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嫌われる勇気 | 岸見 一郎 (著), 古賀 史健 (著) | 2024年書評116

数年前あまりにも流行っていたので手に取りづらかった「嫌われる勇気」。当時好きだったYoutuberが人生を変えた本の一つに紹介していたために読んでそのままにしていたものをもう一度手に取ってみました。

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日本の本なのですが、驚く事に上に書いたYoutubeのように海外で多く読まれておりなんとその数は1300万部。最近ではPIVOTに登場するなどまだまだ引き続き多く読まれているように思います。

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大学時代に誰かの名言をつまみ食いして勇気を持つための名言探しを良くしていました。その中でもSteve Jobsのスタンフォード大学でのスピーチはいつ見返しても勇気をもらえます。

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自分の人生を生きるは自分だけであるという事を再認識できるとてもおもしろい本だと思います。

 

📒 Summary + Notes | まとめノート

トラウマについて

心理学の巨匠といえばフロイトやユングが有名ですが、アドラーも3人目と知られています。アドラーはウィーン精神分析協会のメンバーでありフロイトが主宰していた団体に属していました。アドラーは自分の心理学は多くの人のためと大学での授業などではなく誰にでも教えられる形で自分の考えを教えていきます。

アドラー心理学でいう「目的論」と呼ばれていることがあります。対立する言葉に「原因論」があり、過去の苦しみの原因を知るだけではなくそこから何を見出すかという点が「目的論」です。トラウマについてはそれに苦しむのではなく、その経験に与える意味によって自らを決定するという考えを持ちます。

トラウマに苦しむ中で大事なのは意味を見出し、自分が変われると知ることをアドラー心理学では大事にします。そしてそれは自分自身によって変わること。たとえばですが、「わたしは悲観的な性格だ」と思い込んで悩んでいる人が居るとします。アドラーの考えでは「わたしは悲観的な世界観を持っている」と言い換えることを重要と考えます。つまりは今の自分は今までの自分の選択によりその世界観を持っているために、それを変えたいのであれば選び直せばよいと。

変われないでいるのは、自らに対して「変わらない」という決心をくだしている。

人々はみなそのままで居る方が楽であるため、色々不満はあってもそのままで居る選択をしているのです。

対人関係

「勇気づけ」というのはアドラー心理学の核であり、本書でのキーワードでもあります。人々は生活をしていく中で対人関係がどこにでもあります。他者から嫌われる、傷つくことを過剰におそれてい自分のことを好きになれない状態に陥りがちです。

アドラーの教えでは人間の悩みはすべて対人関係の悩みであると言います。

劣等感もそうです。最近ではSNSで人と比べる事が意識せずに行う時代です。例えば背が低いという劣等感を持っていたとすると大事なのはそこにどのような意味付けを自分で行うか、どのような価値を持つことを自分で選択するかです。

自慢することも同様です。優越感に浸るのは劣等感の裏返し。

人生は他者との競争ではなく、他者との競争から逃れない限りは悩みから逃れることはできません。

行動面の目標

  • 自立すること
  • 社会と調和して暮らせること

心理面の目標

  • わたしには能力がある、という意識
  • 人々はわたしの仲間である、という意識

人の欠点を見つけることからも抜け出さなければいけません。アドラーは「人生の嘘」と言い対人関係を避けるために他者の欠点をでっちあげてタスクを回避しようとする事態を表現しています。

課題の分離

承認欲求は資本主義経済のガソリン的な存在です。承認欲求を満たすために何かを買う、きれいな映え写真を撮るなど今の世の中承認欲求だらけ。アドラー心理学では他者から承認を求めることを否定します。

他者の期待など、満たす必要ではなく、他者の期待を満たすために生きているわけではありません。ユダヤの教えに「自分が自分のために自分の人生を生きていないのであれば、いったい誰が自分のために生きてくれるだろうか」という言葉があります。

さらに大事なことに他者もあなたの期待を満たすために生きているのではないです。アドラー心理学の考えに「課題の分離」という考えがあります。自分の課題と他者の課題を分離して他者の課題に踏み込まないようにすることは自分の人生を生きるために重要です。

対人関係のトラブルには他者の課題に土足で踏み込むことや、自分の課題に土足で踏み込まれることから始まります。誰の課題かを見分けるには「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けとるのは誰か?」とすれば簡単に分かります。

対人関係の悩みを解決するためには「自分の信じる最善の道を選ぶこと」です。他者がどのように評価しているのか、それは他者の課題であって自分の課題ではありません。

ここでこの本のタイトル「嫌われる勇気」に結びつきます。幸せになる方法は他者の課題を分離して他者から嫌われていることに心を悩ませないこと。という考えです。

世界の中心

アドラー心理学は正式には個人心理学と言います。

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分割できない存在という解釈なのですが、分割できない存在としてとらえ全体としてのわたしを考えることを「全体論」とします。

課題の分離だけを見ると、人と干渉しないことが良いというような考えもできかねませんが課題の分離はアドラー心理学では対人関係の出発点です。他者を仲間だとみなして、自分の居場所を感じられる共同体が対人関係では大切になります。家庭や職場、学校、地域、国や地球人としてあらゆる共同体の枠組みはあります。この共同体感覚は幸福な対人関係を築くためにもっとも重要な指標です。

アドラー心理学では「わたし」の存在は人生の主人公でありながら、あくまで共同体の一員であり、全体の一部です。共同体の一部であり中心ではありません。共同体へのコミットはわたしはこの人になにを与えられるか?です。所属感は生まれながらにして与えられるものではなく、自らの手で獲得するものになります。

他者への関わりに褒める、叱るなどありますがアドラー心理学ではその考えを縦の関係として否定しており、横の関係である「勇気づけ」という方法を解きます。他者を評価せず、勇気づけを行い、感謝の言葉を聞いた時にはじめて貢献できたと人は知ることができます。

アドラー心理学で大事なのは共同体への貢献であり、それこそ主観で感じられるものです。

いまを生きる

さて、共同体感覚を学び、共同体感覚を持つための重要なことに「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」であることを学んできました。

ユダヤの教えに10人人がいれば1人はあなたのことを否定する、2人はあなたを受け入れる、7人はどちらでもない人であるという考えがあります。この中でどこにあなたの意識を向けるかで人生が大きく変わってきます。

仕事が忙しくて過程を顧みる余裕がない、なんて弁明も人生の嘘です。仕事を口実に他の責任を回避しようとしているにすぎません。

人生で大事なのは共同体への貢献です。これは目に見えるものでなくてもよく大事なのは「貢献感」でもあります。

人生とは連続する刹那である、われわれはいまここに生きるしかありません。計画的な人生などそれが必要か不必要かという以前に、不可能なのです

アドラーは一般的な人生の意味はない。と語り、人生の意味はあなたが自分自身に与えるものだと言いました。

感想

岸見さんのアドラー心理学入門を読んだ古賀さんが長い間温め、企画しては不採用を続けた企画を形にした本ということでしたが、とてもおもしろい哲学というか心理学の本でした。本の内容がアドラー心理学の鉄人のような人に青年が話をするという対話形式であったために、書いていた書評も本の中の口調がうつってしまって教祖のような口ぶりのまとめになりました。

アドラーはいわゆる戦争の時代を生きた人物であり、第一次世界大戦時は軍医として仕えました。

Adler's efforts were halted by World War I, during which he served as a doctor with the Austro-Hungarian Army. After the conclusion of the war, his influence increased greatly. In 1919, Adler started the first Child Guidance clinic in Vienna.

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その後ユダヤ人であったこともあり、第二次世界大戦前にアメリカへ亡命して大学で働いていたそうです。25歳の時に戦争に巻き込まれて眼の前で人間一人の無力さなどを知る中で彼の考えの礎となったものもあったのでしょうか。

彼の未来志向の考えはとても勇気を貰えると感じます。今からでも変われる、他者の課題にとらわれない、嫌われることが幸せの第一歩だと理解することは自由を与えてくれます。共同体意識も人類として生きていくうえでとても大切な考えに感じます。

いまここに生きるという話ではスラムダンクの「俺は今なんだよ」という言葉がよぎりますがまさしく過去のトラウマにとらわれるのではなくこれからの未来、今に生きるということも心に響きます。

好きな言葉に第二次世界大戦でイギリスが危機にあったときのプロパガンダ「Keep Calm and keep carry on」という考えもアドラー的な考えが思い浮かびます。

自分の人生のために自分の課題を見つめて取り組んでいく、とても勉強になる本でした。

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