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イタリアの海難事故
イタリア中部沖のジリオ島付近で1月13日夜、豪華客船コスタ・コンコルディアが座礁した。この事故では、島の沖合を通るクルーズ船が霧笛を鳴らして住民に挨拶するという“儀式”が慣例化されており、今回はそれが裏目に出てしまったようだ。11人死亡24人が行方不明の大惨事になった。
それにしても大勢の命を預かる船長の、無責任な行動にはあきれた。まず、「海図にないところに暗礁があった」と言い訳をしたり、乗客らより先にジリオ島に避難しているのを沿岸警備隊関係者に見とがめられ、船に戻るよう促されていた…というから、これは有罪だろう。
これだけ科学が進んでも、まだ、座礁しない船は開発できないのだろうか?自動車ではぶつからないものが商品化されているが、船は急に止まれないから難しいのかもしれない。今日は、船の先端技術について調べたい。
ハイブリッド「ISHIN」
商船三井が、環境に配慮した船舶を実用化する。技術的に実現可能な次世代船「ISHIN(維新)」シリーズでは、このようなシリーズが3種あり、2014年後半にはエンジンの排熱エネルギー回収効率を高め、二酸化炭素(CO2)排出量を20%減らせる大型ばら積み船も完成する。将来的にはCO2排出量の半減を目指す。
6月に完成する自動車船は「ISHIN-I」をコンセプトにした次世代船で、三菱重工業と三洋電機と共同で開発を進めてきた。甲板上には世界最大規模の発電容量となる約160キロワットの太陽光パネルを設置。大容量のリチウムイオン蓄電池も搭載し、この電力で港内を低速で航行する際のエネルギーをすべてまかない、ディーゼル発電機を完全に停止することで排ガスがゼロとなるという。
最終的には港内でのゼロエミッションに加え、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせた推進システムや風圧を軽減する船の形状などの採用により、大洋航行中のCO2排出量を最大50%削減することを目指す。
これに続くのが、大型鉄鉱石専用船の「ISHIN-III」。昨年12月、これを目指す大型ばら積み船をユニバーサル造船に発注した。エンジンの排熱エネルギー回収効率を向上させて発電に回すほか、エンジンの排ガスで動く過給機の回転動力を電力に変換するハイブリッド発電を搭載する。これにより、従来船に比べCO2排出量を20%超削減できるという。
「ISHIN-III」では、これに過給機の空気量をコントロールする機能を加えることでCO2削減量を30%とし、さらに「東京大学などと共同開発している風力推進船のビジネスモデルが確立されれば、50%以上の削減が可能」(商船三井)という。
「ISHIN-II」で描くフェリーも開発中だ。まだコンセプト段階だが、液化天然ガス(LNG)を燃料に採用するほか、港内では陸上設備からの電力供給でゼロエミッションを実現。また、船内から微細な気泡や空気層を放出し船底を覆って摩擦抵抗を低減したり、客室の窓前面に太陽光発電フィルムを張り付けるなどして、CO2排出量を従来より半減させることが目標だ。
「Eco Ship 2030」
海運業界はこれまで、運航コスト低減のために、燃費向上や省エネなどを進めてきたが、世界的な環境規制はなかった。しかし、昨年7月に開かれた国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会で、船舶に対しても排出規制を導入する海洋汚染防止条約の一部改正案が採択された。
この結果、13年以降に新たに建造される船舶は種類ごとに設定された排出基準を満たすことが求められる上、排出基準も段階的に強化される。現在運航中の船舶も省エネ運航計画の作成が義務付けられ、2007年比で30年には約20%、2050年には約35%の排出量削減が期待される。
持続可能な社会の発展のためには、消費エネルギーを節約するだけでなく、そのエネルギー源を化石燃料からクリーンなものに変えていくことが必要だ。その一つとして、燃料電池が注目されている。日本郵船グループは環境問題に責任を持つ企業として、世界に先がけてCO2の排出量がとても少ない未来の船のアイデアを発表した。
「NYK Super Eco Ship 2030」。未来の技術をたくさん取り入れることでCO2の排出量が現在の船より69%も少なく、その名の通り2030年の実現を目指している。
具体的には、太陽光発電で2 %、マイクロバブルによる摩擦抵抗削減で10 %、最適船型に変えることで2 %、風圧抵抗削減で1 %、推進効率向上で5 %、超伝導で2 %、船内電力需要削減で2 %、風力利用で4 %、燃料電池の活用で32 %、船体重量削減で9 %、合計でCO2排出量を69 %減らすのが目的だ。
参考HP 日本郵船 NYK Supar Eco Ship 2030 商船三井 未来への鍵は歴史に
図解・船の科学 (ブルーバックス) | |
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講談社 |
海洋船舶の科学―おもしろサイエンス (B&Tブックス) | |
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日刊工業新聞社 |
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