地球は太陽系外から来た?
太陽と惑星が、今まで考えられていたのとは異なる過程で形成された可能性を示す研究結果が発表された。NASAの探査機が採取した太陽風の粒子に含まれる酸素と窒素の同位体比が地球のそれと異なっていたことから判明したものだ。
地球などの惑星は、宇宙空間のガスが集積して太陽ができた際、その周囲に形成されたガス円盤(原始惑星系円盤)から生まれたと考えられている。
だが、NASAの探査機「ジェネシス」が2004年に持ち帰った太陽風のサンプルを解析した2つの研究チームが、今までの理論と食い違う調査結果を発表した。
また、もう1つの論文を発表したジェネシス共同研究員Bernard Marty氏(仏・ナンシー岩石地球科学研究所)らは窒素の同位体の違いについて示した。窒素のほとんどを占める「14-N」の割合が、太陽と木星では地球よりもわずかに高く、また少数派である「15-N」の割合は地球の6割しかない。窒素の同位体比は太陽と木星で一致しているようだ。
サンプルを採取した探査機ジェネシスは2000年8月に打ち上げられ、太陽と地球の間で重力がつり合うラグランジュ点(L1)に2001年~2004年までとどまって太陽風の粒子を採取した。多くの科学的証拠により太陽の外層は何十億年もの間それほど変化していないと思われているため、太陽風の粒子は原始太陽系円盤の遺物といえる。
Marty氏は「今回の研究結果は、岩石惑星や隕石や彗星などの太陽系天体が、太陽系がつくられた当初のガス円盤とは異なる組成であることを示しています。この原因をさらに詳しく調査することで、太陽系の形成過程に関する見方が大きく変わるかも知れません」と述べている。
ジェネシス (探査機)とは何か?
ジェネシス(Genesis)はアメリカ航空宇宙局(NASA)のディスカバリー計画の一環として宇宙に送られた探査機である。太陽風に含まれる粒子のサンプルリターンを目的に打ち上げられた。2001年8月8日に打ち上げられ、2004年9月8日に地球に戻ってきた。2年間にわたり太陽風に含まれる粒子を採取した後、地球に持ち帰った。月以遠の場所では初めて行われたサンプルリターンミッションである。
ジェネシスはNASAジェット推進研究所 (JPL) が2億6000万ドルの予算をかけて開発した。設計、建造はロッキード・マーティン社が行った。ラグランジュ点 (L1)で、4枚の太陽風サンプル収集アレイを展開して、2年3ヶ月間太陽風のサンプルを採取した後、地球へ帰還し、サンプル回収カプセルを突入させた。なお、衛星本体は地球を通過して太陽周回軌道へ入った。
ラグランジュ点 (L1)とは、簡単に言うと太陽と地球と月の引力の力が相殺しあう場所。地球・月間の、ほぼ4倍の距離の地点にあたり、ここに船を浮かべておけば、どこにも行ってしまわない、安定したポイントである。SFアニメなどでは「コロニー」を浮かべておく場所としても登場する。探査機は、この月より少し先のポイントを2年間ウロウロしていた。
2004年9月8日、ユタ砂漠に激突したジェネシス探査機計画では、回収カプセルのパラシュートが開き十分減速された後、映画などでスタント飛行を行う専門のパイロットが操縦するヘリコプターが、機体に取り付けたフックで、パラシュートを引っかけて回収するはずだったが、実際にはパラシュートが開かずに、300km/hで地面に激突した。
パラシュートが開かなかった原因は、設計図のミスでパラシュート起動用のスイッチが上下逆さまに設置されていたためであったと確認された。2004年9月現在、試料の受けた損傷を分析しているが、大部分のデータは破壊されてはいないだろうと予想されている。
太陽風とは?
太陽風は、太陽から吹き出す極めて高温で電離した粒子(プラズマ)のことである。
毎秒100万トンもの質量が太陽から放射されている。この風が地球の公転軌道に達するときの速さは約300~900km/s、平均約450km/sであり、温度は106Kに達することもある。地球磁場に影響を与え、オーロラの発生の原因の一つとなっている。高速の太陽風は、コロナホールや太陽フレアに伴って放出されていると考えられている。
同様の現象はほとんどの恒星に見られ、「恒星風」と呼ばれる。
なお、太陽系外からの銀河宇宙放射線の流入量は、太陽風を伴う太陽活動と相関があり、太陽活動極大期に銀河宇宙線量は最小になり、太陽活動極小期に銀河宇宙線量は最大になる。これは太陽風が、太陽系外から流入する銀河宇宙線をブロックするためと考えられている。銀河宇宙線のエネルギーは強大で、ほぼ真空の宇宙空間を飛翔する岩石結晶には、銀河宇宙線による細かい傷が見られる。銀河宇宙線が直接生命の細胞に当たれば、細胞はひとたまりもなく破壊されてしまう。一般には良く知られていないが、太陽風はこうした強大なエネルギーを持つ銀河宇宙線から、地球生命を守っている。米国のボイジャー探査機には、太陽系を離れるにつれて次第に強い銀河宇宙線が検出されているという。
太陽に接近して尾ができた彗星において、尾が常に太陽と反対方向に伸びるのも、彗星表面から蒸発した物質が太陽風によって吹き流されるのがその一因である。太陽風には太陽内の水素・ヘリウムおよびそれらの同位体が含まれており、月などの大気のない天体表面にはそれらが堆積している。特に核融合燃料として有望なヘリウム3が月面に豊富に堆積している事が確認されており、その利用が月開発の目標の一つとなっている。
参考HP Wikipedia 太陽風・ジェネシス
アストロアーツ 太陽系の歴史が一変?太陽風粒子の解析結果
太陽からの光と風 -意外と知らない?太陽と地球の関係 (知りたい!サイエンス) | |
秋岡 眞樹/他 | |
技術評論社 |
“不機嫌な”太陽―気候変動のもうひとつのシナリオ | |
H スベンスマルク,N コールター | |
恒星社厚生閣 |
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