かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

日本政府のオープンアクセスに関する方針・動向がわかる(?!)・・・日本学術会議主催学術フォーラム「世界のオープンアクセス政策と日本:研究と学術コミュニケーションへの影響」参加記録

一時はイベント終了後当日にその記録をブログに上げることが売りだったこのブログですが、今回はもう3週間前のイベントの記録です(汗)
一応の言い訳としては、このイベントの記録はカレントアウェアネス-Eに書くことになっていたので、そちらの公開まで待っていた・・・というのがあります。


まあそっちの公開からももう2週間経っているんですけどね!
年度末〜4月頭の大学教員にスピードを求めてはいけない・・・。


ってことで、min2-fly個人の感想としてはカレントアウェアネス-Eの記事のとおりです。
科学技術振興機構(JST)が「いずれ助成研究のOAは義務化する!」と強く明言されていたことを筆頭に、機関リポジトリは普及しつつも政府主導のOAそれ自体はなかなか進んでいない印象の強い日本ですが、少なくとも方針としてはOAでやっていくってことが、だいたいの関係機関(NDLは除く)の間で共有されていることがわかる、素晴らしいフォーラムであったかと思います。
あとは具体策としてどうやるかを話していこうと。


・・・と、まあ総論はそんな感じでいいとして、字数の関係で各論についてはほとんどさらっと流すだけになっている上記記事。
パネリストの皆さんの発表もいずれも面白かったのに全然その内容を盛り込めず・・・それじゃまずかろうということで、今回ここにいつもの感じのイベント記録もアップしておこうと思います。
もっとも、今回はカレントアウェアネス-E向けと思ってメモそのものは公開するか決めていなかったので、いつも以上に荒いところが多々あります(大汗)
そこはある程度はお見逃しいただきつつ、誤字脱字・事実誤認等お気づきの点があれば、コメント欄等にてご指摘いただければ幸いです。
また、例によってあくまでmin2-flyの聞き取れた・書き取れた・理解できた範囲でのメモであることもあらかじめご了承ください。
すっかりイベント記録とる頻度が落ちているので鈍っています・・・


では、まずは冒頭の挨拶ラッシュから!
挨拶といいつつここも結構面白い話がいっぱいですぜ!!




浅島誠先生(日本学術会議・学術問題検討分科会委員長):趣旨説明

  • 日本の学術の根幹にかかわる問題が今、起きている
    • オープンアクセス…ジャーナルを読めるかどうか、という問題
  • 経緯
    • 日本でこの問題を取り上げようとしたのは10年前…2004年に国立大学法人化
      • そのとき、地方の大学や小さい研究所が、読みたいジャーナルが突然読めなくなりだした。価格高騰が原因という
      • 学術会議でそれを受けて雑誌をどうするかが問題に取り上げられた
    • 2010年…検討の結果、「包括的学術誌コンソーシアムの創設」の提言
      • 日本の学術/学術情報関連団体が集まって会議した結果に基づく提言
      • 日本…学術・研究は高いレベルにあるが、その投稿・出版は海外誌に依存している
        • その出版者が購読料をとるので、だんだん読めなくなる
        • 海外では電子出版が非常なスピードで進行
        • 多くの大学・研究所で購読雑誌の消滅、学術活動の基盤がガタガタに
  • そこで出てきた喫緊の課題…オープンアクセス
    • 米国…公的資金の研究成果はオープンアクセス化へ
    • 英国…Finch Report.オープンアクセス化の方向
      • ヨーロッパはもともと積極的だし、中国は国の方針でOAに
    • Global Research Council、世界の助成団体の集まりの中でも、OAを歓迎、各国努力をするようにと勧告
  • この方向の中で、実際我々は?
    • 雑誌…読めない/調査によれば、研究者が読みたい雑誌の85%は各大学で読めていない
      • 「こういう問題を日本として取り上げて欲しい」という声/雑誌を大学で買うのをやめて各個人で買ったり、構成員の8割が読みたいジャーナルが読めず、世界の動きが見えないという意見も
  • 分野や国による違いもある…日本モデルの構築が必要
    • 黒船来襲と恐れるのではなく、社会に必要な研究成果の公開とは何かを考える機会
  • いろいろなOA化の手段
    • Gold OA…著者支払い型のモデル/払えるところと払えないところがある
    • Green OA…著者が自己責任で公開
    • Hybrid…購読誌にプラスアルファで払ってその論文だけOAに
    • SCOAP3
  • 我が国の学術の活性化/発展のためにはどうするのが良いか、率直な討論を
    • 我々は…日本としてはどういう風に持っていくのがいいか? 助成機関としては?
    • ぜひ活発な議論を

挨拶

大西隆先生(日本学術会議会長)

  • 最近の学術会では「オープン」がキーワードの一つ
    • オープンアクセス、オープンデータ、オープンイノベーション…
      • OA:学術論文を制約なく、課金なく読める/公開する
      • OD:データそのものを公開/課金なし
      • OI:企業が自社だけでなく他社の技術も活用して新たなイノベーションへ
    • この3例だけでも「オープン」の意味が違う…前2者は誰もが対価なく利用できるという意味だが、OIでは他社の特許に利益を配分することが織り込まれている/企業の枠を超えた技術探索ではあるが、無料での利用ではない
    • OA/OD…「無料で」を含むにしても…
      • OA:研究成果を広くしらしめることで自身の研究を多くの人に知ってもらう
      • OD:データを使ってこれから研究することもある段階でデータを無料で公開する、というプロセスにはためらいの多い研究者も多い
    • 査読・出版費用は誰が負担? データの負担は?…これはオープンにすることの利益が最終的に誰に帰属するかによって決まる、簡単には解けない
  • 今日の主題はその中でもOA…そこで私からの考えを述べたい
    • 2013.6、Royal Societyで世界の科学技術関係機関を集めた会議で取り上げられたテーマの中に、OAが入っている
      • OAの目的の中で、発展途上国/先進国の格差問題を取り上げた人物あり。科学研究基盤の一つの公平を確保しようという趣旨
      • しかし論文アクセスの問題は先進国/日本国内でも起きている。論文にアクセス出来ない研究者の増加
    • しかし問題はアクセス公平を確保する方法
      • 中途半端にやると単なる利権の移転/争奪にとどまる。思わぬ副産物を産まぬよう、着実にOAを進めることが重要
  • 国際的にはGold/Greenの2つの方法が提示されているが…
    • Gold:誰が費用負担? 査読は維持される?/Green:査読の質はどうなの?
      • いずれも課題はあるし、誰がどの程度の負担をしそれが適当であるのかも議論の余地がある
  • 日本の問題…科学に国境はないが政治にはあるし経済にも
    • 当面は科学研究の成果が国内で使われることを睨む、応用によって産業発展に結びつける上でもOAが重要
    • しかし我が国の学術出版システムはすべてにおいて欧米諸国に劣っている
    • 伝統的に、日本の学者はレビュー/出版雑事は傍ら仕事と思っている、積極的に取り組んでこなかった
      • しかし研究力の中には成果発信・世界に知らしめる力も含まれている
      • OAへの取り組みが日本の学術につきつけられている
    • もちろん投稿先選択は研究者の自由であり、日本の出版が選ばれないのも仕方ない?
      • しかしOAが模索段階にあるのなら…国内でもOAを模索し、ノウハウを蓄積し、国際的な議論にも対処すべき、という意見に私は共感を持っている
    • 今日、大いに議論されることを期待したい
  • OAの別の問題…科学研究成果の実用化重視/この傾向は世界共通
    • そうなると、科学研究成果の発表は実用化に向けた中間成果物、ということになり、論文を出すより製品/産業化が重視される
      • 教科書に載るくらい広く知られることの価値と、製品化・利益を生むことの価値。どちらを重視するかは難しい問題…ここにも議論が展開されることに注目したい
  • 日本学術会議では浅島先生のリーダーシップの元、2010å¹´8月に既に提言を出している
    • 学術出版の寡占化への危機感と、我が国がどうするかの議論…その議論をより発展させ、我が国の科学者コミュニティがどのようなリーダーシップをとるべきか、活発な議論に期待したい

小松親次郎さん(文部科学省研究振興局長)…今日は国会での所要により欠席/下間康行参事官が代読

  • 文部科学省…今回のシンポジウムに共催の立場で参加
    • 局長は国会対応で来れないので下妻さんが代読
  • 資源の少ない日本の発展を支えてきたのは科学技術・学術
    • ノーベル賞受賞者は18名で世界8位、21世紀になってからは9名で米英に続く世界3位。高い水準に日本の学術はある
    • 一方で…日本は世界の先進国で唯一、論文数が伸び悩んでいる/国際共著論文が少ないことへの危惧の声も
    • 新興国の台頭・少子高齢化…国際競争力を失いつつある/学術的なイノベーションが更に望まれる
    • 多様で独創的な研究、ハードルの高くリスクの大きい研究、異分野・国際共同研究により、予測できない成果をもたらす学術の振興は持続的な社会の発展に不可欠
  • 研究資金について…我が国を支える基幹、科研費の拡充や基金化等の効果的に使用するための制度改善を実施中
  • 政府としての科学技術・イノベーション政策に不可欠な学術振興のために…科学技術・学術審議会に学術の基本問題に関し取り組む場も設ける
  • その他、MEXTがやっている政策について色々な紹介
    • 博士号取得者の減少/学生の主体性を確保するための教育の質的転換
  • 研究者が優れた研究を実施し、成果を出す…その成果を活用して更に優れた研究を、という循環
    • しかしその成果の循環に問題が生じている。学術雑誌の価格高騰により自由に研究成果にアクセス出来ない状況
    • 文部科学省の実態調査…平成23年度には日本の大学で合計218億円をジャーナル購読に費やしている
      • 世界的な論文数の増加はあるにしても、寡占的な出版者による値上げが行われている
      • それでも論文は読まないといけないし、自身の評価のためにも購読料が高くてもインパクトのある雑誌に投稿する
    • この構造が論文の流通を妨げている…この世界共通の課題を解決するために出てきたのが学術情報のOA
  • OA
    • Gold OA/Green OA
    • 日本…機関リポジトリの構築によりOAを推進しようとしている/G8の会議でもこの話題は取り上げられていて、公的資金による研究は世界的にOAの方向
    • 科研費の中にも、OA雑誌刊行の支援や、電子ジャーナル流通プラットフォームとしてのJ-STAGE高度化も図っている
    • 機関リポジトリについては…博士論文の公開を義務化、機関リポジトリでの公開を原則としつつ、NIIで共用プラットフォームを作って支援
    • OA雑誌…まだIFが高いような雑誌は少ない+掲載料負担が必要
    • 機関リポジトリ…著作権処理のような事務負担は生まれるが費用負担は生まれない
      • この状況を踏まえて、MEXTでは機関リポジトリ構築を推奨
  • OAかとは別に…日本に有力な雑誌がいるのでは?
    • 日本の論文の8割は海外に投稿され流通
    • 日本に海外から論文を取り込むような雑誌の取り組みがいる
  • 研究者評価…IF以外の適切な方法についても議論していただきたい
  • MEXTでも雑誌については検討会を設けて議論する予定
    • 今日のシンポジウムが、研究者コミュニティ全体、科学者コミュニティの皆さんが考え、良い方向を示していただきたい

「オープンアクセス影響下にある新たな学術誌刊行支援」(安西祐一郎先生・日本学術振興会理事長)

  • OAはもう世界的な流れ/特に公的資金の成果は誰もがアクセスできるように、という理念は世界的に共通している
    • 日本はキャッチアップするポジション
  • JSPS、JSTもメンバーになって、Global Research Council、世界の学術振興機関による会合が毎年ある
    • OAはずっと喫緊の課題。先進国/途上国の問題も含めてホットな議論がされている
    • 学術振興/学術研究の発展はそれぞれの国にとっても極めて重要な基盤をなす…その中でOAの問題を検討して、良い形で実現することが重要
  • JSPSの紹介
    • 研究者の活動を安定的/継続的に支援する。短期的でない、安定していて継続的な資金支援を行いたい
    • 研究成果の公開発表について…これも科研費により支援している
    • 優れた日本の成果の海外への情報発信、国際化の方向に強く触れている…その中で学協会が刊行するものについて、紙⇒電子化・OAにスイッチすることを支援
  • 日本の研究者の状況
    • 国際的な論文シェアは減っているが、海外誌への投稿割合は減っていない
  • 日本の学術情報発信機能を強化するために
    • EJ移行とOA…自然科学系はEJに移行しているし、国際的な発信強化のためにOAを取り入れたい
    • 国際的な発信機能の強化/OAについての支援をすることを、JSPSとしては強調していきたい
  • 科研費による取り組みについて
    • H.25年度以降やっている…研究成果公開促進費の中に「国際情報発信強化」を取り入れている
      • 雑誌の国際認知を高めるための取り組みやOA誌刊行、EJ化等が実際に行われる
      • 外国人の編集委員の増加や、雑誌への注目を集めるための取り組みも…そういうことに力を入れているところ支援したい
      • 論文投稿数を増やすための取り組みも支援したいと考えている
  • 国際情報発信強化の取り組みに関する説明つらつら
  • 私見:
    • OA誌は掲載料が高いことが多い…大規模プロジェクトに入っているような研究者なら掲載料を出せても、一人でやっているお金のない研究者をどうやったらサポートできる?
    • OA誌…採択可否が短期であることが多い。時限があるところはそれがありがたいわけだが、大規模プロジェクトに入っている研究者ほどOA誌に出しやすいのでは?
    • 査読…購読誌と違う形で取られていることが多い。その文化の違いを、JSPSのような幅広い研究者を支える機関がどう対応していくのか?
      • いずれにしても…OAは世界の大きな流れ。止めることはできないしやるべきではない。OAを日本として、日本の研究者が積極的に進めるには、課題を洗い出して克服する合理的な方法を考えなければならない
        • こういったフォーラムで議論が進んでいろいろな手が取れるようになると嬉しい

「日本の学術政策とオープンアクセス政策を活かした将来観」(中村道治先生・科学技術振興機構理事長)

  • これまでの話からも…いろんな問題があって一つの解ではいかない
    • 研究者、研究コミュニティとしては自分の成果はできるだけ多くの人に読んでいただきたい、当然
    • data-drivenや共著など、知識を共有しながら研究することを考えても、OAに反対する研究者はいまい
    • 一方でお金の問題…大学も研究機関も苦しい中でどうやってお金を捻出するか?
      • その議論は整理してやっていくのがいいのではないか?
  • JSTの立場から、最近やっていることを紹介したい
    • JSTの助成による研究は年間5,000件、日本の年間70,000論文の7-8%。かなり質のいいものが多く、海外の雑誌に投稿されることが多い。まずこれを前提に
  • OAの背景
    • 公的助成の成果は広く国民に知らされ、利活用されるべきである
    • 手段もある…インターネット/紙に印刷しなくても世界に自身の研究成果を素早く届けられる
    • 予算が厳しい中で、国際出版者による論文独占への危機感もある
    • OAにより知識を生み出す側と使う側が垣根なく、自由に利用できる状況を早く作ることが我々のテーマである
  • OA…H.24、科学技術・学術審議会の学術部会の報告により、OAを積極的に進めるべきとの提言がなされた
    • それを受けてJSTとして何をやるべきか考え…2013.4にJSTのOA方針を出した。JSTの助成による成果を発表する際は原則、OA化すること。OA化を強く推奨する(recommendation)
      • 助成の公募や新領域を立てるたびに周知している
    • 2014.4には、これを「義務化」に一歩進めたいと、この一年、内部では検討していたのだが…まだ時期がはやい、もう少し時間をかけてスムーズに移れるように、やることがまだあるんじゃないかということになった。この点についてご意見いただければありがたい
    • GRCでもこの問題を議論していて、方向はあっている。今年、北京で開催される年次総会では各国の状況のレビューがなされる
  • 海外…NIHが積極的に取り組んでいる。2008年に既に義務化、2014.2時点で80%の論文がOAに
    • NIHがここまでやっているので日本/世界の研究者は大きな恩恵を受けている
    • 日本の場合、わかりやすいデータはないが…NIIのIRDB、機関リポジトリの情報を集めているインフラがあって、それによると日本の大学には405の機関リポジトリがあり、年々コンテンツが増えている。雑誌論文は現在21万件入っている…が、それが査読されたものかどうか等の詳細はわからない。ただ、リポジトリにどんどん入れようという機運は高まっている
    • 博士論文のOA義務付けはこの流れを加速すると思っているし、J-STAGEも日本のジャーナルの育成に使っていただけるものと思っている
  • JSTの助成論文のOA状況を…今日は出せないのが残念
    • 6〜7割はOAにしているという先生もいるし、じわじわ進んでいるんじゃないか?
    • 最終的にはJSTは義務化する方向だし、それが研究者の皆さんのお役にも立つのではないか?
  • そのためには…何を解決せねばいけないか? JSTはなにをしなければいけないか? まさに調査中
    • JST…ファンディング機能と情報流通機能を併せ持つ。そういう点でも貢献していきたい
  • 最後に…研究データのオープンアクセス化をどうするか? 時間があればこれもぜひ議論を
    • GRCでもここはまだ立ち入った議論はできていない
    • G8の会合ではここに入り込むことがもう決められているし、今年もまた議論が進むものと思う
    • 研究者の皆様方にとっては非常にインパクトがあることと思う
    • その中で、欧米ではResearch Data Allianceを立ち上げて、世界的にどうやっていくか議論を始めているし、助成機関はそのコロキアムというのを別に作ってやっている
      • ぜひ日本からも積極的に参加いただいて、世界のデータ共有の議論に入っていただく必要があるのではないか?
  • 日本がなにもしていないわけではない
    • JSTにはバイオサイエンスデータベースセンターが既にあり、いろいろな研究の成果をここに集める仕掛けを構築中…研究者に貢献できると思う
    • 材料分野の中でも、material informaticsの振興は世界的な課題だが、物質・材料研究機構(NIMS)でやっていて、JSTとNIMSで共同で検討している
    • 世界に発信できるDBを分野ごとに作っていくことを進めたい。ご理解いただきたい

「ドイツ・欧州の学術政策とオープンアクセス化による影響」(Ralf Schimmerさん・Max Planck Digital Libraryディレクター)

  • マックス・プランク協会とOA
    • Max Planck…Berlin宣言について。世界470以上の研究機関が参加(日本は未参加)。中身はBOAIと似たようなもの
      • 2013.11…Berlin宣言10周年を祝い、Max Planckで会議開催、新たなステートメントも出す
      • この理念はMPのルールにも反映されている…ただし義務化はしていない
    • Green or Gold?
      • 機関リポジトリもあるが、MPとしては非常に強くGold OAを支持している
      • 購読システムは機能不全、時代遅れのもの。このシステムを革新的に変えたい。購読費用をOAにシフトすることでOA予算にあてたい
      • MPの中には十分な資金があると考えている。また、国レベルでも現在、購読モデルに払う以上の額にはなるまいと試算している
  • 各国のOA/研究振興機関について
    • ドイツ
      • Berlin宣言の翌年、ドイツの研究機関はOAの連合を組む…2007年にはデジタル情報イニシアティブになり、5年間実施される
      • 2013年に制度改革、ドイツの学長や研究機関がこのイニシアティブを支持している
      • WGがOAについて活動/ナショナルライセンス、ナショナルホスティング、研究データ、法的な問題…著作権や紙と電子の税率の違いの問題に取り組んでいる
      • ドイツ研究振興協会…ここもOA出版の資金に関わっている/いくつかのプログラムがあり、大学に対してAPCのための助成をするのに使われている
        • 予算の3分の1を大学は自前で用意、3分の2を研究振興協会から得る
      • 新たにGold OAのWGも立ち上がっている。OAのグループ+ライセンシングのグループが協力。出版者との交渉等を行っている
    • EU
      • インフラが既にある程度、ある。通常、欧州の助成プログラムは7年単位。Horizon2020が、2020年まで続くプログラム
      • 前回のFP7でOA pilotという、7つの領域を対象とするものがあり、またGreen/Goldについてのデータ収集も行われていた
        • 「観測所」とも呼ばれる
      • Horizon2020ではOAを義務化/EUから資金を得た研究者は、すべての学術領域において、成果をOAにしないといけない
      • データのパイロットも開始中…まだ義務化はしていない、パイロットの段階だが、プロセスの終盤では義務化されるかも?
    • イギリス
      • Wellcome Trust…かなり強力な義務化を実施。資金提供を受けたら必ずリポジトリに登録するように義務付け
      • Finch Report…OAへの取り組み強化
        • イギリスではHybrid Journalã‚‚OA雑誌の中に含んでいるが、ドイツではHybridは支持しないし、フランスもサポートしていない。Hybridへの対応は国によって違う
    • Science Europe…ヨーロッパの助成機関と研究機関の統合体/強くOAを支持
      • グローバルな競争時代のビジョン、ヨーロッパの研究におけるOAを進める
      • Berlin宣言に次ぐくらいの野心的な政策を実施している…2010年にWG設置、以降ずっと活動、率いるのはMP
      • WGが2013.4と2013.10に、OAと、より広い政策についてポジションステートメントを発表
    • GRC
      • 2012年に設置された際に、OAを鍵となる分野として位置づけ
      • 今年の北京での会議の後、2015年には日本が主催すると聞いている。日本でOAを進める推進力になれば
      • Berlin宣言への署名がこの時期に行われるとさらに良いのだが…
    • 米国
      • 現在の米国での議論はOA義務化。NIHで既に義務化されている、2008年にそれまで任意だったものが義務付けになった
        • 米国の議会ではこの義務化をなくそうという動きも出たし、逆に幅広くしようという動きもあったが、どちらも失敗している
        • 欧州では議会でこのような議論は起こっていない。科学技術に関する省が関心を示すことはあるが
      • 2013.2…米ホワイトハウスがOA指令(OSTP指令)を出す。6ヶ月の間に提言をせよとしたところ、3つ出てきた
        • NIH:PMCã‚’Pub Fed Centralにする、大きくするという提言/大学側…SHAREの提言/出版側…CHORUSの提言
          • まだ意思決定はいずれに対しても行われていない。大統領府がいずれかを支持するのか、まったく違う考えを示すのかはわからない
  • OAの成長
    • Web of Scienceに載っている論文を対象にOA状況の調査を実施
    • 過去の10〜11年で、Gold OA誌に載っている論文はずいぶん増えている
    • 2001年にはGold OAは3%⇒現在では12%に
      • 日本がけっこう進んでいる/ドイツはそれに比べると遅れている
    • OAはどの程度重要な論文で実現されているのか? 質は劣っているのか?…引用文献中での状況を見てみる
      • OA論文が研究論文中でどれだけ引用されているか見たところ…国によって差はない、どの国でもOA論文が引用文献中に占める割合は上昇している
    • MPのGold OA…2012年には約1,000の発表論文がOA
      • BMC、New Journal of Physics、Copernicus(Geo系)、そしてPLOSが多い
      • 機関外の共著者がいる場合もあるので、全APCã‚’MPが出しているわけではない。将来的にも60%分くらいがMPの支払いになるのではないかと予想
    • OA出版者の状況
      • 上位20社が発表論文の80%を占める。そのうち4社がOA専門の出版社
      • 購読モデルの出版社と同じくらい、OA出版社は重要
    • OAは力強い/現実のものとして見ている
      • 購読モデルへのプレッシャー…正当性への疑義、システムとしての崩壊
      • システム全体として、OAにするという意向が必要であり、それもGoldの方がダイナミックなモデルと考えている
      • お金の流れの再設計が必要
      • Finch曰く(Berlin会議にて):「変化は不可避である。これを認識し、受け入れ、manageしなければいけない」
        • manageしなければ、というところがいい。持続可能なものにするにはmanageが重要。その上でもSCOAP3は重要な具体例と思う
  • 今後のOAへの移行…SCOAP3について
    • HEPの重要な雑誌がOAに移行/資金源はCERNが設置した国際コンソーシアムの拠出金
    • 購読モデルの予算の振替
    • 図書館コミュニティのサポートが重要…そのプロセスには人手も手間もかかった
      • 日本ではNIIがコーディネータとなり、交渉にあたってくれた。その尽力に感謝する
    • SCOAP3…MPにとっては14番めに重要な論文掲載元
    • SCOAP3参加誌がOAになることで…MPのGold OA率はかなり上昇する
      • MPが引用している論文の中での割合を見るとさらにSCOAP3は重要
    • 今後は更にコンバージョンが進んでいく?
  • まとめ:
    • OAはダイナミックに進んでいる
    • 研究者にとっても重要、実際に引用されている
    • 多くの国で研究振興機関はOAに積極的
    • MPとしては購読⇒OAへの移行を希求。SCOAP3にも期待

質疑

  • 科学社会学会・たけうちさん:論文のOA化が進むほど、論文の流用/盗用も進むのではないか。その対策がいるのではないか。今、日本ではSTAPの件で論文が盗用されたことが話題になっているが、こういう論文の不正使用への対策が必要なのではないか?
    • A:シマーさん、しばしば話題になるが、恵まれた研究機会、つまり非常に高いレベルの研究が期待されるところでは、論文の発表時に疑わしいジャーナルには出さないとか、剽窃が起こらないようにすることが求められると思う。これは倫理の問題。剽窃は学術誌がOAかどうかにはかかわらず起きている。ビジネスモデルややり方を問題にするよりも、研究コミュニティの倫理観の問題。それを見ないと、より多くの研究が出てくる中で、他人の論文が流用されることは防げない
    • A:中村さん。大きな問題ではあるが、現時点では、これは教育の問題。公募要領にも書いているし、採択されたすべての人に講義をして、宣誓書を出してもらっている。ゆくゆくは大学で倫理教育を受けた方以外には応募資格はない、ということにしたいと考えている。技術的には、すべての応募論文の図面を世界中の図面と対照する検索がすぐにできるようになる。楽観している
    • min2-flyコメント:逆じゃね? OAならだれでもチェックできるけど、購読誌から盗用されると査読者がそれ購読してないとチェックできないわけで。まあバレるのに盗用する人も…げふんげふん
  • 安西さんに。個人ベースの研究者に対して、制度的に対象になっているものはある?
    • 個人の支援が科研費の基盤だが、ジャーナルへの投稿については機関リポジトリの発展も含めて、個人の成果がアクセスされやすいような仕組みをはやく作らないといけない。研究不正については、個人の責任というか、研究者としての道義には帰着するが、JSPSとしては、科研費の応募において、研究不正、信義が守れることを応募者に問うようなしくみに変えようとしている。
  • 中村さんに。学際分野への対応はどう考えている?
    • 分野融合型の研究において今日の議論はどうなるかということだろうが、分野融合だから考え方が変わるということはないと思う。ただ、新たに雑誌を立ち上げようという場合は、ぜひ最初からOA誌にして欲しい。
  • シマーさんに。ロシアとの関係を教えて欲しい
    • ロシアとドイツの関係への質問と思うが、こちらからはきちんとはお答えできない。省庁レベルのやりとりはあるだろうが私がアクセスできるわけではない。国際コンソーシアムにはもちろん、ロシアの参加者もいるが、通常どおりオープンに議論している。ロシアはSCOAP3に参加しておらず、それは政府レベルで決めることで図書館で決めることではない。MPには中国などアジアからの研究者も、ロシアからの研究者も来ている。図書館側としては他のユーザと同じように扱っている。






休憩



パネルディスカッション

パネリストプレゼンテーション

「新しい局面を迎えたオープンアクセス政策:なぜ今議論が必要か」(林和弘さん、文部科学省科学技術・学術政策研究所、科学技術動向研究センター・上席研究官)

  • OAは単なる理念の提唱や局所的な取り組みを超えた新たな局面に
  • OAの議論は待ったなし、ガラパゴス化を避けなければ
  • 他国を参考にしつつ能動的に日本にあわせた議論を行う必要があるが、研究者参加がいいのか、政治主導でいいのか?
  • 出版エコシステムとしてのOA
    • OAは既にエコサイクルの中に浸透
    • アジアからの論文数は伸びているが購読予算は伸びない⇒増えた分はOAモデルでカバーしないとお金の出処がない
    • 少なくとも論文についてはOAのビジネスモデルは成立。APC+カスケードによって成立し、保守筆頭の大手商業出版すらOAジャーナルに動いている
      • カスケードモデルの説明…いったん査読のラインに乗ったものは最低限の科学論文としての要件を満たせば、どこかでは出版される。そしてお金が入る
  • 研究評価としてのOA
    • OAが進むことで、研究成果のインパクトを公平に測定できる
    • OAMJ…たくさんの論文を早く出し、事後の論文単位のインパクト計量により評価
    • 公開後素早くインパクトを計量できる/被引用数では測れない/まだ測れないものを見つける
    • さっき意見もあったが、逆にオープンにしていることで誰かの目に止まりやすくなり、剽窃も発見しやすくなる
    • 計量査読/有料査読/携帯査読(ポータブル・ピアレビュー)…出版・レビュー体制そのものの変化が起こっている
  • イノベーション政策としてのOA
    • 研究成果の共有・再利用
    • 破壊的なイノベーションの可能性…データサイエンス/オープンサイエンス(citizen science)
      • Scienceの敷居が低くなる(高校生の論文投稿)や、桁違いの参加者による共同研究(数万〜数十万)
      • Horizon2020には既に言及あり…OAの便益として触れられている…イノベーションをものすごく意識
  • OAの義務化政策
    • 49カ国、490以上の義務化プログラムがあり、85の助成機関も義務化
  • 科学技術外交としてのOA
    • なにをオープンにし、何をクローズドにして国益を守るのか?
      • 研究成果をすべてオープンにするのは暴論? 知財を守った方がいい?
    • 知財を守るためこそのOAという逆説もありえる
    • すべての分野/一律のOAにどれくらい意味がありうるかという議論もありうる
    • 論文生産量=国の研究力の一指標。「我々もオープンにするからみなさんもしろ」といえない限り、国力としての論文生産量を透明にしていけない
  • 最近の米国の活動事例
    • Scholarly Publishing Roundtable…2009-2010年の、関係者を集めた会議が下院で実施
    • 2013年…OSTP指令
      • 政治・議会の積極的な議論+関係者を集めたroundtableの実施は参考にできる
    • OSTP指令を受けて…SHARE:機関リポジトリの活用案 VS CHORUS:出版社のサイトからフリーで見せる案
      • ポイント:出版社・図書館だけでなく大学も積極的に議論に参加している
    • ごくごく最近…AAASの年会で出版・大学・学会・図書館の関係者が学術情報流通の将来を語る議論を実施
  • 日本の最近の事例:NII
    • NII…長くOAについて、機関リポジトリの推進やSPARC Japanを通じて取り組む
    • その他にも諸々あるが…それらをさらに発展させるには、イノベーション/産業化のためのOA、学術を発展させるための統合・連携のためのroundtableが必要では?
      • そうでないと…OAは政治的には必然/研究者がroundtable等を通じて無理のないOAにできるのではないか?

「研究振興の将来を築く学術政策」(下間康行さん、文部科学省研究振興局参事官・情報担当)

  • 概括的な話なので繰り返さなくていいかもだが…
  • MEXTあるいは国としてのOAへの姿勢が明確ではないと言われることもあるが、政府としては、機関リポジトリの構築を推進し、OAを推進することは閣議決定されている
    • 科学技術・学術審議会の中でも審議のまとめの中でOA雑誌の育成、機関リポジトリの活用について言及している
  • 日本の概況…もう紹介済みなので繰り返さないが…
    • 日本はGreen or Goldについては、それぞれ支えている。Gold OAは科研費の研究成果促進費とJ-STAGE、Green OAはNIIの機関リポジトリの構築支援・共用リポジトリの構築
    • J-STAGEの補足説明…搭載論文の87%がOA、宣伝しておきたい
    • 機関リポジトリ…100万件以上の成果が蓄積・発信されているし、個別に機関リポジトリを立ちあげられないところむけにはJAIRO Cloudがある
    • 博士論文のOA化…Greenにもつながる。これまでも博論の公表義務はあったが、紙⇒電子、原則として機関リポジトリ公開とした
    • 研究活動の不正行為へのガイドラインについて…研究者・研究活動を守るためにも、証拠が残っていないと不正行為とみなされてしまうことがある。客観的/検証可能であることを担保するためにも、データの公開もまた有益?
    • 雑誌価格高騰について…大学全体で220億円支出し、大学によっては次年度には1億円増になるところも。大学間での格差も生じ、懸念されている
      • JUSTICEにより価格交渉を実施しているが…企業等でも費用削減が進んでいる。研究者がどこにいようと自由に論文にアクセスできる環境構築は重要になっている
      • 浅島先生が主査になって文科省に検討会も立ち上げている。その中でOAについても議論していきたい
  • OAは目的ではなく手段
    • 林さんの問題指摘も含めて議論していきたいが…国の方針としてはOAの強化の方向であるが、学術情報流通の健全化とイノベーションのためである
      • 政策主導 or 研究者コミュニティ主導については、MEXTとしては立ち位置は明確。研究者側のイニシアティブが重要。ACADEMIAが、このシンポジウムを機に真剣に議論していって欲しい

「研究者から見るオープンアクセスとパブリックアクセスの現状」(植田憲一先生、電気通信大学レーザー新世代研究センター)

  • OAの理念は研究活動の理念と重なっている。昔からOAをやっているつもりである
    • インターネット登場と同時に物理では今のarXivの元を作って、プレプリントを投稿した途端、みんなに配っていた
    • SCOAP3の解説
  • パブリック・アクセス
    • ICTPを通じた開発途上国への無料公開
    • 全米の公的図書館、高校図書館からのアクセスは無料…日本でやるなら和文も視野に
  • 研究者からすれば…新たな研究成果を出すことも重要
    • 「無料購読」だけでなく「無料投稿」も重要。循環系の構築が重要
    • 持続可能性の重要さ…学術論文は正しい知識だけを伝えるための手段ではない、どうやって「沈殿」の仕組みを作るか
  • トップジャーナルのブランドはIFだけで決まるものではない/どれだけアクティビティを産み、歴史に残したか
    • トップジャーナルを作るとはどういうことか考えないといけないのでは

「大学図書館における学術誌受信の課題と、オープンアクセス潮流による影響」(江夏由樹先生、一橋大学附属図書館長)

  • 結論から言えば図書館はお金がなくてアップアップ
  • 自分の立ち位置…3å¹´4ヶ月、一橋大学図書館長
    • 自分自身は中国経済史専攻なので漢文を読む古い分野だが、経済学自体は理系に近い
    • 文系と言っても、英語と数学を使うかどうかでぜんぜん違う。その2つがポイント
    • 一橋大学「社会科学系の研究大学」
  • 大学図書館の課題:価格上昇し続ける外国雑誌
    • 毎年の値上がり+円高+消費増税、黙っていても買えなくなる
    • 必要な雑誌が買えない…JUSTICEのおかげでなんとかやっているが、全体として厳しい
    • 理事・教員の意識としては電子ジャーナルは空から降ってくるかのように考えている。そうじゃないんだ、という説明をする必要がある
      • この危機感をいかに共有するかが大学にとっては大事で、なんだかんだ言って現実に関わっている図書館がやらないといけない
    • 例えば一橋大学の場合…アクセス数上位はほとんど経済系英文電子ジャーナル
      • 今日の話を文系の人にするなら、まず経済系、英語・数学をやっている人を引き込まないと
    • 機関リポジトリ…積極的に進めている
      • 文系は息が長いので、古い成果でも、出版社に交渉すると「困る」とか言われることがあるし、遺族に断られることも
    • 機関リポジトリに入ったものは非常にアクセスしやすい。紀要でも、思ったよりアクセスがある
    • Gold OAへの図書館の心配…「財布が変わるだけではないか?」
      • APCは研究費の財布から出るわけだが、Hybridになると、図書館からも研究費からもお金を取られるのではないか
    • 雑誌論文が成果発信媒体のすべてではない
      • 紀要、図書等
    • 日本語での研究発信が求められる分野はどうする?
    • OAと人文社会系…OAの波は来るのか?
      • 来ると思うが、いつどうくるか、理系と同じ形で来るかはわからない?
  • こういう話をもっと宣伝する、あらかじめ話をすることが今の私のミッションと思う

「人文系に関するOA化」(永井裕子さん、日本動物学会事務局長・UniBio Press代表)

  • 人社系の学会・研究者個人が何を考えているか紹介したい
  • 国際的には…OAPENによるオープンアクセスに対する人社系研究者意識調査
    • 53%の回答者はOAを知っているし、38%はよく知っている
  • 日本の状況…NIIの調査結果が4月上旬にwebで公開される
  • 人文系研究者・学会やある個人の意見
    • OAへの関心は高かったり低かったり、理解もあったりなかったり、調べると意外に無料でアクセスできる論文が増えていることに気付いたり
  • 日本の学会として何を外に公開すべきか?…日本独文学会の取り組み
    • ドイツ語圏と対等ないしそれ以上に研究成果を主張しうる領域や、学問的に優位性を持ったテーマに力を入れて発信していくことを決めているという
      • 自分たちがなにを世界に強く出せるのかを人社系の学会が強く考えている
    • 国際化の動きは見えにくいが、日本の人社系の研究者も海外と同じ地平でやっている。欧文による成果から順次、しかるべき方法でOA化を推進できるのでは
      • 人社系の方が研究者がイニシアティブをとるようなOAをやりうるのではないか? 人社系の研究者はよく考えている

「学会からみる国際学術誌発信の実情と、今こそ必要な学術政策への提案」(玉尾皓平先生、日本化学会会長・理化学研究所研究顧問)

  • 結論から言う…リーディングジャーナルの育成とOAジャーナルのサポートは同時にやるのが重要
    • リーディングジャーナル育成を前提に置いた上でのOAジャーナルの議論
  • 日本化学会の雑誌2誌も科研をとれている…5年後を目指して世界のリーディングジャーナルに仲間入りしたい
    • ゴールドジャーナル出版=一次情報としての論文OA、グリーン=二次的な論文OA?
  • Gold OA、ジャーナル自身のOA、APC
    • リーディングジャーナル育成とAPCによる雑誌運営は両立しうるか?
    • 現在の我が国の雑誌が今のままAPCをとれば、どんどん投稿は減って雑誌としては成立しないのではないか?
      • 機関費モデル/寄付モデルなら成り立つし、機関費もAPCもどっちも国費。なら機関費モデルで、リーディングジャーナルかつOAを実現すればいいのでは
  • まずやるべきはリーディングジャーナル化
    • そのためには…高レベルを維持したOA・リーディングジャーナル化の条件は以下
      • 継続的出版費サポートを前提に、理想的には投稿料無料、大手出版に委託せず高質の変種体制を維持し、OA対応電子ジャーナルとして確立する
      • 継続的出版費サポートを前提におけば、国費によるリーディングジャーナル実現はできる
  • どれくらい金はかかる?
    • OAリーディングジャーナルを最大で20とする。1件あたり年1.5億円とすれば、年30億円。科研費全体、2400億円の1.2%程度
    • しばらくは継続的サポートが必須
  • まとめ
    • 我が国の研究論文を出版する学協会のリーディングジャーナルと両立しえるOAは、まずリーディングジャーナル化を達成した上で、OAジャーナル化も国費で継続的に支援すればできる
      • それでOAになるのは我が国の論文の10%程度ではないか。Gold 10%、Green 90%くらいでやっていけるのでは
    • 将来的には国際相場の投稿料でも成立する実力をつけ、国費負担を軽減し、自立を目指す

「日本の学術情報流通への3つの提言」(谷藤幹子さん、物質・材料研究機構科学情報室室長)

  • 図書館+OA出版の立場として、また学術誌問題委員会の委員としてOAのことを考えられる身として、私の視点でまとめたい
  • 図書館…雑誌価格高騰が問題なのは研究機関も同じ
    • NIMSという世界トップレベルの拠点でも、30%のジャーナルをカットした。研究拠点としてそれはどうなのか、と議論してきたが、私はジャンヌ・ダルク的に旗を振ったつもりだったが、誰もついてこなかった。どうしてか聞くと、「先行研究かどうか見ないで自分の確信でやっているから論文がなくてもできる」という人もいたし、分野それぞれの状況があっていろいろ発言があったが、1,000万円のキャンセルをして、誰からもクレームがなかった。学術誌を考えなおした方がいいのかもしれない?
    • それはそれとして。世界トップレベル拠点としてOAにどういう姿勢を見せるのか、紹介したい
  • OA運動が始まって10年あまり
    • 全体を平均すると、世界の論文の半分がなんらかの方法でフリーになっている
    • 日本の取り組みの紹介
    • これからの10年がどうなるのかが、この先の議論?
  • 3つの提言
    • 1. 図書館が、オープンアクセスリポジトリという学術情報資源を、今後も推進
    • 2. 学会が、オープンアクセス発表先として選択に足る魅力ある"日本発OA誌"を提供
      • 研究者が能動的に日本のOA誌を選んでくれるには、それが魅力的な雑誌でないといけない
      • 世界トップ級の中に日本のジャーナルをしていく必要がある
      • 具体例…NIMSのSTAMの紹介
    • 提案1. 受発信問題におけるOA
      • Goldにするにしてもいろいろなオプションがあるよ、という話
      • アメリカでは800以上の学会が750誌を超えるOA査読付きジャーナルを出している
    • 提案2. 学術政策としてのOA
      • 持続性のあるOA支援制度
        • 日本ならではの評価制度が伴っていること
        • 日本版NIHを本当に作るなら…分野的にも位置的にもいいタイミング・現実的なのでは?
      • OA選択肢としてのセルフアーカイブの推進制度
    • 提案3. 研究とOA
      • 学会員として、日本発学術誌の魅力とは?
        • 日本でも公平かつ質の高い査読ができることを示す
      • 研究者として、なぜOA推進が世界で進んでいるか?
        • 当然出てくる、なんで自分がという疑問に、記録/普及、世代を超えた利用しやすさなど、広い目で見て、この研究の次の世代に必要なんだという啓発普及が必要なのではないか
  • 推進する、制度を作る、前向きな志向で研究者も参加する
ディスカッション
  • 大西先生:
    • 挨拶でも述べたが、浅島先生がリーダーになって、学術誌問題として議論してきた。今はその範疇を超えて、科学的研究成果の適切な流通の形態に議論のフィールドが変わっている
    • ODとOAは違う。OAは完成物、できあがった成果を世に問うもので、公開にためらいはない。どれだけ多くの人の目に触れるのかが著者の関心だし、その過程で受ける査読、権威あるところで査読を受けたことでそれ自体が評価になることにも関心がある。ある意味で、IFという格好で評価されているが、雑誌のレベルが大きなポイントになる。リーディングジャーナルという話もあったが、投稿側としては大きな関心事だろう
    • リーディングジャーナルを育てることとOAが日本の中で、まずリーディングジャーナル⇒OAという、日本発でリーディングジャーナルを作るということは、どの程度、目的になりうるのか? 海外もサポートしているという谷藤さんのお話もあったが、日本の論文数は5%程度。日本人の書いたものだけを相手にしていてはシェアはその程度。そうではなく国際ジャーナルにする必要があるのだが、現実問題どの分野でどの程度可能なのか? それが難しければ、日本はどこかと組んで共同でジャーナルを育てるという手もある。
    • あまり話が出なかったが、OA雑誌のコストがいくらかかるのか、どう負担するかの議論。あまり鮮明には出なかった。私自身は、ややマイナーな、5千人規模の学会で育ってきた。査読は会員がただでやるが、事務局の経費は一定かかる。紙の頃は印刷費が経費の大部分だったのでやめれば相当コストダウンできるが、紙媒体の雑誌を出すことで成り立っているというところもあった。ただこれは査読論文と雑誌、特集雑誌を分けてしまえば話が変わる。純粋な査読論文出版の費用をどう負担するのか。コストがどのくらいでどうやって負担するのが現実的なのか。
    • いずれにしても、日本の得意な分野でOAを伸ばすために、もう少しやれることができると考える。こういった形でのシンポジウムは有意義で、学術会議は旗振り役として、できることをいろんな格好でやっていきたい
  • 玉尾先生:
    • コストは、私は1誌1.5億くらいと考えた。日本化学会も2誌でほぼそれくらい。今は5千万円が科研費、残りは購読収入と学会費。今は印刷体も出しているが、全て電子ジャーナル化しOA化すると、印刷費は不要だが購読費は入らなくなる。それをやりつつ査読も高いレベルで、となると、事務費等含んで、1億くらいになるのではないか?
  • 安西先生:
    • JSPSとしてこういうことができる、したいことを端的に述べる
    • 第一に、日本からのリーディングジャーナルに貢献したい。学振は学術の振興機関。これからの時代、国際的な学術の世界に日本からオリジナルの情報を発信することに貢献すべき。他の国と一緒にやる方法もあるかも知れないが、学術の発展に、我が国の学術の発展をベースに、世界中と協力して、リーディングジャーナルを出すことがしたい。それとOA化を同時にしていかないと世界のストリームに乗り遅れる。玉尾先生もおっしゃるように、OA化とリーディングジャーナルは同時にしていかないといけないし、そのために科研費の国際発信強化が大事と考える
    • 第二に、例えば化学のような大きな領域だけではない。例えば独仏英文の分野なら、個別にリーディングジャーナルを支援しようとすれば莫大になる。マイナーな分野もゆるがせにしないのがJSPSの立場。ここは大きな課題。国際情報発信強化のプログラムでマイナー分野の支援をしたいというのが私見も含む気持ち。私自身は文理両方で仕事をしていて、例えば言語学ではOA誌が、海外では小さいができつつある。編集委員の取り合いのような状況である。文系においても世界的にはそういう動きがある。日本としてどうするか
    • 付け加えて。じゃあ日本の一般の、大学教員それぞれがこの流れを知っているかという点は危惧している。こういったフォーラムのことも含めて、広報を十分にしなければいけない。大学改革と同様で、大学の大きな流れは世界的に変わりつつあるが、大学内にいる一般の方はそことインタラクションがない。日本の大学は世界の潮流とかけ離れた場になっている。そのことには非常に気がかりを持っている。その中でのこの問題とも捉えている。広報が大事
    • あと一点。持続性は非常に大事。国際情報発信強化も、5億弱であるが、30億円という玉尾先生の話とはかけ離れている。それでもそれを持続的に絶やさずつづけることが大事と考えている。ぜひ応援を
  • 浅島先生:
    • 学術会議が持っている分野は30。MEXTの方も、少なくとも学術会議に30分野があって…一方で学協会は1700から1800に増えている。どんどん細分化している。そうった日本の学術のあり方も考えないといけないが、下間参事官、ご意見ありますか?
  • 下間さん:
    • 科研費の強化の話は省内でも分野は分かれているところだが、研究成果公開促進費については議論をしていきたいと考えている。その持続性の前提の中で、20、30、1800のどの単位という知見はないのだが、世界と協力していくという中だと、「こういう分野はリーディングジャーナルとしてやっていける」というところがあるのではないか。すべての分野が対象にはなりうるんだろうが、J-STAGEもその前提があるが、リーディングジャーナルとしてどうやっていくかは、研究者コミュニティの取り組みを軸にしながらも、戦略的に取組む必要があるのではないか
  • 中村さん:
    • 日本でリーディングジャーナルを育てようとすると、今の学会単位は無理。1700ã‚‚1800も学会があって個別に議論しているのは変。大きく変わろうというときに、学会のあり方、雑誌出版のあり方を考えるいい時期に来ているのではないか
    • Scimmerさんのデータ・エビデンスを見ると日本もけっこういいなと思うのだが、そういうデータを日本から出せないのが問題。その中でNIIはよく分析をやっていて、これからも皆でNIIを中心にやるといいのではないか
    • JSTの助成については、義務化の方向で考えている。研究費が大きいので、そこから10-20万円のAPCを出すのは難しくない。そういう意味でも、JSTからやるのがいいのかなと思う
    • データの話に今日、行き着かなかったのは惜しい。ジャーナルのOA、データのオープンが研究活動の中でどういう位置づけにあって、それに日本が入らないというのはどういうことなのか。サイエンスの新たな枠組みの中に日本もはやく入っていくべきではないか。
  • 林さん:
    • データの議論は別途検討がいると思うが、そもそも日本の研究者のOAへの認識がまだ低いので、データに一足飛びで議論をもっていけるか。中村理事長と同じ想いはあるが。地球科学等、国際戦略としてデータをオープンにしてグローバルに議論しようという領域もある。そういった意味で、領域別のOAを進めることはあってもいい
    • あえてチャレンジしていきたい。日本は学協会が多く、小さい出版社も多いので、それぞれがんばってもしょうがないという議論もあるが、J-STAGE自身が学協会の700-1000の雑誌のプラットフォームにとどまらず、publisherとして振る舞っていくやり方を検討してもいいのではないか。そこで大事なのは、2008年の調査では、J-STAGEの雑誌のほとんどが再利用に関する規定がない。今も変わっていないと思う。単にオープンにする、フリーにするだけではなく、再利用まで認めたものが真のOA。そっちに持っていくことでイノベーションを促すという手もあるのではないか。
  • 中村さん:
    • J-STAGEはどんどん変わらなければいけない。今のご指摘は検討すべきと思う。また、私も今、J-STAGEが申請ベースで、「こういうものを電子化したいので国費で支援して」「はい、わかりました」とやっているが、メカニズムを違うものを入れて、「これをやるならどこと一緒でどうやったら強くなりますよ」とか、そういう議論もしていくようにできるようにすべきと思う。J-STAGEは次の段階に行かなければいけない。
  • 浅島先生:
    • J-STAGEã‚‚2⇒3でXMLを取り入れたり、世界標準になろうとしている。ジャーナルをどういう風にすればうまく発信できるかという…また、NIIと技術協力すればさらにいいものになるとも思う。そういうこともぜひ
  • 浅島先生:
    • Scimmerさんに。今日、お感じになったことを率直に
  • Scimmerさん
    • リーディングジャーナルについて。雑誌の新創刊は簡単だがリーディングジャーナルにするのは大変。成功した例を2つ知っている。1つはお金のかからない方法で、90年台のある雑誌が、何年かかけてリーディングジャーナルになった。複数のジャーナルによって踏襲されたモデルで、5つの雑誌のファミリーが2人の職員しか使っていないので安い。また、研究者が編集をかなりやっている。また、コンピュータも私達の研究機関内のルーチンサービスとして提供されている。全般に効率的に安くできているが、何年かはかかった
    • はやく実現したいならコストは余計にかかる。具体例としてはeLife。創刊から1年位だが、MP、ウェルカム財団、ハワード・ヒューズ財団の共同創刊。<以下、説明>かかった金額は未開示だが、巨額のお金が毎年、オペレーションにかかるとも聞く。急速に成功したいなら莫大なお金がかかる。これは商業出版社から学んだことでもある。Elsevier等も新規チャンネルを立ち上げたりするが、ある程度の成功をすぐに成し遂げたいならコストがかかる。
  • 浅島先生:
    • 大きな助成機関があって、大きなお金があって動くことが大事なのか、MPには多くのリソースがあるのでうまく行っているのか?
  • Scimmerさん:
    • この場合は、計画を立てた人の意図が大きい。もともとウェルカムがeLifeをやろうと考えて、MPを誘った。私は当初、批判的だった。巨額のお金を使うのは、全体像の解決にはつながらないと思う。難しいのは、新しいソリューションを広い分野にまたがって見つけること。ほんのわずかな努力ですべてが変わることがある。例えば、数年前、ドイツのドイツ語の法学ジャーナルが立ち上がって、購読料があまり集まらなかったので補助金が入っていた。それでOA誌にして、その分購読料がなくなるので、何かの資金を求めなければいけなかった。財源を探さなければいけなかった。また、GDFというものがあって、OA誌をつくろうということで多くの研究機関が関わったが、大学のある学部が学部で雑誌を作ったりする。それでも当初は学部で出していて、一部の研究機関がもともとのジャーナルのブランドを変えることでより目立つようにしてより多くの人にアウトプットを届けられる、持続可能性につなげるということもあった。

会場討論

  • 科学社会学会・タケウチさん:大西先生に。日本の学会数が多すぎてリーディングジャーナルは育ちにくいという話があった。どうしたらいいかというときに、領域別に集約するとか。人文、社会とか、諸学会を再編成して共同してOA化を推進させるというのはどうなのか?
    • 大西先生:学術会議に登録されている団体数は2000弱。規模はピンからキリまで。数万人から数百人まである。十把一絡げにはいえない。目標を決めればそれに応じて何をしなければいけないかが出てくる。大きなところが単独でやることもあれば中小で大同団結するところも出てくるだろう。最初に学会が多すぎるから一緒にならないと、と提案するのではなくて、目標をはっきりさせて、それに応じてどのくらいの協力体制を作らなければいけないかは自ずから出てくるのではないか。諸外国とどう組むかという国際連携が重要になると思う。
      • 一方でリーディングを目指さなくてもOAは必要になってくる。さっき言いそびれたが、結局学会はみんなで会費払ってサークルを作っている側面もある。その資源である論文誌に誰もがアクセスできるようになると会費の意味が問われるようになる。会員でなくても無料で読めるものにどのくらいコストを負担するのか。整理して進めないと理解が進まない。やり方によっては安いコストでもOA誌を作れるのであれば、問題が軽くなりやりやすくなる。多くの学会がそういう現実的なところを理解する必要があるのでは。
  • タケウチさん:安西先生へ。ヒトとカネがないと、という話があったが、お金がかからない話もScimmer先生からあった。逆に巨額のカネを投入するかという話もあったが。どちらがいいと思うか? カネをかけないべきか、巨額の費用を出して集約する方法がいいか?
    • 端的に答えるが。できれば学協会が多くてどうなの、というところがある。私も中村さんも言われていたが、極めて妙なこともある。袂を分かって別の学会を作るとかいうことがある。そういう人たちがもう1回まとまって、これからの時代のジャーナルを作っていこう、と。それから他の国の機関や国同士での連携もある。研究者・教員がフレキシブルなマインドを持って取り組んでいかないと日本が立ち遅れるし、そういったマインドを持ったジャーナルに国が支援していくことが大事と思う。国際情報発信強化もそういう理念を持っている。
  • 日本地球惑星科学連合・木村先生:科研費の支援でOAをはじめるところ。2つ質問がある
    • この科研はこのコミュニティをいかにグローバルに位置づけていくか、ということと思う。そのために50の関連団体が集まった。そして国際化を成し遂げようというときに、少子高齢化でヒトも少なくなっている中で、国際的に情報を発信できる人間の育成に真剣に取り組んでいるつもり。そのときに、OA支援の研究費ではあるが、柔軟な資金運用も必要と思う。当然ながら日本以外にも国際的に書き手を集めて1級の雑誌にしなければいけない。そのためにエディターに対する給与を払うとか、執筆者への、invited talkをするための対応とか。あるいは海外の同じような連合体に出かけて行ってノウハウを学んでいたりもする。そういうことに、資金を柔軟に使うことに、どの程度対応していただけるか。
    • 日本のコミュニティをどう国際化するか? それにJSPSã‚„JSTはどういう戦略を持ってやろうとしているか?
  • 中村さん:
    • J-STAGEがご要望にお答えすることになるだろう。私は法に反しない限り何やってもいいと思うが、目的をともにすればかなりのことはできると思う。大事なのは、J-STAGEならばJ-STAGEのプラットフォームを使って、国際化のために大同団結することに使っていただけるとやりがいがある。
  • NIMS・アリガさん:中村先生に。研究者の立場からすると重要なのはコスト。私は年に15本くらい論文を出す、それに20万もとられていてはやっていけない。いかに低コストでのOAを実現するか。そのキーはJ-STAGEと思う。リーダーシップをとって低コストで実現すればみんな投稿したいと思う。期待している。
    • 中村さん:がんばります。確かに何十本も出しているとそれだけでも大変な金額。過渡的には考えていかないといけない。それで義務化とかを止めているところでもある。中長期的にはJ-STAGEをそうしていきたい。
    • JSTは夜中でも返信が来る。もっとヒトを増やしてやるべきでは。
  • MPD・イワタさん:アカデミックなデータや情報は正解共通の財産。Elsevier等もステークホルダー。Berlin宣言も彼らも参加していた。日本で議論する際にも本当の意味でのステークホルダーが集まって議論する場を作っていくべきでは。
    • 浅島先生:2010年の時には国内のステークホルダーが常に一緒に議論してきたが、なかなか予算配分や国のタイミングのこともあり、またもうひとつは、OAの世界がものすごい勢いで変わっていったので、NDLはちょっと意味が変わってきて外れた。でもほかは今も共通・共同作業をしている。一見、別々に見えるかもしれないが、MEXTを中心に学術成果の発信はまとめていっている。その実現化についてはいろいろな方法を考え、皆さんにも協力していただきたい。
  • ホンマさん:分野によってはOA誌をリーディングジャーナルに育てるという発想でないといかないところもあると思う。国際的な評価は、人文科学の評価は比較的低いが、英語以外の3〜4言語+数学ということでないと多くの読者を得ないとできないのではないか? そのためにはOAから出発して、良いテーマを選んで日本発信で育てていくことが必要では?
    • 植田先生:前の提言でも話があったのだが、包括的なコンソーシアムの提言にはOAとリーディングジャーナルを重ねて実現しようというのはある。分野によって進んでいたりそうでいないところがあるが、進んだところを他につなげようというのが包括的である意味。OAであることの意義のひとつは購読料がないので、雑誌を横断してもう一つ作るとかしてもいいわけで。また、リーディングジャーナルのブランド力のために、日本のオープンなものをがさっと集めてしまう、日本の窓口となるプラットフォームを作って、そこには人文系も含めて新しいものを集めて、ということをやってもいい。バーチャルジャーナル・オン・OAというスキームを作ればどうかと議論していた
    • 江夏先生:人文系は事情が違う。ひとつは英語。経済学はずっと英語でやるので英語が近い。私の仕事のひとつは、日本語で書かれたもののエッセンスを英語で発信すること。具体的に話も進めているが、一番苦労するのは英文校閲。人文系では日本語のものをそのまま英語にして英語読者に受け入れられるわけではない。英語向けにロジックを変えなければいけないのだが、その校閲者、あるいは翻訳者の不在が問題。でもこれは日本の強みでもある。日本の発信という意味では楽しみな世界でもある。
  • トムソン・ロイター・ハタノさん:リーディングジャーナルの議論が出ている。WOSで日本と世界のIFを比べていると、世界のジャーナルはどんどん上がっているのに日本はあまり上がっていなかったり、IFのある雑誌の増加数も日本は少ない。日本人として残念な気がしている。リーディングジャーナルを作ることを考えたとき、どうやって、どうすればという具体的な方法を、海外はもっと戦略的にやっている。こういう風にやれば、という戦略があると思うが、そういう戦略を日本でも、例えばJ-STAGEで構築して、いろんな学協会に出版社的な仕切りを、JSTがやる予定はないのか?
    • 中村さん:今のところその予定はない。大事なことは、日本の研究者が世界の価値創造の輪の中に入ること。私自身は海外のジャーナルでもいいと思っているのだが、今あまりにバランスが悪い。平行して日本でもいくつかの雑誌が作れればいいのではないか。
  • 静岡大学・加藤先生:日本は論文を出すところまでは強いが、査読をしたり編集したり評価する部分を、教育もしていないし人事選考で評価もしていない。そういうことをしていかないと日本のジャーナルは強くなっていかない。私としては、困っているポスドクをたくさん雇用して育てて、5〜10年後にしっかり編集できるジャーナルを作ればいいと思う。
    • 永井さん:まったく賛成。JSPSにぜひお考えいただきたい。リーディングジャーナルを作るというお考えはよくわかるが、国際情報発信強化がどういう形になって、本当にアウトプットされるかが試されている。長く雑誌出版に出されていた科研費が変わった。「あのとき変えてよかった」となるといい。大事なのは、編集をするヒト。同時に、出版倫理の問題が日本ではきちんと議論されていない。大事なことは日々の論文の受付と査読、そこをどうするか。日本はそこが欠けている。2010年の提言でもポスドクのキャリアパスとするという提言をしてきた。そこを強化していきたいしそれが大事なんだということをお心にとめてほしい。
    • 浅島先生:国際情報発信強化はそういうこともできる、かなりフレキシブル。各学協会が人材の育成もできるようになっている。かなり自由な中で、国際情報発信力を高める方法を各学協会で考えてほしい、と。
    • 加藤先生:もう一言だけ、プロフェッショナルな査読者を作ることが必要。
  • 筑波大学・逸村先生:林さんもおっしゃってたが、電子ジャーナルのトップジャーナルの育成には、技術面でもサポートする必要がある。常にNPGã‚„Elsevierの後追いではトップジャーナルは難しいのでは?
  • 横国大の方:パブリック・アクセスという話があったが、これを強化したらいいのではないか? 研究組織によって条件が違いすぎるし、組織を失うヒトもいる。パブリック・アクセスが大事ではないか。もう一つは、研究者マインドを育てる上でもOAが必要なのではないか。若い世代はカジュアルに情報を使っているわけだが、倫理に関する文句を言うだけではなく経験の場としてもOA誌を使えるのではないか。
  • がん研究センター・加藤さん:PLOS ONEのエディターもしている。リーディングジャーナルを作るには、海外から何回も引用されるようなクオリティ・ペーパーもいる。ニンジン作戦ということで、日本人の被引用数の多い論文100本くらいを選んできて、自由に使える資金として500万円ずつくらい渡せば、リーディングジャーナルから高質の論文を出せるのでは?


・・・最大アップロード可能字数を超えていないことを願うばかり・・・
感想とかは冒頭に書いたとおり、カレントアウェアネス-Eの方を御覧ください。
とりあえずJSTがいつOA義務化に突っ切るかに注目だ!