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ライトノベル『この恋と、その未来。』の打ち切りについて

(2016/9/16追記)

『この恋と、その未来。』

最終巻となる6冊目、11月に発売します。四郎と未来、ふたりの結末はファミ通文庫からしっかりお届けしますので、こちらも楽しみにお待ちください。

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打ち切り回避! ファミ通文庫は神!
(追記終わり)


『この恋と、その未来。』が打ち切られた、というニュースが飛び交っています。どうやら最新刊のあとがきでそのようなことが書かれていたそうなのですが、電子書籍待ちの私はまだそれを読めていません。しかし、事実であるとすれば本当に残念で、本当に理解しがたい話です。



私はこれまでにも何度か「この作品がオススメだ! みんなも買ってくれ!」という趣旨の記事を書いてきました。それらは単純に自分が好きな作品を応援するものでしたが、今回の記事については、作品を好きなのはもちろんとしても、それ以上に、これほどの作品を打ち切るべきではないという思いから書いています。


きちんと完結していれば、まず間違いなくオールタイム・ベストのひとつとして、ラノベ史に刻まれる作品になったと思います。『半分の月がのぼる空』や『とらドラ!』のように、五年後、十年後にも「青春ラノベの傑作」として語り継がれていたことでしょう。



『この恋と、その未来。』は、広島を舞台にした青春小説です。横暴な姉たちから逃げ出して広島の高校に入学した松永四郎と、性同一性障害ということで男として入学してきた織田未来。二人は学生寮で同室となり、親友となりますが、やがて四郎は未来に対して恋愛感情を持つようになります。「俺は未来の心に恋をしているのか、体に恋をしているのか」。四郎は悩みながらも、その気持ちを隠して、慣れない土地での高校生活を送ることになります。


「重すぎる」とか「ラノベらしくない」とか評されることが多いですが、実際のところはしっかりとエンターテインメントした作品だと思います。もっといくらでも重くできる設定なのに、あくまで読者を楽しませることを目標とした作りになっている。そういう意味ではむしろ「ラノベでこそ」という作品ですし、アニメ化すればもしかしたらハマるかも、京アニでワンチャン、とか思っていました。


この作品はさまざまな意味合いを持っています。


ずっとブレイクしないまま燻っていた森橋ビンゴという作家がようやく日の目を見たということ。作家の生存率がどうだと話題になるラノベ業界ですが、それでも良い作品を書けば評価されるのだと、いちファンとして私も嬉しく思っていました。


「性同一性障害」という難しい題材に挑戦していること。そして、そうした題材を軽やかに扱ってみせていること。それこそがラノベの醍醐味だ、という思いも個人的にはあります。


「このライトノベルがすごい!」などで多くの票を獲得していること。決してラノベ読みたちがこの作品を評価していなかったわけではありません。


「ファミ通文庫」には青春小説が多いこと。特に野村美月と森橋ビンゴは、古くからその路線の代表として、ファミ通文庫に貢献してきた作家でした。


そしてなにより単純に作品のクオリティが非常に高いこと。


『この恋と、その未来。』を打ち切るということは、単なる打ち切りというだけでなく、上に挙げたことを否定するメッセージを放つことになるのではないかと思うのです。「作品のクオリティは評価しない」「こういう作品は投稿してくるな」「こういう企画を提出するな」「ファンの評価なんか関係ない」「こういう作品を好きな読者は出ていけ」と宣言したに等しいのではないかと。


ファミ通文庫も台所事情が苦しいのだと思います。「売れない作品を打ち切って何が悪い」「おまえが損失を補填してくれるのか」と言われれば返す言葉もありません。それでも僭越を承知で言わせていただくなら、『この恋と、その未来。』だけは、何としてでも完結させるべき作品だと思います。それほどの価値がある作品です。どうかラノベ史に『この恋と、その未来。』という傑作を残してあげてください。


いまからでも、この作品が売れることを祈り、そして打ち切りが撤回されることを願っています。皆さんもどうか購入してください。よろしくお願いします。


この恋と、その未来。シリーズ 作品一覧│電子書籍ストア BOOK☆WALKER



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