六ヶ所村と「可能性は否定できない」について

もう最近は、イラクのニュースを扱うにしても、「劣化ウラン弾」と「イラクのかわいそうな子供の写真」を因果づけて言及するのはとてもマイナーなところのメディアを除くとあまり存在しなくなったんですが*1、以下のところから。
→高知新聞ニュース■原発の光と影知って 「六ヶ所村―」の鎌仲監督来高■

鎌仲監督が核や放射能問題に関心を持つきっかけとなったのは、イラクの子どもたちの死。1998年、湾岸戦争から7年が経過したにもかかわらず、子どもたちががんや白血病で亡くなっていた。米軍が戦争で使った劣化ウラン弾に含まれる放射性物質による内部被ばくが原因だった。
劣化ウラン弾がどこから出てくるのか。探っていくと、自分たちが使っている電気と密接な関係があることに気付いた。国内55基の原子力発電所はウランを燃料に動いている。ウランを燃料にする過程で生じる劣化ウランが劣化ウラン弾を生みだしていた。

太字の部分、ものすごく断定していますが、普通の新聞なら「米軍が戦争で使った劣化ウラン弾に含まれる放射性物質による内部被ばくが原因だった、と鎌仲監督は言う」とか「という噂も聞かないことはない」という程度の表現をしておいたほうが無難だと思います。
とりあえず、こんなのにリンクしておきますね。
→愛・蔵太の少し調べて書く日記 - ひさびさに劣化ウラン弾に関するTV放映がある様子

でもぼくが知りたいことはあまり出てこないのが、毎年残念です。
それは、イラクで劣化ウラン弾が実際に使われた場所と、小児ガンを含むガン(特に肺ガン)の発生率について因果関係が認められそうなグラフとか図式です。
もう数年すると出てくるのかも知れないなぁ。

ということで、そのような図式が出てきたら、どなたか教えてください。劣化ウラン弾の微粒子という、肺に入って放射線を出す物質による肺ガンが、そろそろ増えていてもおかしくないと思います。
「イラクの子供のがん・白血病」については、以下のところなど。
→愛・蔵太の少し調べて書く日記 - 「劣化ウラン弾で苦しむイラクの子どもたち」という誤った情報にだまされないために

イラクの子どもたちに医療的な援助を考えることは必要ですが、その理由は「劣化ウラン弾が使われて、がん患者が増えているから」ではありません。罹患率は日本と同じか、やや少ない程度です。ただ、十分な治療を受けていない(受けられない)のが問題。

→愛・蔵太の少し調べて書く日記 - 劣化ウラン弾に抗議している人は、一般的な「がん発生・死亡率」「奇形の割合」について知っているのかという疑問など

がんによる死亡率は、→「悪性新生物死亡率の国際比較 」←でもわかるとおり、10万人につき100人以下の国は存在しません。

で、もう一つ気になる、「日本の劣化ウランがアメリカの劣化ウラン弾になっているかどうか」ということなんですが、
→関西電力によるアメリカへの劣化ウランの無償譲渡に関する質問主意書

二 アメリカUSEC社のパデューカ濃縮工場およびポーツマス濃縮工場の劣化ウランから劣化ウラン弾が製造されていることは、通信社・ロイターが二〇〇一年一月二〇日に報じるなど周知の事実である。関西電力が無償譲渡した劣化ウランが兵器の材料として使用されている可能性は否定できない。

新聞報道を元に「可能性は否定できない」と言っている段階で、「だいぶ劣化してるな(質問が)」と、ぼくなんかは思うわけですが、皆さんはいかがでしょうか。ロイターの記事は探してみたけどうまく見つかりませんでした。

公式な答弁は、こんな感じ。
→衆議院議員北川れん子君提出関西電力によるアメリカへの劣化ウランの無償譲渡に関する質問に対する答弁書

御指摘のロイター社の報道に係る事実関係について、米国USEC社からは、関西電力株式会社から委託されたウラン濃縮に伴い発生した劣化ウランを劣化ウラン弾の製造のために使用したことはない旨の説明を得ている。

この説明テキストも探してみたいものです。
本当はここから先が野党の仕事と言えば仕事なんだけど、そこまでの取材力があるのは、「赤旗」という新聞の新聞記者がいる共産党ぐらいなもんでしょうか。
「関西電力株式会社から委託されたウラン濃縮に伴い発生した劣化ウランが、劣化ウラン弾の製造のために使用された証拠は、この通り、ここにある!」と、証拠写真とか証拠書類を出すと、与党の人はびっくりすると思います。
で、びっくりして「今後はそのようなことがないよう、関係各社・各人と配慮したいと思う」と言って、新聞記事になって、それだけ。
野党が与党になることもなければ、劣化ウラン弾がなくなるわけでもなければ、「イラクのかわいそうな子供たち」の数が減るわけでもない。
 

*1:個人の日記・ブログではまだけっこうあります。情報操作の恐ろしさをとても感じます。