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 重力波望遠鏡:「LCGT」の着工式
 アインシュタインが一般相対性理論で存在を予言した「重力波」を観測するための大型低温重力波望遠鏡「LCGT」の着工式が20日、岐阜県飛騨市神岡町東茂住であった。総工費155億円をかけ、神岡鉱山の地下200メートルに建設する。地球から7億光年離れたヘラクレス座銀河団が観測できる性能を目指す。17年春から本格的に観測を始める予定。

 重力波はアインシュタインの一般相対性理論で存在が予言された現象。重さのある物体は時間と空間をゆがめ、物体が動くと、ゆがみが波として光速で伝わるとされる。ブラックホールの誕生時や超新星爆発で重力波が出るが、極めて微弱なため、直接観測に成功した例はない。観測できればブラックホールが生まれる瞬間など未知の現象の解明につながるという。

 LOGTは長さ3キロのアーム2本をL字形に組み、双方の先端に人工サファイア製の鏡を取り付ける。レーザー光を連結点で振り分け、鏡に跳ね返って戻る時間を測る。

GWgeneration

 宇宙から重力波が来れば、この往復時間が変化するため、光の干渉現象として重力波を観測できるという。精密に観測する必要があるため、地下の固い岩盤上に建設して地上の振動を遮断し、鏡が熱を帯びないよう氷点下253度まで冷やす。

 式典は、研究の中心となる東京大宇宙線研究所や協力機関の研究者らが出席。梶田隆章所長は「アジアにおける観測拠点としての世界から期待されている」とあいさつした。(毎日新聞 2012年1月21日)

 アインシュタインからの最後の宿題
 宇宙線研重力波グループでは、人類がいまだ成し遂げていない、「重力波」の直接検出を目指した研究を行っている。重力波は、アインシュタイン博士の一般相対性理論から導き出される「時空の波」「時空の音」にたとえられる波動現象で、世界中の研究機関が、その初検出を目指して、競争し、かつ協力し合っています。では、「重力波」を検出する意義は何だろう?

 この、アインシュタインからの最後の宿題にこたえるために計画されているのが、LCGT計画である。下記の想像図のように非常に大きな装置が必要だが、すでに、同様の装置がアメリカに2台、ヨーロッパに1台建設されさらなる検出能力向上のための研究開発が続けられている。

 光と重力
 我々の住むこの宇宙では、「光を放つ」という事と、「質量を持つ」という事は、その天体の「姿」を遠方まで伝える最も根本的な方法だ。我々は、今まで、「光(電磁波)」を利用し、宇宙の「姿」を見てきたが、もう一つの「質量」に起因する重力波という「時空の音」で宇宙を「聞く」ことができれば、宇宙の「より完全な姿」を知ることができるようになる。

 宇宙が生まれて40万年間は、宇宙が熱すぎて光が直進できないので、光でその時代は見れない。重力波は、すべてを貫通する能力があるので、重力波で見ることができる。

 宇宙の一大事が発生した時に、最初に放出されるのが重力波。しかも、光速で伝搬すると思われているので、追いつかれることもない。よって、「事件の第一報は重力波によりもたらされる」ことになる。超新星の爆発、中性子星同士の合体の瞬間、ブラックホール誕生の瞬間などで活躍が期待できる。

 重力の理解は、他の物理学の分野に比べると圧倒的に進んでいない。それは、「重力」が、私たちの生活で利用している「電磁力」や「原子同士に働く力」に比べて圧倒的に弱いからである。ところが、重力波は、重力が、これらの力にならぶほど大きくなる極めて強い重力源(中性子星やブラックホール、果てはビッグバン)から発生するので、重力の特性を知るには格好の道具になる。

 重力波とは?
 重力波は、巨大質量をもつ天体が光速に近い速度で運動するときに強く発生する。例えば、ブラックホール、中性子星、白色矮星などのコンパクトで大きな質量を持つ天体が、連星系を形成し、重力波によってエネルギーを放出しながら、最終的に合体することが考えられる。

 重力波の概念は、アルベルト・アインシュタイン自身が、一般相対性理論を発表した2年後に発表した。重力波が存在することは間接的には示されている(#間接的な検出参照)が、2012年1月現在、まだ直接観測されてはいない。重力波の伝播を媒介するものは、重力子 (graviton) という粒子と考えても良いが、これも未検出である。

 重力波を直接観測することは、現在の一般相対性理論研究の大きな柱の1つであり、巨大なレーザー干渉計や共振型観測装置が世界の数拠点で稼働あるいは計画中である。また、予想される重力波は非常に弱いため、ノイズに埋もれた観測データから重力波を抽出するために、重力波の波形をあらかじめ理論的に計算して予測する研究も精力的に進められている。

 重力波源の有力候補
 重力波は、物体が加速度運動をすることにより放出される。ただし、完全な球対称な運動(星の崩壊など)または円筒対称な運動(円盤状物体の回転など)からは(キャンセルされて)放出されない。

 一般相対性理論が日常生活で意識されることがほとんどないように、この理論から予言される重力波の振幅は非常に小さい。人工的に作り出して観測することは不可能であるので、波源は宇宙の天体現象に期待される。 想定される起源としては、以下のようなものがある。

2つの天体による準ケプラー運動: 太陽を周回運動する惑星のように、連星系の天体からは重力波放出が期待される。特に、連星中性子星あるいは連星ブラックホール(あるいは中性子星とブラックホールの連星系)のスパイラル運動、およびそれらの最終的な合体フェイズで発生する重力波は、地上レーザー干渉計での重力波検出の重要な候補である。連星系が重力波放出により、軌道半径を小さくしてゆく運動をインスパイラル運動という。

中性子星・白色矮星などのようなコンパクトで非常に重い星の非球対称振動: 1つの天体からでも重力波放出が期待される。また、ブラックホールが形成されるときは、ブラックホールに物質が吸い込まれる時に、特徴的な減衰振動が期待される。これは、ブラックホール準固有振動 (quasi-normal mode) と呼ばれている。いくつもの白色矮星の振動による重力波は、合成されてノイズのように観測されうるだろうことが宇宙空間レーザー干渉計での重力波検出で予想されている。

非球対称な超新星爆発: 回転を持つような超新星爆発では、運動の非対称性より重力波放出が期待される。超新星爆発が発生すれば重力波波源として有力だが、発生頻度は連星系の合体などよりは少ないと考えられている。

インフレーション宇宙モデルなどの、初期宇宙の痕跡: モデルによっては、宇宙の相転移で発生する泡状構造の衝突などの現象で重力波が発生する可能性がある。背景重力波として存在することが考えられている。

参考HP Wikipedia 重力波 東京大学宇宙線研究所 重力波グループ

一般相対論の世界を探る―重力波と数値相対論 (UT Physics)
クリエーター情報なし
東京大学出版会
重力波とアインシュタイン
クリエーター情報なし
青土社

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