車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、三千院と寂光院で有名な大原の、2024年4月現在の見どころ・食べどころとドライブ及び車中泊に関する事情です。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
~ここから本編が始まります。~
滋賀県との県境に近い「大原の里」は、比叡山や平家物語とのゆかりを秘めた、都会人好みの静かな山里
「大原」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2003年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2003.11.21
2008.05.16
2008.11.25
2011.11.23
2012.11.28
2020.06.04
2023.06.04
2024.04.13
※「大原」での現地調査は2024年4月が最新になります。
京都・大原 車中泊の旅 目次
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大原の概要
この写真は、比叡山の山頂にある「ガーデンミュージアム比叡」の展望台から撮影した遠景だが、比叡山の麓に位置する大原は、四方を山に囲まれ、今も田園風景が残る、人口2000人ほどの静かな山里だ。
里の中を鴨川の支流・高野川が流れ、春は桜、夏はホタル、秋はもみじ、そして冬は雪景色と、四季折々の自然に包まれながら、今も素朴な暮らしが営まれている。
そのため古くから、貴人や仏教修行者の隠棲の地として知られてきた。
千年以上の歴史を持つ「三千院」と「寂光院」が、目立つことなく緑豊かな自然の中に佇む大原は、京都でも他とは明らかに異質の風情を醸している。
ちなみにその光景は、1966年(昭和41年)に発表された、
♪京都 大原三千院
恋に疲れた 女がひとり♪
で始まる、作詞・永六輔、作曲・いずみたくの名コンビによる、デューク・エイセスの楽曲「女ひとり」の中に、しっとりと描かれている。
その懐かしのメロディーが発表されてから、40年近くが過ぎようとしているが、
いずれにしても…
暗くもなく、明るくもなく、それでいて特に物悲しいわけでもなく、ただゆっくりと流れる時間の中で、云いようのない優しさに包まれる…
大原は今でもそういうところだ。
東京や大阪に住む都会人が惹かれるのは、きっとそのあたりに理由があるのだろう。
「三千院」と「寂光院」
さて。
誰もが大原の見どころに挙げる「三千院」と「寂光院」については、筆者も負けじと詳細を別記事にまとめているので(笑)、後ほどゆっくりご覧いただきたい。
簡単に説明すると、両者はともに天台宗のお寺で、「三千院」は782年から806年に最澄が、「寂光院」はそれよりも古い594年に、あの聖徳太子によって建立されたと伝わり、ともに京都の古刹の中でも”筆頭格”と呼べる存在だ。
「しば漬け」に残る逸話
筆者の世代は「しば漬け」といえば、元ニュースキャスターでタレントの山口美江さんが、「あ~、しば漬け食べたい!」と呟く、昭和のフジッコのCMが思い浮かぶのだが(笑)、今日はその話じゃない。
「しば漬け」は「すぐき漬け」「千枚漬け」とともに、“京都三大漬物”と呼ばれる大原の伝統食。
鮮やかな紫色と酸味が特徴だが、大原はその紫色の素に使われる「赤しそ」の産地で有名だ。
そしてその名付け親となったのが、「平清盛」の娘で、後に「建礼門院」となる「徳子」と云われている。
2012年の大河ドラマ「平清盛」では、二階堂ふみが演じていたが、
高倉帝に嫁いだ「徳子」は、壇ノ浦で短い生涯を閉じた幼い「安徳天皇」の母にあたる悲運の女性で、「壇ノ浦の戦い」で運悪く生き延びてしまった後は、「建礼門院」として大原の「寂光院」に閑居していたが、そんな彼女を元気づけようと、地元の民が「赤しそ」を使った漬物を献上した。
紫は皇室内で、もっとも身分の高い人が身につける色だったことから、「建礼門院」はたいそう喜び、それを「紫葉漬け」と呼んだという。
当初、紫葉は「むらさきは」と読まれていたようだが、大原は昔から「柴」の産地でもあることから、それがあいまって、いつしか「しば」と発音されるようになり、「柴漬け」になったという話もある。
ちなみに大原では、国道367号沿いにある「土井志ば漬本舗」が有名だ。
食事もできる「土井志ば漬本舗」の本店には、駐車場の裏に「志季彩の道」と呼ばれるフォトスポットがある。
本来はしそ畑だが、桜の季節には菜の花が植えられ、ご覧の美しい光景が広がる。
なお、「土井志ば漬本舗」は「三千院」の御殿門の前にも店がある。
ただ、マイカーで行ってお土産に買うつもりなら、同じく「三千院」の表参道沿いにある「志ば久本店」には、季節を問わないメリットがある。
というのは、「志ば久本店」で買物をすれば、国道367号線沿いにある「お客様駐車場」が無料で使える。
もっとも…
支払うお金だけを考えれば、他の有料駐車場を使うほうが安上がりで、これはどの有料駐車場も満車で困った際に使える、「裏ワザ」とでも覚えておこう。
大原の立ち寄り&ランチスポット
続いて、「大原で立ち寄ってみては?」と云えそうな場所を2ヶ所紹介しておく。
ひとつは大原と近郊で採れた新鮮野菜を直売している「里の駅 大原」で、土日は屋台や手づくり小物の出店、毎週日曜日は、午前6時から9時まで「ふれあい朝市」を開催している。
「ふれあい朝市」では、パンや弁当なども販売しているので、朝早めに行ってそれをゲットしておくのも悪くない。
敷地内とその道路を挟んだ向かいには無料駐車場があるが、夜間は閉鎖されるので車中泊はできない。
いっぽう、大原らしいランチが食べられる店は、大原バスターミナルから「寂光院」側に少し歩いたところにある、野菜ソムリエのマスターが運営する人気のカフェレストラン「来隣(きりん)」だ。
筆者が訪ねた時は、コロナ禍の最中で空いていたが、今は予約必至だと思う。
写真は、本日のおにぎりから5種類が選べる「里の恵み おにぎりランチ」¥2000で、大原野菜のおばんざいとサラダバイキングがついている。
けして安くはないが、そこは雰囲気料込みということで(笑)。
来隣(OHARA River side café KIRIN)
☎075-744-2239
11時30分~21時30分
火曜定休
予約は電話のみ。
駐車場なし
大原へのマイカーアクセス
このマップを見れば一目瞭然だが、京都市左京区の北東部にある大原は、京都市内の観光スポットの「最北端」に位置しており、公共交通機関を利用する旅行者にとっては、どちらかといえば”対象外”にしたくなる場所。
そのため、ここはレンタカーを含むクルマでのアクセスが便利だ。
大原の中心を通る国道367号は、別名「鯖街道」と呼ばれ、福井県の小浜から熊川宿・朽木宿を経て京都の出町にいたる、多くの行商人が通った道で知られる。
片側1車線が確保された、走りやすい道ではあるものの、白川通りから国道367号に入ると一本道になるため、ハイシーズンは早ければ朝の8時過ぎから渋滞が始まる。
大原までは「まさに一本道」なので、一度捕まると耐えるしかないため、できれば反対の琵琶湖方面からアプローチするほうが無難だろう。
さて。
大原では歩かなければ、その”云いようのない優しさ”を実感することは難しい。
「三千院」から「寂光院」までは、片道約2キロ・30分ほど。
「三千院」「寂光院」ともに専用の駐車場はなく、少し離れたところにある民間の有料駐車場を利用する。
いずれにしても、どちらかの近くにクルマを置いたまま往復することになるので、拝観を含めれば5キロほどを、約3時間かけて散策することになるはずだ。
では、「三千院」か「寂光院」の、どちらの駐車場に停めるほうがいいのか?
朝早くから大原に行くのなら、筆者のお勧めは「寂光院」の近くになる。
理由は駐車場の数も収容台数も、「三千院」界隈に比べると少ないため、ハイシーズンの休日なら10時には全部満車になりかねないから。
しかも駐車料金は、大半が終日300円と良心的なので、それを知っている人は、こちら側を目指してくる。
いっぽう「三千院」界隈にある駐車料金の相場は、だいたいが1日400円から500円で、国道367号線周辺に広くて入庫しやすい駐車場が揃っている。
なので出遅れた場合はこちらを探そう。たとえ空き待ちになっても、並ぶ時間は「寂光院」側よりは少なくて済そうだ。
大原の車中泊事情
前述したように国道367号は、滋賀方面から来ると空いている(笑)。
ゆえにスーパーや日帰り温泉が近くになく、車中泊環境の整っていない大原で車中泊をするより、滋賀県の道の駅で「前泊」し、翌朝から大原に向かうほうがスマートでゆっくりもできる。
大原にもっとも近い車中泊スポットは、「道の駅 妹子の郷」。
「湖西道路」(無料の自動車専用道路)上にあるサービスエリア的な存在で、約13キロ・クルマで20分ほどのところにある。
また近江や草津がある湖東とのアクセスがいい、「道の駅 琵琶湖大橋米プラザ」からも、大原へは30分弱で行くことができる。
モデル車中泊コースガイド
最後に大原観光のモデル車中泊コースガイドをご紹介。テーマは「平安時代」だ。
オーソドックスなのは、朝から名神高速道路の大津インターで降りて、初日に世界遺産で同じ平安時代に建てられた「比叡山・延暦寺」や、紫式部が源氏物語の草案を練ったことで知られる「石山寺」などの大津近辺の史跡を周り、「道の駅 妹子の郷」で車中泊をする。
2日目は朝から大原を訪ね、それからやはり平安時代に建てられた、菅原道真を祀る「北野天満宮」に移動し、その日も泊まるのなら、早めに入浴を済ませて京都御所に入り、京都御苑でのんびりしてからそのままを車中泊をするといい。