参院本会議で答弁する高市首相=6日午前(写真:共同通信社)

 SNSを通じた数々の過激発信から「戦狼外交官」として知られる中国の薛剣(せつ・けん)駐大阪総領事(大使級)が、ついに任国トップに対し殺害予告も同然の暴言をX(旧ツイッター)で発信した。

 台湾有事に関する考えを述べた高市早苗首相に対し、「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる」などと投稿。ほどなく削除されたものの、このところ過激発信は以前に比べて控えめ傾向だっただけに、総領事館内のX発信担当者と薛総領事の間での「内紛が表面化した」との見方まで浮上している。

怒りの顔文字付きで発信

 問題の薛剣氏の「戦狼」発信は、朝日新聞デジタル速報席がXに投稿した記事「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』 認定なら武力行使も」を引用して、8日に投稿。「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか。」と従来通り日本語で発信しており、文末には怒り顔の絵文字も添えられていた。

薛剣総領事が投稿した問題の「高市首相殺害予告」ともとれるポスト

 高市首相は、午前3時すぎから公邸で秘書官全員と約3時間にわたる答弁準備を行って臨んだ11月7日の衆院予算委員会で、台湾海峡の両岸関係を巡り中国が台湾を海上封鎖した場合など、台湾有事で「存立危機事態」にあたる具体例について問われた。

 高市首相はそこで、「平和的解決を期待する従来の立場だ」「いかなる事態が(集団的自衛権の行使が可能となる)存立危機事態に該当するかは、個別具体的な状況に即して総合的に判断しなければならない」としたうえで、「(中国が海上封鎖を)戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考える」と述べた。

 薛剣総領事は、この答弁を報じた記事を引用しつつ、冒頭の「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる」のコメントをXに投稿したのだ。

2024年10月、大阪市内の音楽イベントに出席した際の薛剣氏(筆者撮影)

 台湾を「不可分の領土」「核心的利益」とする中国の立場から、「台湾問題は純粋な中国の内政」「中華民族の偉大な復興」をかかげる習近平指導部の姿勢を改めて強調したものとみられるが、任国のトップへの殺害予告とも受け取られかねない当初の過激発言は瞬く間に批判コメントとともに拡散され大炎上。9日までに削除される騒ぎとなった。