劣化ウランはどこまで安全でどこまで危険か、というめやす

あまりにも「安全である」ということを強調しすぎたり、「危険である」と主張しすぎたりしているサイト(後者のほうが圧倒的に多いですが)が目立っているように俺には思えるので、というか、俺のサイトだけを見ていると「全然危険じゃないじゃん」とか思われたりすると、それはそれで問題あり(俺としては不本意)なので、ちょっと参考になりそうなところを紹介しておきます。といっても、それは俺の知っている限りでは、今のところ二つしかありません。
→Depleted uranium: sources, exposure and health effects -- Executive summary -- - WHO(WHO(2001) 『劣化ウラン:原因、被曝および健康への影響 ― 概要 ― 』)
4年も前のWHOのレポートなので、今はもう少し研究が進んでいるかも。
まぁ、これの「化学的毒性および放射線量についての手引き」とか。

一般公衆の可溶性ウラン化合物の摂取は一日につき体重 1 kg あたり 0.5 μg の耐容摂取量を超過すべきでない。不溶性ウラン化合物は腎臓に対する毒性が著しく少なく、耐容摂取量を一日につき体重 1 kg あたり 5 μg とするのが適当である。

公衆による可溶性または不溶性の劣化ウラン化合物の吸引は、吸入可能粒子において 1 μg/m3 を超過すべきでない。

普通の人の体重を50kgとすると毎日25μg以上の可溶性ウラン化合物を取ると微妙らしいです。
もう一つは、これ。
→Depleted Uranium FAQs - IAEA(国際原子力機関(IAEA)・劣化ウランFAQ集)

一般公衆の年間線量限度は 1 mSv であり、一方、放射線労働者の当該の限度は 20 mSv である。1 mSv の線量によって付加される致命的な癌の危険性はおよそ 20,000 分の 1 と考えられている。一生の中でのこの小さな危険の増加は、致命的な癌を発症する危険性を誰でも 5 分の 1 は持っているということを鑑みて、考察されるべきである。また、放射性物質に対して被曝してから何年も後まで癌が表に現れないことがあるということも注意しなければならない。

上記の化学的および放射線学的限界を超過する前に、人がどれだけの DU に被曝しうるかを見積もることは可能である。下の表は、腎臓 1g 当たり 3 μg の腎濃度あるいは 1 mSv の線量(放射線量限度)に至るには、どれくらいの劣化ウランが吸引あるいは経口摂取されねばならないかを示している。

そのあとに、あちらのサイトでは表があったりするんですが、表をこの日記ではどうやって引用したらいいか分からないので省略して。
「‘不溶性’なDU エアロゾルの吸引」により「1 mSv の被曝線量に至らしめる摂取量」は、「腎臓 1g 当たり」で「11mg」(これが最小)〜「‘不溶性’なDU 化合物の経口摂取」により「1 mSv の被曝線量に至らしめる摂取量」は、「腎臓 1g 当たり」で「8,800mg」(これが最大)。
腎臓の大きさは200〜300グラムぐらいらしいので(成人男性の場合)、女子・子供も考慮して200グラムぐらいとすると、1100mg(1.1グラム)を「不溶性のエアロゾル」の形で吸引すると、ガンになる可能性が2万分の1ほどあがる、という感じです。
まぁ、素人判断としては、劣化ウラン弾を市街戦で使って、その粉塵が舞い散っている中をマスクなしで特攻していくと、あとで大変なことになりそうだ、とか、戦争が終わったあとの、劣化ウラン弾で破壊された戦車のあるところで子供が遊んでたりするのは基準値を越えそうだ、とか(あとで手を洗ったぐらいでは、多分ダメ)ぐらいの感じでしょうか。
劣化ウラン弾が使われた戦場すべてが危険地域、ということは多分ないとは思いますが、局地的にものすごいことになっている場所はありそうなので、そこは閉鎖する(一般市民、特に子供が近寄れないようにする)とかして、ちゃんと防塵服を着た処理班の人が戦車・高射砲を早急に片づけるとかが必要でしょう。
あと、今後の心配は土壌汚染で、これはどういう風に処理するのがいいのかよくわかりません。ただ、それによる危険量は、紹介した表を見ればわかるとおり、「‘普通に可溶性’なDU 化合物の経口摂取」になるので、腎臓にダメージを与えるには「400mg×200」で、80gということになりますか。そんなに大量に取るということは、なかなか難しいと思うんですが。
なお、胎児に対する影響は、こんな感じ。

ウランに対する被曝が人間の胎児の発達に影響するかどうかも知られていない。非常に高い放射線量のウランを含んだ飲料水を餌として与えられた動物について死産の増加と先天性欠損症(奇形)が報告されている。妊娠した動物に行われた実験では、注射されたウランのうち胎児にまで達したのは非常にわずかな量(0.03%)だけだった。吸引や経口摂取によってウランに被曝した母体から胎児にまで達するウランの量はさらに少ないと考えてよいだろう。

ちょっとこの「非常に高い放射線量」というのがどれぐらいの量なのか不明なので、少し調べてみたいです(ご存じのかたは教えてください)。
要するに、「ものすごく危険ということはないが、やはりそれなりに危険なので、それが使われた地域ではそれなりの対策が必要だし、今後はそれが使われないようにしたほうがいろいろ無難」という、当たり前のことを俺も言っておきます。