今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何か考察するブログ

韓国、ソウルを食べる100時間

 

韓国と言えば、豚。地下の食堂でポッサムを食べる。

 

Googleマップを見ながら、韓国と言えば豚肉だよな、でも昼からサムギョプサル食べるという気もしないよなと考えていると、ポッサム屋が目に入った。そうか、豚肉をがつっと食べたいのであれば、ポッサムはいい選択肢だなと思った。

 

店は地下にあるようだ。少し暗い階段を降りていく。高麗ポッサムという店だ。

 

女性たちが机に一列に並んで、皆一言として無駄口をたたくことなくニンニクの皮を剥いていた。韓国を感じるなかなか壮観な光景である。アニョハセヨ~と声をかけてみると、ストイックにニンニクを剥き続けている女性たちの一人がくるりとこちらを向き席まで案内をしてくれた。

 

食堂固有の雑多な匂いにニンニクの香りが混じりあっていた。14時を過ぎていたので、一通り客がはけたタイミングのようで、店内は祭りの後のような静けさだった。僕は、メニューを一瞥し、当初予定通り、ポッサム定食を注文した。

 

つぎつぎと目の前に皿が追加されていく。韓国料理の迫力のある所はこの、圧倒的物量である。パンチャンというやつで、韓国では、何かをオーダーすると、おまけでいろいろなおかずが勝手についてくるのだ。

 

 

少しまとまった休みが取れたので、これ幸いと、飛行機に飛び乗った。家で少し朝ごはんを食べた後は特に何も食べずここまでやって来たので、かなり腹が減っていた。ポッサムは、水気が残っており、柔らかそうだ。キムチは美しく積まれている。

 

ポッサムをとりあえずつまんでみると、厚みがあって、なんとなくホクっとした感じの食感だった。食べ応えがある。

 

サンチュに味噌を塗って、キムチとナムルを乗せ一緒に包む。噛むと、みずみずしいサンチュがはじけ、ポッサムとキムチが混ざっていく。素晴らしいことである。手でつまんで食べるというのは、原始的で何か特別なうまみを生じさせる気がする。

 

僕は、これは素晴らしい旅の幕開けに違いないと確信し、がらんとしたこの食堂で、ポッサムサンドを食べた。

 

ちなみに、この旅行は、4日間で、詳細に書くと数万字になりそうなので、食べたものについて、かいつまんで書いていこうと思う。

 

 

時が止まった喫茶店で、韓国の伝統茶、十全大補湯を飲む

 

 

韓国には、伝統茶なるものがいろいろあり、これがけっこう美味しい。前回ソウルに来た時に目をつけていたのだけど、行けなかった徳寿宮伝統チャッチッという喫茶店に行ってみることにした。店は道路に面した小さな建物の二階にあるらしく、本当にこの先に何かあるのか?というような細い階段の先にあった。

 

ドアの前に立ったのだが、非常に静かで、営業しているのかよくわからなかった。僕は、困ったときのアニョハセヨ~を発動させ、ドアを押した。僕は、一瞬、ドアが20世紀に通じていたのかと錯覚した。扇風機だけが小さく首を振っていて、奥のほうでは、自営業っぽい感じのおっちゃんたちが二人で何事かを密やかに話しているようだった。壁はくすんでいて、過ぎ去った時間が染みこんでいるかのようだった。

 

 

カウンターの奥からスタッフの人が出てきて、韓国語で話しかけられた。僕は、数少ない知っている単語、イルボンサラム=日本人とイムニダ=~ですを適当に組み合わせ、イルボンサラムイムニダと伝えた。文法があっているのかは不明である。とりあえず、こちらが言語が通じない人間であることだけ伝われば何でもよいのだ。

 

スタッフの人が、身振り手振りでこれがおすすめだと伝えようとしてくれているようだったので、言われるままそれを頼んだ。十全大補湯という飲み物らしい。

 

 

十全大補湯を飲むと、コーヒーのような鮮烈な苦みがあって、飲み干した後にナッツをが口の中に残り、それを噛むと、うすい油分が口の中に広がり、苦みがまろやかになって、良い余韻を残った。もう一度、液だけ飲むとやはり背が伸びるような苦さだ。これは好みがわかれるかもしれないけれど、僕はかなり好きな味だった。

 

ソウルは大都会で、車はビュンビュン走っているし、人々は洗練された身なりで街を闊歩している。一方で、隠れるようにしてこんな感じの店があるのは街の豊かさであるように思う。

 

サービスなのか、もともとついていたのか、五味子茶も持ってきてくれた。こちらはアセロラのような酸っぱさだ。韓国の伝統茶はバリエーションが多くて面白い。

 

テーブルを見ると、ハングルと感じが混じった何かがみっしりと印刷されていた。こう見ると違和感がすごいけれど、慣れてしまっているだけで、日本は漢字、カタカナ、ひらがなが混じっているのだから、より変な言語体系にみえるのだろうなと思った。

 

 

あまりにも巨大な牛骨が入った、酔い覚ましスープ

ホテルは、東大門センターの近くにとっていた。日本では色々揉めたことで有名になったザハ・ハディドが設計した建築である。とんでもない迫力で、僕はこれがけっこう好きだ。

 

 

夕飯を食べにホテルを出た。酔っ払いたちが千鳥足で歩いているかと思えば、犬の散歩をしているマダムが歩いてきたりする。不思議な感じのエリアである。

 

 

テファジョン チンチャへジャンク

 

 

マッコリを開ける。プシュッと小気味いい音がする。その開栓音は缶ビールほどの爽快感は無いが、しかし、よき幸福を予感させる音だ。小さな金だらいようなコップにとくとくとくと白濁する液体を注いでいく。夜は突如、満たされていくようである。

 

 

僕は、酔い覚ましのスープことヘジャンクが来るやいなや、oh...と小さくつぶやいた。大きなうつわにあふれんばかりに肉が浮いているのである。酔い覚ましというか、酔っていたという記憶自体を消し去ってしまいそうなただならぬインパクトである。

 

 

どうも、牛骨らしい。骨ごと持ち上げてしゃぶるようにして肉をそぎながら食べる。パワーが出てきそうな荒々しい味わいである。肉のインパクトがすごすぎる。スープは牛骨の出汁に味噌を解いたような味だった。これが米とよく合い、確かに巨大肉を別とすれば、酔い覚ましに良いのかもしれないと思った。韓国の冬は厳しいものである。これくらい熱々でごつごつのスープしか、心まで温めてくれないのかもしれない。

 

 

はっきり言って、感動的といえる冷麺だった

踏十里とソウルの西側地域に骨董店が連なっているビルがあるということで行ってみた。ぶらぶらして、古い箸やスプーンを買ってみた。

 

 

踏十里にやってきたのは、このソンチョンマッククスという店の冷麺を食べるためであった。

 

 

詳しくは、以下の記事で書いたのでよかったら読んでみてほしい。

ソウルで平壌式冷麺を食べ、北朝鮮を見にイムジン河へ行く - 今夜はいやほい

 

スープはよく冷えていて、しかし、うすい品のよいうまみが口いっぱいにひろがって、冷麺を噛むと蕎麦の香りと合わさって、それはもう、木々の中を抜けてきた風が静謐な湖の中に溶け込んでいったというようなそういうような、何かとても、そんなことを感じるようなものなのだ。

 

うまいうまいと冷麺を食べた。ポッサムとキムチをかじったときのジャンクさもたまらない。

 

たちまち夜で、雨はマッコリに溶け込んで、ジョンをすこしづつかじる

 

たちまち夜になった。このブログに出てくる男、加藤から、きくちさん韓国にいるんですよねとLINEが来て、明日、加藤がふらっとソウルに現れるらしいことになった。加藤にとっての韓国は、一般人の隣の県くらいの感覚らしく、あ、じゃあ、行きますねというようなノリであった。

 

僕は、韓国のジョンとマッコリの店へ向かった。

 

ヘンボッカンチッ マッコリ

 

ジョンというのは、韓国における、天ぷらというか、チヂミというかピカタというか、そういう感じの料理で、具材を小麦粉系の液体で包み、揚げ焼きした料理である。店の前で様子をうかがっていたら、スタッフのおばちゃんが、そんなところで突っ立てないでさ、入れるよといったかんじのジェスチャーで、僕を招き入れてくれた。

 

 

ジョンの盛り合わせがやってきた。韓国料理のよろしくないところは、一人で行くと驚くべき量が提供されてしまうところである。ひとつずつ食べていく。カリっとした感じではなく衣は柔らかめである。キムチのジョンがあって、油をまとい、火が入ってくてっとした感じがなかなか美味しかった。

 

 

この店では、マッコリが冷蔵庫に大量に並んでいた。どれがどのような味なのかもよくわからないので、適当に、金井山城マッコリという釜山のマッコリを飲んでみることにした。非常に濃厚で、トロっとしており、飲むヨーグルトのようであった。味わいは酸味があって、きりっとしていて飲みやすい。しかし、アルコール度数は8度くらいあるらしく、飲んでいると体がすこし熱くなってきた。

 

 

ジョンのタレは、辛みと酸味のある醤油だれで、ジョンをつけて食べるとマッコリによく合った。外を見ると雨が降ってきたようだ。韓国では、雨の日にマッコリでジョンを食べるという文化があると聞いたことがある。確かにマッコリは、少し、しとっとした雰囲気の中で飲みたい酒だなと思った。

 

サービスでついてきたムール貝のスープをすすった。

 

 

店を出たら雨は上がっていた。マッコリの香りが少し口の中に残っていた。

 

葉の浮いた韓国のソジュのカクテルを飲む

もう少し酒を飲みたいなと思った。しかし、一人なので、もう一軒入ってふたたび大量料理が出てきても困るなと思いバーに行くことにした。Bar Dhowon22というバーに入った。

 

店内は、いったいなぜ!?という感想が最初に出てくるくらいに、めちゃくちゃ寒かった。僕は肌をさすりながらメニューを睨んだ。ソジュと韓国の柚子のカクテルなるものを注文してみることにした。

 

葉が浮かんでいた。卵白が入っているらしく、ふわふわとした口当たりだった。おしゃれである。ただ、美味しいという気持ちと寒いという気持ちが戦い、寒いという気持ちが優勢であった。ぐっと一気に飲み干して、店をすぐに出た。

 

 

雨が上がっていたので、だらだらと歩いて帰った。降ったりやんだり、安定しない天気だ。

 

 

ふと横を見ると、Black Pinkのジェニがソジュを飲んでいた。

 

 

コーヒーを飲む。韓国のりが落ちている。

目が覚めた。コーヒーが飲みたいなと思い、ホテルの近くに、朝からやっている喫茶店が無いか調べた。歩いて五分くらいのところに、いい感じのこじんまりとした店があったので行ってみることにした。

 

東大門センターのあたりなので結構な中心地だけど、少し歩くと、割と庶民的な感じの街が広がっているようだ。実際は土地の値段はすごいのかもしれないが......

 

 

坂を50メートルくらい上がっていくと、喫茶店があった。愛楽コーヒーという店らしい。

 

 

アニョハセヨ~と言って店に入ると店主が迎えてくれた。坊主できりっとした印象の若い男性だった。メニューはハングルのものしかなかったので、カメラで映して翻訳をしてみたけれど、いまいち何が書いてあるのかよくわからなかった。コールドブリュー?と言うと、店主は、コールドブリューは無いから、アイスアメリカーノを作るよと英語で答えた。

 

アイスアメリカーのはうまかった。

 

帰り道、韓国のりが道端に落ちていた。そう、ここは韓国である。

 

 

カンジャンケジャンはいつもおいしい。

昼ご飯には、カンジャンケジャンを食べることにした。やはり、韓国に来たら、一度はカンジャンケジャンを食べたいものである。聖水というエリアのケバンシッタンという店に行った。店の前に行ったら、日本人ですかと聞かれた。日本人がよく来るのだろうなと思った。

 

 

カンジャンケジャンというのは、つまり、カニの醤油漬けである。米とこれがよく合うのだ。おしゃれな雰囲気の店なので海苔までおしゃれである。ぱりぱりのものではなく、布のようである。

 

 

なんとなくキムチまで整っていて、おしゃれな雰囲気だ。

 

 

たまごがとろとろだ。これをほじりだして食べる。あまくてしょっぱくて、カニのうまみがたっぷりである。

 

 

おしゃれ海苔に包んで食べる。米、海鮮、海苔はなんと汎用性の高い組み合わせだろう。

 

 

 

国立中央博物館へ行った。建物の中央部がごーんと抜けていて、その後ろに南山タワーが見え、絵画のようだった。

 

 

駅まで歩いていると、ちゃんとした自転車で、ちゃんとしたサイクリング用の服を着たおっちゃんが自転車から降り、一時停止して、どう考えてもマッコリと思われる液体を飲み始めた。マッコリは魂の飲み物である。

 

韓国の角打ちことシュポ飲みをしにいく

日本には角打ちなる酒飲み文化がある。店内で酒を買って、そのままそこで飲むというやつである。韓国にも同様の文化があるらしく、シュポ(スーパー)飲みというらしい。スーパーとは言っても個人商店のこじんまりした店のことで、日本の角打ちに近そうである。

 

入りやすそうな店を探して行ってみることにした。雑居ビルが所狭しと並ぶ路地を歩いていく。

 

乙支路四街駅の近くにある大福マートという店だ。個人経営のコンビニのような印象だ。

 

 

入ると、先客がいて、テーブルで体を傾かせ、肘をつき、くくっと酒を飲み、ふうと一息ついていた。僕は、この完成された酒飲みの方の邪魔をしてはならないと、できるだけ生気を消すようにして席に着いた。凍えて、アニョハセヨ~と言うと、店のおっちゃんがはいはいどうも、といった感じでにこやかに迎えてくれた。

 

ビール?と聞かれたので、CASSをお願いした。ビールと一緒に、ゆで卵が付いてきた。

 

 

コップにビールを注いだ。ビールを注ぐ瞬間というのは、ある種の真剣さとある種の不真面目さが同居する不思議な瞬間である。一口飲んだ。うまい。一人でひそひそとビールを飲んでいると、店主のおっちゃんが近寄って来て、日本人なの?と聞いてきた。

 

「日本の何かのパンフレットに載っているらしくって、時々日本人が来てくれるんだよ」と教えてくれた。

 

「僕はインターネットで見たんです。いい雰囲気ですね」というようなことを英語で言った。おっちゃんは、優しそうな顔で笑っていた。一人で暇そうだなと思ったのか、この間北海道に行ったんだよ、あそこはいいところだねとかなんとか世間話をしてくれた。

 

壁には一面に菓子が刺さっていたので、これ食べていいですか?と聞いて、適当に韓国スナックを取って食べた。ビールを飲み進めた。しばらくすると、おっちゃんはもう一本いる?というようなジェスチャーをした。僕は、真昼間から飲みすぎると眠くなるなと思い、一本で切り上げることにした。良い時間だった。街には一息つくための空間が必要である。

 

 

そのあと、ぶらぶらと散歩をした。

 

 

雑居ビルの喫茶店でやたらとおしゃれな茶を飲む。

僕は、荷物を持って歩く日が二日ほど続くと体が痛くなってくるタイプの人間なので、すぐ茶飲み休憩をしたくなる。

 

 

薄暗い雑居ビルの階段を上がっていく。戸を開けると、レコードがかかっていた。

 

 

アイスコーヒーでお願いします!と英語で伝えたら、よくわからないけれどおしゃれな茶が出てきた。ローズマリーがふんわり香っている。韓国の若者が、パソコンでカタカタと文字を打っていた。外の光を受けてカーテンがうすく光っていた。よくわからないけれどおしゃれなお茶はうまかった。

 

 

鐘路シンジン市場、路上のコプチャン炒め

 

またもや、たちまち夜である。まだ、少し夕飯を食べるには早いような時間で、鐘路シンジン市場は閑散としていた。一人で店に入らなくてはいけないわけだから、できるだけ店はすいていたほうが好都合である。


店の外にはみ出しているプラスチックの椅子に腰かけて、若者たちがちらほら酒を飲んでいた。香ばしい匂いがしてきた。つられるようにして歩いていく。どうやらこのあたりは、コプチャン、つまりホルモンが有名らしく、専門店がいろいろあるようだ。

 

 

道が交差している広い空間の一角にある店が目に入った。おばちゃんたちが二人でお互いを小突きあいながら暇をつぶしていた。僕が通りかかると、飲んでく?みたいなジェスチャーをしたので、その店に吸い込まれてみることにした。

 

メニューは2~3個しかなかった。コプチャンの野菜炒めを注文した。おばちゃんは金属のフライ返しで、カンカンカンと鉄板をたたいて油をひき、あれよあれよという間に具材を放り込み、わっさわっさと具たちを炒めていった。ホルモンはなかなか大ぶりで、鉄板の上でぶくぶくと熱を受け止めていた。

 

一通り炒めて、辛そうな真っ赤なタレをかけた。香りが一気にあたりに膨らんでいった。

 

雑踏の音と、鉄板と過熱された具たちのぱちぱち音が混ざりあっていく。僕は、じっとそれを見ていた。一通り熱を入れたら、えごまのような葉をめい一杯に手に取って、ざくざくと鋏を入れていった。

 

なんだかその様はタイで見たガパオライスを作っている作業によく似ているように見えた。まだ早い時間だったけれど、猛烈にお腹が減ってきた。

 

 

最後に春雨が投入されて、目の前に鉄板がやってきた。すごい量である。韓国旅行は基本的に複数人で来ることが推奨される。

 

 

僕は目の前のぐつぐつを眺め、その映像をつまみにソジュをくいっと飲んで口を潤し、辛美味そうなそれを食べる準備をした。

 

 

辛みそとホルモンが絡み、ふわっとえごまが口のなかで香る。春雨はじゅくじゅくに汁を吸っている。僕は、一人、うまい!とつぶやいた。

 

 

サンチュにのせる。味にパンチがあるので、野菜があると食べやすくなる。口の中で、サンチュのみずみずしい葉が避けてホルモンたちがこぼれ出てくる。辛い、ホルモン、包んで食べる。これはなんというか、正しく韓国料理な感じがするなあと思った。

 

 

あまりにも量が多かったので、全部は食べることができなかった。おばちゃんは、最後に、ヤクルト的な飲み物をくれた。お腹に優しそうでよい。

 

 

辛ラーメンを食べ、シッケ飲んでサウナでじっと耐える

歩き疲れたので一度ホテルに戻った。2時間くらい休憩して、なんだか暇だなと思い、近くのサウナ施設に行ってみることにした。韓国はチムジルバンというスーパー銭湯的な施設がいろいろあり、行ってみるとこれがなかなか楽しいのだ。

 

でっかい石窯のサウナに入る。僕は、サウナは、まあ、あれば入るかなくらいのぬるいタイプの人間である。そんなに温度は高くないようだ。僕の隣に、日本人の母親と娘が入ってきた。その隣に日本人の男子大学生が入ってきた。あ、日本人ですかとかなんとか僕をはさんで話をしている。あなたたちの間にいる人間も日本人ですと心でつっこみながら黙って座っていた。やはりソウルは日本人が多い。

 

 

サウナであったまったら、めちゃくちゃに寒い部屋があるのでそちらに移る。壁中結露した水滴が凍っている急速冷凍ルームである。韓国の30歳そこそこの男が二人入ってきた。太った男は、壁にビールを擦り付け、結露して凍った壁で冷やそうとしているようだった。もう一人の眼鏡の男は、壁の氷を指でこそげ取って太った男に投げつけていた。僕は、横で、その氷はもしかして人民の汗の結晶なのではないか....... それで冷えたビールか....なるほど......と、冷え冷えとした部屋で考えた。

 

もう一回サウナに入って体を温めなおして、ごろごろして、食堂へ向かった。夜も深くなってきて、皆、一様に動きが遅くなってきているように見えた。

 

日本人にとって、韓国での一番有名な食べ物と言えば、キムチなのだろうけれど、二番は何かと言えば、もしかすると辛ラーメンなのではないだろうか。異国の地で一人で食べるカップラーメンのうまさはなかなかのものだ。

 

 

韓国ではサウナでシッケという飲み物を飲むのが定番らしい。あわせて注文してみた。味としては、甘酒を薄くして飲みやすくしたような感じだ。麦芽粉を発酵してつくられるものらしい。たしかに、これは、水分が体から抜けているときに飲むと大変美味いなと思った。

 

 

また、コーヒーを飲みに行く

また、朝、コーヒーを飲みに店に向かった。二日連続で来たので、店主が覚えてくれたようで、お~と言って、迎えてくれた。

 

 

今日はカウンターに座った。レコードから古い感じの日本語の曲が流れていた。日本の歌ですねと聞いてみると、日本に旅行に行ったときに、中古で買ったのだと教えてくれた。おそらく、近年の日本のシティポップブーム的なものの文脈なのだろうなと思った。

 

 

近所のおばちゃんがやって来てコーヒーをテイクアウトしていった。

 

 

カフェラテのアイスにした。美味かった。

 

 

京東市場の地下食堂で食べた野菜ビビンバは端正な味がした

コーヒーを飲み、その足で京東市場へと向かった。バスを乗りついだ。韓国のバスというのはめちゃくちゃせっかちで、きーっと止まったらばっとドアが開き、客が下りたら、それきたと、走り出す。隣国でも、これだけバスの運用が違うのは面白いものである。僕のやたらとせっかちな友人は韓国のバスをいたく愛しているらしい。

 

京東市場はソウルでも屈指の大きいらしい。

 

韓国と言えばニンニクなわけであるが、こうやってニンニクが多種多様に並んでいると、文化の強さを感じる。ニンニクにもいろいろな種類があるのだなあ。食べ比べてみたりしたいものだ。

 

 

地下が食堂街のようになっているとのことだったので、階段を探して、下に下りて行ってみる。地下はやや暗く、昼ご飯にはやや早い時間だったこともあり、人気も少なくて、静謐な空気が漂っていた。

 

 

カウンターで地元の人たちが食べていたビビンバがおいしそうだったので、席についてみることにした。

 

 

そういえば、あまり韓国に来てビビンバを食べていないような気がする。野菜がたっぷりだ。どれもとても丁寧に作られているように見える。中央に載る、目玉焼きが輝かしい。

 

 

ぐわぐわと無心で混ぜる。地元の人たちも無心に混ぜ、無心で食べているようである。これは日本で言えば、さっと食べられるお手軽フードという点で、牛丼のようなものなのかもしれない。サービスなのか、もともとついているのかよくわからないのだけど、白菜のチヂミも出してくれて、食べてみると、ほどよい白菜の甘味が大変美味しく、素晴らしい、食堂はこうでなくてはならないと僕は一人関心したのだった。

 

 

劇場型スターバックスの韓国限定ドリンク

 

京東市場のスタバが有名らしいので行ってみることにした。古い映画館を改装して、作られたスタバらしく、かなり巨大で開放的な空間が特徴らしい。僕はスタバが基本的にやや苦手なので、あまり自分から行かないのだけど、このスタバは、とにかく広くて、ごちゃごちゃしておらず、映画館として使われていたという人々の歴史がいいようにいかされているように感じがして、とても居心地がよかった。

 

 

インジョルミという米粉を使った、白玉のようなものが入った韓国限定のドリンクを飲んだ。結構おいしかった。

 

 

灼熱のカルメギザル焼肉で意識も朦朧

 

夜、僕が、地下鉄の出口でぼーっと立っていると、このブログによく出てくることに定評のある男、加藤が「きくちさん、なんか、ソウルぶってませんか」とかなんとかそんなことを言ってやってきた。

 

もともと、大阪かどこかに行く予定だったらしいのだけど、その予定がつぶれたので、暇だから来ました、というようなことを言っていた。加藤は、とにかくフットワークが軽いのである。

 

僕が、「なにそれどういうこと!?」と言うと、加藤は、「まあまあ、とりあえず何か食べましょう、腹が減っているんですよ」とかそんな感じのことを言って、歩き出した。

 

「何食べる? 正直、ここ何日かで韓国っぽいものをかなり食べたから、何だったら寿司でも食べたい気分なんだよ」

 

「え、何言ってるんですか。僕は今、韓国に来たんですよ。むしろ、今日、これから3軒韓国料理を行くような気持ちで来てるんですから」と加藤は意気込んでいた。

 

「そうだね...... せっかく来てくれたし付き合うよ」

 

僕たちは、韓国と言えば焼肉だろうということで、味カルメギサルという焼肉専門店に行ってみることにした。人をかき分けるようにして歩いていく。香ばしい匂いがしてきた。店はかなりにぎわっているようだった。

 

「これ、入れますかね」

 

「空席なさそうに見えるよね」

 

加藤が、スタッフに、二人ですと告げると、う~んちょっと待ってというようなジェスチャーが返ってきた。しばらく待っていると、そっちのほうだったら開いているよと言って、横にある、店を指さした。どうやら、隣も、同じ店のようだった。

 

 

「いや、座れてよかったね」

 

「滑り出し順調ですね!」と言って、加藤は、ビシバシと注文をしていった。

 

僕は、この調子で三件行くつもりなのか?と心で震えながら、加藤の注文をただ聞いていた。

 

ケランチムなどがやってきた。

 

 

カルメギサルがやってきた。この部位は日本で言うハラミに該当する場所であるらしい。サムギョプサルより赤身部分が多そうである。

 

 

肉たちは、美味しかった。外に近い席で、加藤は店内、僕は体が半分外に出ているようだ形になっていた。店内はクーラーがかかっているのだけど、僕は外側にいて、クーラーの冷気が外に出る際に、炭火の熱を運んでくるという関係上、みるみるうちに体があったまっていき、涼し気な加藤がうまいうまいと食べ進める中、なんだか体がぐったりとしてきてしまった。夏の焼肉は危険なのだ。

 

 

「いやあ、まだまだですね。なにせ、今日は昼ご飯もあまり食べていないので」と加藤は二件目に行く気がまんまんのようだった。

 

僕は「どうしようか、でもお腹いっぱいなんだよな」と言ったのだけど、加藤は韓国料理を食べるつもりしかないような表情をしていた。

 

「そういえば、ホテルの近くに冷麺屋があって、そこはミシュランに載っているとか何かで見たような気がするな」と僕がつぶやくと、「そこにしましょう!」と加藤が言って、僕たちは、冷麺を食べることになった。

 

ミシュラン冷麺を食べるには、遅すぎる

この通りだなとまっすぐ歩いていたのだけど、店が見つからず、戻ってみると、少し奥まった場所にその冷麺屋、平壌麺屋を発見した。キムチ用なのか、白菜が積まれており、なんとなく倉庫のような雰囲気である。これは初見だと、飲食店だとわからなくても無理がない気がする。

 

 

僕はハーフサイズなどないのだろうかとメニューをたのだけど、どうやらなさそうだった。加藤は、冷麺はいいですねえなどと言いながら、あ、チャーシューみたいなものもあるなと、肉まで頼んでいた。

 

冷麺が来た。僕は、正直、一日目に行った冷麺屋のほうが圧倒的に好みで、ミシュランの店であるにもかかわらず、ちょっとがっかりしてしまった。そして、お腹がいっぱいであまり食べることができなかった。

 

 

加藤は、肉も食べていた。しかし、さすがにお腹がいっぱいになってきたのか、だんだんと言葉少なくなっていった。

 

 

受験エリートたちは、道端の屋台へ

 

店を出ると雨が降っていた。「どうします、もう一軒行きますか」と加藤が言った。「そうだな、何か、行くなら、韓国の魂が感じられるような店がいいな」と僕はつぶやいた。「魂ですか、なかなか難しいですね」と加藤はスマホで検索を始めた。

 

「なんかこう、韓国の古い歌とかさ、そういうのが流れていたりして、しっぽりとした空気が感じられるような店を求めているんだよ。K-POPとかじゃなくて、演歌みたいな感じの、韓国の古い音楽がさあ」

 

「なるほど...... 一応、韓国の古い音楽が聴ける店というのは、ネットで調べると出てきますけど、まあまあ遠いですね」

 

雨がしとしとと降っていた。

 

「韓国の情緒に触れるようなところに行きたい、一方で雨も降っている。近ければいいんだけど、行こうと思ったら、40分くらいかかりそうだよね」

 

「そうですね」

 

「残念だけど、またの機会にしよう」

 

「じゃあ、どうしますか」

 

「そうだなあ...... そういえば、ここから数分歩いたところに、屋台があったよ。最後にそこで軽く飲んで、しめるということでもいいんじゃない」

 

「悪くなさそうですね、行きましょう!」

 

ということで、僕たちは、屋台へ入ることにした。しかし、これが残念なことに、めちゃくちゃうるさい、日本人の男女4人組がいて、それはもう、新宿の居酒屋でやってくれというような、聞きたくもない会話を延々と大声でしているのだった。まあ、日本人が多いエリアではあるのでしかないと言えばしかたない。かといって、こちらが別になにか高尚な話をするわけではないのだけれど、無性にうるさい奴らが真横にいるというのは興がそがれるものである。

 

 

ソジュだけ飲めればいいかなと思っていたのだけど、一人一品オーダーしないといけないようだった。お腹いっぱいなので、軽く行けそうなおでんを頼むことにした。もう一品は加藤がトッポギをたのんだ。

 

めちゃうるさい奴らを尻目に、端のほうで酒を飲んだ。おでんのスープがうまかった。しばらくすると、爆音男女4人組はどこかへ去っていった。

 

 

しばらく席は空いたままだったのだけど、30分くらいすると、塾帰りと思われる小学校高学年くらいの男の子たちが二人入って来て、おでんを食べていた。僕は、こんな時間に大変だなあと思いながらトッポギを口に放り込んだ。

 

韓国では受験戦争が激しいと聞く。日本でも東京はSapixなる塾に通って受験戦争をしているらしいが、アジアの都会は受験にマジになりがちであるらしい。ちなみに目の前の加藤も、中学受験をして、名門校に通っていた、受験勢である。加藤にもこんな頃があったのだろうかとかそんなことを考えながらソジュを飲んだ。

 

 

さよならのコーヒー

帰国の日の朝、ホテルをチェックアウトして、また、朝、コーヒーを飲みに喫茶店に向かった。店主は、お、また来たのかと、驚いていたようだった。

 

 

英語で、時々、日本に旅行に行くのだとか、親族で日本で働いている人もいるんだという話をしてくれた。コーヒーは大変美味かった。

 

チンチャマシッソヨ、プロフェッショナル!と言うと、「アマチュア、アマチュア、まだ、店を開けて半年くらいなのだ」と言って、店主は笑っていた。

 

 

店主は、また来てよと言って店先で見送ってくれた。いい人だったなと思った。駅へ続く坂を、重たいリュックを担ぎながら歩き空港へ向かった。

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