煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

何かに込められた想いに翻弄されノスタルジックな想いを吐露するVOCALOID曲

 

  こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 チャットGPTを使い始めて約1ヶ月が経ちました。使用感としては、自分では思いつかないような言い回しを自然に取り入れてくれるため、非常に良好です。当初は他人の書いた文書のような印象を受け、少し違和感を感じることもありました。これは思い込みかもしれませんけど、文書校正を何度も繰り返しているうちに、まるで学習しているかのように次第に自分の文体に馴染んでいく感覚を受けました。

特に、AIから「著作物を侵害していませんか?」といった確認が数回された際に、「原作者です」と答えたあたりから、露骨に馴染むようになったように感じました。この仕組みについては詳しく分かりませんが、技術の進歩には驚かされるばかりです。

チャットGPTのサービス開始当初に少し触れた際は、稚拙な文書しか生成できず、正直なところ笑い飛ばしていました。しかし、それから短期間のうちに驚くべきスピードで進化を遂げたのだとひしひしと肌で感じております。

 

チャットGPTには、驚くほど多彩なモデルがあることをご存じですか? 今回は、その代表的なモデルたちに挑戦状を叩きつけます! 適当に作った駄文を用意し、それぞれのモデルに校正させて、どれが一番優れているのかを見極めてみようと思います。

 

条件 文書校正 カジュアルモード 修正なし出たとこ勝負

 

原文

 

 時は戦国乱世、ある者は主の寝首を搔き下剋上を果たし、そしてある者は己が領土を拡大せんと他国に攻め入り、野望に沸き立ち戦の絶えぬ時代。争いのある所、忍びの存在アリ。彼らは謀略に長け、戦から戦に渡り歩き跋扈していた。戦の影に生きて死ぬ定めの彼等は、鍛錬によって体に刻まれた技だけが拠り所であり、生きがいでもあった。技は業になり親から子に伝えられ、子孫によって分化して発展し、その集団は里になった。忍びの技術集団である忍び里を各国の大名は見逃すはずもなくこぞって召し抱える。こうして忍びたちは主君の思惑により己が命をかけてお役目をこなすようになった。情報収集や暗殺に活躍した忍びの里、その中でもその名をとどろかせた里がある。それは甲賀と伊賀。かの里同士は互いをライバル視して、しのぎを削っていた。切磋琢磨しお互いを出し抜いていたある時、伊賀の情報収集管理に甲賀が後れを取ってしまう。どんなに厳重に情報を管理していても何故か筒抜けなのだ。甲賀は房中術を持っている名うてくノ一の仕業と断定。甲賀の忍びたちにそのくノ一の抹殺命令が下った。頭の命に男衆は色めき立つ。何故なら房中術を得意とするくノ一は絶世の美女というのが定番だからだ。抹殺の方法は各々に任せられている。たとえ忍びとはいえ女。単純な戦闘なら遅れる事はほぼ無い。男衆の頭の中には性欲にまみれた邪悪な想像をたぎらせ散開する。数日中に方は着くと思われた・・・だが、一向に良い知らせは無く、それどころか放った刺客は行方を眩ませる事態。焦った甲賀の頭は懐刀である地獄斎を向かわせる。地獄斎はわざと戦の情報を流して誘き出す事を画策。案の定、偽の戦情報を記された巻物は盗まれた。険しい山々に囲まれた堅牢な城にあった巻物を盗んで持ち出すには一本の街道しかない。地獄斎は街道を通る人々をつぶさに見て怪しい者を探す。だが、敵もさるもの中々現れない・・・。丑三つ時になり、雲に隠れていた満月が現れた時、妙な気配を感じた地獄斎は木から飛び降り街道に躍り出た。そして、二メートルを超える巨体に鎖帷子で身を固めている地獄斎の双眸にあるものが映る。それはなんと・・・三毛柄の猫・・・つまり三毛猫。ただの猫なら地獄斎も見逃そう。しかし、目の前意にいる三毛猫は忍び衣を身に着け、四つ足には小手を装着し、背中には例の巻物を携えていたのだ。剣呑な表情を浮かべた地獄斎は、「猫とはいえ忍び・・・死合おうではないか!」と言う。地獄斎の呼びかけに猫忍びは、「ニャーゴ、ニャーゴ」と鳴き、体中の毛を逆立ちさせ、斜め前に特徴的なスッテプで応える。それは猫の好事家の間でまことしやかに囁かれている仁王ステップと言われた相手を威嚇する動作。互いの意思確認も終わり、頭上に登った満月の光が一人と一匹を照らし、舞台は整う。一人と一匹はジリジリト互いの距離を縮め、険しい森の中から聞こえていた虫の鳴き声はピタリと止まったのを合図に地獄斎は懐から鎖分銅を出して回し、猫忍は丁度あった朽ちた木で己の爪を研ぐ。今まさに修羅の時間が始まろうとしていた。

 

GPT JP

 

 時は戦国時代。乱世の中、ある者は主君を裏切って下剋上を果たし、またある者は自分の領地を広げるために隣国へ攻め込む。野望渦巻く戦乱の時代だ。そして、争いの裏には必ず忍びの存在があった。謀略に長けた彼らは戦場を渡り歩き、影の中で暗躍していた。忍びは影に生き、影に死ぬ運命。それを支えていたのは、鍛錬で体に刻み込んだ技だけ。生きがいであり、頼り所でもあったその技は、やがて子孫に受け継がれ、分化し発展。忍びの集団は「里」となり、各地に根を張るようになった。

そんな忍び里を、戦国大名たちが見逃すはずもない。情報収集や暗殺といった重要任務のため、こぞって彼らを抱え込むようになった。中でも名を馳せたのが甲賀と伊賀。この二つの里は互いをライバル視し、しのぎを削り続けていた。

ある時、伊賀が情報収集で一歩先んじる出来事が起こる。どんなに情報を厳重に管理しても、なぜか伊賀に筒抜け。甲賀は原因を探った結果、房中術を操る名高いくノ一の仕業と断定する。頭領からそのくノ一を「抹殺せよ」との命が下るや、甲賀の男衆は色めき立った。「房中術を得意とするくノ一は、絶世の美女であることが定番」というイメージが、彼らの心を妙に刺激したのだ。抹殺の方法は自由、ただし結果を求める。単純な戦闘ならば忍びとして負けるわけがない。そう確信して散会する男衆だが、数日経っても良い知らせは届かない。それどころか、送り出した刺客たちが次々と行方をくらます始末。焦った頭領は、ついに切り札である地獄斎を送り出す。

地獄斎は、偽の戦情報をわざと流し、敵をおびき寄せる作戦を立てた。策は見事に当たり、厳重に守られた城から偽の巻物が盗まれる。問題は、堅牢な城から山間の街道を通ってしか外に出られないことだ。地獄斎は街道で待ち伏せし、怪しい者をじっくり観察していた。しかし、相手もさる者、なかなか姿を見せない。

そんな中、夜も更けた丑三つ時。満月が雲間から顔を出した瞬間、地獄斎は奇妙な気配を察知する。木から飛び降り街道に目を凝らすと、なんとそこにいたのは――三毛柄の猫だった。ただの猫なら見逃しただろう。だが、その猫は忍び装束を身にまとい、四つ足には小手を装着し、背中には例の巻物を携えていたのだ。

地獄斎の目が鋭く光る。「猫とはいえ、忍びならば容赦はせぬ。死合おう!」と静かに言い放つ。対する猫は「ニャーゴ、ニャーゴ」と鳴き声を上げ、体中の毛を逆立てて威嚇。さらに仁王ステップと呼ばれる独特の威圧的な動きで応じた。満月が一人と一匹を照らし出し、周囲の虫の鳴き声がピタリと止む。その瞬間、戦いの幕が切って落とされた。

地獄斎は鎖分銅を懐から取り出し、勢いよく振り回す。一方、猫忍びは側にあった朽ち木で爪を研ぎ始める。緊張が高まる中、修羅の時間が今まさに始まろうとしていた――。

 

ChatGPT 4o

 

 時は戦国乱世。主君の寝首を掻いて下剋上を果たす者あり、己の領土を広げるべく他国に攻め込む者あり。野望が渦巻き、戦の絶えない時代だ。争いの影には、必ず忍びがいる。彼らは謀略に長け、戦場を渡り歩いて暗躍していた。
忍びは戦の影に生き、影に死ぬ定め。その技術は命綱であり、生きがいだった。技は業となり、親から子へ受け継がれ、時代と共に分化していった。やがてそれぞれの技術集団が「忍び里」として形を成した。
戦国の大名たちが、そんな里を見逃すはずがない。忍びたちは次々と召し抱えられ、命を賭けて情報収集や暗殺に従事するようになる。数ある忍び里の中でも、特に名を轟かせたのが甲賀と伊賀だった。互いをライバル視し、しのぎを削る関係だ。

そんなある時、伊賀が甲賀を出し抜く事件が起きた。伊賀の情報収集能力が異様に高く、甲賀の情報が筒抜けになってしまったのだ。甲賀はこれを、房中術を得意とする伊賀のくノ一の仕業だと断定する。頭から「くノ一抹殺」の命が下るや否や、甲賀の男たちは色めき立った。房中術に長けたくノ一と言えば、絶世の美女が定番だからだ。

抹殺方法は自由。単純な戦闘なら遅れることはないと油断した男衆は、色欲にまみれた妄想を抱えながら散開した。しかし、結果は散々。刺客たちは一向に成果を上げられず、次々と消息を絶ってしまった。焦った甲賀の頭は、最強の懐刀である地獄斎を送り込む。

地獄斎は作戦として偽の戦情報を流し、敵を誘き出すことにした。その情報を記した巻物は、堅牢な城の奥深くに保管されているという体裁だ。しかし、それが盗まれるには一本の街道を通るしかない。街道を見張り続けた地獄斎だったが、敵はなかなか現れない。

そして丑三つ時。雲間から満月が顔を出した時、地獄斎は妙な気配を感じた。街道に飛び出すと、そこにいたのは…なんと三毛猫!普通の猫なら見逃すところだが、目の前の三毛猫は忍び装束をまとい、四つ足には小手、背中には例の巻物を背負っていた。

「猫とはいえ忍び…死合おうではないか!」地獄斎は低く呟く。対する猫忍は「ニャーゴ、ニャーゴ」と鳴き、体中の毛を逆立て、特徴的なステップで応じた。それは一部の猫好きをざわつかせる「仁王ステップ」と呼ばれる威嚇の動きだった。

互いに意思を示し、満月に照らされる中、戦いの舞台が整う。一人と一匹はジリジリと距離を縮め、森の虫たちも息を潜めた。地獄斎は懐から鎖分銅を取り出して回し始め、猫忍は近くの朽ちた木で爪を研ぐ。今まさに、修羅の刻が幕を開けようとしていた。

 

ChatGPT o1

 

時は戦国乱世。
主君の首を掻いて下剋上する者もいれば、隣国に攻め込み自分の領土を広げようとする者もいる。野望が渦巻き、戦が絶えないこの時代、争いがあれば必ず「忍び」の存在があった。
彼らは謀略に長け、戦場を渡り歩く影の存在。日なたを歩く武将とは違い、影に生き影に死ぬ宿命だった。鍛え抜かれた技だけが彼らのすべてであり、親から子へ、子から孫へと伝えられ、それぞれが「忍び里」と呼ばれる集団に成長していった。
そんな忍び里を大名たちは放っておかない。情報収集や暗殺など、その力を利用しようと躍起になり、忍びたちは雇われるようになった。中でも名を轟かせたのが「甲賀」と「伊賀」の里。互いをライバル視し、日々しのぎを削っていた。

そんな中、ある時、伊賀の情報収集力の前に甲賀が後れを取った。どんなに厳重に隠しても情報がダダ漏れ。甲賀は、房中術に長けた伊賀のくノ一の仕業だと踏み、抹殺命令を下す。
その瞬間、甲賀の男衆は色めき立つ。なぜなら房中術の達人たるくノ一といえば、絶世の美女が定番。抹殺方法は自由と聞き、「まぁ戦で負けることはないだろう」と油断しながら、男たちはいやらしい妄想を膨らませて散開した。
しかし数日経っても成果なし。それどころか送り込んだ刺客たちは行方不明になる始末。焦った甲賀の頭領は、最後の切り札である「地獄斎」を動かした。

地獄斎は計略を練り、わざと偽の戦情報が書かれた巻物を流して、敵を誘き出す作戦に出る。巻物が保管されている城は周囲を険しい山々に囲まれ、そこから抜け出すには一本の街道を通るしかない。地獄斎はその街道を見張り、怪しい者を探し続けた。しかし敵は中々現れない。

丑三つ時、雲間から満月が顔を出すと、地獄斎は妙な気配を感じ、木の上から街道へと飛び降りた。その視界に入ったのは、なんと三毛猫。
ただの猫なら見逃すが、この猫、忍び装束に四つ足用の小手まで身に着け、背中にはあの巻物を背負っているではないか。巨大な体格の地獄斎は、鎖帷子を光らせながらニヤリとする。「猫とはいえ忍び…死合おうか。」

地獄斎に呼びかけられた猫忍は「ニャーゴ、ニャーゴ」と鳴き、毛を逆立て、斜め前に独特のステップを踏んだ。それは一部の猫マニアが噂する「仁王ステップ」と呼ばれる威嚇の動作らしい。
意思が通じ合った一人と一匹、満月に照らされる中、舞台は整った。
互いの間合いが少しずつ詰まっていくと、森の虫の鳴き声はピタリとやんだ。それを合図に、地獄斎は懐から鎖分銅を取り出して勢いよく振り回し、猫忍はそばにあった朽ち木で爪研ぎをはじめる。
こうして、今まさに修羅場の幕が上がろうとしていた。

 

まとめ

 

 どうせ似た感じになるだろうって高を括ってたら、まさかの結構違ってて笑いましたw。そして、地味にムカついたのが地獄斎の様子を描いた二メートルなんちゃらの文章を、全員が揃って添削したところw。なんでそこ全員一致で消すんだよw。

 

まぁ、気を取り直して総括してみます!


普段よく使ってるのは「GPT-JP」で、これは予想通りって感じでした。文書は悪くないんだけど、やっぱりちょっと論理が破綻してたり、最後に手直しが必要になるパターンでしたね。

予想外だったのが「ChatGPT 4o」。いや、これ本当にびっくりするくらいナチュラルな文章で、正直驚きました。読んでて自然というか、ちゃんと整ってる感じ。
最後に「ChatGPT o1」。これスペック的には一番優秀なはずなんだけど・・・なんか結果が残念。文書がやたら固いし、変に改変してくる感じで個人的には好みじゃなかったです。

まぁこれは完全に好みや、求める文書の方向性にもよるんだろうけど、自分的には「ChatGPT 4o」が一番しっくりきましたね!

 

方言などの特殊な台詞を変換するなら「GPT-JP」

 

仕上げの文書校正なら「ChatGPT 4o」てっ感じで、いずれにしても両手放しでは無理で手直しは必須です。

 

ChatGPT o1は・・・正直使い処は分かりません、他より時間もかかりますので・・・多分なんかあるんでしょう。

 

余談ですが、今回の記事を書くに当たって当然、チャットGPTを使ったわけですが・・・あなたの総括参考になりましたって、いきなり聞いてもいないのに答えられたのはビックリしました・・・。

 

今回のお品書きになります

 

 

煮干しがお送りするちょっとした物語

 まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

※チャットGPTで文書校正をしています

 

 

 この世界には、人の言葉を話し理解する動物がいる。この者たちは「化け者」と呼ばれ、人に化けて人間社会に紛れ込んでいた。あたいの名前はミケ、化け者の中でも化け猫だ。稲荷歓楽街の中心に近い路地で、あたいは信じられない光景を目にした。あたいを育て、この歓楽街を仕切る所長が、古都から来た同じ化け者の化け狐、師走にやられてしまったのだ。

その瞬間、所長の声が脳裏に響いた。「臨機応変に動きなさい。生き残る判断をするのよ」と。あたいはその教えを守り、新しい主との関係を築こうと即断。「ひえー、これはヤバい状況にゃあ! 志村、師走様がこれからあたい達の上司にゃあ! ナシをつけるにゃあ!」と提案した。

志村はいつもの無精ひげにボサボサ髪、長袖シャツにカーゴパンツ姿で、あたいのことを信じられないって顔で見てたけど、あたいには関係ない。だって、これが所長との約束だから。でもこの行動、結果的に裏目に出た。古都から来た刺客をあっさり倒した師走に、あたいは「裏切り者」としてペナルティを受けることになったのだ。

 

所長はその赤い目であたいをじっと見つめ、長い黒髪をビル風でなびかせながらこう言った。「あらあら、育ての親を裏切るなんて、不届き者ねぇ。クロベエ、こけしの名産地はどこ?」
「確か東北でごぜぇやす」と、全身黒ずくめのホスト風の男が無表情で答える。その瞬間、所長のお尻あたりから巨大な焦げ茶色の尻尾が登場。あたい、悟った。この罰、きっとどこか遠くに流されるやつだ、と。

実は所長、あたいにそれほど怒ってるわけじゃなかった。なんなら、あたいが彼女の教えを守ったことには内心ちょっと喜んでる。でもまあ、生き物は多面的・・・あっさり裏切ったことに対して少し複雑な気持ちもあるんだろう。要するに、「数日、顔を見たくない」ってやつと思う。

 

所長の尻尾がまるで意思を持っているかのように動き、あたいの体にぐるりと巻き付いてきた。一瞬で拘束され、あたいは無駄だと分かっていても「わっにゃにゃ! やめるにゃあ!!」と必死に抜け出そうと試みる。だが、どれだけ力を入れても、その尻尾からは逃れられない。

チラリと所長の顔を窺い、ウルウルとした目で訴えてみる。すると、所長はあたいの行動を読んでいたかのように「待ってました」と言わんばかりの邪悪な笑みを浮かべた。そして、まるでカウボーイが投げ縄を振り回すように、あたいごと尻尾をブンブンと振り回し始めた。一回、二回、三回、そして四回目。急激に加速がつき、景色がぐるぐると回る。あたいの口は自然と半開きになり、キュッと下腹部に妙な感覚を覚えた瞬間、空高く投げ飛ばされた。

稲荷歓楽街がどんどん遠ざかり、最初ははっきりしていた街並みも、やがて点のような塊に変わっていく。雲を突き抜け、旅客機とすれ違うほどの高さまで達した。コックピットの中のパイロットらしき人が驚愕の表情で目をこすり、何度も確かめるような動きをしている。あたいはちょっとした悪ふざけで手を振ってみた。パイロットは顔を引きつらせながらもぎこちなく手を振り返してくる。それを見て、あたいは思わずクスリと笑った。

 

所長に投げ飛ばされるのは初めてじゃない。最初は訓練の一環で真上に投げ飛ばされたのが始まりだった。化け者の力で環境変化に対応する練習だ。そろそろ成層圏に近づいている。どんな化け者でも、超高高度の極寒には耐えられない。

「ボフッ」という冗談みたいな音を立てて、あたいは元の三毛猫の姿に戻った。前足で自分の尻尾をクロスして抱きかかえ、体を丸めて頭をお腹にくっつける。業界用語で「ニャンモナイト」というこの姿勢は、空気との接触面積を極端に減らし、寒さで体温を奪われるのを防ぐ。さらに、地上に激突する際の衝撃を吸収する役目もある。人間の姿で街中に落ちると大騒ぎになり、さらなるペナルティを招くことから、この処置は必須だ。

毛先がパキパキと固まり始め、体温がどんどん奪われていく。ここで「ツーサイクル猫エンジン」を始動。体温を強制的に上げて極寒の外気に対抗する。体温と外気温が拮抗する中、真空状態が近いと感じたあたいは大きく息を吸い込み、呼吸を止めた。

 

音ひとつない静寂の中に突入して数分。経験から「そろそろ下降するはず」と予測する。空気の流れが変わり始めたことを確認し、胸を撫で下ろして呼吸を再開。数十分もすれば気温が上がり、地上の温度とほぼ同じになる。

目をパチリと開けたあたいは、バッと体を広げて空気抵抗を増やし、落下スピードを調整。眼下に広がるのは田んぼの平野と山森。このままのコースだと山森に落ちる。あたいにとって都合がいい。

落下速度がどんどん緩み、あたいは滑空を始めた。目標は冬でも葉を茂らせる杉の木樹林。頃合いを見計らい、再び体を丸めて化け力を燃やし、耐衝撃体勢に入る。狙いは完璧で、杉の木に数回激突して衝撃を分散。無事に着地することに成功した。

 

これだけのことをしても、あたいの意識は暗転し、耳鳴りが鳴り響く。その中で、あたいは何か暖かいものに包まれる感覚を覚えた。「これは・・・なんだ?」。さらに、何かに引っ張られるような感覚がしてくる。

耳鳴りが急激に収まり、意識がはっきりし始めたあたいは、ゆっくりと目を開けた。目の前には作業服姿の若い男女と老人が立っている。まずは状況判断だ。あたいが落ちるところを目撃されたら非常にまずい・・・。そう思ったあたいは、液体のようにぐにゃりと体をねじり、女の手から逃れて地面に着地した。

「意識が戻りましたよ!」と女が嬉しそうに言う。しかし、その言葉に間を置かず、老人が「はやぐ帰れやっ!」と追っ払う仕草をした。この様子だと、どうやら落下の瞬間は見られていないらしい。最悪の事態を避けられたと判断したあたいは、目の前の茂みに飛び込んだ。

ここで、地元の学生風の女の子に化けて、探検途中だったと説明し、この場を切り抜けるのが完璧な作戦だ。あたいはいつもの黒髪ツインテールの少女をイメージし、メイド姿ではなく紺色のジャージ姿に変化するつもりである。

 

化け者は何にでも化けられるわけではない。最初に化けた姿を一生を通して続ける。飼い猫なら家族に、野良猫なら面倒を見てくれた親切な人に――強い縁によってその姿が決まるのだ。唯一の例外はムササビの化け者で、何にでも化けられるが、その理由は所長にも分からないらしい。

体内の化け力を燃やし・・・変化を試みるが、はっ!・・・あれっ!?変化ができない!?あたいは訳も分からずヨタヨタと茂みから出てしまった。なんだこれは・・・変化ができない。まさか・・・。

嫌な予感が胸をよぎる中、あたいはいつものバク転で再び変化を試みる。しかし、その様子を見て人間たちは、「芸達者だっぺな!」「すごい!どこかで飼われて芸を仕込まれたんですよ!」などと誉めてくる。あたいの気も知らずに・・・。そんな彼らを横目に、あたいは業界用語で言う「クソデカため息」をついた。

どうやら、所長があたいを投げ飛ばした瞬間に封印の術をかけたらしい。まあ、これが初めてではない。こうなったら開き直って、余暇を楽しむしかない。あたいは猫伝家の宝刀「うなんな」を発動した。これは猫語で「降参、助けて」という意味で、全力で人に媚びる所作だ。

 

老人、男、女――あたいは三人を見回し、一番好意的な相手を見極めることにした。老人はいかにも田舎の人間という感じで、ワイルドに扱ってきそうだ。男は鋭い目つきが怪しい。却下だ。残るは女・・・どうやら、あたいのキュートさに半分落ちている感じだ。よし、決めた!

あたいは女の懐に飛び込み、なし崩し的に居候を決め込む作戦を取った。突然の行動に驚いた女は、あたいの三毛柄のフワトロボディを撫で回しながら、「一時保護しましょうよ!」とウルウルと懇願を始めた。フフ、この女はチョロい。あたいは胸の内でほくそ笑む。

男が老人の顔色を窺っている様子を見たあたいは、三人の人間関係を把握し、キーとなる老人に視線を移す。少し考え込んだ老人は、「まあ、いいだべっちゃ。一時預かりならな」と承諾した。

その瞬間、あたいのテンションは天にも昇るほどアゲアゲだったが、表情には出さずポーカーフェイスを決め込む。そして猫エンジン全開で応え、こうして当面の住処を手に入れることに成功したのだった。

 

雪が降りしきる山道をひたすら下るトラックの車内。あたいは、女に仰向けの姿勢で抱きかかえられながら、お腹を優しく撫でられていた。車窓からは、白化粧された山々と吹雪。その光景を眺めながら、あたいはこの三人と出会えた幸運に感謝していた。もし誰にも会えず、この雪の中で一人取り残されていたら、自力で下山するしかなかっただろう。

 

トラックに揺られること数分後、大きな屋敷が見えてきた。トラックが止まると、老婆が出迎えに現れる。人間たちはあたいの扱いについて話し合い、老婆の了承により数日間の保護が決まった。万が一、土壇場で断られて追い出されるのではと心配していたあたいは、安堵して胸を撫でおろす。

 

屋敷に足を踏み入れると、そこは昔ながらの重厚な建物で、土間には立派な飾り物が並んでいる。ひと目見ただけで、この家が裕福であることがわかった。自然と、夕食への期待が高まる。女に抱きかけられたあたいは、老婆の案内のもとにて囲炉裏のある部屋へ向かった。囲炉裏では、大きな土鍋がぐつぐつと煮えており、魚や肉、新鮮な野菜の香りが立ち込めている。その匂いだけで、これは上等なものだとわかる。

 

寝巻きに着替えた老人が上座に座ると夕食が始まった。鍋の中では、美味しそうに煮えた具材がグツグツと音を立て、人々は思い思いにそれを取り皿に盛って舌鼓を打つ。会話は弾み、楽しげな笑い声が響いている。
そんな光景を眺めながら、あたいはふと違和感を覚えた――何か、忘れてはいないだろうか?

 

猫飼い初心者にはありがちなことである。動物を飼ったことがない人間たちは、あたいの食事の準備をするという発想がないのだ。ましてや己の意志ではなくなし崩し的な保護なら尚更だ。仕方なく、囲炉裏の周りをぐるぐる回って存在をアピール。だが、誰も気づかず、最終手段として女の膝を前足でちょんちょんと突いてみた。ようやく気づいた女は微笑みながら鍋から具材を取って差し出してくれた。

 

――この女、もう完全に落ちてるな。

 

確信したあたいは、さらに可愛らしい仕草で追加をおねだり。女は苦笑いしつつ、具を追加でくれた。ようやくご馳走にありつけると思ったその時。

「日下部さん! 猫に人間の食べ物はダメだよ! 塩分が強すぎて腎臓に悪いんだって!」と、男が突然割り込んできた。

女は「あ、そうなんですか?」と驚き、差し出していた皿を引っ込めてしまった。思わぬお預けにあたいはキョトンとするばかり。その横で、老人と老婆が言い争いを始めた。少しして、老婆がどこかへ行き、戻ってくると皿をあたいの前に置いた。中には、野菜や肉、魚など、鍋の具材に似たものが入っていた。

匂いを嗅ぐと、まったく味付けがされていないことがわかる。シャクシャクと食べてみたが、やはり味気ない。せっかくのご馳走がヘルシーフードに変わり、あたいは怒りを覚えた。

 

「チッ、余計なことするなにゃあ・・・」と思わず恨み言を呟いてしまう。

 

ハッとしたあたいは人間たちの様子を窺う。男がこちらをじっと見ていた。嫌な予感がする。化け者であるあたいを見破る者が時々いるのだ。この男も、その手のタイプかもしれない。疑り深く、発想を飛躍させ、真実に辿り着くのだ。男が手を伸ばしてきた時、あたいは逃げ出す算段を考えた。

しかし、 「兼平? どしたんだ? 猫がなんかやったが?」という老人の声で、男の手は止まった。愛想笑いで言い訳を始める男に、他の人間たちは怪訝な目を向けた。事なきを得て、あたいはヘルシーフードを平らげて、女の膝に乗った。女の膝から男を見やると、納得がいかない表情でこちらを一瞥。

素知らぬ顔で返したあたいは、借りを返したような気分になり、満足感に浸ったのだった。

 

夕食が終わったが、ヘルシーフードではとても腹は満たされず、あたいはお勝手場にて食器洗いをしている老婆の足元にまとわりついている。

「ちょっと待ってけろ〜、食べ物作っからよ〜」と老婆は直下にいるあたいに言う。

食器洗いが終わった老婆は冷凍庫から何やら袋を取り出し、「今年の正月んときに作った餅だっちゃ〜。そろそろ片付けねぇとやばぐなっからよ〜」と独り言なのか、あたいに話しかけているのか分からない微妙な塩梅。

老婆は揚げ物専用の深いフライパンに油を満たし熱し、先ほど冷凍庫から取り出した袋を破り、小粒のブロック状の餅を投入する。小気味いい油の揚がる音を静かに聞いて待機するあたい。

 

数分後、揚がった餅を取り出し、砂糖と醤油を絡めた。「ほれ、どうぞだっちゃ〜」と差し出されたものを、あたいは観察する。ほのかに香る醤油と砂糖の香りが食欲をそそられ、ごくりと生つばを飲み込む。

コンビニの和菓子コーナーで時々見かける揚げ餅とは香りが一線を画した。あたいはさっそく熱々になった正方形の揚げ餅を慌てず食べ、ポリポリと音を鳴らす。

あたいの様子を見ていた老婆は「んめぇべ?」と言う。あたいは「うにゃににゃ(うまい)」と猫語で賞賛。熱々の出来立て揚げ餅がこれほどうまいとは驚きだ。

稲荷歓楽街に帰ったらこのビジネスを始めるのも良いかもしれない。揚げ餅を一個二個と食べていると、ガララと曇ガラス戸が突然開く。

「お風呂お先に頂きました〜。あれ?何を食べてるんですか?」とあたいの食事を邪魔した憎き男の登場。

男はあたいの食べている揚げ餅を見て、「ダメですよ!猫には厳禁です!」とひょいと皿を取り上げる。

「ほんと?甘いもんなら平気だべって思ったんだっちゃ〜」と老婆は男に言う。

男はニンマリと得意げに「甘いものもしょっぱいものもダメです。残りは俺が頂きますね、おやすみなさい~」と返し立ち去った。

一度ならず二度までもあたいの食べ物をかっさらうとは良い度胸だ・・・。あたいは立ち去る男の背中をギラリと睨む。

「そんな怒んなよっちゃ〜。明日さ、爺さんにキャットフード買ってこさせっからよ〜」とあたいの渋い表情を見て悟ったのか、頭をワシャワシャと撫で回した。

 

そして丑三つ時。満足な食事にありつけなかったあたいは、空腹に耐えながら女の布団に潜り込み、暖を取っていた。女は熟睡しているようで、先ほどからあたいを抱きかかえていた手にも力は入っていない。間違いないだろう・・・。

あたいはそろりそろりと布団から抜け出し、女の整った顔を確認する。静かな寝息を立てており、熟睡しているのは明らかだ。ニヤリと笑みを浮かべたあたいはストンと直立し、歩き始めた。あたい達化け物の化け猫は二足歩行ができる。元の姿に戻っていても、種族の特徴である高い身体能力は健在で、余裕で歩けるのだ。

 

あたいは静かに障子を開け、忍び足でお勝手場に向かう。人間にこんな二足歩行の姿を見せるわけにはいかない。慌てず焦らず、角を曲がるときは周囲に気を配り、聞き耳を立てる。

ようやくお勝手場に着いたあたいは、そろりそろりと曇りガラス戸を開け、目指す物へまっすぐ向かう。椅子を引っ張りガスコンロに置きっぱなしの土鍋を確認したあたいは蓋を開け、「いい感じだにゃあ~」とほくそ笑む。

 

予想通り、スープが残っている。おじやにするつもりなのだろう。あたいは椅子から飛び降り、米櫃に向かう。米櫃を開け、一升マスで米を前足二本で苦戦しながら取り出すと、そのままの体制を維持し、ピョンと飛び上がり華麗に後ろ足二本で着地。キッチンカウンターに一升マスを置く。そして、流しの奥の棚にあるスチール製のボウルを爪で引っかけて引き寄せると、そこに一升マスをひっくり返し米を投入した。

 

この家の老婆は料理好きだ。恐らく、あれがあるだろう・・・とメスの勘で食器棚の引き出しを探る。あった! 金属製の泡立て器が現れ、あたいはニンマリと笑みを浮かべた。

蛇口を前足で手繰り寄せ、スチール製のボウルの真上にセット。レバーを上げて水を出し、いい塩梅になったら水を止める。波立て器を両前足で握り、米をかき混ぜる。水が白く濁ったところでボウルを傾けて水を流し、今度はそのまま土鍋へ米を投入。椅子に飛び乗り、ガスコンロのスイッチを押した。あとは待つだけだ。

 

数分後、グツグツと煮える土鍋を見つめながら、私はどこか物足りなさを感じていた。思い立って冷蔵庫を開けると、目当ての卵を発見。慌てることなく二個取り出し、前足をクロスさせてひんやりと冷たい卵を抱え込む。キッチンカウンターに軽やかに着地し、卵を慎重に置く。一つの卵を両方の前足で肉球と爪でしっかり掴むと、カウンターの角で「パキッ」と小気味よい音を立てて割った。

割れ目に爪を引っ掛けてスチール製のボウルの上に持って行き、器用に殻を開けて卵を投入。同じ手順で二つ目の卵も割り、先ほど米を研いだ泡立て器を使ってかき混ぜる。漂う香りに思わず笑みを浮かべながら、混ぜた卵を土鍋に流し込む。卵が半熟になったところで火を止めれば、卵おじやの完成だ。

湯気と香りに誘われ、思わず涎が滲みさっそく食すことにする。

 

しかし、あたいは自身の前足を見つめ渋い顔。それもそのはず、この前足で箸はおろかスプーンも持てない。どうする・・・?。 数秒考えた末、あたいは猫だけど「犬食い」を決行。土鍋に顔を突っ込み、はぐはぐと食べる。何という美味しさだろう…! 様々な出汁が効いて、卵が味をまろやかにしている。あっという間に平らげたあたいは、口の周りをおじやで汚しながらキッチンカウンターに仰向けになり、腹を撫でて悦に浸る。

 

しばらく天井を見つめていたが、あたいは立ち上がりギンとお勝手場の壁を睨む。さっきから潜んでいる不届き者の存在を感じていたのだ。視線の先には植木の茂みに隠れている三人組。あたいの罪をかぶせるにはうってつけだ。

土鍋の蓋を閉めたあたいはそれを持ち、ヒョコヒョコと二足歩行で土間に向かう。そして玄関を開け、土鍋を持ってそろりそろりと外に出た。

外に出たあたいは、ピョンと屋根の頂点であるぐしに着地。植木の茂みに隠れている三人組の姿が丸見えだ。邪悪な笑みを浮かべたあたいは息を吸い込み、土鍋を屋根の斜面に置いて飛び乗った。

ガラガラと滑る土鍋はけたたましい音を立てながら三人組に向かう。ポカンと見つめる彼ら、それもそのはず屋根滑る土鍋、更にその上を直立して腕を組む猫がいるのだ。土鍋は一番手前の男の額にハードランディング。ボグッと鈍い音が庭中に響き渡り、直後に土鍋は割れ、男は白目を向いて失神した。

あたいはすかさず倒れた男の口元に自身の口を擦り付けた。ご飯粒だらけの口元を見て、あたいはニヤリと笑う。

 

あたいの盗み食いの罪を押し付は完了した。そして、残るは二人。完全にパニック状態の二人の目出し帽男たちは、互いに相手を前に行かせようと滑稽な動きを繰り広げている。奴ららが冷静になる前に、あたいは次の行動に出た。

猫が砂をかけるような姿勢を取ったあたいは、ほんの少し力を込めて足を蹴り上げた。すると、庭に敷かれていた玉砂利が勢いよく飛び出し、そのうち一人の男に直撃。「目が!目が!」と叫びながら地面に倒れ込む男。

残る一人の目出し帽男は、茫然自失のまま口をパクパクさせて動けない。最後の一人をどう始末しようかと考えていると、突然、「シュッ、メコッ」という音がしたと思ったら最後の目出し帽男が倒れ込む。なんと、 ピンク色のスウエット姿にショートカットの髪型でキリリとした切れ長の目をした下僕の女がいつの間にか外に出てきて、最後の一人の顔面にハイキックを決めたのだ!顔を押さえて苦しむ目出し帽男。その想像以上の戦闘能力に、あたいは感心してしまい、庭石に飛び乗って香箱座りで高みの見物を決め込むことにした。

 

女はゆっくりと近づき、もがきながらヨロヨロと立ち上がろうとする目出し帽の男に掌底を喉元に打ち込んだ。「コヒュー」と妙な呼吸音を漏らし始めた男の首を掴むと、そのまま軽々と持ち上げる。彼女のその異様な力強さに、私はただ驚愕し、そして何か異変を感じた。

何かがおかしい――。
彼女の目は完全に血走り、口からは「どこの工作員だ・・・まさか、あの国か?」などと独り言のように妙な言葉が漏れていた。華奢な腕のどこにそんな力が潜んでいるのか、戦慄と驚きが入り混じる中、私はその様子をただ見守っていた。

そして、その瞬間、私はあるものを目撃した――。
彼女の首周りに、うっすらと光る奇妙な紋様が浮かび上がっていたのだ。この現象には心当たりがあった。
供物――
八百万の神々は、神器を授ける以外に「供物」として契約する場合がある。とはいえ、言葉通りの生贄になるわけではない。契約した神が与える「ご利益」を、現実世界で実現させる実働部隊となるのだ。おそらく彼女の契約した神は「家内安全」など、何か守護に関する力を司る存在だろう。契約印は、契約者の人生に馴染みのある言葉や行動を無意識に引き出し、実行させる力を持つ。そうでなければ、この現象の説明はつかない。

みぞおちに一撃を叩き込んだ彼女は、倒れ込んだ男に向かって言い放つ。
「おい! 目的はなんだ? どこの国が放った草だ?」
しかし、朦朧とする意識の中、男は「が・・・が・・・」と不明瞭な声を漏らすだけだった。その態度に苛立ったのか、彼女は掴んでいた首をぱっと放し、男をその場に崩れ落ちさせた。そして次の瞬間――。

「さっさと歌えや、豚野郎!」
そう叫ぶや否や、彼女は華麗な蹴りを男の顔面に叩き込む。吹き飛ばされた男は、「ブヘッ」と無様な声を上げてうつ伏せに倒れ込んだ。その背中を見下ろしながら、彼女はさらなる追撃を敢行する。
「私は尋問の特殊訓練を受けている。今のうちに吐いたほうが楽だぞ!」
そう言いながら、手頃な庭石を拾い上げた。

その光景に、私は流石に「マズイ」と判断。瞬間、足に力を込めて飛び出そうとした――。

 

「日下部さん!落ち着いて!これは工作員じゃない、闇バイトの強盗団だ!」

 

憎き宿敵の男が現れ、女を羽交い絞めにして落ち着かせようとしていた。どうやら、こんな事態は日常茶飯事らしい。男の手際の良さが、それを物語っていた。供物の異常行動のフォローをしている男に、同情しつつあたいは事態を静観する。男が忙しなくテキパキと警察の連絡から犯人たちの確保に精を出している中、女はあたいに近づきヒョイと抱き抱えた。顔を覗き込むと瞳は落ち着かない感じで小刻みに動き明らかな同様している。何故あんなことを?、そんなところだろうか?。真実を告げるべきか?、今ここで喋ればこの女は救われるるだろう・・・。しかし、その一線を越えれば最初は小さな綻びでもやがて大きくなり混乱を生じさせ、この世界に破綻を招く。あたいの育ての親である所長が日夜隠蔽工作に明け暮れるのはそのためだ。この場で打ち開ければどんなにいいだろうか・・・。やるせ無い気持ちを抱きつ事態は動き、あたい視線を移す。老人が一人の目出し帽を取りあげて素顔を晒したのだ。

 

辛うじて口を聞けるようになった、素顔を晒した男に、老人はなまった方言で尋ねた。
「なんでこんなごどしよっつ思ったんだべ? 親っつ泣ぐぞ! これからなんて言い訳すっつもりだべ?」

露わになったその顔は青タンだらけで、まだ幼さが残っている。その顔で男は、「親はいません」
と、何とも世知辛い世相を反映した言葉を吐露した。

 

「んだが・・・」


老人はそう呟くだけで、他に言葉が出なかった。場はシーンと静まり返る。それを聞いた、あたいを抱っこしていた女の手が、きゅっと少し強くなった。その後、警察がやってきて、近隣を巻き込んで大騒ぎに発展する。

あたいは土間の板の間に香箱座りのまま、明後日の方向を見つつ、耳だけ人間たちの会話に向けて聞き耳を立てた。どうやら、明日は事情聴取があるらしい。つまり、明日はこの屋敷に老婆とあたいだけが残るということだ。あの嫌な男がいないなら、羽を伸ばしてゆったり余暇を楽しめそうだ。どうしようか? 周辺の探索をするのもいいかもしれない――そんなことを妄想しながら、自然と口の端がキュッと上に伸びた。明日の計画は頭の中で大方出来て、そのあと、考えすぎたので後ろ足でバリバリと顔を掻きむしり精神のリセットを計る。

そして、人間たちの深刻な顔を尻目に、あたいは足のストレッチをしてからお勝手場に向かった。そこでは老婆がお茶のお湯を沸かしている。彼女は血色が悪く、やはり強盗騒ぎにショックを受けているようだ。

 

「ミャウ、ムゥー?(大丈夫?)」


あたいは猫語で老婆を心配する。すると、老婆は「くわばら、くわばらっちゃ~。」と言いながら、あたいを抱き上げた。彼女は自身の不安を解消するように、ぎゅっと強めにあたいを抱きしめる。あたいは猫エンジンを全開にして、老婆の精神を癒そうと試みた。

 

「おめぇ、あったけぇなぁ~」


あたいの渾身の力を込めた癒しのゴロゴロヒーリングにより老婆はそう呟いて笑顔になる。クシャリとシワだらけの笑顔にほんの少し通じ合えた気がした。

しかし、あたいと老婆のコミュニケーションを邪魔するように、ガスコンロのヤカンがピーとけたたましい音を出す。老婆はあたいを慌てて床に下ろし、ヤカンのお湯を急須に注ぐ。

その後、老婆は土間へ向かった。一人取り残されたあたいは、のんびりと毛繕いを始め、居候一日目を終える。

 

ーつづくー

 

 

383曲目の紹介

 

 

今回ご紹介する曲は夕焼けソーダ水です。

 

作詞作曲をごめんなさいが言えなくてさん、イラストをMachiyohさんによるものです。

 

 人は何かに想いを込める生き物です。その想いの形態は千差万別で、多種多様な表現を持っています。
本曲は、夏の夕焼けとソーダ水に対する想いをテーマにした楽曲です。

「夏の夕暮れの西日に輝くソーダ水」は、いつまでも輝き続け、決して色褪せることのない君との思い出を象徴しています。
そんな甘酸っぱい青春の一場面を、ソーダ水が見せるさまざまな表情に、想い人との出会いから別れ、そしてポロポロと消失していく記憶を重ね合わせています。

この歌を歌うのは、初音ミクさんです。彼女の透き通った歌声が、青春の輝きと儚さを鮮やかに描き出し、聴く人の心をその瞬間へと誘います。

 

 

 本曲の題名である「夕焼けソーダ」は、何かを通して引き出される想いの記憶をテーマにしています。そのため、題名そのものがその意味をメタファ的に表していると思われます。
題名が示唆するのは、時間とともに溶けていく氷や薄まっていくソーダ水のように、想い人との関係性が変化していく様子ではないでしょうか。
題名には、そんな儚くも切ない感情が込められているように感じられます。

 


www.youtube.com

 

 

 シンプルな感じのミクさんの曲を聴くのは久しぶりな気がします。最近は技巧や趣向を凝らした作品が多い中、ある意味原点回帰的で、素直にそのままなこの曲にホッとさせられました。
今では、人との区別がつきにくいボーカロイドや独自のカスタマイズ、音楽的同位体、CeVIOなどの進化に驚かされることが多いですが、自分のような古参のボカロ好きには特別な魅力を感じますね。

 

 本曲「夕焼けソーダ水」は、人の想いが込められた何かをテーマにした楽曲です。それは切ない記憶や嬉しい記憶など、様々な喜怒哀楽が込められているでしょう。
何かに触れるたびに蘇る想いに翻弄され、失ったものを無意識に探してしまう――そんな情緒が、この曲には詰まっています。
誰しもが経験しているような、色褪せていないと思い込んでいた記憶の先で感じる喪失感。その共感が、聴き手にノスタルジックな感情とジーンと胸に響く心の振動を与えてくれるでしょう。

心が震えるような感覚を味わいたい方は、ぜひ本動画を視聴して聴いてみてください。

 

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda式初音ミクV4XVer1.00

 

文書校正   チャットGPT

 

クリプトン・フューチャー・メディア様より

ec.crypton.co.jp

 

 

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