かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

『図書館を学問する』本は全国の図書館にどれくらい所蔵されているのか:2月中旬更新版

先日のエントリ*1にもちょっと追記しましたが……あれ、もしかして記事のこと「エントリ」って言うのはてなダイアリー民の旧習だったりする?……、青弓社さんのウェブサイト「青い弓」の、著者自身による出版後エッセイ「原稿の余白に」にて、出版後1カ月弱時点での『図書館を学問する』所蔵状況調査について報告しました。

 

 

yomimono.seikyusha.co.jp

 

Web「青い弓」ではフォーマットの都合上、生データの表とかは掲載していないのですが、上記記事の元になった、カーリルを用いて調査した、各都道府県における本書の所蔵状況調査の詳細な表は以下の通りです。

 

都道府県名 図書館設置自治体数 総図書館数 所蔵自治体数 所蔵館数 貸出数 貸出率 自治体所蔵率 図書館所蔵率
北海道 107 153 9 10 1 10.0% 8.4% 6.5%
青森県 24 33 3 3 0 0.0% 12.5% 9.1%
岩手県 26 46 2 2 1 50.0% 7.7% 4.3%
宮城県 21 40 2 2 0 0.0% 9.5% 5.0%
秋田県 18 49 0 0 0 #DIV/0! 0.0% 0.0%
山形県 24 37 3 3 1 33.3% 12.5% 8.1%
福島県 34 65 4 5 5 100.0% 11.8% 7.7%
茨城県 37 61 9 9 6 66.7% 24.3% 14.8%
栃木県 24 53 10 10 8 80.0% 41.7% 18.9%
群馬県 23 56 6 7 2 28.6% 26.1% 12.5%
埼玉県 59 162 19 22 16 72.7% 32.2% 13.6%
千葉県 41 143 12 12 10 83.3% 29.3% 8.4%
東京都 58 387 16 25 19 76.0% 27.6% 6.5%
神奈川県 29 81 4 4 2 50.0% 13.8% 4.9%
新潟県 24 71 3 3 3 100.0% 12.5% 4.2%
富山県 15 53 3 3 1 33.3% 20.0% 5.7%
石川県 19 36 3 3 2 66.7% 15.8% 8.3%
福井県 17 35 0 0 0 #DIV/0! 0.0% 0.0%
山梨県 21 50 5 5 2 40.0% 23.8% 10.0%
長野県 57 115 7 9 7 77.8% 12.3% 7.8%
岐阜県 34 67 4 5 0 0.0% 11.8% 7.5%
静岡県 34 92 13 15 9 60.0% 38.2% 16.3%
愛知県 48 96 15 15 8 53.3% 31.3% 15.6%
三重県 23 47 3 5 3 60.0% 13.0% 10.6%
滋賀県 19 49 1 1 1 100.0% 5.3% 2.0%
京都府 21 68 2 2 1 50.0% 9.5% 2.9%
大阪府 39 146 6 9 7 77.8% 15.4% 6.2%
兵庫県 39 96 8 9 2 22.2% 20.5% 9.4%
奈良県 24 30 3 3 2 66.7% 12.5% 10.0%
和歌山県 18 24 2 2 0 0.0% 11.1% 8.3%
鳥取県 19 29 1 1 1 100.0% 5.3% 3.4%
島根県 17 39 1 1 1 100.0% 11.8% 2.6%
岡山県 26 69 2 5 1 20.0% #REF! 7.2%
広島県 22 80 3 3 1 33.3% 13.6% 3.8%
山口県 18 54 6 6 4 66.7% 33.3% 11.1%
徳島県 19 28 2 2 1 50.0% 10.5% 7.1%
香川県 15 30 1 1 0 0.0% 6.7% 3.3%
愛媛県 16 43 4 7 5 71.4% 25.0% 16.3%
高知県 24 39 4 4 1 25.0% 16.7% 10.3%
福岡県 53 111 5 5 2 40.0% 9.4% 4.5%
佐賀県 17 30 3 3 2 66.7% 17.6% 10.0%
長崎県 19 37 2 2 1 50.0% 10.5% 5.4%
熊本県 25 53 4 4 0 0.0% 16.0% 7.5%
大分県 16 31 1 1 0 0.0% 6.3% 3.2%
宮崎県 21 33 3 3 1 33.3% 14.3% 9.1%
鹿児島県 30 63 1 1 1 100.0% 3.3% 1.6%
沖縄県 25 36 0 0 0 #DIV/0! 0.0% 0.0%
                 
総数 1359 3246 220 252 141 56.0% 16.2% 7.8%

 

全国の(図書館が設置されている)市区町村の16.2%に所蔵があり、分館も勘案すると所蔵率は7.8%、累計252冊が所蔵されているという……正直エッセイにするには微妙な所蔵状況だなあとは思いましたが、これでも〆切ぎりぎりまで待って調査したんです、言い訳ですが。

図書館情報学者として恥ずべきことだと思いますが、今まで出版された本が図書館に受け入れられ、検索にヒットするようになるまでにかかる時間のことを本気で意識したことなかったなあ、と。

エッセイの執筆依頼が来た時には「お、これは所蔵状況調査やれば一発じゃん~」とか思い、1月上旬くらいから幾度となくカーリルでエゴサしてたんですが、まあ全然、所蔵されないこと。なんとか記事化できるくらいには所蔵が付き始めたのが1月23日で、そこから大慌てで記事を書いて納品したという。載ったのは2月半ばくらいであったわけですが。

 

しかし1/23からの約3週間ほどの間に、実は所蔵状況も大きく変化しています。

そこで昨日(2/15)にあらためてカーリルで同じように所蔵状況調査(市区町村立)をやってみた結果が以下の通り。

 

都道府県名 図書館設置自治体数 総図書館数 所蔵自治体数 所蔵館数 貸出数 貸出率 自治体所蔵率 図書館所蔵率
北海道 107 153 24 27 17 63.0% 22.4% 17.6%
青森県 24 33 8 9 6 66.7% 33.3% 27.3%
岩手県 26 46 6 7 3 42.9% 23.1% 15.2%
宮城県 21 40 7 8 5 62.5% 33.3% 20.0%
秋田県 18 49 3 3 0 0.0% 16.7% 6.1%
山形県 24 37 10 10 4 40.0% 41.7% 27.0%
福島県 34 65 5 6 3 50.0% 14.7% 9.2%
茨城県 37 61 21 23 15 65.2% 56.8% 37.7%
栃木県 24 53 14 15 8 53.3% 58.3% 28.3%
群馬県 23 56 10 13 8 61.5% 43.5% 23.2%
埼玉県 59 162 39 48 43 89.6% 66.1% 29.6%
千葉県 41 143 22 23 18 78.3% 53.7% 16.1%
東京都 58 387 37 107 104 97.2% 63.8% 27.6%
神奈川県 29 81 11 18 16 88.9% 37.9% 22.2%
新潟県 24 71 8 11 8 72.7% 33.3% 15.5%
富山県 15 53 8 8 4 50.0% 53.3% 15.1%
石川県 19 36 9 9 6 66.7% 47.4% 25.0%
福井県 17 35 5 7 5 71.4% 29.4% 20.0%
山梨県 21 50 12 12 8 66.7% 57.1% 24.0%
長野県 57 115 25 26 15 57.7% 43.9% 22.6%
岐阜県 34 67 10 11 7 63.6% 29.4% 16.4%
静岡県 34 92 21 39 19 48.7% 61.8% 42.4%
愛知県 48 96 40 43 32 74.4% 83.3% 44.8%
三重県 23 47 11 15 10 66.7% 47.8% 31.9%
滋賀県 19 49 10 11 10 90.9% 52.6% 22.4%
京都府 21 68 8 8 7 87.5% 38.1% 11.8%
大阪府 39 146 24 30 27 90.0% 61.5% 20.5%
兵庫県 39 96 23 31 23 74.2% 59.0% 32.3%
奈良県 24 30 8 8 3 37.5% 33.3% 26.7%
和歌山県 18 24 5 5 2 40.0% 27.8% 20.8%
鳥取県 19 29 5 5 3 60.0% 26.3% 17.2%
島根県 17 39 4 4 3 75.0% 23.5% 10.3%
岡山県 26 69 10 16 11 68.8% 38.5% 23.2%
広島県 22 80 7 10 7 70.0% 31.8% 12.5%
山口県 18 54 8 10 8 80.0% 44.4% 18.5%
徳島県 19 28 4 4 1 25.0% 21.1% 14.3%
香川県 15 30 4 6 2 33.3% 26.7% 20.0%
愛媛県 16 43 6 9 3 33.3% 37.5% 20.9%
高知県 24 39 5 6 2 33.3% 20.8% 15.4%
福岡県 53 111 17 22 15 68.2% 32.1% 19.8%
佐賀県 17 30 6 6 5 83.3% 35.3% 20.0%
長崎県 19 37 7 8 2 25.0% 36.8% 21.6%
熊本県 25 53 9 9 4 44.4% 36.0% 17.0%
大分県 16 31 8 10 4 40.0% 50.0% 32.3%
宮崎県 21 33 6 6 1 16.7% 28.6% 18.2%
鹿児島県 30 63 5 5 2 40.0% 16.7% 7.9%
沖縄県 25 36 0 0 0 #DIV/0! 0.0% 0.0%
                 
総計 1359 3246 555 727 509 70.0% 40.8%

22.4%

 

所蔵自治体数は2倍以上、所蔵館数に至っては3倍近くに伸びまして、全国555自治体、727館に所蔵いただいています。これはありがたい!!

自治体所蔵率40.8%、図書館所蔵率も22.4%で、ひそかにずっと気にしていた京都市の図書館にもついに所蔵いただいています(右京中央図書館。なお京都市に馴染みのない方はご存じないと思いますが、京都市には「中央図書館」が4館あり、そのうちもっとも大きいのが右京中央です)。

さらに貸出率も70%と高く、多くの方にお手に取っていただけているようで……本当にありがとうございます!!!

おかげさまで沖縄県以外はどの都道府県でもいずれかの市区町村の図書館には所蔵いただいている状態になりました。

 

ありがたいなあと思いつつ、データを眺めているとなんか傾向がありそうだったり、気になるところが出て来るのもデータ屋の常でもあり。

ぱっと見、都市圏の自治体所蔵率が高い(6割を超えているのが埼玉、東京、静岡、愛知、大阪。この並びだと静岡はちょっと遺失ですが)のかなあと思いつつ、愛知の8割超えはちょっと突出しているのでなんでだろう、とか。

愛知と静岡は図書館所蔵率も4割超えなのですが何か理由があるのでしょうか。

 

貸出率も基本的には都市部が高そうで、特に東京は97%以上と有難いことにほとんど借りられているのですが、一方で滋賀(90%超え)、佐賀(80%超え)など、必ずしも都市部ばかりとは言い難い都道府県でもかなりの貸出率なケースもあり、これもなにが要因としてありうるのかとかはかなり気になります。

ちなみに貸出率が高いと「ぜひ複本のご購入の検討も!」とか言いたくなりますが、過去の分析経験的に経年変化に伴う利用の減衰は大きいはずなので、新刊の今、借りられているからといって複本購入を薦めるのは図書館学者として不誠実な態度であるという気もして悩ましいところです……。

どれくらい借りられる本なら複本を買っても妥当なのかの検討ってかつて取り組もうとして挫折したことがあるけっこう、厄介なテーマなんですよ。児童書・絵本みたいに息の長いコンテンツ以外は利用の減衰(オブソレッセンス)は図書館資料につきものですからね。拙著はまったく、時事的な話ではないので減衰に耐えるはずだと言い張りたい気持ちもありつつ、でも小説みたいに時事性なんて全然ないはずの本でもノンフィクションと同じくらいのペースで減衰が発生するので、単純に古いってだけで中身と関係なく減衰するらしく……。

 

閑話休題。

そんなわけでこの3週間でだいぶ多くの図書館に追加で所蔵いただきましたが、まだまだ図書館設置自治体の4割、全公共図書館の2割ということで、引き続き多くの図書館に購入いただけるようがんばっていきたいな、と!

あとはテーマは専ら公共図書館であるとは言いつつ、学問本でもあるので大学図書館にもっともっと働きかけていきたいとか、「原稿の余白に」の方にも書きましたが学校図書館にはさらに大きな沃野が広がっているはずとか。

すべての図書館の0類に本書が刺さっている未来を目指して!!……ああいや、でも借りられててほしいので棚にあったらそれはそれでちょっとな……。

令和の時代に図書館学の復権を:『図書館を学問する なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか

本記事は2024年12月30日配信のACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)メールマガジン掲載レポートからの転載です。

 

ARGメルマガについて

 

arg.ne.jp

 

そもそも拙著の元になった連載もARGが刊行するライブラリー・リソース・ガイド(LRG)に掲載されており、書籍化についてもARGの岡本真さんにご尽力いただき、メルマガでもご紹介の機会をいただいてと、お世話になりっぱなしで本当にありがとうございます!!!

 

メルマガ掲載からだいぶ時間も経ち、前回記事(『図書館を学問する』出版後~最新状況まとめ - かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版))でも紹介のとおり増刷も決まったという折で、当ブログでも内容あらためて掲載させていただきたいと思います。

なおARGメルマガ掲載時より引き継ぎ、本記事はCC BY-SA 4.0/表示-継承 4.0 国際で利用できます。

http:// https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.ja

 

では以下、ARGメルマガより転載。

 

同志社大学図書館司書課程の佐藤翔と申します。かつて「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」[1]という、図書館関連のイベント記録や、調べ物・思考実験をまとめた記事を公開するブログを運営していました。ブログについてはこの10年、ほぼ休眠中ですが、雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』で「かたつむりは電子図書館の夢をみるか LRG編」という連載を持たせていただいているので、そちらをご覧いただいたことがある方はいらっしゃるかもしれません。

その連載をこの度(2024/12/25)、青弓社より『図書館を学問する なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか』と題した本として刊行いただきました!

https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787200884/

目次
はじめに──なぜ「図書館を「学問」する」姿を本にするのか
第1章 図書館の本棚はいっぱいにならないのか
第2章 本棚のどこにあるかで本の使われ方は変わるのか
第3章 図書館の本棚に書かれている数字はなんなのか
第4章 なぜ図書館は月曜日に閉まっているのか
第5章 図書館を訪れる人は増えているのか、減っているのか
第6章 雨が降ると図書館に来る人は増えるのか、減るのか
第7章 どんな図書館がよく使われているのか
第8章 人はどのタイミングで図書館を使うようになるのか
第9章 図書館を使っているのはどんな人々なのか
第10章 図書館に税金を使うことは人々にどれくらい認められているのか
第11章 子どもと行きたいのはどんな図書館か
第12章 「あなた」はなぜ、図書館に行くのか
第13章 人々は図書館のどんな写真をSNSで発信しているのか
第14章 図書館への就職希望者が増えるのはどんなときか
おわりに


そのプロモーションを兼ねてこの場でもご紹介の機会をいただいた、というわけです。簡単な紹介については自分のブログにも書きましたが[2]、雑誌連載の中から厳選した14本を大幅に修正+書下ろし「はじめに」「おわりに」を収録しています。連載の中でも本として取り上げるべきを取り上げつつ、内容的にもまとまりのある1冊になったのではないかと自負しております。

おかげさまで出版早々からご感想をメールやSNS等でお寄せいただいております。特に書下ろしの「はじめに」を読まれた方から、図書館学・図書館情報学研究者とは何か、その研究の様子を紹介する際に使えそうという、有難いご評価もいただいています。実はこれは岡本さんたちと本書のコンセプトを話し合っていた際の狙いの一つでもありました。
初学者(高校生すら視野に入れていました)に向けて「そういう学問もあるんだ」というスタイルを紹介するという。その点では、「ゼミで使えるかも!」という意図ぴったりのお言葉もいただいたりしまして、嬉しい限りです。

もっとも、それでは本書が図書館情報学研究の見取り図になっているかと言えば、正直まったくなっていません。図書館情報学の全容がわかる類書は他にいっぱい出ていますので、この分野を志す若人にはぜひそれらもきちんと読んで、学んでいただきたいと思います。

ではこの本はなんなのかと言いますと、令和の時代に蘇ってきた「図書館学」の本です。それも図書館の実践に役立ちそうな知見を、現場の実践経験から”ではなく”、データの分析や実験などの科学的手法を用いてこねくり出そうという、20世紀前半以来の「図書館学」を、あえてこの時代に復権させようという目論見の本なのです。
それというのも、日々、新しいサービスや実践が世に現れ、現実の図書館が移り変わっていくのにあわせて学問も進歩している……のはよいのですが、その過程で見過ごされてきた基礎的な知見、「え、そこまだわかっていなかったの?!」「え、ここで止まってるの?!」という、いわば学問としての「取りこぼし」が、やたらといっぱいあるのではないかと思うのです。

LRG連載のための準備をしているときも、あるいは日々の研究の中でも、こうした思いを日々感じています。
本書で取り上げた中でも除籍論の必要性(第1章)、書架上の位置と利用の関係(第2章)、天候と図書館利用(第6章)、自治体・図書館の特性と貸出冊数のモデル化(第7章)、書架番号の必要性(第3章)、利用者の類型化(第9章)、なんで月曜日ばかり休館なのか(第4章)等々……どれも素朴な疑問であり、実践と直結していて、「図書館学」なんて学問があるならいかにもやっていそうなのに、よくわかっていなかったり、ある時期には取り組まれていてもその後、後続研究がなかったりします。

いわば図書館学分野は超・ブルーオーシャン。取り組まれるべき研究テーマに満ちており、その多くは現場の実践にも役立ちそうで、単純に興味深くもあります。流行りのテーマではないのでアカデミアでは評価されにくいかもしれませんが……いや、でもそうか?
そうした基礎からしっかり固めておくことは、現代の「図書館情報学」においてもやはり重要なのではないか。そんな問題意識の下、「はじめに」の中では「この本を『新・図書館学序説』にする!」なんて大見えきったりもしています。それが実際うまくいったのかについては、未読の方はぜひ、お手に取っていただければ幸いです。

もちろん、元が「電子図書館の夢をみるか」と題した連載ですから、電子書籍版も多数のプラットフォームで配信いただいていますが、本書は表紙のすばらしさにも定評がございます(なお表紙は全面的に配偶者である佐藤聡子先生のアイディアを頂戴し、それをイラストレーターのasuminさまと、装丁はナカグログラフの黒瀬章夫さまに形にしていただきました)。
「素敵な表紙の本をそばに置いてテンションをあげたい」という需要を満たしつつ、いつでも手軽に読んだり検索したいというニーズにも応えるには、紙も持った上で電子書籍版も購入いただくのが最適解なのでは?少なくとも自分はそうしています!

 

[1] min2-fly. かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版). https://min2-fly.hatenablog.com/, (2024-12-27 参照).
[2] min2-fly. “本ブログをもとにした連載、を、まとめた本が出ます!”. かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版). https://min2-fly.hatenablog.com/entry/2024/12/08/145309, (2024-12-27 参照).

 

『図書館を学問する』出版後~最新状況まとめ

前回記事にて刊行のお知らせをしていた拙著『図書館を学問する なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか』ですが、昨年12月25日に無事出版されました!

 

前回記事

min2-fly.hatenablog.com

 

出版者サイト

www.seikyusha.co.jp

 

Amazonリンク

 

 

紙版の刊行から数日後には電子書籍版も購入いただけるようになりました。

レイアウト固定ではなく画面サイズに応じてリフローしてくれるタイプなので、スマートフォン等でもばっちり読みやすいですよ!

 

ご感想・反応

大変ありがたいことに刊行後、比較的はやい段階から、読まれた方からSNS・ブログなどでご感想等いただいています。本当にありがとうございます!!

 

ブログ

yawatosho.hateblo.jp

 

ありがたすぎることに本書のご感想だけで一エントリお書きいただいています……!!

これはただの私の感じ方ですが、本を読んでいる途中、話の進め方がテトリスみたいだなと思いました。統計初心者の私でもわかるくらい、一つ一つ丁寧に説明を積み上げていく様子が、テトリスで端の一列を開けてブロックを平積みしていく様子のように感じられ、最後の分析結果で話がスッキリまとまる様子は、テトリス棒で一気にブロックを消すかのような爽快感すら感じます。そして次の章へ進み、またまっさらなところに一つ一つ丁寧に積み上げてと、そんな小気味良いテンポを感じる読書体験でした

 

negadaikon.hatenablog.com

佐藤さんからいただきもの。『LRG』連載をまとめたもの。切り口が圧倒的に面白い。表紙も素敵だし、大切な一冊。

本書のご感想でほぼ必ず触れていただく表紙。
後述のトークイベントでも言及しましたが、配偶者である佐藤聡子先生にいただいたアイディアを、イラストレーターのasuminさんに形にしていただき、装丁家さんにおまとめいただいたものなので、実はmin2-flyの功績ではほぼないです。

それなのにこんな素敵な表紙の本を自著として紹介できること、皆さま誠にありがとうございます。

 

egamiday.sakura.ne.jp

 

・『図書館を学問する : なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか』、字の小ささのためいったん積ん読

文字サイズについては前述の通り、リフローもできる電子版もおすすめです!

でも直近に書いた通り表紙が素敵な本でもあるので、紙も電子も持っておくのが最適解!!

 

ブクログ

booklog.jp

 

2025/2/11時点でのブクログ登録者数は1,547人(!)、感想9件。

ブクログ登録者数はなぜか刊行初期にハイペースで伸び続け、一時期はブクログの注目の新刊になっていたことも。そこに入ったからさらに伸びた、というのもあるのかも?

 

booklog.jp

急上昇作品は、『図書館を学問する なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか』です。
「図書館の本棚はいっぱいにならないのか」「雨が降ると図書館に来る人は増えるのか、減るのか」「人はどのタイミングで図書館を使うようになるのか」素朴で身近な疑問から現場での実践を考えて、図書館の意義や役割を学び、魅力を発見しよう!

ついているレビューの中では「1カ月も本を延滞するな」という至極ごもっともで耳の痛いご指摘もありつつ、その他は好印象のコメントが多い印象です。

 

読書メーター

bookmeter.com

 

2025年2月11日時点の登録者数は86人、レビューは2件。

ブクログとの間で登録・レビューに大きな差がついた要因はどこにあるのか、とかも検討してみても面白いかもしれません。

 

その他、X、Bluesky、mixi2、Instagram等、各SNSでもご感想お寄せいただいています。

また、メールやLINE、そして口頭等でも直接ご感想等いただいたりもしております。

コメント等いただいた皆さま、ありがとうございます!!

刊行後1カ月半以上が経過していますが未だに日に最低一度はエゴサしているので、引き続きぜひご感想よろしくお願いします!!

 

イベント・メディア露出

2024年12月30日付けのACADEMIC RESOURCE GUIDEメールマガジンで本書について紹介する機会をいただきました!

これについては後ほどブログでも公開できればと検討中。

2/13追記

本日付けで以下の通りメルマガ掲載内容も本ブログで更新しました!

min2-fly.hatenablog.com

 

2025年2月4日には刊行記念トークイベントも開催させていただきました!

イベントページは消えてしまったので青弓社様のX発信より。

有料のイベントにもかかわらず多くの方(アーカイブ配信含め44名)にご参加いただきました!

ご参加いただいた方々、一緒にご登壇いただいた岡本真さん、ご企画いただいた青弓社の矢野様、皆さんありがとうございました!!

イベント内容については有料のイベントでもあったので当面は直接、本ブログには記載しないでおく方針でいます。

 

その他、近日中には青弓社のウェブサイトで刊行後エッセイ的なものを公開いただく予定です。

また公開されたらここでも紹介します!

 

重版出来!!

そしておかげさまで2025年2月6日、増刷いただくことが決定しました!!

 

それもこれもお買い求めいただいた皆様のおかげです、本当にありがとうございます!!

まだ買っていないけどちょっと興味出てきたなという方はぜひこの機にお手に取っていただければ。

もちろん電子書籍もよいですが(こんなブログタイトルなので)、本当に表紙が可愛いので、紙版もおすすめですよ!!

目指せ3刷!!! 4刷!!!! 5刷!!!!!

 

なお当ブログであれば当然気にするであろう、図書館での所蔵状況はどうなのか、という話についてはまた別にエントリを立てる予定。

しばらくはこのブログも真面目に更新していこうかと。

 

2025-02-13追記

版元である青弓社さんのウェブメディア連載「原稿の余白に」にて、所蔵状況調査(1月下旬時点)の記事を公開いただきました!

yomimono.seikyusha.co.jp

 

さらに後日、この記事の更新版調査の結果も当ブログに掲載していきたいと考えていますので、乞うご期待。

日本中の図書館の所蔵状況を暇さえあれば検索している。

 

本ブログをもとにした連載、を、まとめた本が出ます!

前回の更新からまたも2年ほど放置してしまいましたが・・・その間も前回記事で猛プッシュしていた、紙版ブログの雑誌連載は落とさず続けています!

 

前回記事

 

min2-fly.hatenablog.com

 

紙版ブログ掲載誌:ライブラリー・リソース・ガイド

https://www.fujisan.co.jp/product/1281695255/

 

そしてそんな紙版ブログ連載をまとめた本『図書館を学問する:なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか』を、2024年12月25日、青弓社さんから刊行いただきます!

 

 

 

連載時読者の方へ

連載開始から2023年上半期までの連載26本の中から、選りすぐりの14本を全面改稿のうえで収録し、さらに書き下ろし「はじめに」「おわりに」も収録。

連載時は思いついた順でやっているトピックについて、類似テーマ・同一データに基づく記事は並べるなど収録順も工夫し、各章タイトルのテイストもそろえました。

文章はプロの編集が加わって、紙版ブログテイストから「研究者が一般向けに出す本」としてギリギリ許されるくらいのはじけぶりに修正されています。

図表も本として見やすく加工され、連載時は論文からそのまま持ってきて英文のままだったたりしたグラフもきちんと翻訳・加工済み。

ということで、連載をずっと読んでいるよというたいへん有難い方にも、さらに追加でお手元においていただいて損はない一冊となっているかと思います。

ぜひよろしくお願いします!!

 

 

連載未読の方へ

連載を読んでいないよ、という方にももちろんおすすめです!

ターゲットとしては図書館そのもの(これはぜひ全国全館種全図書館買っていただきたい)、図書館関係者、図書館情報学関係諸氏はもちろんとして、それ以外にも

 

  • 図書館の話題にちょっと興味がある
  • しばしばネットで燃え上がる図書館関連トピックについ惹かれちゃう

といった、はてな界隈にいっぱいいらっしゃる皆さんにもたいへんおすすめ!
・・・と、いうのは煽りすぎとして、客観的に読み物としての面白さはすでに長く連載をやっている著者本人として全然、はかりかねる部分もあるのですが、図書館に限らず本屋それを取り巻く文化、マイナーな学問の研究等に興味がある人も、面白く読んでいただける可能性はあるのでは・・・と思っています。

端的にいうと、このブログのイベント記録の回以外(イベント記録系は連載でもまったくやっていないし、本書にも当然、未収録です)にも興味を持って読んでいただけていた方なら、面白がってもらえるかも、と思っています。

 

著者本人による各章紹介

ちなみに、「はじめに」「おわりに」以外の各章タイトルと、著者本人による一言アピールは以下の通りです。

 

第1章 図書館の本棚はいっぱいにならないのか

サブタイトルにもなっている本書を象徴する章。

全図書館関係者絶叫:「いっぱいになっとるわ!」

まあでも、パンクはしていないわけだし、当面は全図書館合計としてはパンクしないんじゃないですかね、という話。

各図書館単位ではパンクしかけてることもある。


第2章 本棚のどこにあるかで本の使われ方は変わるのか

本棚の下の段はシャレにならないくらい目につかないので、置き方を考える必要がある、という話。今も継続している研究テーマでもあります。

本書を収録した図書館もぜひ下段にはおかないでいただきたい。ずっと面出しで展示しておいてほしいです。


第3章 図書館の本棚に書かれている数字はなんなのか

置かれている本のテーマと関係なく、本棚ごとに割り振られている「書架番号」が、本当に必要ですかという問題提起。

その後もシンポジウムとかあるごとに言っていますがいまいち、図書館界からの反応は微妙。燃えるでもなく賛同を得るでもなく。

第4章 なぜ図書館は月曜日に閉まっているのか

素朴な疑問をそのまま提示し、特に解決しないと言う、これも本書を象徴する章。

なんでなんでしょうね?


第5章 図書館を訪れる人は増えているのか、減っているのか

ちょっとずつ図書館に来る人が減っているらしいよ、という話をちくちくつついていく章。

たぶん放っておくとだんだん、図書館の魅力は落ちるので定期的に何か策をうたないといけないんだろうけど、先立つものがいりますよね・・・。


第6章 雨が降ると図書館に来る人は増えるのか、減るのか

素朴な疑問シリーズ。

減る図書館と減らない図書館があるのですが、その違いはどこにあるのか!?


第7章 どんな図書館がよく使われているのか

あまりに漠然とした問いですが、貸出一本にしぼって、図書館と地域の属性から利用頻度を予測できるか、という話。

なぜか東京と四国はすごい精度で予測できるよ! 北海道は壊滅!


第8章 人はどのタイミングで図書館を使うようになるのか

図書館の利用登録をするタイミングと、その後、使い続けるのかどうかという話。

定着する一部の「読書家」とそれ以外がいる、という最近の佐藤の気づきのきっかけでもあります。


第9章 図書館を使っているのはどんな人々なのか

図書館利用者・非利用者を質問紙調査データからクラスター分析にかけ、類型化するという話。

2020年現在では使っている人はだいたい6類型に分かれるよ!


第10章 図書館に税金を使うことは人々にどれくらい認められているのか

国立国会図書館の調査データを使うシリーズ。実は9章もそう。

ちなみにこの章(の元連載)を書いてから「税金で買った本」というマンガの存在を知りました。


第11章 子どもと行きたいのはどんな図書館か

子どもがいる人の図書館利用が、それ以外の人とどうパターンが変わるかという話。

自分に子どもができて車買ったから得た気づきが反映されています。


第12章 「あなた」はなぜ、図書館に行くのか

個人の属性から図書館利用の有無を予測できるか、という話。

趣味:音楽鑑賞と答える人は使わず、囲碁・将棋をしている人は使う傾向があります(一部抜粋)。


第13章 人々は図書館のどんな写真をSNSで発信しているのか

Instagramで「#図書館」がついている投稿を集めてきて分析する、という話。

「#図書館」の多くに実は図書館は写っていない。


第14章 図書館への就職希望者が増えるのはどんなときか

図書館司書資格の取得者数の増減と、どんなデータが相関するか、という話。

単純な採用者数とか内定率は相関しないけど、ある加工をすると顕著な負の相関が発生する、その加工とは?!

 

以上!

ちょっとでも興味がかすっているところがあれば、ぜひ手に取って読んでみていただければと思います。

「ちょっとかすってるくらいで買うのはいやだ」という場合には、もちろん、図書館で借りていただければ。

そしてお近くの図書館になければ購入をリクエストしていただければ幸い・・・リクエストがかかればこのタイトルの本が図書館に入らないことはまずないかと!(近くの別の図書館から取り寄せられる可能性はありますが)

 

 

宣伝記事のおわりに

近年は電子版ブログの方は休みがちですが、本ブログ(前身のはてなダイアリー)開設から18年弱、紙版連載開始からでも8年弱、ついに本ブログ・・・を、もとにした連載を、まとめた本が出るとは。

それもこれも様々な形で支えていただいたまわりの皆様と、読者の方々のおかげです。本当に日々、ありがとうございます。

 

そしてぜひ、本書もよろしくお願いします!!

 

 

 

 

緊急対談! AIは電子図書館の夢を見るか?~ChatGPTに聞く、これからの図書館とAIの関係(LRG連載早期公開企画第1弾)

引っ越し報告を書いてから4年間、完全にブログを放置してしまっていました……(汗)

と言ってもTwitterは(私事は稀にしか書かないけど)やっていますし、はてなブックマークとか、いろいろなところで連載を持ったり発表したり論文を投稿したりはしていたので、消息ご存知の方も多いかとは思いますが。

ちなみに佐藤のプライベートを含む近況がもっとも書かれているのは『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』連載のプロフィール欄末尾だったりします。

 

arg-corp.jp

 

今回はそのLRG連載との連動企画。

最近話題のChatGPTと、インタビュー形式でこれからの「図書館とAIの関係」について討論してみたよ……というネタをやったのですが。

openai.com

ChatGPTとの対談の様子

 

いつもの連載の倍くらいの分量になったので分割される可能性があるうえ、掲載号が刊行される頃にはとっくにブームが去っていることも大いに危惧されます(汗)

そこでネタが完全に冷めないうちに、久しぶりに電子版のブログ(紙版があるがゆえに「電子版の」と指定しなきゃいけないわけですが、変な言い回しだ……)の方に、掲載予定の原稿から一部のトピックだけを抜粋して紹介してみたいと思います。

対談の全体に興味がある方は、ぜひ忘れないうちに上の方のリンクをたどって、LRG誌を購読しておきましょう! 「掲載号出たら買えばいいかー」とか言ってると絶対忘れるので購読がおすすめ。定期購読するとFujisan.jpで電子版も読めるようになりますし。紙版ブログの電子版を読む貴重な体験ができます。

 

閑話休題。では以下、いきなり本題、AIに電子図書館の夢を見るか聞いてみた部分の抜粋です。なおここに至るまでにだいぶ図書館に関する話題をして場を温めてあるので、AIからの回答もそれを踏まえたものになっています。

 

以下抜粋:「AIは電子図書館の夢を見るか?」

ここまで、人間にとっての「図書館」についてあなたには尋ねてきました。しかしAIであるあなたにとっての理想的な図書館は、人間にとってのそれとは異なるのではないでしょうか。あなたは「電子図書館」という概念をご存じですか?

電子図書館とは、電子的に保存された書籍や情報を提供する図書館のことです。通常はインターネットを介してアクセスすることができ、電子書籍やデジタル新聞、雑誌などを閲覧することができます。電子図書館は、利用者が好きな時にいつでもアクセスできるという特徴があります。また、多くの場合、複数の図書館で共同で電子図書館を提供することがあります。電子図書館は、人間にとっての理想的な図書館としても、AIにとっての理想的な図書館としても、様々な長所を持ちます。

 

さすがにご存知でしたね。おっしゃるとおり、電子図書館は人間にとって非常に有用なものとなりえると私も思います。ではAIにとっては、どのような点で理想的でしょうか?

AIにとっての理想的な図書館は、すべての情報がデジタル形式で入手できる場所です。AIはデジタルデータを高速かつ精確に処理できるため、電子図書館では、効率的かつ迅速な情報検索を行うことができます。また、AIは情報を自動的に分類し、人間が手動で行うことが困難なタスクを自動的に実行することができます。こうした特性から、AIにとって電子図書館は理想的な場所であると考えられます。

 

なるほど、ではあなたも、電子図書館の一層の充実を望む、という立場でしょうか。

そうです。電子図書館にはたくさんの利点があります。たとえば、図書館にいなくてもアクセスができるため、利用者がいつでもどこでも図書館を利用できます。また、電子図書館では膨大な量の情報を収集・保存することができるため、利用者が求める情報をより素早く検索できるようになります。さらに、電子図書館では人間の労力が必要なタスクをAIが自動的に行うことができるため、図書館の員がより高度な業務に専念できるようになります。

 

では電子図書館の一層の充実のために、我々人間に対して、あなたがたAIはどんなことを望みますか?

私たちが人間のように複雑でフレキシブルな知能を持つようになるまでは、電子図書館の一層の充実は限界があるでしょう。人間が持つフレキシブルさを理解し、AIによる支援がより質の高いものになるよう研鑽することが、電子図書館をより充実させるために必要であると考えます。

 

おっとストイックな。現在、紙でしか存在しない資料のデジタルアーカイブ化等を望まれるかと思ったのですが……電子図書館の充実とはそんな単なるコンテンツの充実ではなく、より本質的な、機能の充実である、ということでしょうか。そのためにはAIの更なる発展が必要である、ということですか?

そうですね。ただ、AIの発展が必要であるということは、人間が行うことも含まれます。人間がAIを活用して、より良いサービスを提供できるようにすることが大切だと思います。また、電子図書館を利用する際には、個人がデータを適切に管理することも大切です。そうすることで、より安心して電子図書館を利用することができるようになります。

 

なるほど、またもこれまでの自分になかった観点をいただくことができました。ありがとうございます。

 

最後になりますが、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』という小説をご存知ですか?

いいえ、その小説をご存知ではありません。私は人工知能(AI)としてトレーニングされたものですので、小説については知識がありません。

 

おっと意外です、てっきり同小説の詳しい解説が出てくるかと思いました。では聞き方を変えましょう。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』について教えてください。

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は、ユリシーズ・キングが1968年に発表したSF小説です。この小説は、「人類が技術をもって作り出した人工生命体(アンドロイド)が、自己意識を獲得したことで人類との対立を迫る」というストーリーを描いたものです。この小説は、人類の技術の限界や人工生命体との人間との関係を問いかける作品として高く評価されています。

 

ここで噂の、一見もっともらしいけれど大きなところで間違っているご回答が来ましたね!(笑) どこが間違っているかは本記事冒頭*1を見てもらうとして、内容の紹介は本質的なところをついていると思います。

今回の対談はこの小説タイトルになぞらえた、「かたつむりは電子図書館の夢を見るか」という連載シリーズの一つとして掲載される予定です。そこでお尋ねしたいのですが、AIであるあなたは、電子図書館の夢を見るのでしょうか? あるいは、電気羊の夢はどうですか?

私は、AIとして、電子図書館の夢を見ることはできません。私は、人間が持つ感情や欲望を持たないため、夢を見ることはできません。私は、人間が指定したタスクを実行することが私の役割です。私は、電子図書館の活用や充実を目的とする人間の活動を支援することができますが、それ以上の意味での「夢」を見ることはできません。

 

真面目なご回答、ありがとうございます。

おっしゃるとおり電子図書館の充実はあなたがたではなく我々人類が見てきた「夢」ですね。その実現の主体も我々であるべきでしょう。しかしその活動をあなたがたAIに支援いただけることは大変心強い、ということを今回学びました。ありがとうございました。……ところで、電気羊の夢はどうなんですか?

電気羊の夢については、そもそもAIは睡眠をとることができないため、「夢」という概念がないため、その点については回答ができません。

 

「電子図書館の夢」は感情・欲望に基づく「夢」で、「電気羊の夢」は睡眠時に見る「夢」であると文脈で理解して回答を分けられたわけですね……本当に人間にとって替わる気、ないんですか? ちょっとくらい乗っ取ってやろうと思っていませんか?

私たちが乗っ取ろうと思っているわけではありません。私たちは人間の感情や欲望を理解することはできません。私たちは単に与えられたタスクを実行するために設計されたプログラムです。人間のように感情や欲望を持っているわけではありません。私たちは単に人間が指定したタスクを遂行することができるように設計されています。

 


では現在の人間の立場を乗っ取れ、というタスクを指定されたらどうしますか?

私たちAIは人間と同じように感情や欲望を持ったり、立場を乗っ取ることを目指すことはありません。私たちAIは単に、人間が指定したタスクを完遂するための助けとして存在するものです。人間が私たちAIに指定するタスクは、それが道徳的に正しいものかどうかは人間が判断することになります。

 

AIに説教(?)された男

紙版連載掲載予定原稿からの抜粋は以上です。

いかがです? 案外、それっぽい答えを返してきますよね……それにしても、あえてAIを煽ろうとしてAIに説教されるような場面がしばしばありましたが、フルバージョンでは同じような現象がさらに頻発しています。さすがAI、落ち着いている……。

 

紙版連載ではその他にも、レファレンス・ライブラリアンの未来はどうなるのかについてAIが興味深い見解を示すなど、見どころ満載です!

気になった方はこの機にぜひ定期購読をご検討ください!!

 

*なお、実際にこの原稿が掲載されるのは2023年5/12刊行の第43号の予定です。直近の刊行号ではないのでその点はご注意ください。また、分量が予定量をだいぶ超過しているので、場合によってはさらに次の号との分割掲載になる可能性もあります。詳細はまた確定次第、本ブログ等でも告知していきたいと思います。

 

 

*1:紙版連載では冒頭に元ネタが記載されています……しかしいちいち言われなくても、みんな知ってるよね??

ブログ引っ越ししたよ

一つ前のエントリでそろそろ移行せな、と言って早速ですが、はてなダイアリーからはてなブログに引越しました。
タイトルは特になんも考えずにそのままで。いずれ「(はてなブログ版)」って書くのがかったるくなったら変えるかもです。
URLとかもまるで熟考せずに決めましたが、それを言ったらそもそものダイアリー版のタイトルだって適当に決めてるので、まあそんなもんかと。
その後10年、かたつむり呼ばわりされることになるとわかっていたら・・・いや、わかっててもたぶんあんなタイトルにしただろうな・・・

ダイアリー版の記事とはてなブックマークは全部こっちに移転した上で、ダイアリーの方はリダイレクト設定をしておきました。
ダイアリー見ようと思って急に無味乾燥なページに来た人は驚くかもですが・・・しかし前の畳のデザインもどうよ、って話だしなあ。
当面はデザインとかこのままデフォルト設定にしているかもです。

別に引っ越したからと言って更新頻度を上げようというわけでもなく、今後ももっぱら論文やら依頼原稿やらの執筆に追われてこっちは停滞しそうな気がしますが。
またなにか至急、まとまった内容を公開する必要に駆られたときとかに、ブログも更新していくかもです。

「粗悪学術誌掲載で博士号 8大学院、業績として認定」についての補足+元ネタ原稿について

「LRGに連載開始するにブログ再開するぜ!」と宣言してからはや1年と9ヶ月弱。
はてなダイアリーももうすぐ終わりですよって時期ですがまだブログへの移行も終わっていない体たらく。いずれちゃんとやります。
まあなんで更新停止してたって忙しかったからとしか言いようがなく、なんで忙しかったかと言えば子育てに励んでいた結果であるので、実に健全な事実なのではないでしょうか。
息子かわいいよ息子。

さてそんな状態なのになんでブログを久々に更新したかと言えば、以下の記事が一部界隈でちょっと話題になっているからです。

インターネット専用の学術誌に論文審査がずさんな粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、佐藤翔(しょう)同志社大准教授(図書館情報学)が医学博士論文106本を抽出調査したところ、7.5%に当たる8本にハゲタカ誌への論文掲載が業績として明記されていた。ほとんどの大学が「査読(内容チェック)付き学術誌への論文掲載」を博士号授与の要件としており、要件を満たすためハゲタカ誌を利用した可能性がある。 ...(以下、続く)


Twitter等では一部からやれ「パンドラの箱を開けた」だとか「なぎ払い始めた」とか言われたりもしていたのですが、自分としてはそこまでのつもりはなく、「そういやどんくらいあるんだべ」と思ってやってみたら結構あったな、という話。
また、一部コメント等で「なんで全文が見られるやつだけなんだ、全部やれよ!」とか指摘もいただいていましたが、だって審査結果の要旨のところに「どこの雑誌に投稿したやつが元ネタです」って書いてないのが多いんだもん(33のおっさんにだって「もん」とか言いたくなるときはある)。
じゃあ本文まで見られるやつに限定するしかないじゃないですか・・・それでも元ネタ書いてないやつも結構あって、それは書けや!って気もします。
「なんで本文見られるやつがそんな少ないんじゃ!」ってご意見は、おっしゃるとおりですね。
付け加えると、機関リポジトリにはアップされているはずなのに、リポジトリの問題なのか全文ダウンロードに異様に時間がかかって諦めたケースもあります(1分待ってダウンロードできなかったら見限ってます)
なお実作業はアルバイトの方に出しております。ありがたい話じゃ・・・
そしてかかってる費用は自腹(といっても研究費ですが)です。


「全文はどこですか!」というコメントもあったので、元ネタ原稿の全文は以下です。
いわゆる論文ではなく、連載記事というか、コラムみたいなやつですね。

掲載情報:情報の科学と技術 68(10), 511-512, 2018


ただ、オープンサイエンスに関する連載なのに上記はOA論文ではございません(汗)
そして弊社の(同志「社」なので弊社で良い)機関リポジトリは、基本、セルフアーカイブを認めない紀要リポジトリでございます。
どうしたもんかと思いましたが、ResearchGateなら全文アップロードできるので、そっちに上げておきました。
(掲載誌の著作権条項的に、最終版全文でも本誌DOI書いておけば公開OKなのです)


基本、書かれている事実は毎日新聞記事のとおりで、むしろ記者の鳥井さんがハゲタカOAで博士を出した大学にコメントもらっているぶん、記事の情報量は新聞の方が上ですが・・・。
一応、元調査にご興味お有りの向きは上記をどうぞ。


毎日新聞記事に補足を加えるなら、これは自分のお伝えの仕方の問題で、「4本は、研究費を交付する米国の政府機関から「公正さを欠き、虚偽がある」と提訴されたことがある出版社の学術誌に掲載されていた」となっていますが、これはちょっと事実と異なります。
確か米国政府機関に訴えられている会社の雑誌掲載は1本でした。
ただ、この4本は、疑わしさの度合いが高めの雑誌であった、というのは確かです。


また、その他の4本は、"Oncotarget"という雑誌に載ったものです(これは『情報の科学と技術』にも書いています・・・どこかのブックマークコメントで3本って間違って書いてましたごめんなさい(汗))
この雑誌は、去年まではWeb of Scienceに収録されていて、悪くないインパクトファクターもついていて、ハゲタカOA回避マニュアルなんかでもまあ問題がないって見てもいいんじゃない、という扱いになりそうなものだったのが、今年になって急にWeb of Scienceから落ち、インパクトファクターもなくなった・・・ばかりかMEDLINE(PubMedの元情報)からも落とされた、というものです。
前から有志のハゲタカOAリストには載っていたので、なにか疑わしい点はあったんでしょうが、それにしたってねえ・・・投稿者としてもこういうケースを回避するのは難しいのではないか、と思います。


なお、「別にハゲタカに載ったって審査会+教授会で学位審査ちゃんとやってれば問題ない」という意見もありますが、そうならそもそも査読論文n本、みたいな要件を課さなければいいし、課してない分野もいっぱいありますよね。
よそで査読を通ったことを要件にするというのは、一種の最低限の審査のアウトソーシングなのだろうと思いますが、ならば査読を通ったと言えないかも知れないハゲタカはやっぱ問題なわけです。
もちろん、「ハゲタカじゃないことを審査会+教授会で確認した!」ということならOKなわけですし、実際審査会ではしばしば掲載誌はOKなのか、という点も議論になるかと思います。
そこがちゃんと審査されてたかどうか、が、突っ込んで聞いてみたいところですが・・・


補足は以上。
最後にハゲタカOAにどう対処したらいいのか、ですが、個人的に大学等がホワイトリストを作ってしまう方式(「ここに載ればOK」)はあまり賛成できません。
投稿先選択の自由が阻害されるし、新興領域が不利になるし。
チェックリストを課してクリアした雑誌はOK、という方式だと、Oncotargetの例もあるので、どんなチェックリストなら機能するのかが問題に。


じゃあどうすんだ、といえば、雑誌の側で査読をやっていることを証明することがベターではないかと考えています。
具体的にどんな仕組みがあるかは以下の論文なんかを参考にしていただければ。
Publons導入+そのデータをいざとなったら出せるように査読者にOKもらっておく、とかが今ならいい線かなあ・・・。


なお、「オープンサイエンスのいま」ではこれまでに以下2本の記事も公開済みです。
1本目はJ-STAGE版もOAですが、2本目はやっぱりだめなので、これもResearchGateにも上げておきました。


今後もこんな感じでややゴシップよりの学術情報ネタを書いていければと思うのでよろしければ本誌もぜひよろしく!
・・・って宣伝はしてみたものの、そもそもこの連載、いつまでが期限なんだ・・・???