ペット関連は成長市場! 関連商品、ヘルスケアなどで有料会員のサービス拡充を進めるWalmartの戦略
米大手スーパーマーケットチェーンWalmart(ウォルマート)は、有料会員向けにペット向けサービスの拡充を進めています。オンライン診療を手がける事業者と提携し、会員特典にペット向けオンライン診療サービスを追加します。Walmartはオンライン、オフラインでペット向けサービスをオムニチャネル展開し、新規会員獲得の推進と顧客の囲い込み強化につなげる狙いです。
Walmart、有料会員にペットケアの特典を拡充
ペットの飼い主にとって、物価やサービス価格の高騰による金銭的負担の増加が重くのしかかるなか、Walmartはペット向けのケアやサービスの展開を拡充。手頃な価格と利便性を重視しながら有料会員サービス「Walmart+(ウォルマートプラス)」の会員に多くの特典を追加しています。
ペット向けオンライン診療を無料提供
Walmartは10月18日、モバイル端末によるオンライン診療を手がける米Pawp(ポープ)との提携による新しいオンラインサービスを開始。「Walmart+」の会員に、獣医によるオンライン診療サービスを無料で無制限にアクセスできるようにする予定です。
2024年の初頭に発表したこのサービスは、有料会員サービスの加入者獲得と既存会員の維持を狙いとし取り組みの一環です。「Walmart+」の会員に対し、24時間365日、獣医とのオンラインメッセージまたは動画を通じた相談を追加料金なしで提供します。
Walmartはオンライン獣医診療サービスに加え、その他のペットケアサービスも拡大しています。2023年にジョージア州ダラスでペットケアサービスの拠点を試験オープン。ジョージア州とアリゾナ州に新たに5つのペットサービスセンターを開設することも計画しています。
オムニチャネルでのペット関連サービスを利用促進
また、Walmartは最近、ペット向け調剤薬局のサービスも拡大しており、低価格のペット用処方薬を自宅に配達したり、店舗での受け取りサービスを継続したりしています。
「Walmartは飼い主にとってペットが家族であることを理解しており、Walmartが飼い主にとって信頼できる販売元であることを誇りに思っています」と、Walmart米国本社のペット部門マーチャンダイジング担当副社長であるケイリトン・シャディオウ氏は説明しています。
店舗で買い物するか、ECを利用するかを問わず、Walmartはオムニチャネルでの便利な購買体験と、ペット向け商品、処方薬、ケアサービスまで幅広いラインアップを提供し、すべて毎日低価格で利用できるため、飼い主にとってペットのケアが手頃で便利なものになります。(シャディオウ氏)
ペット関連特典は高い引き合い
ジョージア州ダラスで2023年に開設したペットサービスセンターの成功を受けて、2024年11月には、ジョージア州とアリゾナ州に5つのWalmartペットサービスセンターを開設する予定です。Walmartの店舗内にペットサービスの利用専用の入り口を備えているこのセンターでは、ペット用の医薬品や健康・ウェルネス製品を提供するPet(ペット)IQとの提携により、定期的なペット医療サービスを提供します。
Walmartによると、ペットケアサービスには予防接種、健康診断、軽度の医療処置、グルーミングサービスなどがあり、透明性の高い価格設定とわかりやすいサービスパッケージを提供するということです。
前出の通り、WalmartはPawpとの提携によって、「Walmart+」の会員に無料のオンライン獣医診療サービスを提供しています。オンライン獣医診療サービスは通常、99ドルの年会費がかかりますが、「Walmart+」の会員にはこれを免除しています。「Walmart+」の会員は、回数制限なく何度でも獣医に相談できます。また、相談ごとに個別のケアプランとお薦め商品を推奨します。
この特典は高いエンゲージメントが見られ、「Walmart+」ではすぐに年間で上位にランクインする期間限定特典の1つとなりました。これは2023年に実施したペットケアサービスの拠点の高い引き合いに追随しています。
お客さまはケアから商品ラインアップまで、ペットのための手頃なサービスを求めています。Walmartはこのニーズに応え、ペットの飼い主にWalmart独自のオムニチャネル体験を提供し、オンライン・オフラインを問わずシームレスで便利に利用でき、かつ、手頃な価格のペットケアソリューションを提供しています。(Walmart)
有料会員の価値向上に貢献
ペットケアサービスの拡大も「Walmart+」の魅力を高めています。獣医によるオンライン診療サービスに加え、「Walmart+」の会員にはかねてから、ECの送料無料、食料品の即日配達、ガソリン代や旅行の割引などの特典を提供しています。
2024年8月にはハンバーガーチェーンのBurger Kingと提携し、Burger Kingの商品を「Walmart+」会員がオンライン注文する際、価格を毎日25%割引にする特典を追加しました。
期待されるペット業界の市場拡大
Walmartは、米国の金融機関モルガン・スタンレーが発表したペット業界の予測レポートを踏まえて、ペット産業が継続的に成長する可能性が高いことを指摘しています。
モルガン・スタンレーの調査レポートによると、ペット業界の支出額の伸び率は、2024年に前年比2.5%増、2025年に同3.9%増と緩やかに伸びる見通しで、2030年は同7%増と成長する可能性があると予測。世帯あたりの平均支出額は2026年までに1匹当たり1445ドルに達し、2030年までには1733ドルに上昇する可能性があるそうです。これにより、ペット業界の総支出額は2019年の1220億ドルから、10年後までには2610億ドルに増加する見込みです。
ペット用品のオンライン購入も増加傾向にあります。調査対象者の約70%が過去6か月間にペット用品をオンラインで購入したと回答しており、これは2022年の調査結果から9ポイント増加しています。
ペットの飼い主から得られた動向は、小売業全体にわたるECの世代的な傾向を反映しており、このトレンドは今後も継続すると見ています。(モルガン・スタンレー 小売業アナリスト シメオン・ガットマン氏)
ペットのヘルスケア市場拡大に注目
コロナ禍のパンデミック中に急増したペットの飼育数は現在、横ばいに落ち着いています。ガットマン氏によれば、ペットを飼っている世帯ではペットのケア、特に獣医サービスに費やす支出が増えており、ペットを飼う人の増え方が鈍くなっていることに影響しています。
愛玩動物のヘルスケアは、今後10年間に投資家が注力するべき米国のペット産業の最も重要な分野になるでしょう。(ガットマン氏)
モルガン・スタンレーは、今後10年間でペット診療の需要が大幅に増加すると予測。2024年の調査では、ペットオーナーの80%が過去6か月間に少なくとも1回はペット病院を訪れたと回答しており、約3分の2が1~3回病院を訪れたと回答。これは2022年の調査結果よりも4%ポイント増加しています。
さらに、多くの回答者はペットフードやペット向けのおやつを購入する際に「獣医のお薦めを参考にする」と回答。この購入額はペット関連支出全体の約44%を占めており、モルガン・スタンレーは2023年には1470億ドルに達すると予測しています。