界にどうやって組み直すかということ、それがすごく望まれていることだと思います。」

 「豊かさを保ちながら循環型の経済を迎えることの両立は可能です。 それは持続可能な社会を作るためには、循環型の社会を作ることと、そして人の欲っていう、人のことを考えたものづくり、両方しなければいけない。 この欲の部分を物欲から精神欲に変えていくような、そういう新しいテクノロジーの概念を作っていく。 それがエネルギーも資源もない日本が、アジアの盟として、やらなければいけない役割ではないかな、そういうふうに思ってます。」 (NHKクローズアップ現代)

参考HP Wikipedia ヨシ GOODNEWSjapan ネイチャーテクノロジーで環境負荷を最小限に Blue Economy Innovetion http://www.blue-economy.net/ NHKクローズアップ現代 90歳が変える未来のテクノロジー

エコテクノロジー最前線
クリエーター情報なし
森北出版
自然に学ぶ粋なテクノロジー なぜカタツムリの殻は汚れないのか (DOJIN選書22)
石田秀輝
化学同人

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