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『MarkeZine』(雑誌)

第110号(2025年2月号)
特集「イマドキの中高生・大学生のインサイトを探る」

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MarkeZine BOOKS(マーケジン・ブックス)は、激動の時代を生き抜くビジネスパーソンに向けた、マーケティング分野の新しい定番書シリーズです。

書評

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MarkeZine Day 2024 Autumn

一過性のブームで終わらせない 「ヤクルト1000」シリーズのブランド戦略

 多くのマーケターが、自社の商品をヒットへ導くべく試行錯誤を重ねている。しかし、商品の人気を一過性のブームで終わらせずロングセラーの状態まで持っていくためには、強固なブランド資産を築く必要性があるだろう。まさにこの挑戦を続けているブランドが「Yakult(ヤクルト)1000」と「Y1000」の「ヤクルト1000」シリーズだ。MarkeZine Day 2024 Autumnにはヤクルト本社の工藤洋介氏が登壇し、同シリーズのブランド戦略と定着化に向けた取り組みについて語った。本稿ではその内容をレポートする。

宅配と直販で顧客のニーズに対応

 ヤクルト本社の創始者である代田稔(しろた・みのる)氏は、病気に罹ってから治療するのではなく、病気に罹らないようにする「予防医学」の道を志していたそうだ。その道程で乳酸菌・微生物の研究が進められ、1935年には乳酸菌 シロタ株を含む飲料「ヤクルト」が発売された。

 ヤクルト本社でブランド戦略の立案・推進を担う工藤洋介氏は「予防医学に対する当社の姿勢は90年近く経った現在も変わっていない」と語る。

ヤクルト本社 業務部 企画調査課 課長 工藤 洋介氏
ヤクルト本社 業務部 企画調査課 課長 工藤 洋介氏

「健康に関する社会課題を乳酸菌の力で解決したいという思いは、当社の企業理念にもつながっています。現場にも受け継がれている我々のモットーです」(工藤氏)

 主力ブランドのヤクルトだけで9商品を展開する同社。同社独自の販売網の象徴であるヤクルトレディが住宅や職場を1軒1軒訪問して商品を届ける「宅配チャネル」と、店頭を中心とした「直販チャネル」で販売を行っている。それぞれのチャネルに応じた商品を用意し、顧客のニーズや購入経路に応じて最適な商品を提供しているのだ。

未充足ニーズの兆しを「睡眠」に見出した

 顧客の健康へ真摯に向き合い、幅広いチャネルを持つ同社だが、2018年頃のプロバイオティクス飲料市場において、ヤクルトの売上は伸び悩んでいたという。工藤氏は当時の状況に対して「危機感を持っていた」と振り返る。

 苦境を迎える同社に転機が訪れた。国の調査や自主調査の結果から、生活者の身体だけでなく心の健康維持に対する需要が高まっているとわかったのだ。特にストレスや睡眠に悩む生活者が多かった一方、半数近くは改善に向けた策を講じていなかった。

「その調査では、多くの回答者が『睡眠・ストレスを改善する商品を試してみたい』と答えていました。未充足ニーズの兆しを発見し、大型新商品の開発の後ろ盾となりました」(工藤氏)

 未充足ニーズの発見に加えて「脳腸相関」に関する研究結果も同社に転機をもたらした。脳腸相関とは、脳と腸が密接に影響し合う関係にあることを指す言葉だ。会議前や試験前などのシーンにおいて、緊張から生じるストレスが腸に刺激となって伝わり、お腹が緩くなる事象は最もわかりやすい例だろう。

「当社の研究から、乳酸菌 シロタ株が腸を通じて脳の神経系に働きかける作用を持つことがわかってきました。そして、当社の商品でこの作用を働かせるためには、飲料1本あたりに高い密度で多くの乳酸菌を含む必要があることも明らかになってきたのです」(工藤氏)

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この記事の著者

宮野 圭(ミヤノ ケイ)

コンサルティングファームにてデータアナリティクスを通じた業務改革に従事する傍ら、ライターとしても活動。エンタメ領域やテクノロジー領域のメディアにて執筆経験あり。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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