松岡功の一言もの申す

2017年は「IoT」「AI」「クラウド」の連立方程式を解き明かせ

松岡功

2017-01-05 13:00

 世界の政治と経済の先行きが見えづらい中で迎えた2017年。そんな時だからこそ、企業にとってはイノベーションが一層求められる。ITはそれを支援する重要な役割を担う。そのITとはどんなものか。

連携して動作してこそ役立つ2017年のITキーワード

 2017年、企業が新たなイノベーションを起こすための大きなパワーになるITとはどんなものか。それは、「IoT(Internet of Things)」「AI(人工知能)」「クラウド」の“連立方程式”を解き明かすことではないかと筆者は考える。

 なぜか。目的とするイノベーションに対して、IoTがもたらすビッグデータを、AIを活用して効果的に分析し、最適解を追求する。クラウドがその一連の処理を高速かつ安全に支える。つまり、IoTとAIとクラウドは連携して動作してこそ役に立つ。この連立方程式を解き明かしてこそ、ITは企業のイノベーションに大きなパワーをもたらすと考えるからだ。

 新年早々、少々理屈をこねたかもしれないが、改めて一言申し上げたいのは、2017年のIT市場におけるキーワードはIoT、AI、クラウドの3つであり、それらを連立方程式に見立てて解き明かすことが重要ではないか、ということだ。この3つのキーワードについては、ITベンダー各社の経営トップも2017年の年頭所感で数多く取り上げている。その中から興味深いコメントの概要をキーワードごとに紹介しておこう。

 まず、IoTについては、シスコシステムズの鈴木みゆき社長が次のように語っている。

 「IoTはこれまで概念だったものが、一歩進んで実装段階に移ってきたといえよう。製造業からスマートシティと呼ばれる行政を巻き込んだもの、ヘルスケア、教育、エネルギー、交通など、さまざまな分野に広がりを見せている」

 概念から実装段階へ。IoTに対するこの認識は多くの人に共通しているだろう。

AIは期待から実感へ、基幹ITのクラウドはこれからが本番

 AIについては、日本IBMのポール与那嶺社長のコメントが興味深い。

 「2016年はAI活用への注目と期待が高まった1年だった。IBMではAIを“Augmented Intelligence(拡張知能)”として人間の知識を拡張し増強するものと定義し、IBM Watsonを中核とするコグニティブソリューションとしてお客様に提供している。2017年はAIへの取り組みが大きく広がることによって、期待が実感へと変わる年になる。時代の変化を先取りして早期にAIに取り組み、さらにはそれをトリガーとした事業変革へと大胆に取り組んでいくことが成長のカギになるだろう」

 2017年はAIへの期待が実感へと変わる年。与那嶺氏のこの見解は、それこそ多くの人が期待していることだろう。それにしてもAIを「拡張知能」と定義付けるとは、従来のAIという言葉遣いを避けてきたIBMらしい差別化戦略である。

 そしてクラウドについては、日本オラクルの杉原博茂社長が次のように語っている。

 「企業や社会の重要な基幹ITを支える領域でのクラウド活用はこれからが本番だ。従来と比較し既存システムの運用管理コストを大幅に削減できるとともに、どこにいても必要な時に必要なだけ、迅速かつ俊敏に最新のITを構築、活用することができる。また、事業環境の変化に円滑に対応できる柔軟性も得られる。最小のリソースで最大のビジネス効果をもたらすためには、既存の仕組みをクラウドへ移行することが規模を問わず必要不可欠になってきた」

 企業や社会の重要な基幹ITを支える領域でのクラウド活用はこれからが本番。この認識は筆者も同感である。あとのコメントはクラウドのメリットを並べたものだが、年頭所感の多くをクラウドの訴求に割いたところに、オラクルのクラウド事業への本気度がうかがえる。

 以上の3氏のコメントは、筆者が3つのキーワードを挙げた理由と同じである。この3つのキーワードによる連立方程式を解き明かせば、企業にとって新たなイノベーションの大きなパワーになることを、改めて強調しておきたい。

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