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第108号(2024年12月号)
特集「2025年・広告の出し先」

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MarkeZine BOOKS(マーケジン・ブックス)は、激動の時代を生き抜くビジネスパーソンに向けた、マーケティング分野の新しい定番書シリーズです。

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「あのキャンペーン」の担当者に直撃!

ミッションは「宣伝費0」で双子アイドルユニットを有名にすること、「フリー素材アイドル」の裏舞台に迫る

 「イメージが重要な“アイドル”が自身の画像をフリー素材として配布する」一度耳にすれば思わず興味を寄せてしまうキャンペーンが実施された。広告費を一切かけず、双子のHIP HOPユニット MIKA★RIKAの認知度向上を目指した同施策。どのようにしてプロジェクトは進められたのだろうか。

キーワードは版権フリー、アイドル界の「くまモン」目指す

 アイドルが自身の画像をフリー素材として配布するキャンペーン、その名も「フリー素材アイドル」をご存知だろうか。ストックフォト販売サイトアマナのサイト上で、双子HIPHOPユニットMIKA★RIKA(ミカリカ)の撮り下ろし画像を1000点以上公開。商用非商用問わず、誰でも自由に使えるようにしたというもの。画像は30万回以上ダウンロードされ、すでに100社以上が利用しているという。

 同施策は、MIKA★RIKAの認知度向上を目的に展開されたもの。イメージ勝負のアイドルが肖像権を放棄するという、前代未聞のキャンペーンだ。さらに、プロジェクトのコンセプトは、「宣伝費0で有名にすること」。非常にチャレンジングといえる取り組みは、D2Cが主催するコードアワードにおいても、これまでになかった新たなビジネスモデルや画期的な手法を用いたマーケティングコミュニケーション施策に与えられる「ベスト・イノベーション」に輝いている。この施策は、どのようにして実現するに至ったのだろうか。今回、MIKA★RIKAのご本人と、所属事務所の代表・戸張立美氏に企画背景や狙い、取り組みから得た知見を聞いた。

スタッフ・アップ・グループ代表取締役社長兼CEO 戸張立美氏とMIKA★RIKAのお二人
スタッフ・アップ・グループ代表取締役 戸張立美氏とMIKA★RIKAのお二人

――「フリー素材アイドル」の企画背景はどのようなものでしょうか

戸張氏:そもそもの目的はMIKA★RIKAの認知拡大です。アイドルの宣伝といえば、番組タイアップ、CMのキャスティングやPV制作、宣伝のトラックを走らせることが主流ですが、いずれも実施する為には潤沢な資金が必要です。より低予算で施策を打てないものかと考え、電通さんに相談した所、面白がっていただけて「宣伝費0」でアイドルをPRするというプロジェクトを実施することになりました。

――「フリー素材」というアウトプットに至ったのは、なぜですか

戸張氏:企画のアイディアを出し合う中で電通さんのクリエイターのかたから、熊本県のPRキャラクター「くまモン」と漫画「ブラックジャックによろしく」の話が出ました。両者の共通点は、著作権をフリーにしたことよって多くの人の間に広まり、認知度を上げた点です。

 くまモンは申請さえすれば、誰でもキャラクターを無償利用できますし、「ブラックジャックによろしく」も二次利用フリーになっています。そこから、MIKA★RIKAが「アイドル界のくまモン」になれないかと考え「フリー素材として写真を無料配布する」というアイディアに至りました。

宣伝費0の秘訣はクラウドファンディング

――「宣伝費0」は本当のことなのでしょうか。

RIKAさん:多少お金はかけたんじゃないの? とよく聞かれます(笑)。でも、本当に宣伝費0で行ったんですよ。

戸張氏:フリー素材という面白い企画が決まったのは良いものの、素材となる写真を撮影するには費用がかかります。アマナイメージズさんの協力を得ることによって、実際は100万円以上かかるところを、なんとか20万程度で撮影してもらえないかと交渉しました。その20万円をまかなうために、クラウドファンディングで資金を募ったのです。

――クラウドファンディングで、目標金額を達成できたのでしょうか?

MIKAさん:20万円を目標金額に設定して募集をしたのですが、約30万円のご支援をいただきました。最初はサイトを毎日見ては「増えてない……」と焦っていました。ですが、着実に資金が集まり、20万円を達成し、さらに30万円を達成したときは、本当に嬉しかったです。

 冷静に考えると、「フリー素材を作るのでお金ください」なんて、不思議なお願いですよね(笑)。けれど、多くのかたが面白がってくれたり、応援してくれたりしてくれました。とてもありがたかったです。

――アイドルはイメージを重要にする職業の一つかと思います。そのアイドルをフリー素材として配布する、という取り組みに不安やリスクは感じませんでしたか?

戸張氏:ビジネスの観点で申し上げると、今後、いかに利益を出すかは悩ましいところです。例えば、複数の企業にフリー素材を使っていただいたとすると、彼女たちの認知が上がってきたときに、どこか一社と専属でのCM契約を結ぶことが難しくなります。ですから、当初は迷いがありました。

 解決策として、ダウンロード期限は1年、使用可能期間は2年に設定して、MIKA★RIKAのロゴを付ける場合のみ3年間使用可能というルールを決めました。芸能界で仕事を獲得するためには、人々がタレントにについて“見たことがある+名前を知っている”ことが必須条件です。まずは彼女たちをその段階まで引き上げる必要があります。フリー素材にロゴをつけてもらえれば、露出も増える上に名前も覚えてもらいやすいのではないかと考え、実施に踏み切りました。

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この記事の著者

石原 亜香利(イシハラ アカリ)

株式会社キャピタルエージェンシー 代表取締役社長/ライター
WEB媒体・紙媒体とマルチに多ジャンルで執筆中。マーケティング関連では、コンテンツメディアなど、顧客の生活動線に入り込むコミュニケーションをテーマにした事例記事、ビジネス関連では、BtoB企業のニュースレターやホワイトペーパー、ブログ記事など、見込み客との関...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2015/09/18 08:00 https://markezine.jp/article/detail/23034
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