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やいのやいの。

2016年声優の演技ベストアクト選 

ウ ン チ ー コ ン グ っ て し っ て る ?

 

僕は知りません。

 

今年も佳境なのでそろそろ色々総括しなきゃいけないし、今日はとりあえず今年良かった声優の演技を貼っていきます。

軽く声優を論じるときの大枠の観点について話します。

 

コンスタントに良い演技する声優というのは実はいません。大体人気声優というのはアニメ出まくってるんで、演技なんか一から作る人はそういないんですよ(悠木碧みたいな怪物もいるが)。だからかなりレディートゥーメイドな型でガンガン推してくるタイプの声優が逆説的に人気声優化するパティーンが多いんですが、これはキャラと合ってたり合わなかったりというのがブレが大きいです。これ声質に依る所も大きいんですが例えば能登麻美子はあの声質上おっとりしたキャラなら「能登麻美子」として発揮できますがそれは「能登麻美子」的なるものの延長としてキャラが布石されてしまうので演技としては評価し難い部分が出てきてしまう。

 

そうなると声優の演技が見たい場合の理想は一回しか出演してないのにすごいキャラにあった演技をする新人ですが、これは逆にキャラクターのイメージからその声優を引き剥がす必要が出てきてしまうし、あとひとつかふたつ別の役を見てみたいもんですよね。こういう人気声優ってわけじゃないけど、いい演技するのになァ〜みたいな人は推し甲斐があります。その後の演技の伸びしろに期待できるし。逆に他の演技はつまらないのにこの演技だけ面白いということもあるけど。

 

上手いな〜と思うタイミングというのは色々あると思うんですが、基本はシャウトと泣きの演技に寄りがちですね。そこでわかりやすくキャラに感情がノッてるかが出て来るし。でも細かい抑揚とか緩急の出た小さな場面であっ上手いわこいつとなることもあります。(この例でいうと『ユーフォ』の黒沢ともよは別格でしたね。)どこで気づいたかはまぁ感性に依るわ。好みから言うと「やさぐれ」とか「たくらんでる顔」の演技とかは一般的なアニメキャラビルドから出しにくいんで、見どころですね。

 

あとアニメの方向性として声優の演技がブーストできる作品かどうかも割りと問題です。これはアニメ(音響監督)が典型的なキャラ像を各キャラに与えるかどうかで趨勢が決まる気がします。個人的に選んだ作品も岩浪美和のがバリ多い印象。

 

あと当然の指摘として「声優を意識させるような演技は好悪どちらでも本質的なものでない」というのは在り得る気がします。キッズアニメなんかはキャラとの一体感が凄いし、スパン長いんで短期的には演技のハイライトも無いから声優を意識することはあんまりないですしね。でもそうだとしても声優を面白がれる機会があるなら得じゃんね。

 

そういうわけでキャラレベルで何人かいい演技してた人を紹介します。

 

雨宮天(「この素晴らしき世界に祝福を」!のアクア)

雨宮天って自分の可愛さを分かってるから(要参照)かなりキャラ崩壊気味の馬鹿キャラやったほうがブンブン振り回せる印象ありますよね。例えば「モン娘」のラミアとか。そんでこれはお馬鹿でドジだけど割りと悪知恵も利くというキャラ。これは雨宮天がこのために作ったというよりは、もともと持ってた演技の作り方にうまく乗った感じか。ところで#雨宮天に騙されるなってハッシュタグには笑った。

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大空直美(「装神少女まとい」の草薙ゆま)

いやぁ、この声でこのキャラは反則かよと思った。新井里美文脈に「ちょっとだみ声入ったロリはババァかわいい」という黄金率がありますけど、ちょっとファニーなだみ声で、元気なキャラに無類のアホの子っぽさを加味してました。脚本上の感情の起伏に寄せたありがちな演技はちょっと拙いけど、悪巧みしてる時とかの細かい演技が気持ちいいです。まぁ俺がこの手のキャラ好きなだけか。ハマりすぎてこの人次あるの?と心配になるタイプですが。(「ガルパン」の由香里さん的なハマり方)

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M・A・O(「宇宙パトロールルル子」のルル子)

この人、大体巧すぎですよね。初見が「がっこうぐらし!」だったのでなるほど声質的にはお姉さん枠かぁ〜と思ってたらどんどんキャラ観更新してきて、今は「フリップフラッパーズ」でもガンガン回してますが、抑揚が独特で何演じても憑依しながら自分のフィールドに惹きつけられる、万能型のキャラ志向というか。このキャラは独白が多く、自己消沈的でナイーブなのに自分の状態に対してシニカルという微妙な年頃の女の子を上手く演じてきました。ハイライトは二話の後半。M・A・Oって名前、最初みたときには源氏名だと思うよね?(実際に俳優業の源氏名だと知ったら納得したけど)つかMAKOどこ行った?

 

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小野友樹(「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」の東方仗助)

小野大輔の空条承太郎も板につくまでにだいぶ時間かかった気がしますが、この人一話から全開に空条仗助そのものでビックリしました。イメージから全然外れてないし、キャラの特徴であるヤンキーというより任侠映画風の節回し、「見得」を抑えてる、多分すごい準備したんじゃないかな。小野大輔の承太郎は普段の演技がテンション合せづらそうで生硬いんですが、こっちはおバカ回でもかなり柔軟でした。あと億泰はもう完全に放送前から高木枠よ。お前は絶対何の準備もしてないのに合い過ぎかよ、あれか、いきなりガンダムX操縦できたガロードみたいな感じなのか。

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 小林裕介「Re,ゼロから始める異世界生活」のナツキスバル)

小林裕介、これ以前にも演技してたし何本か見てるんですけど全然意識してませんでしたが、こんだけアクの強いキャラを完全に最後は自分のものとして消化してましたね。批評っぽいことを言うとまさにナツキスバルが詰め込みすぎの「演じ過ぎ」なキャラクター性から無力感を経由して個性を残していくというビルドゥングスロマンキャラなので、それを追う声優の演技のダイナミズムとしても申し分なく面白くなるはずなんですよ。でもこの場合、一番美味しかったのはやっぱり中盤のかなりイカれてる時のイカれ演技でした。松岡くんのベテルギウスロマネコンティとのキチガイ合戦よ。つかベテルギウスは分身可能設定なのに、怪演すぎて誰もついてこれないし他の声優が演じたベテルギウスが松岡くんの劣化コピーになってしまったという。すげぇ

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岩永洋昭(「ベルセルク」のガッツ)

これ、「岩永洋昭」役のベルセルクのガッツって書いてもいいんじゃねぇのかってレベルだった。映画版からの続投だからこれも今年じゃないんですが、とにかくかすれて厭世気味の低い声が一般的なアニメの男性声と発声が違うし、ガッツという男の異質さにハマりすぎ(まぁ本業俳優だからな)。うわ〜この演技難しそうみたいな所も問題なくアニメっぽくやれるのに何度かびっくりした。今や在りがちな人気男性声優が演じてたらと思うとゾッとするぐらい。一回鬼武者で声あてた金城武は「某演技」呼ばわりされたけど、こっちはエッジがバリ立ちだからめっちゃアニメっぽい。というか任侠映画的な見得ってやっぱりアニメっぽいんだよな。

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黒沢ともよ(「響け!ユーフォニアム」の黄前久美子)

まぁ諸所で話題になってるけど、今年のベストアクトの一つですよね(実際は今年じゃないけど)。なんというか、黄前久美子には実はもっと在りがちな声優がついても機能するだろうけど、これにつけた黒沢ともよの演技が今まで聞いたことない感じなんですよ。黄前久美子はすごくシニカルな人柄なんだけど、そのシニカルさがだら〜んとした緩みみたいな感じで表出する(例えば第一話前半で見せたいくつかの気の抜けた場面)ときのほうが黄前久美子(黒沢ともよ)が気を張っているときの「イカニモ演技」より生っぽい感情の起伏が出てきてリアルな感情の稜線を感じます。こんなすごい演技するのに黒沢ともよはこれ以外の役は典型的なアニメ声のキャラで割りとつまらないのがますます面白いが。

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悠木碧(「僕だけがいない街」の雛月加代、及び「ステラのまほう」の藤川歌夜)

この人は前に「禁呪詠唱」の役がすごくて記事書いたことあるんですが、ブレイクがかなり前なだけにイメージはもう定着したと思ったらそれをぶっ壊更新していくプログレッシブな人です。さっき「声優を意識させる演技は〜」みたいなこと書きましたが、上の二つの役、あんまり上手いんでクレジットで名前を見たらそこで悠木碧だとわかってびっくらこいたんですよ。なんでって、こんなに有名な声優が何度も驚かれるなんてかなり異常なことです。何クールも跨いで同じ人の声聞いてりゃ他の作品に出ても一話で嫌でもダメ絶対音感が作動してくるもんなのに、それをかいくぐって、初めて聞いたように見せかけてくるんですから。

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 正直に言って声質自体は狭くて弱い。張るとかなりダミるので、シンフォギアのビッキーとかちょっと苦しそうなぐらいだし。昔演じたGOSICKのヴィクトリカも原作じゃ「老婆のような」声って形容ですから、むしろ悠木碧「っぽい」キャラが特別魅力がないと思う。ところが本人もそれを了承してるのか、強いて戻ってくる場所がないので、キャラ志向で演技を作ってくる技量が他より高い。本人も頭いいんだろうなぁという演技の作り方だし、wikiの一覧みてるだけでいい演技ばっかだなぁ〜とニヨニヨしてくる。今後も期待できる人ですね。

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因みに今年も僕が苦手とする声優は柿原徹也、浪川大輔、川澄綾子辺りです。 理由は名前聞いてわかった人以外はまぁ気にすんな。

 

(DimensionWのミラちゃんの上田麗奈も入れるか迷ったけど、あの子ばくおん!見たら不安になってきた。大丈夫なのか>)

 

おわり。

あ、あと作品単位も。

 

「オカルティック・ナイン」

全員脚本上の要請でクソ早口で設定や考察を挟むから内容の密度もさることながら、それぞれの役の演技が出て来る。短い時間に感情の起伏とか抑揚が挟まられると、主要キャラのメンツは特にキャラを読み込んでるのが伝わってくる。

 

「亞人」

宮野真守は単体で上げてもいいかなぁと思ったけど、この作品は全員スペックが高くてよく選ばれているというか演技指導が相当入ったんだろうなという印象がある。予想だけど3Dアニメは音入れの段階でもかなりまとまった情報が手に入るからキャラを想像しやすい?大塚芳忠演じる「佐藤」も実は政治犯ではなくトリガーハッピーのサイコパスだったというキャラクターの性質を最初の演技から明示せず、ゆっくり明らかにしていくし流石。あと細谷くんもいい演技してたけど、今年はこの一本に欠けた印象。

 

「おそ松さん」

これはキャラと設定上、完全に声優劇化してた…割りには全員切れ味のいい演技で有名声優の演技の博覧として面白かったんですよね。一つには全員固定の演技を持ってたから、それらの演技が均質な絵面のキャラにカラーパレット的にぱきっと分かれた性格の差異を与えてたからかな。特に誰がというわけではないが、櫻井孝宏が出ずっぱりの割りに暴れまくってた。つか櫻井孝宏はなんというか石田彰みたいな枠に移行しつつあるな。

「昭和元禄落語心中」

これも同上の理由で完全に声優の独壇場。そりゃ噺家やらせても声優業だからうまいわな。そりゃキャラもすげぇよな〜。

 

 

おわり

 

そのうち、今年のアニメ十話も選びます。