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従前の記事から続く「高評価レンズ」の後編記事。 個人評価点データベースにおいて、評価平均点 が4点を超える「名玉」を、本記事でも7本と、 加えて準名玉を1本、計8本を紹介していく。 ---- では、今回最初の「名玉」 レンズは、smc PENTAX-DA ★ 55mm/F1.4 SDM (中古購入価格 42,000円)(以下、DA★55/1.4) カメラは、PENTAX K-5(APS-C機) 2009年発売のAPS-C機専用標準(中望遠画角) AFレンズ。 発売当初の実勢価格が8万円程していた標準(?) レンズである。 私は、その時「他社のAFの50mm/F1.4級ならば 銀塩時代からの定番レンズで価格もこなれていて 4万円程度の定価で、2万円前後の中古相場だ。 その2倍もするとは、なんてブルジョワなレンズだ」 と考え、いったんは、これを無視する事とした。 しかし、上の話は、以前にも既視感(デジャビュ) がある。そう、およそ10年程前、同じPENTAXから smc PENTAX-FA 43mm/F1.9 Limited(1997年、 発売時6万円台後半)が発売された時の話だ。 私は、その時も「ふむ、これまでのPENTAXの レンズは外観が野暮ったいものばかりだったが、 これは格好いいな。しかし、値段がいけない、 AF小口径準標準レンズならば定価で3万円位、 中古で1万円前後が相場だけど、このレンズは 定価が6万円台後半と、2倍もするよ。 なんて贅沢なレンズだ、買うのは控えておこう」 そう、10年強の時を隔て、同じPENTAXの標準 レンズに、全く同じ印象、つまり「高い!」を 持つ事となった。じゃあ、なんで両レンズが今 でも手元にあるのか、結局買ったのではないか・・ という話には、それぞれ理由がある次第だ。 FA43/1.9の場合は、その紹介記事でも何度か 書いたが、撮影仲間の美人女性がそれを所有 していて、撮影旅行の時に、短時間だけ借りて 撮影したところ、「とても写りが良い」と 認識した事だ。ただ、この話は多分に、その 女性への「体面」もあり、邪(よこしま)な 気持ちが無かったとは言えない(汗) いずれにせよ、FA43/1.9の、その小口径標準 という(ありふれた)仕様には現れてこない 高い描写表現力と、作りの品質の良さには感心し 以降、追って発売されたFA77/1.8、FA31/1.8 のLimitedシリーズを速攻で新品入手した次第だ。 それら3本は、PENTAXの銀塩およびデジタル 一眼レフシステムの主力レンズとして、20年間 以上も活躍する事となる。(参考:前編記事で FA77/1.8を紹介済) なお、2021年に20年前後ぶりにFA~Limitedの 全3本がリニューアルされたが、新バージョンは 光学系が旧来と同一だと聞いているので、今の ところは未購入だ。 さて、今回の話はFA~Limitedシリーズでは無く DA★55/1.4の件だ(汗)本題に進もう。 で、PENTAXにおける「★」(スターと読む)は、 高画質レンズを示す称号である。 ただ、個人的には、そのように、メーカー側から 「これは高画質なのです、だから高価なのです!」 と押し付けられて高いレンズを買わされてしまう 事は好まず、あえて、そうした各社の高画質称号 付きレンズの購入を避ける事も多々ある。 実際の「★」の効能については、1990年代~ 2000年代のPENTAX製レンズについては、「異常 低分散ガラスレンズを使用している」という点が あるだろう。これは、硝(ガラス)材自体の特徴 であり、屈折率や色分散(アッベ数)が一般的 なガラスとは大きく異なる。これを、適正な、 (反対の特性を持つ)レンズと組み合わせると 色収差等が低減され、解像力や画質全般も高まる という仕組みだ。(注:または、「特殊硝材」の 採用は高画質化を目指す事のみならず、レンズの 小型化や、レンズ枚数を減らしたコストダウンの為 に使われる場合もある。SIGMA、PENTAX、OLYMPUS 等で1990年代~2000年代にかけ、その実例が多い) ただし、こうしたレンズ設計手法は、現代では 当たり前であり、既に2010年頃より各社では、 異常(特殊)低分散ガラスの称号である、ED、 LD、AD等の名称を用いなくなっている。 むしろ、現代の感覚では、★(スター)レンズも、 そこ(異常低分散)だけが一般レンズとの差異 であるならば、今時の、安価なレンズにも、例え 中国製レンズであっても、そういう硝材は使われ ているので、そこが高性能の証(つまり付加価値) にはならない。 実際のポイントだが、1990年代前半に発売の smc PENTAX-FA ★ 85mm/F1.4 の設計と 本レンズの光学系は極めて類似している。 具体的には、FA★85/1.4を2/3サイズに縮小 すると、ほぼ本DA★55/1.4の仕様となり、 イメージサークルが小さくなってAPS-C機専用 レンズとなる訳だ。これはつまり本ブログでいう 「ジェネリック・レンズ」である。 (=過去の名レンズの設計を、小センサー対応で、 縮小コピー設計をして、同等の特性を持つレンズを 簡便かつ安価に設計・製造する事) 通説では「DA★55/1.4と、FA★85/1.4の設計者 は同じ」と言われている。設計者が同じで、 設計手法もジェネリックであるならば、これは 確実に「ミニFA★85/1.4」が本レンズである。 そのFA★85/1.4は、超名玉のナナナナ(FA77/1.8) に置き換わるように、2000年ごろにディスコン (生産完了)となってしまっていたので、一時期 は投機対象となっていた。 (参考:PENTAXのデジタル一眼レフは2016年に なるまで、全てAPS-C機であったにもかかわらず、 「人物撮影をしたいから、85mmレンズが欲しい。 何?PENTAXには85mmレンズが無いではないか!」 という・・ 極めて変な購買ニーズが発生した。 --- 本当に85mmの画角が実用的に必要なのか?それとも、 ただ単に「85mm/F1.4レンズが欲しいっ!」という 無いモノねだりだろうか? その為に高額な投機的 相場を受け入れてしまうのか?あるいは、さらなる 転売利益を狙っているのか?いずれも変な話である) で、私が銀塩時代にFA★85/1.4を入手した際の 価格は43,000円であったので、本DA★55/1.4は 「単なる標準レンズ」とは思わず、むしろ 「FA★85/1.4の代替レンズ」と考える事で、 定価が高すぎる点は無視できると思われた。 で、FA★85/1.4と同じ中古購入価格「43,000円 以内」を目指して、これの入手を画策した。 2010年代前半には税込み42,000円まで相場が 下がっていたので、無事、入手した次第である。 色々と余談が長くなったが、本DA★55/1.4は 現代では入手困難なFA★85/1.4の縮小コピー レンズであり、しかも超音波モーターで武装 されているので、総合的な描写力や基本性能等に 不満は殆ど無い。 個人総合評価点も全所有レンズ中で、トップ クラスの高得点であるから、PENTAX党であれば 本レンズを所有する価値は十分にあるだろう。 ---- さて、2本目の「名玉」 レンズは、TAMRON SP 85mm/F1.8 Di VC USD (Model F016) (新古品購入価格 70,000円)(以下、SP85/1.8) カメラは、NIKON Df (フルサイズ機) 2016年に発売された、単焦点AF中望遠レンズ。 少し前述した、または前編記事で紹介した 「ナナナナ」(FA77/1.8Limited)は、2000年代 最強の名玉だと言えたかも知れないが、長期に 渡り販売が継続され、設計後20年近くが経過 するようになると、さすがに、近代のレンズに 比べての基本性能の古さは否めなかった。 2021年にはナナナナの改良型も発売されたが、 2010年代末の段階では、後継型のリリースは 期待できなかったので、ナナナナの代替レンズ を探していた状態であった。 そんな頃に、本SP85/1.8の存在が目にとまり、 ナナナナの用途代替を意図して購入したレンズ である。 高描写表現力に加え、近代のレンズらしく、 手ブレ補正や超音波モーターも搭載されている。 (85mm焦点距離のレンズでは、手ブレ補正の 内蔵は恐らく初だと思われる) 光学系は、9群13枚の複雑なコンピューター設計 であり、異常低分散系ガラスレンズも2枚採用 している。 実際の描写力もまずまず、こうした、いわゆる 「2016年断層」以降の新鋭レンズでは、描写力の 不満はまず感じられない。 細かい弱点は色々とあるが、枝葉末節であろう。 ナナナナの代替として、今後、長きに渡り使える だろう優秀なレンズだ。 このSP~F1.8シリーズが市場で不人気なレンズ であった事は、様々な過去記事でも説明済みだ。 消費者層にアピールしにくい仕様であった事が 最大の原因ではあるが、不人気の結果として、 安価な中古相場になっているのであれば、 これのパフォーマンスを理解し、それを必要とする 消費者層にとってはコスパが良いレンズとなる。 SP~F1.8シリーズには、他にも、SP45/1.8 (Model F103)、SP35/1.8(Model F012) が存在する。それら2本は、高描写表現力に 加えて、優れた近接撮影能力を持つ為、地味な スペックとは言えるが、実用性は抜群だ。 おまけに、これらも不人気で、中古相場等は かなり安価で、コスパも及第点である。 SP~F1.8シリーズ3本は、実践(実用)派の 中上級層、マニア層等には推奨できるレンズ群 であろう。焦点距離被り(→それらの層では、 35mm、45mm、85mmレンズは他にも持っている) が気になるかも知れないが、あえてそれを 許容しても良いし、異マウントでシステムを 構築しても良いとも思う。基本的に、これらは 「買い」である。 (注:2020年頃にSP~F1.8は、いずれも生産終了 となってしまっている。まあ、仕様のコンセプト が初級中級層のニーズを捉えておらず、これの 凄さを理解できるユーザーもおらず、それが分かる マニア層は激減しているし、一眼レフ市場自体も 大幅縮退してしまったので、誰も、こうしたレンズ を買う筈もなく、全てが悪い方向に重なってしまった、 非運のレンズシリーズであろう) ---- では、3本目の「名玉」 レンズは、FUJIFILM FUJINON XF 56mm/F1.2 R APD (中古購入価格 112,000円)(以下、APD56/1.2) カメラは、FUJIFILM X-T10(APS-C機) 2014年発売の「史上初のAF搭載」APDレンズ。 APDとは、アポダイゼーション光学エレメントの 略であり、他社での、STF(MINOLTA/SONY)や やDS(CANON)、LAOWAの Bokeh Dreamerと、 同一または類似の技術である。 効能を簡単に言えば、ボケ質が素晴らしく良い。 しかし、APD/STF/DSレンズは、2020年前後の 時点で5機種が存在したが、いずれも高価であり、 かつ「ボケ質の良さ」という付加価値が一般層に 訴求困難である為か、人気のあるレンズでは無いし 結果的に、後継機や派生機種も殆ど存在せず、 加えて、中古品等が潤沢に流通している訳でも 無いので、その「コスト高」が、購入を躊躇する 原因となってしまう。 (注:SONY版STF135/2.8は、既に生産完了) これはもう、購入して自分の目で確かめてみる しか、アポダイゼーション(系)のレンズの 効能は、わかりにくいかも知れない。 そうした場合、その「ボケ質」という効能が、 ユーザーにとって有益であるならば、これらの レンズのコスト高は、容認できるケースもある だろう。 ちなみに、私の場合は、FUJIFILM Xミラーレス 機は、その発売当初(2012年~)では、 基本性能の低さや操作系の課題を強く感じて、 購入をしない方針であったのだが、本APD56/1.2 の発売を機に、これを使う為にXマウント機の 保有を開始した次第だ。 つまり「欲しいレンズがあれば、(新マウントの) カメラを購入しても、かまわない」という考え方 であり、これは、一般的には奇異に感じるかも 知れないが、マニア層ならば、ごく普通の購買 行動(動機)であろうとも思う。 ---- さて、次は「準名玉」だ。 レンズは、Voigtlander HELIAR Vintage Line 50mm/F3.5 (注:独語綴りの変母音記載は省略、以下同様) (中古購入価格 40,000円)(以下、HV50/3.5) カメラは、OLYMPUS PEN-F(μ4/3機) 2016年発売の、ヘリアー型構成(3群5枚)の MF標準レンズ。 レンジファインダー機用VMマウント版である。 元祖のヘリアーは、独国時代のフォクトレンダー社 により、1900年に発明(開発)されたレンズだ。 その少し前の時代に英国で発明された(クックの) 「トリプレット」(3群3枚)の、前群、後群を 貼り合わせとして改良したレンズであるから、 「発明」という程のものでもないかも知れない。 当時としては高い描写力を誇った事であろうし、 現代において、ヘリアー型構成(純粋に同等の 光学系のものは、極めて少ない)のレンズを 使用しても、そう大きな描写力上の不満は 感じず、様々な弱点を回避しながら用いれば オールド設計ながら、十分に実用価値はある。 ヘリアーが何故一般的に普及しなかったか?は、 それの数年後に、独カール・ツァイス社により 著名な「テッサー」(3群4枚構成)が開発 された事で、それもまた、トリプレットの 改良レンズだとは言えるのだが、そちらの方が ヘリアーよりもシンプルな構成で、製造しやすく、 描写力上での(ヘリアーとの)差異もあまり 無かった為、「テッサー」の方が、その後の 数十年間(100年近くも)に渡り、デファクト (=優れた設計のもので、各社がそれを用い、 事実上のスタンダードとなる)となっていた からである。 ヘリアー系のレンズについて詳細を語ると 長くなる。そこは本記事ではばっさりと割愛 する事として、今回の記事での注目点は、 本HV50/3.5の高いデザイン性である。 クラッシックでありながら、現代的なテイスト を持つマニアックな外観であり、特に、同様の 雰囲気を持つ「OLYMPUS PEN-F」との組み合わせ は、相性抜群で、とてもバランスが良い。 描写力自体は、現代の視点においては平凡だし、 フォクトレンダーのVMマウントのレンズ群は 高付加価値型(≒高価)である。本レンズは、 その中では最も安価な類なのだが、依然、 中古4万円超えは、3群5枚のシンプルすぎる 光学系としては、高価すぎるとは思う。 しかし、この「格好良い」という付加価値に 抗うことは(一部の)マニア層においては難しい。 私の、個人的レンズ評価基準(項目)には、 「格好良さ」という項目は無いので、本レンズが 名玉に値する高評価得点を得る事は出来ないが、 まあ、そういう評価項目を新設するのであれば 本レンズは、その筆頭格に位置づけられるで あろう。 「名玉」とは言い難いが、一部のマニア層には 推奨できるレンズだ。 ---- さて、5本目は特殊レンズである。 レンズは、Lomography New Petzval 55mm/F1.7 MKⅡ (新品購入価格 41,000円)(以下、PV55/1.7) カメラは、SONY α7S(フルサイズ機) 2019年に発売された、オーストリア企画のロシア製 フルサイズ対応MF標準「ぐるぐるボケ」レンズ。 「特殊レンズ」が高得点(高評価)を得る事は、 私の個人的な評価データベースにおいては困難だ。 こうした特殊レンズは、誰しもが必要とする レンズでは無いし、そもそも所有していなくても、 それが大きな問題にはならないからだ。 (→「必要度」の評価項目が大幅に減点となる) そして「ぐるぐるボケ」レンズは、2010年代では LomographyやLENSBABY社から、いくつかの 新機種が発売されており、本レンズでないと ならない必然性も少ない。 さらに言えば、「ぐるぐるボケ」は、元々は 収差を起因とするものであるから、設計の古い オールドレンズ(特に、1960年代以前の 大口径レンズ)でも良く発生するし、さらには 「フランジバック補正レンズ入り、マウント アダプター」を用いて、通常レンズを装着した 場合でも、その組み合わせによっては、収差が 増えて(→「ペッツヴァール和」が増大して) 同様な「ぐるぐるボケ」が発生するケースもある。 ただ、オールドレンズは、大口径の物は入手が やや難しく高価でもある。また補正レンズ入り マウントアダプターでの「ぐるぐるボケ」は、 それが発生する組み合わせを探るのが大変だ。 よって、簡便に「ぐるぐるボケ」を得ようと したら、やはり近代の専用ぐるぐるボケレンズ を買うしか無い。 しかし、ここでいくつもの問題点がある。 まず入手が難しい、中古品は殆ど流通していない し、新品は、それなりに高価だ。 ペッツヴァール型2群4枚構成の、後群を分離して 3群4枚構成とする事が、「ぐるぐるボケ」レンズ の基本設計であり、これを踏襲するレンズは 多いのだが、そうしたシンプルな光学系に、 あまり高い値段を出したく無い意識も強い。 (参考:同様に、「シャボン玉ボケ」が出る 特殊レンズも、近代では色々とあったのだが、 こちらも3群3枚と、さらにシンプルな構成で あり、これに高価な値段はあまり出したく無い。 なにせ、構成レンズ1枚あたりの単価が7万円 前後と、異様な迄に割高に感じてしまう次第だ) で、高価格を許容して「ぐるぐるボケ」レンズ を買ったとしよう。すると、次の課題として、 「ぐるぐるボケ」を自在にコントロールして オーナーが思うように撮る事が、超高難易度で ある事に気づくであろう。その難しさについては 各種の「ぐるぐるボケレンズ」の紹介記事で説明 しているので、詳細は割愛する。 興味があれば、たとえば 参考関連記事:(旧ブログ) *レンズマニアックス第82回「ぐるぐるボケ」編 等を参照していただければ良いと思う。 まあ、要は、とても難しいレンズではあるが、 この特異な描写表現力に興味があるのであれば、 これを買うしか無い、という事である。 そして、本PV55/1.7のみが「高評価レンズ」編 で取り上げられているのは、本レンズは、 BC環(=ボケコントロール、後群レンズの分離度 を調整し、ぐるぐるボケの発生度合いを調整する) を備え、技法的に難しい、ぐるぐるボケの制御を 若干だが簡略化できる、つまりコントローラビリティ の高い、ぐるぐるボケレンズとなる事が理由だ。 これにより、実践派マニア層等においては、 「テクニカル的エンジョイ度」(=難しいレンズ を使いこなす楽しみ)が高く評価される状態となる。 なのでまあ、ごく一部の限られた志向性を持つ マニア層には、推奨できるレンズだとは思う。 個人的な評価点については総合4.2点と、高得点で あり、故に、純粋な「名玉」として、本記事に ノミネートされている次第だ。 ---- では、次の「名玉」 レンズは、OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO 90mm/F2 Macro (中古購入価格 50,000円)(以下、OM90/2) カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ(μ4/3機) 1980年代後半頃(1986年?)に発売と思われる MF大口径中望遠1/2倍マクロレンズ。 オールドレンズではあるが「マクロのオリンパス」 という当時のブランドイメージを磐石にする為に、 あるいは、当時における「一眼レフのAF化」の 時代において、その戦略への転換が困難であった 「OLYMPUS OM-SYSTEM」(注:銀塩MF一眼レフと そのレンズ群の事。2021年からの、新ブランド 「OM SYSTEM」とは、ハイフンの有り無しで 区別する)で、「MFのOMも、まだまだやるぞ!」 というアピールの為に発売された、という理由も あるかも知れない。 したがって、本レンズの企画意図や設計仕様は かなりの性能重視型であり、設計から40年近くが 経過した現代の視点から見ても、十分にこれは 高性能(高描写表現力)なレンズである。 設計上における拘り、そして開放F2級マクロ という珍しい付加価値により、本レンズは高価 であったと思われる(注:発売時価格の現存 する情報は、とても少ないが、118,000円という 可能性がある) 高価な故に販売数も少なかったと思われ、後年には 希少レンズとして扱われ、「投機対象」にもなって しまっている。現代、殆ど中古品は流通しないので あったとしても「時価」であろう。(→つまり とんでもなく高値) また、「希少で高価である」という点から、 市場やオーナー層においても「過剰評価」に なりやすい。いわく「凄いレンズだ」「傑作だ」 「名玉だ」「幻だ」・・とかいった類の口コミが 流れて、本レンズを「神格化」してしまう要素も 無きにしもあらずだ。 冷静に考えれば、近代の高性能マクロ、例えば マクロアポランター110mm/F2.5(2018年) 等に勝てる道理が無い。設計開発された時代が 30年以上も違っているので、それはやむを得ない。 値段についても、新鋭マクロを新品で購入しても、 むしろプレミアム価格(=不条理に高価な事)化 した本OM90/2よりも安価であろう。 しかし、本レンズを使うたびに思うのは 「なかなか良いレンズだ」という事である、 そりゃあ、解像感にしても、ボケ質にしても、 周辺収差にしても、近代レンズには敵う術が無い。 でも、これをμ4/3機、特にOLYMPUS機に装着して 使う事で、なんだか「OLYMPUSの歴史と栄光」を 感じる事が出来る次第である。 ましてや、2020年にカメラ事業から撤退して しまったOLYMPUSである、ありし日の歴史的な 価値を重んじて使う事で、それはそれで、1つの マニアックな方向性だ。 ちなみに、OLYMPUS μ4/3機に装着する事で、 1)180mm相当の、等倍望遠マクロとなる。 2)周辺収差を低減し、画角内の平均画質が向上する。 3)2倍テレコン機能の併用で、360mm級超望遠 マクロレンズとしても使える。 4)μ4/3機のボディ内手ブレ補正機能が使える。 等の実用上のメリットが存在する。 これを、ストレートに90mm/F2レンズとして、 フルサイズ機に装着してしまうと、仕様や性能面 で若干の物足りなさも出てくると思われるので、 ここはもう「OLYMPUS機で母艦を揃える」という 用法は、単なるマニアックなノスタルジーに とどまらず、実用的な意味も十分に存在する。 確実に「名玉」と言えるレンズではあるが、 弱点は、ただ1つ「入手困難である」と、 それだけだ。でも、あくまでオールドマクロでも あるから、無理をしてまで高価で入手する物でも 無いとは思う。 (追記:OM SYSTEM(新)より、90mm/F3.5の 2倍マクロ(μ4/3機用)が2023年に発売された。 高価なので現状未購入だが、新旧OM90マクロの 比較はマニア的に面白い研究テーマかも知れない) ---- さて、7本目の名玉 レンズは、MINOLTA STF 135mm/F2.8 [T4.5] (新品購入価格 118,000円)(以下、STF135/2.8) カメラは、SONY α77Ⅱ(APS-C機) 1998年発売の、史上初のアポダイゼーション光学 エレメント内蔵型MF望遠レンズ。 アポダイゼーションについては、上記のXF56/1.2 のところでも少し説明している。史上初のSTFが 本レンズであり、2本目が上記XF56/1.2であった。 両者の発売時期は、16年間も差があり、その間 私は「もうSTFは二度と出ないのかな?」とも ずっと思っていたのだが・・ 幸か不幸か、2010年代は、カメラ(レンズも) 市場が縮退を続けていて、そうした中で、 高付加価値型レンズ(=消費者層の目を引く 仕様や性能を搭載し、高価でも売れる、または 販売数が少なくても、十分な利益構造が得られる) を各社が新規に企画する上で、16年も前の 「アポダイゼーション」に白羽の矢が当たった のであろう。 ただ、実は、その16年間においても(又は αがMINOLTA→KONICA MINOLTA→SONYと 変遷しても)、ずっと本STF135/2.8は生産が 継続されていた(注:2021年頃に生産終了) だから、買おうと思えば、本STF135/2.8は いつでも入手が容易なレンズではあった訳だ。 しかし、その「買おうと思えば」というのが 意外にまで難しい。発売から約四半世紀を 経過した状態においても、「STFって何? それは、ソフトフォーカスレンズの事?」 という質問を口にする人を、いったい何度 目に/耳にした事であろうか、軽く数十回は、 そういう話を聞いたと思われる。 もう、だから、「わかる人だけが、欲しいと 思った人だけが買えば良いレンズなのです」 と、ずっと、そう答えるしか手段が無かった。 「グラデーション状に周囲が暗くなる、特殊な フィルター型エレメントを搭載し、結果として ボケ質が大変良くなる」といった説明を しても、わからないだろうし、それを欲しいと 思う人の数も少ないだろうからだ。 もう、詳しい説明は割愛する。本/旧ブログでは 非常に多数の過去記事で、本STF135/2.8を 取り上げている。 例えば、近年においては、以下の記事群を 参照していただければ良いと思う。 参考関連記事:(旧ブログ) *特殊レンズ第0回「アポダイゼーション」編 *特殊レンズ第82回「アポダイゼーション」編 *レンズマニアックス第31回「新旧STF対決」編 なお、 *最強135mmレンズ選手権(シード決勝戦) 記事では、本STF135/2.8が、ぶっちぎりの 高評価得点で優勝している。(旧ブログ) まあ、当然の結果とも言えるだろう。 すなわち、正真正銘の「レジェンド名玉」が、 本STF135/2.8である。 ---- では、今回ラストの名玉 レンズは、Voigtlander NOKTON 60mm/F0.95 (新品購入価格 113,000円)(以下、NOKTON60) カメラは、PANSONIC DC-G9 (μ4/3機) 2020年に発売されたμ4/3(マイクロフォーサーズ) 機専用の超大口径MF中望遠(望遠画角)レンズ。 2010年代初頭の、同社製NOKTON F0.95シリーズ (例:NOKTON 25mm/F0.95、NOKTON 42.5mm /F0.95)も、実は、高評価・高得点であり、一応は 名玉の扱いだ。 しかし、その高評価の理由は、その発売当時の 2010年代初頭においては、F0.95の超大口径 レンズの存在は珍しく、初めて、そのクラスの レンズが一般的に買える価格帯(10万円前後) で登場した事もあり、「見たものを何であっても 背景をボカして表現できる」その特性は貴重で あった要素が高得点の理由として大きい。 だが、実際の初期NOKTON F0.95の描写力は、 お世辞にも褒められたものでは無く、特に、 通常レンズしか使っていない(=上記2機種は 非球面レンズや特殊低分散ガラスの使用無し) 状態では、絞り開放近くでは、諸収差の発生で、 極めて甘い写りとなってしまう。 だが、描写力では量れない圧倒的な「表現力」 が、それら初期NOKTONには存在していた次第だ。 だから高評価を与えていたのだが、その後、 2010年代を通じて、他社からもF0.95レンズの 発売が増えて来た。一部は、この時代のレンズ 市場の縮退を受けた「高付加価値型」の企画で あり、非常に高価なものもある。 また一部は、海外(中国製)等の比較的安価な F0.95レンズも発売された。 高価なものは所有していないが、中国製F0.95 レンズでも、初期のNOKTONを、描写力的には 上回るケースもあり、だんだんと初期NOKTON の描写力への不満が多くなってきた。 背景をボカす(F0.95)レンズとしては、 実焦点距離が長く、かつ最短撮影距離が 短いものが必須である。しかし、その仕様を 持つものは、初期NOKTONの42.5mm/F0.95 (2013年)以降では、適切なものが存在せず、 ずっと、それを使い続ける状態であった。 2020年、コロナ禍での緊急事態宣言の中で、 ひっそりと本NOKTON 60mm/F0.95が発売 された。長焦点NOKTONとしては、実に7年 ぶりの発売なのだが・・・ 実は、コシナ社には、アンチブランド意識が 強い企画発想が多々見受けられる。 きっかけとなったのは、120万円以上もする 「NIKKOR Z 58mm/F0.95 S Noct」が 2019年に発売された事が理由にあるのでは なかろうか? これは、その発売時には 最長の実焦点距離を持つ(つまり、良く背景 がボケる)F0.95レンズではあったが、 いかんせん、(当時不振の)Zマウントでの 「広告塔」の役割も大きかったと思われ、 「Z機ならば、こういうレンズも使えるのだ」 というアピール性の強い、超高額レンズだ。 コシナ社は、それを見て、すぐさま、 「F0.95レンズ最長の実焦点距離」を奪回 する為、本NOKTON 60mm/F0.95の開発を 開始したと思われる。おまけに、それだけでは 飽き足らなかったのだろうか? さらに、 NIKKOR Z58mm/F0.95への対抗レンズとして、 「SUPER NOKTON 29mm/F0.8」(2020年、 未所有)を新発売、これはμ4/3機用レンズなので、 フルサイズ換算では「58mm/F0.8」となる為、 Z58mm/F0.95への強い対抗意識が明白だ。 ただ、コシナ社は、単に、ブランド力を持つ 有名他社に対抗するだけの製品を企画している 訳でも無いと思う。この企画の裏には、マニア 層の心理を読んだ、高度な市場戦略が存在する。 それは、マニア層が、ある種の、特殊な仕様の レンズが欲しいとする、その際、そのレンズが ブランド力等により、異常なまでに高額であると 「ブランド嫌いで、名より実を取る」マニア層 全般の特性から、そうしたレンズは買いたくても 買えない(自身の購買ポリシーに反するからだ) でも、その特殊仕様(または特徴的な性能)の 超高額レンズは欲しい。 そんな際、コシナ(フォクトレンダー)から、 そうしたブランド付与型の特殊仕様レンズと 同等か、それ以上の性能や仕様を持つレンズを 比較的安価に発売すれば、その実際の価格が 多少高価であっても、マニア層は価値感覚を 狂わされて、それを買ってしまう可能性が あるという点だ。 具体例を挙げよう、 1)高級ブランドレンズ NIKKOR Z58mm/F0.95が120万円以上に対し、 NOKTON 60mm/F0.95が定価145,000円+税。 SUPER NOKTON 29mm/F0.8が225,000円+税。 2)高級ブランドレンズ LEICA APO-SUMMICRON M 50mm/F2 ASPH が、110万円以上に対し、 APO-LANTHAR 50mm/F2 Aspherical が、定価12万円+税。 いずれも、マニア層が(信条的にも)買えない 高級ブランドレンズと、同等か、場合により 上回るであろう性能のレンズを、ブランド付与 レンズの数分の1の価格帯で対抗発売している。 そうであれば、マニア層は、金銭的な価値感覚を 狂わされてしまい、「こっちの方がずっと安い」 あるいは「ブランド銘に振り回されたく無い」と いった理由で、それらコシナ製レンズを買う事に なってしまう訳だ。 だが、冷静に考えれば、例えば、APO-LANTHAR 50mm/F2では、銀塩時代の小口径MF標準レンズ (新品1万円台、中古数千円位)と、同等の 地味なスペックなのに、その10倍以上もする 高額レンズなのである。 しかし、マニア層の心理的には「これは安いなあ」 と既に思い込んでしまっているから、購入に対し ブレーキを踏む理由はあまり無い(汗) かくして、マニアであればあるほどに、コシナ社 の絶妙な製品戦略に、見事なまでに乗せられて しまう訳だ。でも、買った当の本人としては、 「憧れの、高性能(または特殊仕様)レンズと 同等のものを、安価に買う事ができた!」と 満足してしまう訳であり、もう「絶妙な企画」と しか言いようが無い(笑) まあ良い、その事を知っても知らずとも、あまり 関係が無い話だ、肝心なのは本NOKTON 60/0.95 の性能(描写表現力)である。 このレンズの描写力は高い。7年前の初期NOKTON が開放近くで収差まみれのボケボケの描写力で あった状態とは、全くの別物である。 撮影中には、「あれ、間違って(高性能の) APO-LANTHARを持って来てしまったのか?」と 再確認する事も何度かあった。しかし勿論、 APO-LANTHAR(65mm/F2等)とは、マウントも 異なるし、サイズ感もまるで違う(本レンズは かなり大きなレンズである)ので間違いようが無い。 ポイントは、初期NOKTONより遥かに優れた描写力 である事だ。それはまあ、7年の間に、コシナ社 でのコンピューター光学設計ノウハウは進み、 異常部分分散ガラスレンズを2枚採用した、設計・ 製造技術の進化もある。 でも、であれば、本レンズの【描写表現力】の 評価点を5点満点とつけたことで、初期NOKTON の点数はどうするか? それも5点満点(注; 描写力はそこそこでも、表現力が高いから) であったのだが、それは減点修正するべきか? だが、そういう事をしていたら、所有する多数の レンズ群の全てを、現代の技術水準に照らし合わせ それらの多くの得点を修正する羽目になる(汗) さすがに、それはやっていられないので、もう 旧レンズの評価点は、そのままにしておこう。 特に課題となっているのは、私が「2016年断層」 と呼んでいる状態があり、各社において、この 2016年頃から以降に新規に発売されたレンズ群 で、高性能(高描写表現力)を主眼としたものは 旧来の時代のレンズから、相当に改善されている 状態がある。その理由は、コンピュター光学設計 と特殊硝材(非球面や異常低分散等)の多用に あるのは間違いが無いが、もう昔の時代のレンズ とは別次元の描写力となってしまっている訳だ。 でも、課題は、「比較や評価がしにくい」という 点だけであるから、レンズそのものの問題では なく、単に私の評価システム上での課題だけだ。 総括だが、本NOKTON 60/0.95は、高描写力を 兼ね備えた超大口径レンズであり、いかにも 近代的設計である事の恩恵を感じる。 課題は、価格の高さである。中古品は無い事は 無いのだが、非常に稀であり、かつ、そこそこ 高価な相場でもあるので、新品購入とあまり 変わらない。(私は、中古品は出ない、と見て 新品購入していた) 又、コロナ禍以降に発売されたレンズ、という 点も、中古買いでの課題に繋がる。 コロナ禍で、中古市場も打撃を受けている為、 旧来のように、古いカメラやレンズは値段を十分 下げて販売する、という措置は取られにくくなり、 人気のある機材や、希少機材、あるいはマニア層 等の特定の層が欲しがる機材は、「高くても 買う人は居る」という観点から、中古相場が 殆ど下がらなくなってしまったのだ。 (または、希少機材等は店頭販売ではなく、ネット オークションに出し、マニア層や投機層が高値で 買ってくれる状況を目論む。それを繰り返すと、 必然的に相場が上がり、「バブル状態」となる) また、コロナ禍や政情不安等の理由で、海外等での 電子部品の生産量の減退により、電子・機械系の 新製品の製造が遅延するケースが多く見られる。 各種市場分野で、新品を購入予約しても数ヶ月待ち、 という状況も良くある(あった、現在は解消気味) そんな際、「新品ではなく同じ製品の中古を買うよ」 という、せっかちな(又は、実用上/業務上で急いで 買う必要がある)ユーザーも居るのだが、その為に 中古価格が、新品とほぼ同等、又は稀に新品価格 よりも中古価格の方が高価な商品ですら存在する。 これらから、近年においては、中古品でも、新品 価格とそう変わらないものは多いし、あるいは 場合によっては生産完了品等では、発売時価格よりも 遥かにプレミアム化(→高騰している)ケースもある。 (→カメラ以外の他の市場分野の例としては、希少な 昔の乗用車やバイク等も同様だ。考えられない程の 高額となっているケースも多く、驚いてしまう。 まあ、勿論「投機的措置」なのだろうが・・ しかし、なんだか、いずれも新製品自体に魅力が少ない 市場分野に思える。例えば、個人的には「クルマ」には 殆ど興味が無いが、スポーツカーを見かけなくなったし、 また、新型車のデザインを見ていても、「格好良い」と 感じるデザインのものは殆ど存在しない。 むしろ「何故、最近のクルマは、皆、こんなデザインと なってしまった?」と疑問に思ってしまう。 特に「フロント廻り」が、違和感が大きいデザインだ) 本NOKTON60/0.95は、新品でも中古でも買い難い 状態であるし、しかも、そこそこ高価なので、 入手性がかなり悪い。まあ、確かに高評価点の レンズではあるが、その入手性の悪さからなる コスパの低さをどう解釈・判断するか? そこはもう消費者次第であろう、まあでも 基本的には上級マニア層向けのレンズだと思う。 --- では、今回の記事はこのあたりまでで、 このシリーズについては不定期掲載としておく。
by pchansblog2
| 2023-03-29 19:04
| 完了:続・特殊レンズマニアックス
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