クリエーター大国 その7

昨日の Amazon e託販売サービスの話しから 再び「クリエーター大国を目指すには」に戻ります。
これ迄の議論を乱暴に整理しましょう。
デジタルワーキンググループの議論は「クリエーター大国を目指す」為にはクリエーターを活性化しなければならないという真っ当なところに行ったのですが、 調べてみるとどうもクリエーター個人に報い方が少ないことがハッキリした。 オリジナルソフトコンテンツの権利所有者は 二重構造になっていて企業(映画会社、レコード会社、放送局)と個人(クリエーター)の対立が オリジナルソフトコンテンツ側にあるということもわかってきた。
ビジネスとしては「既に存在しているソフト」を 色々なプラットフォームに多重にしようすれば 利益を生むから良いに決まっているけれど、二重構造の内部対立があって簡単に実行できないし 解決しようにも 第3者が立ち入れない。しかし ブロードバンドという新しいテクノロジーの出現で パラダイムが変わったのだから 既得権をたてにしている企業は収入の分配率 あるいは権利の分配率をもっと個人に報いるようにすべきなのではないかといった方向にみなさんの意見は方向付いているように見えます。
こんな議論が進行していたら 久保利委員から 私に質問が出ました。久保利さんは弁護士で 商法著作権知財権に詳しい方です。

○久保利委員 丸山参考人に御質問なんですが、今、いろいろ議論されていることと、丸山参考人の今回の御説明とどういうふうに絡むのか。少なくとも、丸山参考人のペーパーを拝見する限りは、要するに創造のサイクルの保護というのはメジャーの論理だということが2ページ目の真ん中辺に書いてあり、インディーズは違うということです。そうすると、要するに丸山参考人がおっしゃっているのは、未知の情報に金を払ってもらうのは無理なんだから、情報を集めようとしている人たちには、これはただで配るしかない。それが本当に作品になったらばチャージができるんだねという話だと思います。
 そうすると、例として挙げていらっしゃるのが2004年にも100万枚、200万枚といったメガヒットアルバムが出ている。これが、情報が愛すべき作品になった場合がこういうふうに流れていったんだという前提だと思うんですが、私がよくわからないのは、この100万枚、200万枚買っている人が、ただで情報を集めた人が変質し、作品を愛することによって買ったということを直ちに言えるのだろうか。
 極端に言いますと、インターネットにアクセスもできないような人たち、あるいはアクセスはしても、やはり物としてのものが欲しい人たちが買っているのであって、そのニーズは必ずしも情報が作品に転化するということとは必ずしもイコールではないのかもしれないという気がするんですけれども、その辺りについてもう少し詳しく御説明いただけるとありがたいです。

○丸山参考人 ごめんなさい、少し話は長くなりますが、私は長いこと音楽をやっています。音楽というのは、基本的にははやりものなんです。ビジネスははやりものからビジネスが成立します。
 とはいうものの、実ははやりものというのは、一体誰がはやるところまで押し上げるかというのがあります。押し上げるのは、トレンドセッターという言い方をしますけれども、一番初めに、これはいいというごく少数の人が必ずいるわけです。それがトレンドセッターですから、その人たちの周りに人が、あの人が言うんだったらというのでだんだん広がっていって、最終的に何だかわからないけれども、はやっているから買う。それで、実はビジネスははやっているから買うという人たちによって支えられている。これがこういうソフトのビジネスの基本。多分、ファッションも同じだと思います。
 現状でいいますと、インターネットに接続していろんなことをやるというのは、どちらかといいますとトレンドセッターだと私は思っているんです。現状、例えば音楽というのはFMラジオで聞かれるか、テレビで新しい音楽を聞くことができるかといいますと、音楽そのものとしてはそれを聞くことができない。何でかといいますと、先ほど言いましたように、時間があるとかないとかという話もあるんですけれども、基本的にははやっている音楽しかラジオではかからない。はやりそうな音楽をかけてくれないです。
 そのために何をしているかといいますと、有名なはやっているミュージシャンは新しい音楽を今月つくるといったときに、必ずタイアップというのを取るようにします。つまり、音楽はコマーシャルの附属品であるか、あるいはドラマ、あるいは番組の主題歌という形でユーザーというのは新しい音楽を手に入れることができる、聞くチャンスが増えるというサイクルで、それがどうなるかといいますと、ほとんど回転しているのは、いわゆるロングテールの頭の部分という、ここにいる皆さんだったらおわかりだと思いますけれども、はやっている頭の方のところだけで、今、ぐるぐる回転しているというのがこの2〜3年の傾向だと思っています。
 新しいものが世の中に出てくるというのは、ロングテールの下の方にあるわけで、そこの中から次の新しいものというのは出てきます。ですから、そのロングテールの下の部分を世の中に知らしめるという方法論がなくなっているのであれば何とかしないと、というのが基本にあって、それであれば、まず音楽を聞いてもらわないことには誰もわからないんだから、聞いてもらうのを優先しようではないかというところです。
 よろしいですか。それでも、まだ弱いですか。

 
(続く)