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さて、新シリーズの開始である。 本シリーズでは、所有している古いデジタルカメラ (一眼レフ、ミラーレス機)で、まず、個人評価得点 が高い機種を、名機または準名機と定義する。 次いで、時代毎に(概ね数年程度の差異まで)、 その名機等を、最低2機種~最大4機種程度選出する。 そして、それらの機体同士を比較したり、その時代の 他社機に対しての優位点、また当時の世情を含めての 説明、および、その特徴的機能のカメラ界での発展史、 さらには、そういう機体が何故必要とされたか?の、 出自全般等についての比較を行っていく。 すなわち「対戦(対決)」という要素は少ない。 世に良くある比較記事等では、対象機の数値スペック だけを比較して優劣を語る傾向が殆どであるが・・ (例:毎秒8コマ連写より毎秒10コマが優れている、等) そういう単純比較は個人的には好まない。カメラには 多面的な用途があり、勿論、レンズや被写体の選択でも、 そのカメラに要求される性能は変わってくるからだ。 そして、そんな「スペック比較」などの単純な記事は その機体を所有していなくとも簡単に書けてしまう。 そんな無意味な情報を参照する気には全くならないし 少なくとも本/旧ブログでは、「自身で所有していない 機材については、評価してはならない」というルールを 厳守している。 本シリーズ記事でのカメラの機種数は、2000年代~ 2010年代のデジタル機、およそ30機種を選出してある。 (注:中には「名機」とは呼び難いものも多々ある) トータルで10数回の対決シリーズ記事となる予定だ。 今回はシリーズ第1回目として、2000年代の後半に、 CANONおよびNIKONから発売された、実用的な高速 連写一眼レフである、CANON EOS 7D(2009年)と、 NIKON D300(2007年)の対決/説明記事としよう。 ではまずは、CANON機からだ。 カメラは、CANON EOS 7D (APS-C機) (2009年発売、発売時実勢価格約19万円) (中古購入価格 39,000円) 紹介記事:デジタル一眼レフ・クラッシックス第10回 レンズは、SIGMA 50mm/F1.4 DG HSM | ART (2014年発売)を使用する。 まず、このように、カメラの型番、発売年、 発売時実勢価格(税別)、中古購入価格(税込) 過去紹介記事(旧ブログ)等を順次記載していく。 使用レンズは、対決するカメラ同士、できるだけ 類似のスペックや類似の特性とするようにしよう。 レンズの型番表記は、例によって暫定表記法だ。 (注:各社で仕様の表記法が、まちまちな為) そして、対戦するNIKON機も、ここで紹介しておく。 カメラは、NIKON D300 (APS-C機) (2007年発売、発売時実勢価格約23万円) (中古購入価格 26,000円) 紹介記事:デジタル一眼レフ・クラッシックス第9回 レンズは、NIKON AF-S NIKKOR 58mm/F1.4 G (2013年発売)を使用する。 なお、CANONのAPS-C機でのフルサイズ換算の 焦点距離倍率は1.6倍、つまり50mmレンズの場合は 50x1.6=80mm相当となる。 (下写真は、EOS 7D + ART50/1.4) 対してNINONのAPS-C機(DX機)でのフルサイズ換算の 焦点距離倍率は1.5倍、つまり58mmレンズの場合は 58x1.5=87mm相当となる。 (下写真は、D300 + AF-S58/1.4) したがって、両者のレンズ装着時の焦点距離(画角) と開放F値のスペックは、ほぼ同等になるのだが・・ だからと言って、スペックが類似という理由だけ で、両レンズが同様な目的(被写体)に使えたり、 あるいは、同等な写りとなる訳では無い。 基本的に、SIGMA ART LINEは「解像力重視型」、 NIKON 三次元的ハイファイは、「ボケ質(遷移) 重視型」だから、両者の特性は全く異なる。 (下は、EOS 7D + ART50/1.4) レンズの特性が異なれば、狙うべき被写体や、 その表現手法まで変わってくる。 だから、「同じ被写体を両者で撮り比べをする」 等の、世間でよくある評価方法は、あまり(殆ど) 意味が無い。 (下は、D300 + AF-S58/1.4) さて、ここで当時2007年~2009年における、 CANON/NIKONのデジタル一眼レフのラインナップに おける、両機の立ち位置を示しておこう。 *CANON デジタル一眼レフ 2007年~2009年 旗艦機:EOS-1Ds MarkⅢ(フルサイズ機) :EOS-1D MarkⅢ/MarkⅣ(APS-H機) 高級機:EOS 5D MarkⅡ(フルサイズ機) 上級機:EOS 7D (APS-C機、←今回紹介機) 中級機:EOS 40D/50D (APS-C機) 初級機:なし 普及機:EOS Kiss X2/F/X3 *NIKON デジタル一眼レフ 2007年~2009年 旗艦機:D3/D3x/D3s(フルサイズ機) 高級機:D700(フルサイズ機) 上級機:D300/D300s (APS-C機、←今回紹介機) 中級機:D90 初級機:D5000 普及機:D40x/D60/D3000 両機とも、実用レベルとして最もコスパの良い ラインナップ上での立ち位置(→上級機)だ。 なお、本/旧ブログでの高級機と上級機との区分に おいては、高級機は高付加価値型、つまり高価な 趣味的機体であり、上級機は実用的な定価20万円 前後の高コスパ機という分類だ。 (注:当時の状況。現代ではカメラが全く売れて いない為、新製品の多くが高付加価値型となった。 →つまり、実用的とは言えない性能や仕様を付加 され、不条理な迄に大きく値上げされてしまった) 現代における両機の使用上の注意点としては、 まず、記録メディアがCF(コンパクトフラッシュ) となっている事だ。 2000年代当時は、SDカードよりもCFの方が、 高速に読み書きが出来た為、連写性能を重視した 高性能機では、CFカードが使われる事が多かった。 (注:2010年代でも、いくつかの機種はCFだ) 現代、CFは少々入手性が低いので、その点のみ 要注意であろう。 ---- では、以下は適宜、両システムで撮影した写真を 挟みながら、説明を続けていく事にしよう。 さて、CANON EOS 7Dは、明らかな「高速連写機」 であるが、NIKON D300を「高速連写機」と呼ぶ のは微妙である。 <連写速度>(最大) *CANON EOS 7D 毎秒8コマ:本体のみで可能 *NIKON D300 毎秒8コマ:パワーバッテリーパック使用時 毎秒6コマ:本体のみ(通常形態時) <最大連続撮影コマ数>(バースト枚数) 注:こちらは、カメラ設定や使用カード等で 大きく変わる性能だ。公称値(カタログスペック) や、カメラ上での撮影可能枚数(r46等)の表示 があるが、そのままの数字通りには、まずならない。 以下は、私のカメラ設定(基本、中画素JPEG)での、 実測による典型例(Typical値)を挙げておく。 *CANON EOS 7D 公称値 約100枚以上 実測500枚以上 *NIKON D300 (ISO感度を800未満で使った場合) 公称値 約46枚 実測約170枚 (ISO感度を800以上で使った場合) 公称値 約12枚 実測約 40枚 個人的な経験値では、スポーツ等の動体被写体撮影に おいては、7~8秒間程度の高速連写が出来れば良い。 EOS 7Dは、殆どの実用条件において、秒8コマで 8秒間、計64枚(以上)の撮影を可能とするので、 及第点だ。 ただし、途中で何度かモタる(連写が遅くなる) ケースも存在する。 D300の場合は、ISO感度を800以上に高めると バースト枚数が極端に低下する事が大きな課題だ。 弱暗所であったり、シャッター速度保持の為に ISO感度を高めると、連写が厳しくなってしまう。 また、こちらも同様に何度かモタる事がある。 それと、EOS 7Dに比べ、やや連写速度が低いが、 これは大きな問題になる差異では無いだろう。 なお、この時代の高速連写機では、AE追従は無い。 つまり、連写の間に、被写体の太陽光等に対する 位置や光源状況が変化してしまうと、露出が、 オーバーとなったりアンダーとなってしまう。 また、コンティニュアスAFモードでのAF追従は、 一応行われているが、超音波モーター(等)非搭載の レンズも多かった時代であるので、そうしたレンズ を使用し、かつ、「フォーカス優先」つまり、 ”ピントが合わないとシャッターが切れない設定” にしていた場合は、AFの合焦速度の遅さが、連写の 速度を妨げてしまう要因となる。 これら、AE/AFの精度およびバースト枚数不足の課題 の回避には「間欠連写技法」(又は、旧ブログでは 「クラスター連写」とも呼んだ)の使用が望ましい。 つまり、連写と言っても、ずっとシャッターボタンを 押しっぱなしにするのではなく、1秒~数秒程度の 連写の後、いったんシャッターボタンから指を浮かし、 再度、半押し操作で、AE(露出)とAF(ピント)を 合わせなおし、そこからまた連写を再開する。 これを繰り返し、10枚前後に分割した連写を行う訳だ。 この技法により、大きく露出が狂ったり大きくピントが 外れたりするケースは激減するし、加えて、僅かだが、 バースト枚数(連続撮影可能枚数)も向上する。 つまり、連写の合間、撮影を休んでいる僅かな時間に、 カメラ内部のバッファメモリーから、CFカード等の メモリー・メディアへの書き込みも少し進むからである。 (注:これを「クラスター連写技法」と呼んでいたが コロナ禍以降、「クラスターとは集団感染の事だ」 という”狭い定義”が世間一般に広まってしまった為、 近年は、あまりそうは呼ばず「間欠連写」としている。 --- なお、そういう風に、特定の専門分野で新たに生まれた 用語を、それだけを取り上げて、さぞ「わかったような」 気なってしまう世間の風潮は、個人的には全く好まない。 「クラスター」は、様々な学術/技術分野等でも一般的に 良く使われる用語だ。(例:クラスター分析(統計、AI)、 クラスターロケット(航空、宇宙)、クラスター爆弾(軍事) クラスター和音/トーン・クラスター(音楽、音響、電子楽器) つまり「クラスター」はコロナ禍だけの専門用語では無い) ただし、D300における高感度時のバースト枚数の 低下は、撮影技法では回避の手段がない。 こうした、利用者が、どうにも対処のしようが無い カメラ側が持つ課題を、本/旧ブログでは「重欠点」と 呼ぶ場合がある。 まあ、確かにこれは重欠点ではあるのだが、その事が わかっているならば、「日中快晴時しか使わない」や 「何が何でもISO800を超えた高速連写はしない」 等の消極的な回避策は一応ある。 また、D300には、ISO AUTO(自動感度調整)時 での「低速限界設定」機能が存在する。 例えば、望遠レンズを使用時には、これを1/400秒 等に設定しておけば、(日中の撮影等では)それ以下 のシャッター速度になる事は、まずありえず、 「手ブレ補正」機能の十分な代替となる。 (つまり、手ブレ補正内蔵レンズの必要性が減る) ただし、その事が前述の「ISO感度の勝手な増加と 連写の低性能化」にも繋がるので、十分に原理を 理解した上で使うのが良いであろう。 でも、この機能は先進的であり、他社機ではこれの 搭載が、ここから約10年も遅れたケースもある。 (参考:CANON機の場合には、EOS 6D(2012年) 頃よりの搭載。次世代高速連写機EOS 7D MarKⅡ (2014年)にも、勿論、この機能は入っている。 だが、多くのミラーレス機では、この低速限界設定 機能の搭載は2010年代後半以降と、かなり遅い。 --- 技術的には難しくない話なのだが、この機能の有用性 を、メーカーもユーザーも理解していなかった事が 原因なのかも知れない。あるいは、まさかとは思うが わざと手ブレを誘発させ「ほら、だから手ブレ補正機能 が必要なのですよ」と、その搭載カメラを高価に売る為 の巧妙な戦略だったとしたら、とても不条理な話だ。 だが、SONY等のミラーレス機では、手ブレ補正機能の搭載 迄、低速限界設定機能を搭載しておらず、少々怪しい・汗) --- さて、ここからは「高速連写機の歴史」を、少し 述べておく。 まず、銀塩時代での高速連写は、スポーツ競技撮影、 学術系(実験や研究等)、報道系、稀に人物写真 等でのニーズ(必要性)があった。 いずれも、ほぼ業務用途であり、一般ユーザーでの 趣味的な撮影においては、高速連写機能は、まず不要で あった事であろう。デジタルならばともかく、フィルム では連写時の撮影コスト(費用)も馬鹿にならない。 銀塩機での高速連写とは、例えば「毎秒5コマ以上」 程度が1つの基準となると思う。 CANON等では、1960年代に「ペリクルミラー」という 技術を開発した。これは半透明のフィルム状の素材を 一眼レフのミラーに貼り付ける事で、いわゆる ハーフミラー化し、レンズからの光を、フィルム面と ファインダー(等)に振り分ける仕組みである。 (参考:2010年からのSONY α Aマウント機に 搭載された「トランスルーセント・ミラー」と、 ほぼ類似の技術である) この「ペリクルミラー」によるメリットは、普通の 一眼レフでは(クイック・リターン)ミラーが上下 動をする為、その駆動速度の限界が高速連写の実現を 妨げる訳だが、ペリクルミラーでは、ミラーを固定で 置ける為、動作させる必要が無くなる。 つまり、高速連写機能が可能となったり、あるいは 「レリーズ・タイムラグ」(=シャッターボタンを 押してから、実際にシャッターが切れるまでの時間。 これは、少し(数十ミリ秒)だけ遅れる事となる)を 極端に短く(数ミリ秒)する事が可能となる。 CANONにおけるペリクルミラー搭載銀塩機は、一般用途 (つまり業務用途機では無い)では数機種が存在する。 (例:EOS RT、1989年、銀塩一眼第16回記事参照) 又、業務用途機(つまり高速連写機能搭載)としては、 1972年の特殊MF機、通称「F-1高速モータードライブ カメラ」(参考:F-1、1971年、銀塩一眼第1回記事) や、同様に1984年の特殊MF機、通称「ニューF-1 ハイスピードモータードライブカメラ」 (参考:New F-1、1981年、銀塩一眼第9回記事) が、存在していた模様だが、いずれも業務用途専用の 特殊仕様機であり、一般的に入手できるものでは無い。 なお、これら特殊MF機の高速連写性能は、毎秒9コマ ~毎秒14コマである。 1980年代後半より、銀塩AF一眼レフの時代に入ると、 旗艦機EOS-1系列において、パワードライブブースター を装着する事で、高速連写を可能とするシステム仕様 となっていた。(注:ペリクルミラー搭載では無い) その初代機は、1989年、CANON EOS-1 HSである。 (参照:EOS-1 HS、銀塩一眼第14回記事、下写真) ただ、この機体の連写性能は、毎秒5.5コマと、 新旧F-1系特殊機のような超絶性能は持たせていない。 (注:あまりに速い連写性能は、フィルム撮影コマ数 の制約で、あっと言う間に終わってしまうからだろう) 以降の銀塩機は、EOS-1N HS(1994年、未所有)や、 EOS-1N RS(1995年、未所有。注:この機体のみ EOS-1系列で唯一、ペリクルミラーを搭載していた) EOS-1V(2000年、未所有。ブースター無しでも 毎秒9枚の連写性能がある)と高速連写機が続くが、 いずれも旗艦機であり、EOS下位機種に高速連写 性能を持たせた実例は殆ど無い。(参考:前述の ペリクルミラー機EOS RTでは毎秒5コマである) 又、EOS-3(1998年、未所有)では、ブースター 装着時において毎秒7コマの性能があった。 ちなみに、EOS-1/EOS-3系列の高級機のみ、 型番にハイフンが入るのが正解だが、何故かCANON 公式Webでは、EOS 3と誤った名称となっている。 (注:ミラーレス機の場合は「EOS R3」が正式名) なお、デジタル時代に入ってからのCANON製 デジタル一眼レフ(ミラーレス機を除く)の 高速連写機(旗艦機級)は、以下の通りだ。 (注:殆ど未所有につき、スペックのみ記載) 2001年~2009年:EOS-1D/Ⅱ/ⅡN/Ⅲ/Ⅳ 毎秒8コマ~毎秒10コマ (注:この時代のフルサイズ旗艦機CANON EOS-1Ds/ Ⅱ/Ⅲは、高速連写性能(秒8コマ以上)を持たない。 理由の1つは、フルサイズ機の大型のミラーを高速駆動 させるのが困難である技術的な制約、もう1つの理由は フルサイズ機とAPS-H/C機との「仕様的差別化」で、 あわよくば両機を同時に買ってもらいたいからだろう) 2012年~2020年:EOS-1D X/Ⅱ/Ⅲ 毎秒14コマ~毎秒16コマ (注:EOS-1D X以降のフルサイズ旗艦機には 高速連写性能を持たせている。技術が進歩したのと 営業的に両者を差別化する必要性が減ったからだろう。 →つまり高価な旗艦機を2台もは買ってくれない。 しかし、フルサイズ高級機EOS 5D系列および フルサイズ中級機EOS 6D系列は高速連写性能を 持たない→重量増を嫌う事と、仕様的差別化の措置) 2009年:EOS 7D 毎秒8コマ。今回紹介機 2014年:EOS 7D MarkⅡ 毎秒10コマ (参照:デジタル一眼第19回記事) 2020年:EOS 90D 毎秒10コマ(以下、未所有) 2022年:EOS R7 毎秒15コマ(APS-C型ミラーレス機) (注:2020年代以降の機種では、連写速度は速いが バースト枚数が少なくなっている事は要注意だ) (下写真は、EOS 7D + SIGMA A50/1.4による撮影) さて、NIKONの高速連写機の歴史はどうか? まず銀塩MF時代、NIKON一眼レフは報道用途でも良く 使われた為、(CANONと同様に)特殊用途としての 高速連写機が色々存在していた。(いずれも未所有) NIKON Fの時代(1960年代頃)から既に、特殊仕様 機が存在した模様だが、あまり詳しい情報が無い。 以降は、MF旗艦機に対して高速連写仕様版が存在する。 1978年:通称「NIKON F2H」毎秒10コマ 正式名「 ニコンF2高速モータードライブカメラ」 (参考:NIKON F2A、1977年、銀塩一眼第2回記事) 1996年:通称「NIKON F3H」毎秒13コマ(MF機) (参考:NIKON F3/T、1982年、銀塩一眼第8回記事) これらは、ごく稀に(報道系のお下がり等として) 中古市場に流通する事もあるが、いずれも「珍品」 として、極めて高価な相場な事が普通だった。 また、これらはペリクルミラー搭載機では無い。 1980年代後半から、AF一眼レフ時代に入ると、 NIKONも(CANONと同様に)Fヒトケタの旗艦機に、 高速連写性能を持たせる事となる。 1988年:NIKON F4 毎秒4コマ (参考:NIKON F4、銀塩一眼第15回記事) この機体そのものでは高い連写性能は持たないが、 バッテリーパック(MB-21/MB-23)を装着する事で、 毎秒5.7コマ(枚)の連写性能が得られる。 (それらの装着モデルを、F4S/F4Eと呼ぶ) 1996年:NIKON F5 毎秒8コマ (参考:NIKON F5、銀塩一眼第19回記事、上写真) この機体が、初めて一般層でも入手が可能となった NIKON製の(銀塩)高速連写機であろう。 ただ、高速連写を実現する為、この機体は、ボディ のみ公称1210gと重く、さらに単三電池8本を 要するため、銀塩時代の一眼レフでは、ワーストの 重量ランキングに十分に入ってしまう。 で、実際に私もこの機体を良く使ったが、36枚撮りの フィルムが約4.5秒で無くなってしまい、「NIKON機 でのフィルム巻き戻し操作は繁雑である」という弱点を 持つ為、「写真を撮っている時間よりも、フィルムを 交換している時間の方が長い」という大矛盾を抱える。 もし可能であれば「織田信長の三段鉄砲」のように、 アシスタント等に、フィルムを交換したNIKON F5を 次々に渡してもらわないと、長時間の連写は不可能だ。 まあ、アシスタントも居なく、複数台のF5も無ければ、 せっかくの高速連写性能も意味を持たない。 F5に限らず、銀塩機での高速連写は、特殊な業務用途 以外では、基本的に無理がある状態だ。 2000年代初頭のある時、「耐久性が高い」と評判 が良かった、このNIKON F5のシャッターが、業務撮影 中に故障してしまい、以降の撮影の継続が不能となった。 基本的にカメラに無理をさせる用法はしていないので、 あくまで偶然での故障だとは思われるが、私は 「何が15万回の耐久性だ!」と悪態をつき、高額な 修理費を払って直したのだが、これで「ケチがついた」 状態となり、私はF5を見限って、デジタルの高速 連写機NIKON D2Hを買い増しする事とした。 なお、NIKONの銀塩旗艦機(Fヒトケタ)以外では、 さほどの高速連写性能を持たせた機体は存在しない。 (例:1998年、NIKON F100は毎秒5コマ。未所有) そして、CANON、NIKON以外での他社での銀塩機での 高速連写機は殆ど存在しない。 例えば、PENTAX Z-1(旗艦機)は毎秒3.3コマ、 (参考:PENTAX Z-1、1991年、銀塩一眼第17回記事) また、MINOLTA α-9で、ようやく毎秒5.5コマだ。 (参考:MINOLTA α-9、1998年、銀塩一眼第23回記事) なお、ゴルフ・スィング撮影用特殊コンパクト機 「FUJIFILM 連写カルディア ビューン16」 (1995年、現在未所有)では、フィルム2コマに跨り 各8枚の縮小画像が記録され、これは毎秒10コマであった。 (注:ただし、最大16コマまでしか連写できない) さて、2000年前後に一眼レフもデジタル時代に入る。 以降はNIKONのデジタル一眼レフ高速連写機の話だ。 (NIKONデジタル一眼レフにおいては、2000年代 までは毎秒5コマ以上、2010年代からは毎秒8コマ 以上の機種を取り上げよう) 2001年:NIKON D1H 毎秒5コマ(未所有) 2003年:NIKON D2H 毎秒8コマ (参考:NIKON D2H、デジタル一眼第1回記事、下写真) 2005年:NIKON D2X 毎秒8コマ(注:クロップ時) 2005年:NIKON D200 毎秒5コマ(未所有) 2005年:NIKON D2Hs 毎秒8コマ(未所有) 2006年:NIKON D2Xs 毎秒8コマ(注:クロップ時) (注:D2HsやD2Xsの「s」は、恐らくはSecond という意味で、小改良機を表す。 他にもD70s、D300s、D3s、D4s等が存在する。 このsは、本来小文字で書くのが正しいと思われる。 (カメラ上では、小さいフォントで書かれている) だが、NIKONの旧製品のWeb上では「S]を大文字で 記載するケースがあり、どちらが正解か不明だ。 まあ、NIKON Web以外の多くの資料や流通市場等 では、小文字のsを良く使っていると思われる) 2007年:D3 毎秒9コマ(注:クロップ時秒11コマ) (注:以降の時代のDヒト桁の旗艦機、D3X、D3s D4、D4s、D5、D6は、いずれも高速連写性能を 持つので以降の紹介は省略する。いずれも未所有) 2007年:D300 毎秒6コマ(以上)今回紹介機。 (下写真は、D300 + AF-S58/1.4での撮影) さて、以降の時代の機種は、簡単に述べておこう。 なお、NIKON機では、バッテリーパックを装着 する事で、連写性能が向上するシステムと なっているのは、銀塩機NIKON F4(1988年) 以降の伝統だが、バッテリーパック装着時に 高速連写機となる機体は高級機のみである。 (=「仕様的差別化」があるからだ) 2008年:D300s 毎秒7コマ(以上)(未所有) 2016年:D500 毎秒10コマ (参考:NIKON D500、デジタル一眼第20回記事) 2017年:D850 毎秒7コマ(以上)(未所有) 2017年:D7500 毎秒8コマ(未所有) 2020年:D780 毎秒7コマ(以上)(未所有) 低価格機が存在しないのは、ここも仕様的差別化 により、高級(高価格)機にしか、高速連写性能を 搭載しないからである。 ただ、2017年のNIKON D7500(中級機)に 高速連写性能を持たせているのは、2010年代での カメラ市場の大幅縮退により、いよいよ一眼レフが 全く売れなくなった為、あまりそうした仕様的差別化 を掛けても逆効果となったからだろう。 (注1:CANON EOS 90D(2020年、中級機)も、 同様の理由で、高速連写性能を持たせている) (注2:2016年以降は、NIKON D3000/D5000 シリーズの低価格機は廃止されてしまった。 カメラが売れないから、安いカメラを売っていては 事業の継続が難しいからであろう) (注3:低価格帯機での高速連写機能は、バースト 枚数に、大きな制限が掛かっているケースがある) なお、【非常に重要な注意点】であるが、NIKON製 の高速連写機は、いずれも「シャッター音が極めて うるさく」この為、静かでなくてはならない状況 (例:舞台、会見、冠婚葬祭、クラッシック音楽、 ゴルフ等のスポーツ、トークショー、その他色々) では絶対に使ってはならない。演者や周囲や観客に 迷惑がかかる事は必至だからだ。 こういうのは常識であり、マナーでもあるのだが、 残念ながら、そういう事もわからずに、自身の 撮影「だけ」を優先しようとする「輩」が多すぎる。 デジタル時代での他社一眼レフだが、SONYの トランスルーセント・ミラー搭載のα二桁一眼レフ (2010年~2016年)は、いずれも高速連写機だ。 (例:SONY α77Ⅱ、2014年、デジタル一眼第18回) PENTAXには高速連写機(毎秒8コマ以上)は無い が、APS-C型機の中級機でも毎秒7コマ程度の 連写性能を備えている機種は多く、実用的だ。 (例:PENTAX KP、2017年、デジタル一眼第22回) (追記:2021年発売のPENTAX K-3 MarkⅢが 最大毎秒12コマを実現している) なお、SONYやPENTAX機の連写機能は、いずれも バースト枚数が少ない(数十枚程度)弱点がある為、 前述の「8秒間程度の高速連写が必要なケース」では あまり実用的では無い。 また、2010年前後からのミラーレス機は、 その名の通り、ミラー駆動が無いから、高速 連写機能を持たせ易く、APS-C型機以下では 毎秒15コマ程度の高速連写性能を持つ機体もある。 (参考:OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ(等) ミラーレス第23回記事) なお、電子(撮像素子)シャッター使用時に、 さらなる高速連写性能(毎秒60コマ等)を 得られるミラーレス機はいくつかあるが、 電子シャッターは、使用する際の制約が色々と ある為、個人的には実用的とは見なしていない。 加えて、近代の高速連写型ミラーレス機でも同様に バースト枚数が極端に少ないものも多く、連写速度 が上がっている事とあいまって、1秒間程度しか 高速連写が出来ない機種も多いので要注意だ。 また、そういう実用的では無いカタログスペックを 謳って、カメラの事が良くわかっていないだろう ビギナー層等に、それらの高額機種を売ろうとする メーカーや市場のスタンスにも賛同していない。 ミラーレス機の連写性能は、あくまで機械(メカ) シャッターのスペックだけをチェックする事が 基本であろう。(とは言え、機械シャッターを持たず 電子シャッターのみの機体も、増えてきそうな傾向も ある為、私の用途/要望とは、かけ離れていく一方だ) そして、毎秒10コマを超えるまでの高速連写性能 も、殆ど実用的な意味は無い。 (下写真は、CANON EOS 7DとTAMRON 200-400/5.6 (Model 75D)で、ボート競技を撮影した例) さて、ここまでに挙げた機体のみが「高速連写機」 であるが、まあ、銀塩時代の機体での高速連写は、 撮影コスト面で、業務用途以外では実用的とは 言い難いので、デジタル機の選択に限られるだろう。 また、フルサイズ機は、2010年代後半に至る迄 の機体では、概ね連写性能が低いし、あるいは、 高速連写性能が必要となるスポーツや野鳥等の 遠距離撮影では、フルサイズ機よりもAPS-C型 (以下)機の方が換算画角面で有利となるケースが 大半である。 それと、フルサイズ機の旗艦機は高価すぎる為、 一般層では減価償却ルールの完遂、すなわち その機体の実用寿命の期間(概ね、発売後10年) 内に「1枚3円の法則」をクリアする事が困難だ。 つまり「業務撮影以外では、カメラを買った価格 の元を撮るまでは使い切れない」という事となる。 そう考えると、APS-C機(一眼レフ)での、 「実用的な高速連写機」というものは、ごく 限られた数しか存在していない事がわかると思う。 具体的には、ほぼ、以下の通りだ。 2007年:NIKON D300/NIKON D300s(2009年) 2009年:CANON EOS 7D 2012年:SONY α65、α77 2014年:CANON EOS 7D MarkⅡ 2014年:SONY α77Ⅱ 2016年:NIKON D500 2017年:NIKON D7500(未所有) 2017年:PENTAX KP (注:毎秒7コマ) 2020年:CANON EOS 90D(未所有) 2021年:PENTAX K-3 MarkⅢ(未所有) 新鋭機を除き、大半の機種は所有していて、 それぞれ「デジタル一眼レフ・クラッシックス」 記事で詳細を紹介済みである。 (注1:α77は研究用として家にあるが、自身の 所有機では無い為、本/旧ブログでは未紹介だ) (注2:2017年以降の新鋭一眼レフの多くは、 バースト枚数が少なく、用途によっては実用的では無い。 大量の高速連写が出来る機種は、上記の中でも、 CANON EOS 7D MarkⅡとNIKON D500のみだ) また、前述の通り、ミラーレス機においては、 特に、2014年以降のAPS-C型以下機であれば、 その多くが高速連写機である。 ただし、高速連写性能は、AF性能と対となる 場合が多く、AF性能が低いミラーレス機 (例:コントラストAFのみの機体、あるいは、 像面位相差等のAF機でも非対応レンズの場合等) では、あまりそれを使う意味がない。 また、高速連写型のミラーレス機でも同様に、 バースト枚数が少ないケースが大半だ。 まあ、やや「時代遅れ」気味であるが、やはり 一眼レフの方が「高速連写機」らしさがあり 実用性能的なメリットも大きい。さらに言えば、 やや古い時代のAPS-C型一眼レフの中古は、 恐ろしく安価な相場となっている場合が多い。 ・・なので、どれかの「高速連写一眼レフ」を 所有しておくのは悪く無いと思う。 (下写真は、NIKON D300とTAMRON SP200-500 /5-6.3 (Model A08)でボート競技を撮影した例) 以下余談だが、知人のビギナーのおばちゃんが 近代のNIKON製の一眼レフを使用しているのだが、 先年、不注意で落下させて壊してしまった模様だ。 買い換えるか修理に出すか?を迷って相談を受けた ので、NIKON D300を、安価な代替機として推奨 したのだが、この機体の「CFカード」を見るなり、 「このカードは見た事が無い、どこに売っているのか? 自分のパソコンには挿せないが、どう使うのか?」 という話となり、結局D300の代替案はボツになり 故障機を修理に出した、という顛末だ。 本来、CFカードの方がSD系カードよりも高速に 読み書きが出来るので、旧来は高速連写機には CFカード採用が常識であったのだが、SDカードも 種類や規格が増え、性能も上がり、またカメラ内部の バッファメモリーも増えて来ているので、2010年代 頃からは、SDカードを用いた高速連写機も多い。 ・・でも、使用メディア(カード)の種類って、 そんなに、機種選定にまで影響を及ぼす事なので あろうか? まあ、そのビギナーのおばちゃんに とっては重要な事だったのかも知れないが・・(?) (下写真は、NIKON D300 + TAMRON Model A08) 最後に、本シリーズ記事は、「対決」の主旨も あるので、両機の個人評価点を上げておく。 この個人評価点は、「基本性能」「描写表現力」 「操作系」「マニアック度」「エンジョイ度」 「コスパ」「完成度」「歴史的価値」の8項目を 各々5点満点で評価したものの平均点である。 総合点3点が標準、3.5点あれば準名機、 4点近くにもなれば名機と言えるであろう。 *CANON EOS 7D (2009年) 個人評価総合点:3.13点(やや良い) *NIKON D300(2007年) 個人評価総合点:2.81点(やや悪い) これは「高速連写機」という視点での評価では 無いので、両機とも、あまり点数は伸びていない。 僅かな得点差があるが、実用上の大差にはならず、 あくまで、どのような撮影シーン/撮影目的で、 どのようなレンズを付けて/どう撮るか、が、 実用上での差異となってくるであろう。 NIKON D300の場合、「ISO感度を高める事での バースト枚数低下」の課題と、「シャッター音の うるささ」の問題があるので、EOS 7Dと比較して、 若干の汎用性の無さ(使えるシーンが限られる)が、 高速連写機としての、最も重要な差だと思う。 なお、AFの性能(測距点数や、速度・精度等)の 比較は、ある意味、どうでも良い話だ。 それらは使うレンズや被写体の特性、撮影者の技能 等で、実用性は、いくらでも変わってきてしまう。 そして、両機とも2020年代では、1万円台の 格安中古相場となっている。実用/消耗用途としての 「使い潰し型」機体としては非常に有益かも知れない。 (追記:あまりに相場が下落した為、中古店等では もうこれらの機体を販売しなくなった。中古市場も 縮退が激しいので、安価な高性能機は売りたく無く、 できるだけ高価な機体を買って貰いたいからであろう) ---- では、今回の「デジタル名機対決クラッシックス(1) 2000年代高速連写一眼レフ編」編は、これで終了。 次回は、ミラーレス機の対決記事となる予定だ。
by pchansblog2
| 2022-08-18 07:32
| 完了:デジタル名機対決
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