徒然なるままにその日暮らし

夢と現実の間をうろうろしながら
 

えどさがし

大量の積ん読本を尻目に、今日買ってきたしゃばけシリーズの外伝を、さっさと読んでしまった。

だって外伝なんだもん。

感想を一言で言うと、「焼き芋食べたい」(新潮社の担当者にすら全然伝わらない感想(;・∀・))
仁吉さんの過去は、本編で触れられたことがあったけど、佐助さんの過去は、今まで全然出てこなかったもんね。

1本目がいきなりそれで、ちょっとびっくり。
びっくりっていうかなあ。
なんて言ったらいいんだろ。
最初、まだ若旦那が生まれる前のお話って理解するのにちょっと時間かかっちゃった。

妖だからね。
十年一昔じゃないもんね。十年なんてついさっきだよ。


太郎君って。
太郎君は結構自意識過剰?(笑)
禰々子さんがとってもかっこいい。


お千さんは、安右衛門さんにいじわるな親戚筋から「目に見える形で」守って欲しかったんだよね。

最初、こういうタイプはあまり好きじゃないなあと思いながら読んでたんだけど、大滝屋の身代を我が物にしようとしている親戚筋の嫌がらせから我が身を守るために、「攻撃は最大の防御」みたいな感じになっちゃったんだなあ。
亭主が怪我の養生のために留守にしている間、ものすご気を張って店を取り仕切ってたんだろう。
それなのに、ちょっとしたしくじりをして、親戚筋に燃料投下してしまった。
でも、それを落ち着いて鎮火させたのは、頼りないと思っていた亭主だった。
安右衛門さんは、押しの強いタイプじゃないけど、そのぶん、「周りを見る目」に長けていて、冷静に状況判断できる人だった。
口うるさい年下妻に尻に敷かれてるようにしか見えなかったけど、お千さんが「そばにいるとほっと落ち着く」と思っていたのと同じように、安右衛門さんもお千さんに対して穏やかな愛情を持ってたんだろうなあ。

この後、待望のお子が生まれてるといいなと思う。

ああ、でも、この話の主人公はたぶん、秋英さんだわ。
安右衛門さんの冷静な判断力、お千さんの愛情、延真さんの情報収集能力。
人はその人のごく一部分だけを見て「こんな人」と思い込んでるんだなとわかるお話。


あー、でも、私が一番好きなのは、おさきさんなんだよなー。

何、このラブラブ夫婦(笑)
おさきさんのぞっこんぶりがすごくて。

んー、たぶんね、長屋の奥さん連中からして、おさきさんは「腫れ物」だったんじゃないかなと思うんだよ。
寝たり起きたり、若旦那よりも病弱(な感じ)で。
だから差配からはout of眼中みたいな扱いをされちゃう。当事者だけど、除外されちゃう。全てにおいて。

働いてない(働けない)自分に引け目があるから、何かにつけてネガティブシンキング。

だけどおさきさんは、赤子を引き取りに来た、自称足袋屋の手代の嘘を見抜いたり、どうやって赤子が自分ちの土間に捨てられたのかにひらめいたり、赤子を使った押し込み強盗の手口に気づいたり、結構頭の回転の良い人。
その御蔭で日限りの親分は、取り逃がした押し込み強盗一味を全員お縄にすることができた。

「自分は何もできない」と内に内にこもっていた気持ちが、赤子を預かったことで(その後我が子として迎え入れて)エネルギーが満ちてくるというか、生命力を取り戻したというか、やっぱり母になると女は強いな。心身ともに。


ここまでは徳川の御代の話だったけど、最後は明治になってからのお話。

人の一生と、妖の一生。
おぎんさんは愛しい人との再会に1000年かかったけど、長崎屋の妖たちと若旦那の再会は、そこまでかからない(かもしれない)ってことですね。
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コメント







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相変わらず謎解きが面白かったです。
それぞれのキャラクターも良くて、
楽しくて少し切なくなる作品でした。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
2016-12-20-12:32 藍色
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