煮干しの一押しVOCALOID曲

VOCALOIDの話題や気になった事を書こうと思います

薄暗い感情を紡ぎ紡がれる繋がりを歌うVOCALOID曲

 

 こんにちは こんばんは 煮干しです

 

 自民党、公明党、国民民主党による政策協議において、所得税が発生する基準である年収103万円の引き上げを明記した修正案について、大筋で合意に至る方向で調整が進んでいます。

 

 その影響もあってか、ここ最近では「年収の壁」について、様々なメディアやネットで盛んに取り上げられています。103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁といった、これまであまり意識されてこなかった税制上の壁。突然注目を集めたこれらの壁に混乱しているのは、きっと自分だけではないはずです。そこで、半ば自己満足的にではありますが、まとめてみることにしました。

 

 

壁の種類

 

 今回話題になっている「壁」には、さまざまな種類があり、それぞれ異なる税制が対象となっております。

 

100万円の壁

 「100万円の壁」とは、住民税が発生する最低年収のことを指します。年収が100万円以下であれば、基本的に住民税は発生しません。

 

103万円の壁

 「103万円の壁」とは、所得税が発生する最低年収のことを指します。つまり、年収が103万円以下であれば、現状では所得税は発生致しません

 

106万円の壁

 「106万円の壁」とは、勤め先の企業規模によって社会保険および厚生年金の加入義務が発生する最低年収のことを指します。具体的には、従業員が51人以上在籍する企業で勤務している場合、この年収を超えると加入義務が生じます。

 

130万円の壁

 「130万円の壁」とは、従業員が51人以下の比較的小規模な勤め先において、扶養から外れて国民健康保険(社会保険)および国民年金(厚生年金)の加入義務が発生する最低年収のことを指します。

 

150万円&201万円の壁

 「150万円の壁」と「201万円の壁」とは、配偶者の所得控除に関わる基準を指します。具体的には、家事手伝いである配偶者の年収が150万円を超えると、家計におけるメインで稼いでいる配偶者による配偶者控除・配偶者特別控除額が徐々に減少し、年収が201万円を超えた時点でこれらの控除が受けられなくなる仕組みです。

 

 厚生労働省に公表されている年収の壁とは?から大変素晴らしいまとめ表があったのでそちらから出典させて頂きます。この表を見れば解像度も上がり理解すると思いますでどうぞ。

 

※出典 厚生労働省 年収の壁を知ろう

 

 恐らく、話題になっている壁の種類はこれで全てだと思います。

比較的簡単にまとめられたのですが・・・この壁について調べている最中に、とんでもない事実を発見してしまいました。それは・・・

 

年収106万円の壁を撤廃!

 

 これは、NHKのニュースで「検討」という名の実質的な確定路線が報じられていました。「そんなん知っとるわ!」と思われる方は多いかもしれませんが、自分としては103万円の壁と共に議論が深まるものだと思っていました。ちょっとショックです・・・。白々しいな!てめぇ!と思われるかもしれませんが、大事なのでもう一度言います、ちょっとショックです・・・。

 

現状と恐らくこれからの変化は以下の通りです。

 

 このような条件変更の背景には、最低賃金の上昇が関係しているといわれています。現在の最低賃金は全国加重平均で1,055円となっており、東京や三大都市圏ではさらに高く、上昇傾向が続いています。その結果、社会保険および厚生年金の支払い義務が発生する上限である106万円に容易に達する状況です。おそらく、これに対応するための変更であると考えられます。

 

新しい壁に対しての対応

 

 新条件である週20時間労働の壁を回避するための有効策としては、複数の勤め先を持ち、週20時間以上の労働時間を避けることが挙げられます。隙間時間で働けるバイトとして有名な「タイミー」などは、まさにそのための有効な手段といえるでしょう!・・・と息巻いてみましたが、派遣元を同一とした複数の勤め先への就労は意味ないかもです・・・。仮に有効だとしても、これはその場しのぎであり、政府に対応されるのは時間の問題かもしれません。

 

希望の光、103万円の壁撤廃

 

 現在、自民党、公明党、国民民主党による政策協議で議論されている103万円の壁の撤廃は、負担増に喘ぐ国民にとって希望の光となっています。上限をどの程度引き上げるのか、またどのような名目で引き上げるのかはまだ不明ですが、多くの国民がこの変更に期待を寄せているのです!。願わくば、国民民主党の基礎控除を引き上げる方式が採用されることを望みたいですね!

 

参考文献

厚生労働省     

年収の壁について知ろう

地域別最低賃金全国一覧

NHK (ニュース)       

”106万円の壁”厚生年金 加入要件撤廃検討の方針 厚労省

脱税理士スガワラくん (YouTube)

全国民へ影響大!?所得税に関係する年収の上限金額が上がる可能性について、どんなことが起こるのか財務のプロが徹底解説します!

お借りした素材

いらすとや様より

いろいろな重圧に苦しむ人のイラスト(女性)

バイト中に休憩するイラスト(女性)

集合している人たちのイラスト(寿司)

 

本日のお品書きになります

 

煮干しがお送りするちょっとした物語

 まず始めに、この物語はフィクションです。物語の中に登場する個人名、団体名、会社名は架空の物であり実在する個人、団体、会社とは関係ありません。

※チャットGPTで文書校正をしています

 



 都内から数十キロ北に位置する山地にて、俺は知り合いの片村さんからの人手不足によるSOSを受け、現場に駆け付けていた。何でも屋稼業を営む俺は、依頼があればどこへでも馳せ参じる。人里離れた奥地でも、絶海の孤島でも、依頼料と出張費を差し引いて利益が出るならば、の話だ。まあ、少し大袈裟に格好をつけてしまったが、実際では僻地への出張依頼の際に余程の利益を提示されないと引き受けない、現実はそんなところだ。

 今回の依頼は、山の斜面の補修工事だ。数年前までは、美しい法面が続くこの道は、バイクのツーリングや車のドライブに最適な場所だったらしい。しかし、今では荒れ果ててしまい、山肌がむき出しの危険な状態だ。昨今叫ばれる少子高齢化や過疎化の影響を地方は強く受けており、税収の減少と人手不足が重なり、インフラの老朽化に追いつけなくなっている。ひと昔前なら、公共工事は「美味しい仕事」とされていた、やはりここでも人手不足が影を落としていて、廃業する事業者は増え続け、それにより自治体の発注する公共工事に応札する業者が極端に減る事態に陥っていた。それでも応じる事業者のいる状態ならいい、だが実入の少ない工事となると話しが違ってくる。何故なら事業者にしてみれば、同業者の減少により舞い込んでくる仕事量は増大の一途で手一杯、しかし人手を増やそうにも典型的な3kな業界だ、不人気さから募集してもに限りがある、ならば収益の多い案件を優先的に消化するのは当然の帰結。そして誰も応じない、または後回しという事態は訪れ、困り果てた自治体は地元の事業者に泣きついてお願いすることもあるのが現状だ。

 今回の現場も、そのような状況の一つだった。半ば廃業状態の一人親方である片村さんが、自治体からの懇願に断り切れず引き受け、足りない人手を補うため、旧知の仲である俺を都内から破格の依頼料で呼び出したというわけだ。幸いにも、片村さんはまだ重機と工具を手放しておらず、作業を進める最低限の準備は整っていた。片村さんは重要な作業を担当し、誰でもできる単純作業を俺たちに任せてくれることになった。

 先ほど「俺たち」と言ったのには理由がある。ありがたいことに何でも屋稼業は順調で、一人では回らなくなるほどの仕事が舞い込むようになり、俺は初めて従業員を雇うことになった。その部下が日下部晴美(くさかべはるみ)。彼女はかつて治安を預かる国家公務員の職に就いていたが、ある理由から依願退職し、我が何でも屋に転がり込んできたのだ。因みに彼女は古都にある結構有名な寺の娘で、格式高い家の出身らしい。しかし今、俺の隣でホットコーヒー缶を手に、ずんだ餅を頬張る冬用作業服姿の彼女は、そんな生い立ちを感じさせない。

 それにしても、彼女はよく食べる。この現場に向かう途中、道の駅で購入したタン塩カルビむすびを二つ平らげ、なんなら峠のポツンとあったコンビニではインスタントカレーうどんまで平らげていた。一日に何カロリー摂取しているのだろうか。彼女の姿を思い浮かべると、まず食事中の光景が浮かぶのはそのせいだろう。

 まあ、そんなことを考えても仕方がない。俺は両手で握ったホットコーヒー缶で冷えた手を温め、白く吐き出した息を目で追った。その白い息は上空で山風と舞い踊り、やがて消え、目の前に広がる薄曇りの空を見上げる。俺の名は兼平竜矢、何でも屋を営んでいる男だ。

 

「あー、雪が降るのも、すぐだべなー」

 

 いつの間にか俺の横には、安全第一と記された白いヘルメットを被った作業着姿で白髪混じりな初老の男、片村さんが立っていて、空を眺めていた。「あっ!? お疲れ様です! 重機作業は終わったんですか?」俺は慌てて立ち上がりながら声を掛ける。

片村さんは軽く頷くと、「作業はもう大体終わったけん、シートみんなで敷ぐべ!」と返し、視線を今しがたまで重機で作業をしていた斜面へ向けた。そこには、荒れ果てていた斜面が見違えるほど綺麗に整地されている光景。「すごっ! あんなに荒れていた斜面がこんなにも綺麗になるんですね!」食事を終えたのか手を払いつつ斜面へ小走りで駆け寄った日下部晴美が驚きの声を上げる。

「お姉さんw、現場の経験まだ浅ぇんでねぇが? こんなの序の口だべっちゃ!これからもっと立派になっからな!」とまんざらでもなさそうに片村さんが得意げ。振り向いた日下部晴美は、「そうなんですか? それは楽しみですw」と笑顔で返した。そのはしゃぐ姿を微笑みながら見つめていた片村さんは、不意に俺の横腹を肘で軽く突き、小声で囁く。

 

「どごで見つけだんだ、あんな美人。最初見だ時、結婚して奥さん連れできたんだと思ったべっちゃw」

 

 突然の言葉に俺は咳払いをしつつ慌てて「彼女とはそんな関係じゃないですよ! あくまで経営者と従業員の関係です!」と否定。すると片村さんは、やれやれと言わんばかりの表情で首を振りながら苦笑いし、「かー!だからおめぇは結婚できねぇんだべっちゃw。あんな美人逃す手あっこねぇべ?アタックすっぺよ!」と苦言を呈してくる。俺は顔を赤くしながら、「う、うるさいですよ! プライベートに踏み込まないでください! このシートを敷くんですよね? ちゃっちゃと始めましょうよ!」と声を張り上げると、トラックの荷台に束ねてあった茶色い絨毯のようなシートを持ち上げ、斜面へ向かった。

 

「おめぇのために言ってんだべ!」


 片村さんの声が背中越しに聞こえてくる。それを聞きながら、俺は黙々と斜面にシートを敷き始める作業に入った。このシートは高い透水性を持ち、斜面の砂利や砂が雨風で流されるのを防ぐ役目を果たす重要な資材である。この作業を適当にやってしまうと、後々に地滑りなどを起こして大惨事になってしまう。だから俺と日下部晴美はシートの両端を持ち、片村さんがそれを引っ張りながら、丁寧に斜面全体に敷き詰めていった。重機で綺麗に整地された斜面に、シートが均等に広げられていく様子は心地よく、作業が進むにつれて全体の景色が一層整然としていくのがわかる。俺たちは声を掛け合いながら息を合わせ、無駄のない動きで作業を続けた。

 

「蛇篭(じゃかご)作っぺ!」

 

 片村さんはそう言うと、アルミのような金属の網状板を取り出し、手慣れた手つきで蛇篭の組み立てを開始した。その動きは無駄がなく、長年の経験が滲み出ているようだった。俺はじっとその作業風景を観察しながら仕組みを理解すると、近くに置かれていた金属の網を手に取り、同じように組み立てを開始。

 片村さんのスタンスは、言葉であれこれ指示するのではなく、「俺のやり方を見て覚えろ」というものだ。もちろん、最終的には自分で仕上がりをチェックし、間違いがあれば容赦なく雷を落とす。そのやり方に慣れるまでには時間がかかったが、駆け出しの頃の俺はそれが彼の流儀だと理解していた。

 ふと、日下部晴美の様子が気になり視線を向ける。何も説明されない片村さんのやり方に、さぞ戸惑っているだろうと思ったが――予想は見事に裏切られた。彼女は俺よりも手際よく、蛇篭をテキパキと組み立てている。

 彼女には観察力がある。いや、それだけではない。観察対象が彼女の興味や嗜好に合致すると、その集中力と精度はさらに飛躍的に高まるのだ。仕事を覚える速さは驚異的で、経営者としては非常に助かる部分だ。ただ、その分扱いにくい場面も多々あるのが難点ではある。しかし、こうして現場での彼女の能力を見ると、改めてその有用性に感謝せざるを得ない。

 俺たち三人は黙々と作業を続け、必要とされていた蛇篭を無事完成させた。片村さんがそれぞれの蛇篭を最終チェックする。細かく確認を終えた彼は「問題なし」と頷き、俺たちはそのまま設置作業に取り掛かることにした。

 

 

 俺と日下部晴美は、蛇篭をシートが敷き詰められた斜面に設置し、片村さんは重機を操ってトラックの荷台に積んである木製の杭を一定間隔で置いていく。このままでは蛇篭が暴雨のような激しい雨風に流されてしまうため、木の丸太を加工した杭を地面に刺し、シートと蛇篭の両方を固定するのだ。

 杭の設置が完了すると、俺と日下部晴美はヘルメットを装着し、杭を垂直に立てた。最後に片村さんが重機を慎重に操作し、杭を地面に押し込んでいく。ある程度杭が刺さると、今度は重機の力を使い、金槌で打つように何度か叩いて完全に地面に固定する。この工程を繰り返し、全ての蛇篭がしっかりと固定されたところで、次の作業に移った。

 片村さんはあらかじめ準備していた割栗石(わりぐりいし)を重機で運び込み、蛇篭の中に慎重に入れていく。割栗石が蛇篭いっぱいに詰められると、片村さんの声が響いた。

 

「割栗石、きれいに敷き詰めっぺ!」

 

 その指示に従い、俺たち二人は厚手の軍手を装着し、割栗石を手で丁寧に隙間なく敷き詰めていく。積まれた割栗石の表面が平らになるよう注意を払いながら作業を進め、蛇篭がきっちりと完成していく様子に満足感を覚えた。ようやく一段目の作業が終わり、小休憩を取ることになった俺たち。片村さんは作業現場を眺めながら、「あと二段重ねれば終わりだべっちゃ!」と呟く。俺は蛇篭の一段目を見上げ、内心「今日中に終わるわけがないな」と苦笑いした。

 休憩中に出てきたのは、暖かいお茶と名物の笹形かまぼこだった。肌寒い中、熱いお茶は体を芯から温めてくれるありがたい存在だ。だが問題は笹形かまぼこの方で、これが案の定、キンキンに冷えている。これを食べるには、お茶と交互に摂取しないと体が冷えそうだ。

 俺はお茶を一口飲み、笹形かまぼこをかじる。その後またお茶を飲む――これを繰り返してしのいでいる。ふと二人の様子を窺うと、片村さんはお茶だけを飲んでいて、笹形かまぼこには一口も手をつけていない。一方、日下部晴美はというと、まるで重機のような勢いで笹形かまぼこを食べていた。「日下部さん、大丈夫? お腹冷えない?」と声を掛ける。彼女はゴクリとお茶で笹形かまぼこを飲み下し、「大丈夫です! 笹形かまぼこって初めて食べましたけど、美味しいですね!」と忌憚なき感想が返ってきた。「そう、ならいいけど」と俺は肩の力を抜き、安堵する。そのやり取りを横で見ていた片村さんが、にやけながら言った。「まるで夫婦みてぇだっちゃw」という発言に、すかさず日下部晴美が反撃する。「セクハラで訴えますよ」と、ぼそり。片村さんはギョッとし、慌てて手を振りながら、「それは勘弁してけろや!」と謝る。笹形かまぼこを口に運びつつ、日下部晴美は淡々と言い放つ。

 

「ワンストライクとしましょう。あとツーストライクで訴えますからね」

 

 その冷静な追撃に、片村さんはペコペコと謝りながら、「怖ぇ娘だっちゃ!」と戦慄している。その様子をのほほんと眺めている俺はお茶をゴクリと飲み干し部外者として楽しんだ。だが、矛先は俺にも向けられた。「兼平さん、あなたもワンストライクですからね?」と日下部晴美は言い放つ。「何で俺まで!?」と驚いて尋ねる俺。「決まってるじゃないですか。片村さんのセクハラを見て見ぬふりをした兼平さんも同罪です。現場助勢罪ですよ」と彼女にそう断言され、俺は困惑しながら「そんなの聞いたことない!!」と叫びたい衝動をぐっと堪えた。

 

 

 蛇篭の二段目の作業に突入。その頃には粉雪がちらつき始め、俺たちは次第に焦りを感じていた。「今日はやれるとごろまでやっぺ!」と片村さんが号令をかける。俺たちは同時に「はい!」と返事をして、黙々と作業を続けた。

 何とか二段目の蛇篭の設置作業を終え、ホッと一息ついた俺は辺りを見回す。さっきまで森林が広がる自然豊かな景色だった場所が、いつの間にか粉雪で白一色に染まっていた。「もうだめだ、撤収すっぺ!」と土木のエキスパートである片村さんの判断が下り、俺たちは重機や道具をトラックに積み込み、撤収作業を開始。

 その時だった。現場近くの杉の木に異変が起こる。バサバサと枝葉が揺れ、粉雪を散らしながら、揺れは次第に下に向かっていく。俺たち三人はその現象を固唾を飲んで見守った。すると、突然「バサリ」と音を立てて何かが杉の木の根元に落ち、そのまま未舗装の斜面をゴロゴロと転がってきた。

 それが目の前の枯草をかき分けて現れた時、俺は思わず目を見開いた。そこにあったのは三色の毛玉――つまり三毛猫だった。その三毛猫は白目を剥き、舌を口からはみ出し、どう見ても死んでいるようにしか見えない状態だった。

 片村さんは困惑しながら「なんだ、この猫っこ・・・」と呟き、日下部晴美は「白目むいてますよ!」と言いながら、迷うことなく三毛猫を抱き上げる。俺はその光景に「うわっ・・・」と死んでいるかもしれない猫を平然と触れる彼女に内心ドン引きしつつ、「日下部さん、生きてる?」と恐る恐る尋ねる。彼女は三毛猫の心臓あたりをそっと触り、「大丈夫です、失神しているだけですね」と微笑んだ。

「カラスにいたずらされだんだべ!」と片村さんは三毛猫の頭を撫でる。カラスに悪戯? そんなことがあるのか? 杉の木の上でカラスに襲われて落とされたのだろうか――そんな推測が頭を巡る。

 その時、「兼平さん! 兼平さん! 見てください!」と日下部晴美が声を上げ、俺はそちらに視線を向けた。彼女が三毛猫の飛び出した赤い舌を掴んで軽く引っ張ると、寝ていた耳がピコッと立ち上がり、離すと再びぺったりと寝るという奇妙な動作を繰り返していた。その姿がおかしくて、俺は思わず笑いそうになり、顔を背ける。「やめなよ!」と俺は半笑いをしながら彼女を止めさせた。

 「そうですか?」と残念そうにしながら、彼女は渋々その行為を中断。その後、彼女の胸の中で白目を剥いていた三毛猫が、突然黒目を戻してハッとした表情を見せると、ぐにゃりと体を曲げて彼女の手から逃げ出す。「意識が戻りましたよ!」と日下部晴美は驚きながらも嬉しそうだ。片村さんは、「はやぐ帰れやっ!」と追い払うように手を振るが、三毛猫は斜面の枯草に飛び込み、ガサゴソと音を立てたかと思うとまた出てきて目をパチクリさせた。その様子に俺たちは戸惑いながら見つめていると・・・。三毛猫はおもむろに突如宙返りを始めた。「芸達者だっぺな!」と片村さんは上機嫌になり、「すごい! どこかで飼われていて芸を仕込まれたんですよ!」と日下部晴美は拍手をしながら宙返りを続ける三毛猫を褒め称えた。

 

 

 数度の宙返りを俺たちに披露した三毛猫は、「はあ」とため息を一つつき、「うなんな」と一鳴きして、突然日下部晴美の胸に飛び込んだ。驚きながらも三毛猫をキャッチした彼女は、ウルウルした目で「一時保護しましょうよ!」と俺たちに懇願し始めた。どうやら、この芸達者な三毛猫をすっかり気に入ってしまったらしい。

三毛猫を撫で回しながら口をすぼめて甘やかしている彼女を横目に、俺は片村さんの顔を窺う。というのも、俺たちは片村さんの屋敷に下宿している身だ。一時預かりをするにしても、家主である片村さんの許可がなければどうにもならない。片村さんは腕を組み、考え込むような仕草をしていた。何を考えているのだろう? 俺と日下部晴美はじっと彼の答えを待つ。すると、片村さんはふっと顔を上げて、にこりと笑いながら言った。

 

「まあ、いいだべっちゃ。一時預かりならな。」

 

 その言葉に、日下部晴美は満面の笑みで「ありがとうございます!」と礼を述べる。彼女の表情からは、心底嬉しそうな感情がにじみ出ていた。そうと決まれば、こんな寒い場所から早く撤収だ。俺たちは残っていた作業を素早く片付け、荷物をまとめると、片村邸に向けて雪が降りしきる山道をトラックで下山していった。

 

 

 麓に降りると、稲刈りが終わった田んぼには薄っすらと雪が積もり、朝方とは全く違う景色が広がっていた。俺は、トラックがスリップして田んぼに落ちないよう慎重に運転しながら、隣を一瞥する。揺れる車内で、日下部晴美は赤ん坊を抱くように仰向けの三毛猫を抱えていた。三毛猫のお腹を撫でるその仕草はまるで我が子をあやす母親のようで、彼女から母性を感じ、その隣では片村さんがうつらうつらと居眠りをしている。その落差に、思わず笑いそうになった。

 数分もすると片村邸が見えてきた。瓦屋根は雪で白化粧され、田舎の風景特有の情緒を醸し出している。歴史を感じさせる荘厳な門をくぐると、屋敷の玄関から人影らしきものが現れ、誘導灯を振りながら俺たちのトラックを誘導してくれる。その誘導灯の明かりで見えたのは、片村さんの奥様だった。俺は慎重に、彼女を轢かないよう注意しながらトラックをバックさせる。後退を続けると、サイドミラーに映る彼女が誘導灯を激しく動かしながら、トラックを叩く仕草をしていて、直後に後方から「バンバン」と音が聞こえ、俺は慌ててブレーキを踏む。

 停車させエンジンを切ると俺は隣で居眠りをしている片村さんの肩を叩き、「片村さん! お疲れ様です。自宅に着きましたよ。」と声をかける。すると、片村さんは大あくびをしながら「もう着いだのが? やっぱ年には勝てねぇなぁ。」と呟く様に言う。そんな俺たちのやり取りをしり目に、日下部晴美は三毛猫を抱いたままドアを開け、先に降りる。すると誘導灯を持った片村さんの奥様が立っていて、開口一番こう言った。

 

「だから無理だっつってだっちゃ! もう年なんだがら、土木は無理だっちゃよ。」

 

 妻からの物言いにヨタヨタとトラックから降りた片村さんは、「うるせぇわ! 飯の支度はできてっか?」と昭和世代ならではの亭主関白を地で行く物言いで返す。それに対し、奥様は片村さんの背中を軽く叩きながら、「なんて口きぐの? 食事の支度はできてるっちゃよ!」と負けじと返した。連れ添って何十年の夫婦によるやり取りは、熟練の漫才コンビのように安心して見れてられる。

 旦那の背中を見送り奥様は振り返ってニッコリと笑顔で、「お疲れ様w あんたらも疲れだんでねぇが? ご馳走用意してっから楽しみしといんよ」と言い終わる前に、怪訝な表情になり、「・・・その猫、何だっちゃ?」と、ここにきてようやく日下部晴美が抱いている三毛猫に気づく。日下部晴美は申し訳なさそうに微笑みながら、「すいません、現場で空から落ちてきたんです。私たちがいる数日だけでもいいので、保護していただけませんでしょうか?」とお願いした。片村さんの許可は得たものの、屋敷を維持管理しているのは奥様。保護するにしても、実際に世話をするのは彼女になるので、奥様の了承は必要不可欠だった。

 

「かわいいっちゃw、三毛猫だっけ? 少しぐれぇならいいっちゃよw。」

 

奥様は快く了承してくれた。日下部晴美はホッとした様子で笑顔を見せ、「ありがとうございます! 良かったねw、おまえw。」と三毛猫の顔をぐりぐり撫でる。

「すいません、わがまま言っちゃって。」俺が頭を下げながら二人に駆け寄ると、奥様はにっこり微笑んで、「いいっちゃw、助がったのはうぢらだっちゃよ。旦那のやづ、できねぇ仕事引き受けでしまって困ってだんだっちゃw。さあ、屋敷の中はあったけぇよ!」とそう言って奥様は俺たちを屋敷へと招き入れる。俺と日下部晴美は揃ってペコリと頭を下げ、奥様の後に続いて玄関へと入った。

 

 

 この地方では、土木業者とお米農家の二足の草鞋を履くことは珍しくない。片村さんも例に洩れず、お米農家と土木業者を兼業する農家だった。バブル期には一財を稼いだ者も多かったが、そんな良い時代がいつまでも続くと信じて散財する者も後を絶たず、結局何も残らずに夢と消えた。俺たちを歓迎するように並べられた調度品の数々は、その時代の名残であり、かの時代の凄まじさを物語っている。

 正直、今日の朝に到着した俺たちはそのまま現場に直行していたため、屋敷に入るのはこれが初めてだった。しかし、この屋敷の豪奢さは予想の斜め上を行くものだった。片村さんとは都内で教えを受けていた頃からの付き合いで、屋敷の話をそれとなく聞いていたものの、ここまでとは思わなかった。

 

「ほら! 上がってけっちゃw ご飯食べっぺし!」

 

 奥様は普通の家よりも敷居の高い土間から板間を軽々と上がり、囲炉裏へ向かう。気後れしていた俺たちも、作業服の泥やほこりを軽く払ってから、その高さに慣れない敷居をまたいで奥様の後に続いた。囲炉裏を囲むように畳が敷かれ、その周りには板の間、鉄瓶、土鍋が配置されている。それぞれ特に目立ったものではないが、材質や作りの良さを見ると一級品であることが分かる。贅沢を通り抜けた末に辿り着いた境地のような空間だ。

 

「この周りにあるもの・・・高級品ですよ。」


 日下部晴美が俺の耳元で囁いた。彼女はそれなりに格式の高い家の生まれで、こういった物の価値が自然と分かってしまうのだろう。無論、俺にもその価値は分かっていた。「そうだな・・・」と短く答える。「何してんのっちゃ? 遠慮しねで座っちゃいんよw」呆然としていた俺たちに、奥様は席に着くよう促す。戸惑いながらも、日下部晴美に抱かれていた三毛猫がひと足先にするりと抜け出し、「ボトリ」と着地すると囲炉裏の前でゴロンと寝転がってくつろぎ始めた。「あれまぁ、ずうずうしいっちゃねぇ!」奥様は苦笑いを浮かべ、不覚にも猫に先を越された俺はすごすごと囲炉裏の前に座る。囲炉裏には大きな土鍋が置かれ、グツグツと何かが煮えたぎる湯気が立ち上っていた。その香りから、春菊、しいたけ、豚肉・・・いや、魚介系かな? と想像を巡らせるうちに、口の中に唾液が溜まってくる。

 奥様は俺たちの前に取り皿と箸を置き、予め用意してあったひつまぶしからご飯をよそい始めた。俺たちは謎の緊張感から背筋を伸ばしたまま待機していたが、そのとき縁側の廊下から「ドタドタ」と足音が響き、障子が開く。

現れたのは着物姿の片村さんだった。シャワーを浴びたのか、ほのかにいい香りを漂わせながら、「飯食うぞ!」と一言。上座にどっかりと腰を下ろす。

俺たち四人の前に、湯気を立てるご飯がキラキラと輝いて置かれると、片村さんが「ほれ! 遠慮すんなっちゃ、ガンガン食えっちゃw」と号令をかけた。それを合図に、俺たちの食事が始まった。

 

 

 取り皿に専用トングで具材を適当に取り分ける俺。その横では、日下部晴美が華麗な手さばきで肉、野菜、魚をバランスよく選んでいる。片村夫妻は慣れた手つきで鍋から好きな具を取り寄せては「ハフハフ」と食べていた。

 俺は早速、自分が取り分けた具を口に入れる。まずは魚・・・。旨い! 旨味が染み込んでいて、実に美味しい! いったい、これは何という魚なのだろうか? 箸で魚の身を摘み、じっと観察していると、「ドンコだべ! ここらの名物だっちゃ!」と片村さんが俺の様子を察して答えを教えてくれた。

 

「へぇ、ドンコって言うんですか? 初めて食べましたけど、めちゃくちゃ美味しいですね!」


 知識欲と食欲が満たされ、俺は舌鼓を打ちながらそう答える。シイタケ、白菜、春菊と順番に食べ進めると、やはり都内で食べる野菜とは鮮度がまるで違う。地物の良さを痛感する。甘みも旨味も、普段食べている野菜とはまるで別物だった。

 俺は一息つき、何気なく日下部晴美を見ると、彼女は三毛猫に鍋の具を与えようとしていた。俺は慌てて声をかける。「日下部さん! 猫に人の食べ物はダメだよ! 塩分が強すぎるから腎臓に悪いんだって!」彼女は箸をピタリと止め、「えっ!? そうなんですか?」と驚いた顔をする。それを聞いていた奥様が、しんみりとした声で言った。「めんどくさいっちゃねぇ。昔なら残飯くれてやってだのに・・・」

 すると片村さんが、「まだ具残ってだべ? 軽く湯煎して猫さやれや!」と命令口調で奥様に言う。奥様はムッとしながら、「なんで私が? あんたがやればいいんでねぇの? まったく・・・」とブツブツ言いながら奥に下がっていった。

ほんのり気まずい空気が流れる中、沈黙のまま食事を続ける俺たち。数分後、奥様が皿を持って戻ってきてこう言った。「ほれっちゃw 冷ましてやったがら、これなら猫舌でも大丈夫でねぇの?」奥様は皿を俺の後方に置く。日下部晴美の膝に座っていた三毛猫は、空気を読んだのかトボトボと奥様の方へ向かい、皿に顔を突っ込んでシャクシャクと野菜を食べ始めた。

 

「いい子だっちゃw 食う子は育つんだっちゃよw」


 奥様は嬉しそうに言いながら、俺たちの元へ戻り席に着く。中断されていた夕飯が再開され、囲炉裏を囲む俺たちの間には再び和やかな空気が流れた。食事が進み、お腹がいっぱいになりかけた頃、不意に・・・。

 

「チッ、余計なことするなにゃあ」

 

 誰かの声が聞こえた。俺はハッとして隣の日下部晴美を見る。猫に鍋の具を与えるのを止められたことを恨んでいるのだろうか? いや、違う。彼女はそんな細かいことを気にするタイプではない。第一、これは知らない若い女の声だった・・・。

 もちろん奥様の声でもない。では一体誰? 声は後方から聞こえた。俺は素早く後ろを振り返る。そこには三毛猫がこちらをじっと睨んでいて、ハッとした表情を浮かべたかと思うと、急に毛繕いを始める。その仕草は、いかにも猫らしく、しかし妙に人間臭い・・・つまり、露骨な猫仕草に妙な感覚を感じたのだ。

 何だあれは・・・? 今、俺を睨んでいたよな? いや、それよりも問題なのは、その後の挙動だ。俺は畳に膝を擦りながら中腰で三毛猫に近づき、じっと観察した。三毛猫はチラリと俺を一瞥すると、焦ったように毛繕いを激しく始めた。

 

(あやしい・・・この猫、何かおかしい・・・!)

 

 俺が三毛猫に触れようとした瞬間、「兼平? どしたんだ? 猫がなんかやったが?」と片村さんが声をかけた。俺はハッとして振り向くと、三人の訝しげな視線を一身に受け、「い、いやw、なんか可愛いなwって」と反射的に思わず誤魔化す。

 その間に三毛猫はシュッパパッと日下部晴美の膝に飛び乗り、露骨に甘えだした。彼女は猫を撫でながら、「怖かったんですよね、あのおじさん。時々目が鋭くなるから怖いよねw」とドサクサ紛れに本音を呟く。

 そんなことを思っていたのか!? くそっ、こっちだってサイコパス女に戦々恐々としてるんだぞ! と心の中で叫びながら、自分の席に戻る。少し腹を立てつつ、鍋の具とご飯をかっ込む俺に対して、片村さんが苦言を呈した。

 

「兼平! 言ったべ? 女さ扱う時は丁寧に、優しくすんだぞ!」

 

そんな彼に奥様がチクリと刺すように言う。

 

「どの口が言うんだっちゃ! あんたから優しくされたなんて、両手で数えるほどしかねぇっちゃよ!」

 

 俺と片村さんは肩身を狭くし、無言で鍋をつつく。一方、囲炉裏の間では三毛猫を囲んだ女性陣の笑い声が絶えなかった。

 

ーつづくー

 

今回のお話に参考にさせて頂いた動画


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380曲目の紹介

 

 

今回ご紹介する曲はアンダーネットです。

 

イラスト、動画、作詞作曲をKEIXENRI(ケイゼンリ)さんがお一人で担当しております。

 

 何でこんなに世界は黒いんだろうか・・・。誰もが誰かの背中を狙っている、己と違う所を探している、自身との差異が大きければ大きいほど、対象に対しての黒い感情は大きく膨らんで行くのだ。彼か?彼女か?、あの人か?、誰かか?・・・・・わたし!?、匿名の誰かさんたちの黒い糸が紡ぎ編まれて裁断されて縫われて出来上がったものが今日もネットに跋扈している。

 

 

 本曲は、匿名という理なき己の剥き出しの感情たちが集合体となったネットワークにおいて、他者との違いから湧き上がる黒い感情をテーマに、初音ミクさんが歌い上げます。(※今回の曲は明確に作曲様からテーマを提示していますが敢えて自分なりの言い回しで説明してみました)

 

 

 本曲の題名である「アンダーネット」の「アンダー」は、「下」を意味する英語であり、「ネット」は「ネットワーク」を意味し、「繋がり」を表しています。この二つの言葉を組み合わせた「アンダーネット」という言葉は、本曲ならではの意味を込めた造語だと考えられます。

「アンダー(下)」は恐らく負の感情を指し、「ネット(繋がり)」はその薄暗い感情が繋がり合うことを意味しているのでしょう。他者、すなわち比較の対象が存在することで、嫉妬や恨みといった感情が生まれます。逆説的に言えば、嫉妬や恨みといった感情は、他者がいなければ生じません。つまり、これらの感情は他者の存在を前提としているのです。

「アンダーネット」という言葉は、こうした他者依存の感情が絡み合うネットワークを象徴し、拗らせたネガティブな集団を比喩的に表現した題名だと解釈しました。

 


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 兵庫県知事選では、従来のメディアを「オールドメディア」と揶揄し、SNSをはじめとしたネット由来のメディアを「ニューメディア」と論じる声が挙がっています。しかし、各勢力の主張があっさりと翻る様子や、その展開の速さにより、外野からは何をもって真実とするのか分からなくなってきていると感じますよね。互いの利権を賭けて都合のいい「真実」を言い合う様子は、本曲で言うところの「アンダーネットワーク」を彷彿とさせ、こうした状況を見ると、人間は欲望に突き動かされる罪深い存在なのだと思わされます。

 

本曲「アンダーネット」は、人間が持つ薄暗い一面が、匿名という限定的な条件下であらわになり、えげつなく浮かび上がる状況をテーマにしています。誰もが抱えている嫉妬や恨みといった感情は、普段は表に出ることなく潜んでいるのは言われるまでなく皆様も知るところ。しかし、「誰にも知られない」と思い込んでしまう匿名性という禁断の果実を味わうと、内に秘めていた黒い感情が奔流となって溢れ出し、容易に一線を越えてしまう・・・。そんな現代の奇病を描いたのが本曲です。

この曲を聴けば、啓蒙となり、いざという時に自分を踏みとどまらせるきっかけになるかもしれません。「ワクチン」のような役割を果たす本曲、ぜひ聴いてみてはいかがでしょうか? あなたの心にも、黒い感情が隙を窺っているかもしれませんよ。少し不安を感じた方は、ぜひこの動画を視聴して、本曲を聴いてみてください。

 

 

お借りしたMMD 

Tda様より

Tda式初音ミクV4XVer1.00

 

文書校正   チャットGPT

 

クリプトン・フューチャー・メディア様より

ec.crypton.co.jp