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土星の衛星「エンケラドゥス」に生命体の兆候あり。地球の熱水噴出孔と似た環境を確認

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(著) (編集)

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 土星の第2衛星「エンケラドゥス」は、氷で覆われた凍てつく天体だ。だがその下には広大な海が存在すると考えられており、生命の存在が期待されている。

 氷のヒビからは時折、水蒸気(プルーム)が噴き上げられているのだが、これを調査した探査機カッシーニは面白いデータをもたらしている。

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 プルームには二水素(dihydrogen)、二酸化炭素、メタンといった成分が含まれており、これが地球の海底にある熱水噴出孔周辺のものとよく似ているという。とりわけ注目されたのはメタンが意外なほど大量に含まれていたことだ。

 じつは地球の熱水噴出孔付近には、二水素を食べてメタンをつくり出す微生物がいる。プルームの中に大量のメタンがあるのならば、それはエンケラドゥスにも同じような微生物が存在することを示しているのかもしれない。

 この可能性を調べた『Nature Astronomy』(7月7日付)の研究によれば、なんと生命がいる可能性を否定することはできないとのことだ。

熱水噴出孔とメタン菌

 地球の海で起きている熱水活動は、冷たい海水が海底にしみこむところから始まる。そうした海水は岩石の中を循環しながら、マグマだまりなどの熱源のそばを通過したときに温められ、熱水噴出孔から噴き出す。

 このプロセスでメタンが生成されることもあるが、それは微々たるものだ。そこにあるメタンの大半は、熱水の化学的不均衡を利用する微生物(メタン菌)が「二水素」をエネルギー源にして「二酸化炭素」からつくり出したものだ。

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マリアナ海溝付近の熱水噴出孔 / image credit:NOAA / public domain/wikimedia

エンケラドゥスを地球科学と微生物生態学で解析

 生命の発見が期待できるからといって、今すぐにエンケラドゥスの氷の下に広がる海を直接調べることは難しい。

 そこで米アリゾナ大学の研究グループは、地球科学と微生物生態学を組み合わせた数理モデルを通じて、観測されたデータが何を意味しているのか評価することにした。

 評価されたのは、どのタイプの二水素生成プロセスがカッシーニのデータにもっとも一致するのか、そうして生成された二水素が地球に存在するようなメタン細菌を維持できるだけの量なのかといったことだ。

 さらに熱水の化学的条件や温度は微生物が成長するうえで適切なのか、一定のメタン菌の個体数を想定した場合、それが環境に与える影響(たとえばプルームに流れ込む二水素とメタンの割合)はどのようなものなのかといったことも評価された。

 要するに、カッシーニが観測した環境は生命が生存できるものと考えられるのかどうか、そして仮にエンケラドゥスの海底にメタン菌が存在していたのだとすれば、どのような状況が観測されると予測されるのかが調べられたのだ。

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image by:NASA

エンケラドゥスに地球の微生物に似た生命が存在する可能性は高い

 その結果明らかになったのは、生命が関与しないメタン生成プロセスが(既知の範囲内で)どんなに盛んでも、プルームに含まれていたメタン濃度には到底届かないということだ。

 だが、もしここに生物学的なメタン生成がくわわるのならば、カッシーニが観測したようなメタン濃度になったとしてもおかしくはないという。

 このことはエンケラドゥスに生命が存在するという意味ではない。そうではなく、エンケラドゥスの熱水噴出孔付近に地球のものと似た微生物が存在する可能性を知るための分析だと、研究グループのレジス・フェリエール准教授は説明する。

 そして今回の結果によれば、その可能性はかなり高いそうだ。

 生物学的なプロセスでメタンが生成されていると想定しても、データと矛盾することはない。つまりメタンの起源は生命であるという説などあり得ないと直ちに却下はできないということだ。

 なお今回の分析方法は、太陽系内の天体だけでなく、太陽系外の惑星で観測された化学的データの分析にも応用できるとのこと。地球外生命の探索方法が広がったということは、それだけ世紀の瞬間に近づいたということではないだろうか。

References:Methane in plumes of Saturn’s moon Enceladus: Possible signs of life? — ScienceDaily / written by hiroching / edited by parumo

本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。

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この記事へのコメント 20件

コメントを書く

  1. 我が子孫たちは確実に繁栄しておる。地球を手に入れるまであと少しだ・・

  2. ここに地球の微生物移植したらあっという間に蔓延るんだろうなぁ

  3. タイタンのメタンも、非生物由来では多すぎるのが説明できないとか。もっと明確に生命の存在を証明できればいいんだが。

  4. 何年も前に番組で見た『石器を持った人魚の原人』の想像図が気持ち悪かったなぁ。

  5. 探査機とか潜らせたらそこに付着していた地球由来の細菌であちらの生物相が破壊されるかもしれんので慎重にやらんとな。
    地球の菌には宇宙空間でも普通に生きられるものがたくさんいるから。

  6. エンケラドゥスは重力が小さいからこの水蒸気は宇宙にまで噴出しているらしい。
    よってそこを探査機で通過してサクッとサンプルリターンの計画もあるとか。

    ただその際にサンプルを調べるときは地球外の得体の知れない細菌が入っているかもしれず、防疫はレベル4並みにしっかりしてほしい。

  7. 土星まで探査機おくって往復させるのって何年くらいかかるんだろ?

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