ロンドンの金融街「シティ」(写真:ロイター/アフロ)

(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

 10月末からの1週間、日米欧の三極で金融政策決定会合が開催されたものの、結局、金利・為替・株式の3市場に大きな変化は生じていない。東京市場に関して言えば、10月4日の自民党総裁選を境として円金利は上がり、円相場は下がったまま。高市政権に対するリフレ期待の根強さを感じる。

 10月30日の日銀金融政策決定会合が大方の予想通り現状維持であった上、反対票の増加も見られなかったことで、その期待は一段と強まったようにも見受けられる。

 公表文では「各国の通商政策等の影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性」が利上げ見送りの背景として言及されているものの、不確実性はそうした海外情勢もさることながら、「発足したばかりの高市政権との間合い」を意識したものだろう。

 本稿執筆時点で12月ないし1月利上げの公算は非常に大きそうだが、「12月ないし1月に利上げできる」からといって「2026年以降も安定的かつ連続的に利上げできる」という話にはなるまい。この辺りについての論考はまた機会を改めて、提供したいと思う。

 今回はいったん政局を離れ、為替市場を概観しておきたい。というのも、9月末に国際決済銀行(BIS)から3年に一度の「世界外国為替市場調査(2025 Triennial Central Bank Survey)」が公表されたからだ。これを踏まえ、G3通貨(ドル、円、ユーロ)を中心とする為替市場の現在地を把握しておきたい。

 政局の混乱もあり、日本での報道は通常より乏しかったが、為替市場の現状と展望を分析する立場からは極めて有用な情報だ。

 同調査では、調査該当年の4月に関して1日当たりの取引額を公表することが通例化している。これによれば世界の外為市場の1日当たり取引額は前回調査対比で+28.5%となる9兆5954億ドルだった。

【図表①】

 図表①にあるように、3年に一度の変化率という意味では+30%弱の伸び幅は特に大きいわけでもなければ、小さいわけでもない。おおむね過去10年程度の伸び(2016年以降では平均+24%程度)が持続している印象である。

 ただ、実体経済と比べると、非常に速いペースで為替市場が膨張し続けているという事実は押さえておきたい。図に示している通り、世界経済も過去10年程度の伸び(2016年以降では平均+14%程度)が順当に持続しているが、その伸びは為替取引高の半分弱のペースだ。

 実体経済と比べて金融取引が膨張する姿は断続的に問題視されているが、BIS調査から得られるデータを見る限り、それが修正される気配は感じられない。2025年時点の為替取引高の世界GDPに対する比率は初めて8%を突破した。もちろん、過去最高である。