中山金杯

例年、暮れの中山Aコース開催からCコース替わり初日で、内枠圧倒的有利が続いていた中山金杯。しかし今年はBコース開催でいつもとは枠の有利不利が少し違うかもしれない。そして蓋を開けてみたら枠の並びが凄い。断トツの実績を誇るホウオウビスケッツが大外18番枠に回されただけでなく、netkeiba想定5番人気までだった有力馬が14‐18番枠を独占。脚質的に見ても先行できそうな馬が全部5枠より外に入るという極端な舞台設定になった。これは予想のし甲斐がある。

 

とりあえず本命は一番強いホウオウビスケッツ。昨年夏からは別馬の走りで、今や堂々の天皇賞3着馬。今回ハンデ59.5キロだけど、510キロ級の大型馬だし、最近は58キロで走るのも当たり前なになったのでそれほど重すぎる斤量ではない。中山2000はスタートから1角まで距離は十分あるし、他の先行馬を内に見ながら自由にポジションを取れる。逃げなくてもいい馬なので、セイウンプラチナを前に見つつ好位につけて馬なりに進出すれば十分力が出せる条件だと思う。鞍上がホリー・ドイルに替わったことが多少心配だけど、調べると逃げ・先行馬に騎乗した時の戦績はかなり期待できる。 一般にハンデ戦はトップハンデ馬の回収率が一番高いし、今回このメンバーで単勝5倍以上つくのなら期待の方が大きい。

 

ホウオウビスケッツが支配するレースの特徴は、相手にも逃げ・先行馬が残ること。前半は無理をせず、3角から急激にスピードアップ。他の馬の手が激しく動くところでスムーズに加速してすいすいコーナーを回れるのがホウオウビスケッツの強さ。後ろの馬にピリッとキレる脚を使う暇を与えない。相手には先行策から流れに乗って雪崩れ込む馬を探したい。

 

クリスマスパレードは中山3戦3勝は立派だけど、秋に互角の戦いを演じたミアネーロやタガノエルピーダあたりのその後を見ても、歴戦の古馬重賞クラスで1番人気を背負うのは荷が重い。ヒモまでか。

昨年の覇者リカンカブールも昨年は内枠の利が大きかった。今年は昨年よりはメンバーも多少層が厚そうで、外枠、58キロで人気もするとなると買い材料に乏しい。

外枠に回されて人気を落としたのがボーンディスウェイ。この馬はスタートダッシュはあまり速くないけど、前目につけるべきという陣営の意欲が強くて追ってでも好位を取りに行くタイプ。それなら下手に内枠を引いて包まれるよりは、スタートから1角まで距離がある中山2000なら外から進出して好位を取りにいく方がむしろプラスではないか中山は得意で、去年のこのレース4着、弥生賞でも強力メンバー相手に3着の実績がある。

 

内から先行できそうなのはアルナシーム。前走マイルCSは11着だけど2着エルトンバローズとは0.5秒差。富士Sも瞬発力勝負で負けたけど0.5秒差、4着セリフォスとは0.1秒差でそれほど悪くなかった。最後も決して止まっていなくて、マイルは短すぎたと思う。1800の中京記念ではエルトンバローズを下していて、その前のエプソムCでも3着とタイム差なしの5着に好走している。これまでは距離不足や瞬発力勝負のレースで泣かされることが多かったけど、中距離戦ならそこそこの位置が取れるし、ロングスパートの消耗戦でこそ持ち味が生きる。

パラレルヴィジョンも似た理由で今回一変する可能性があるけど、この馬はもともと中距離から距離短縮して結果が出た馬なので、マイルでスピード不足になって再度距離延長はやや期待薄かも。

 

 

◎ホウオウビスケッツ

○ボーンディスウェイ

▲アルナシーム

△シンリョクカ

△クリスマスパレード

△パラレルヴィジョン

 

◎頭固定。思ったより◎のオッズがつくのでヒモも少し広めに。

 

有馬記念

いやー、枠順抽選から色々ありましたね。上位人気3頭が馬番1,2,3を引いたのに驚かされて、その後まさかのドウデュース出走取り消し。一から予想やり直し。

稀に見る混戦メンバー。逃げ馬不在。そして確たる中心馬も不在。どうなるんだ今年のグランプリ。

 

とりあえず展開から想像してみよう。スタートが一番速いのはベラジオオペラ。しかしこの馬はこれまで頑なにハナに立つのを拒んできた馬。距離にも不安があるし、できれば他の馬を前に行かせたいところだろう。ハナに立つとしたら、最内ダノンデサイルか、逃げ宣言の大外シャフリヤール。枠順発表直後は、ダノンデサイルがハナに立つ可能性を考えていた。しかしドウデュースが回避したことで一か八かの競馬をする必要はなくなって、好位から抜け出す競馬をする方が自然か。一方のシャフリヤールは大外枠を引いてしまって、極端な戦法を取らざるを得なくなった。スタニングローズと一緒に外からかぶせる形でハナを奪いに行くかも。3番手ベラジオオペラ、4,5番手にスターズオンアースとダノンデサイルか。

アーバンシック、ブローザホーン、レガレイラとスタートが遅い馬が内に揃ったので、これらの前に出る形で中段を取れそうなのがローシャムパーク、ディープボンド、プログノーシスあたり。プログノーシスは札幌記念で出負けして人気を裏切ったけど、コックスプレートでは一転して先行策を見せた。ジャスティンパレスも一時期に比べると最近は前半から位置を取りに行く様子が目立つようになった。この馬は勝った5戦は全て4角で2-4番手。後方からごぼう抜きする脚はないのでそれほど後ろに置かれたくはない。アーバンシックは出遅れても枠の利でそこそこの位置が取れる。このあたりが6-10番手。

そして後方待機馬がブローザホーン、レガレイラ、シャトルーヴェ、ダノンベルーガ、ハヤヤッコ。これで15頭か。ドウデュースがいなくなって、残った後方待機馬に自分から動いて前を飲み込めるほど脚の速い馬はいない。このあたりはあくまで他力本願勢。逃げ・先行馬はできるだけ脚を溜めたいし、大逃げすることもない。

有馬記念 - 続・回収率300%を研究

このリンクは2年前に予想した時の有馬記念のラップ解析。有馬記念の展開は、1周目ゴール板を過ぎてからの上り坂のあたりでしっかりペースが落ちるかどうかが結果を大きく左右する。近年はタイトルホルダーという強い逃げ馬がいて、こういう年はペースが落ち切らないまま後半戦を迎えることが多い。しかし今年のメンバーなら前半速くならないまましっかりペースが落ちて、6ハロンまたは7ハロンのロングスパート勝負になる可能性が高いのではないか。該当するのは90年オグリキャップ、92年メジロパーマー、05年ハーツクライ、10年ヴィクトワールピサの年。いずれも息の長い末脚を繰り出した先行馬が残っている。

 

ただ今回ベラジオオペラやスターズオンアースはあまり買う気がしない。それぞれ天皇賞とジャパンCで重い印を打って着外に負けたことで、二頭ともこの秋は決して状態が良くないと判断した。ベラジオオペラは天皇賞から一気に距離延長だし、スターズオンアースは狭い中山コースは決して向かないので、いずれも条件はさらに悪くなっている。ベラジオオペラは冬になって調子がかなり上向いてきたという見立てもあるけど、追い切りよりも実際のレースでの走りの方が重要。完璧に展開が向いた天皇賞で、ホウオウビスケッツを捕えきれないどころかマテンロウレオに交わされているようでは一変を期待しにくい。これで3番人気なら消した方が面白いのでは。

3歳馬も少し過剰人気かなという気はしなくもない。アーバンシックはセントライト記念は内をうまく捌けたし、菊花賞も展開をうまく味方につけた。地力強化は認めるにしても、菊花賞の2‐5着馬の顔ぶれはなかなか貧弱。前潰れの荒れた展開の中でこれらの馬たちに2馬身半差をつけたことをどこまで評価すべきか。セントライト記念2着のコスモキュランダは中日新聞杯で何もできずに着外に負けている。有馬記念の舞台で1番人気というのは少し過剰な気がする。ルメールも有馬記念では人気薄を持ってくるところが凄くて、1,2番人気騎乗時はむしろ着順が人気を下回ることの方が多い。

2番人気ダノンデサイルは、最初は本命にしようかと考えていた。ダービー2馬身差の圧勝劇は凄かった。菊花賞も絶望的な位置に追いやられてから最後は6着まで押し上げた。いったん加速するとどこまでも伸びる強力な末脚は3歳世代で一番強いと思うんだけど、問題は追い出してからスピードに乗るまでにやたら時間がかかること。この弱点は有馬記念ではかなり致命的になる恐れがある。うまくロングスパートの波に乗れれば1着まで期待できるけど、包まれたときは出てこれない可能性もある。

 

ロングスパート戦で、後ろ過ぎない位置から先行馬を一気に飲み込む強力な差し脚を繰り出してきそうな馬の一発に期待したい。

本命はプログノーシス。

若い頃の国内での敗戦は川田将雅以外の日本人騎手が乗って差し損ねていたものばかりで、川田騎乗時は( 7 1 1 2 )、外国人騎手( 0 2 0 0 )。海外GIで2着3回の実績があり、香港C5着の時もロマンチックウォリアーと0.1秒差。札幌記念を4馬身差で圧勝、3着ソーヴァリアントやダノンベルーガには7馬身の差をつけた。金鯱賞はドゥレッツァに5馬身差、ヨーホーレイクに6馬身差。GI未勝利で終わらせるにはあまりに惜しい素質の持ち主。前走コックスプレートでは先行策でも戦えるという新たな戦法まで身に着けた。状態さえまともなら、ドウデュースのいないこのメンバーなら力の違いを見せて圧勝する可能性もあるのではないかと思っている。

不安材料と言えば、今年秋の札幌記念の負け方がいつものこの馬らしくなかったことと、2500という初距離、そしてGI未勝利の鞍上か。しかし札幌記念も前残り展開で出遅れて4着。シャフリヤールあたりにはしっかり先着しているわけだし、あの一戦だけで見限るほどでもない。キレ味勝負にも上がりのかかる競馬にも適性があるところを見ると、距離延長もむしろプラスに出る可能性が十分ある。三浦皇成も有馬記念は6回騎乗して5回は人気以上の着順、掲示板3回とかなり健闘している。唯一人気より着順を落としたのは代打騎乗のエイシンフラッシュ3番人気4着だけど、この年は異常なハイペースに巻き込まれただけで、普通のペースだったら快勝していたはず。今回が初GI制覇のチャンスだろう。

有馬記念と言えば世相を反映するサイン馬券も重要。今年の流行語大賞は本来どう考えても「50-50」。5枠10番プログノーシスしかいない。三浦監督率いるDeNAの下剋上日本一も後押しししている。

 

相手にはスタニングローズも入れておきたい。エリザベス女王杯の圧勝は2着ラヴェルがチャレンジCを圧勝したことを見てもそれなりの評価が必要。さらに今回距離延長、騎手ムーア、得意の中山と好条件が並ぶので、更なる上昇まで見込める。早めに前目に付けるならこの程度の外枠は不利にならない。

 

◎プログノーシス

○ダノンデサイル

▲スタニングローズ

△アーバンシック

△シャフリヤール

△ジャスティンパレス

 

◎単勝勝負にしようかな。あと◎○の馬連と、◎頭固定三連単。ヒモはもう少し悩むかも。

 

 

有馬記念・海外遠征考

今年の暮れの香港GIでリバティアイランドが負けたところで、「今年の日本馬は海外GI勝利ゼロ」という残念なニュースが報道された。2018年以来6年ぶりだそうで、さらにその前は2010年まで遡るらしい。

JRA所属馬海外遠征の記録(2024年) 海外競馬発売 JRA

思い返せば昨年は、日本競馬が世界を制したと強く感じられた年だった。レーティング135で世界ランキング1位に輝いたイクイノックスだけでなく、世界最高賞金レースのサウジカップをパンサラッサが、ドバイワールドCをウシュバテソーロが優勝し、BCクラシックではデルマソトガケが2着。日本勢鬼門の凱旋門賞でさえ、日本ではG3勝ちとGI2着1回しかないスルーセブンシーズが4着に健闘していた。こうした華々しい活躍ぶりを見て、2024年は日本勢の更なる躍進を期待した人は多かったと思う。

しかし蓋を開けてみると、ダート路線こそフォーエバーヤングやウシュバテソーロが世界トップ級のレースで健闘したとはいえ、芝に関して言えば大きく期待外れ。海外に遠征した馬はというと、リバティアイランド、ドウデュース、スターズオンアース、ジャスティンパレス、プログノーシス、シンエンペラー、ローシャムパーク、タスティエーラ、ステレンボッシュ、ナミュール、ダノンベルーガ、ソウルラッシュといった、日本で最も層が厚いと思われる中距離からマイルのまさに現役最強集団。かつてないほど日本総出で世界各地へ繰り出して、ただの1頭も勝利を挙げることができなかったのだから、事態は結構深刻なのではなかろうか。

 

端的に言ってしまえば、「今の日本の芝には強い馬がいない」「海外のトップに比べて相対的にレベルが低い」ということなのだろう。海外のホースマンもきっとそう思っているであろうことは、今年の日本のGIに海外馬が多く遠征してきたことからもわかる。ジャパンCにゴリアットやオーギュストロダンといった近年では珍しいほどのビッグネームが名を連ねたほか、短距離路線のビクターザーウィナー、ロマンチックウォリアー、チャリン、そして阪神JFにまで海外2歳馬が参戦してくる事態になっていた。ジャパンCでゴリアットのオーナーが戦前言っていた挑発めいた言葉も、レースを盛り上げるためのパフォーマンスだけでなく、きっと本音なのだろう。ジャパンCに強い海外馬が来るというのは、レースの趣旨として嬉しい半面、日本競馬が舐められているという側面を思うと何とも複雑な気持ちになる。

 

イクイノックスが抜けた後の日本競馬のレベルの低さについては、昨年の有馬記念にも表れていた。その一か月前のジャパンCでは、イクイノックスから4馬身離れてリバティアイランド、さらにそこから1馬身遅れてスターズオンアース、ドウデュース、タイトルホルダー。つまり1着から5馬身離されていたこの3,4,5着馬が、続く有馬記念では1,2,3着を独占したのである。その頃は「ジャパンC組がレベルが高かった」「イクイノックスが化け物」で片づけていたけど、その後の日本馬の海外での低迷、そして今年の秋の天皇賞とジャパンCでもドウデュースの独り舞台のようなレースが続いたのを見ると、現在の日本馬の全体的なレベルの低さをはっきり思い知らされた気がしてならない。リバティアイランドは古馬になって期待したほどの成長が見られなかった。国内で走る限りはおそらくドウデュースだけが世界レベルの能力に達している。しかしそれ以外は、世界トップクラスとはハッキリ差があると思った方が良いのかもしれない。

 

世界との比較はあくまでトップレベルの一部の馬の話だし、相対的なものでもあるので、日本が弱くなったというよりは海外の超大物のレベルが上がったのかもしれない。しかし日本だけ見ても、この1,2年でディープインパクト産駒やキングカメハメハ産駒の数が急激に減り始めたわけで、トップ層のレベルの低下は全体の地盤沈下とも関係している可能性は十分考えられる。頼みの綱と思われたドゥラメンテも早逝したので、もう今年デビューの2歳がラストクロップ。ロードカナロアはアーモンドアイやパンサラッサのような大物も出すけど、産駒の獲得賞金順で3位はダノンスマッシュ、4位はサートゥルナーリア、5位はダイアトニックくらいまでレベルが下がってしまって、大物を継続的に出すまでには至っていない。エピファネイアも現役最強と言えたほどの大物はエフフォーリア一頭だけだし、今年のリーディングを独走するキズナ産駒も大物感には欠ける馬ばかり。もう一度キタサンブラックの一発に期待するしかないのだろうか。イクイノックス産駒がデビューすればまた変わるかもしれないけど、それまでは日本馬の低迷が続くのかもしれない。

今年のジャパンCでゴリアットやオーギュストロダンを返り討ちにしたことで、「やはり日本の芝でやる限りは日本馬が強い」との再認識が広がったと思う。来年あたりに適当な外国馬が参戦してきても、みんな見向きもしないだろう。もしかしたそこで格下と見られた海外馬にあっさりジャパンCを持っていかれてしまうんじゃないかな、という気がしている。

 

今年のジャパンCで7番人気と8番人気の低評価を覆して2着同着に入ったシンエンペラーとドゥレッツァは、夏や秋にそれぞれ海外遠征してアイリッシュチャンピオンS3着とインターナショナルS5着だった。この成績でも、もしかしたら今の日本の芝馬としては「よく健闘した」と評価しておくべきだったのかもしれない。少なくとも、強い馬たちと戦って揉まれた経験というのは、その後にとってプラスになるというのは想像に難くない。

そんなことを考えていくと、積極的に海外に遠征して好走を続けてきたシャフリヤールやプログノーシスについても、今年の有馬記念で決して評価を下げられない気がしてきた。シャフリヤールは現在netkeiba想定11番人気だけど、昨年の有馬記念も5着に検討していて、それも3着とは同タイムの接戦だった。今年は去年と全く同じレースに出走するローテーションを組んでいて、今年の方が明らかに成績が良い。一方で相手はタイトルホルダーが引退、スターズオンアースが不調となると、去年以上の着順があっても何も驚けない。

そして想定6番人気プログノーシス。こちらも川田将雅に振られてしまったけど、香港でロマンチックウォリアー相手に三度接戦を演じた実績は改めて評価されるべきかも。コックスプレートでも現地のヴァイシスティーナに8馬身差をつけて完敗したけど、従来のレコードを1.8秒も更新するくらいに相手が強すぎた。むしろ他の有力馬をよく押さえて2着を確保したことが大きな強みになるかもしれない。

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