企業向けにデジタルトランスフォーメーション(DX)プラットフォームを展開する米ServiceNowが高成長を続けている。しかもさまざまな業務へのAIの適用に向けて一段と注目度が高まっている。なぜか。そこには企業がDXを進める際の重要なポイントもありそうだ。日本法人ServiceNow Japan 執行役員社長の鈴木正敏氏に取材する機会を得たので話を聞いてみた。
売上高はこれまでの3年間で倍増する勢い
写真1:ServiceNow Japan 執行役員社長の鈴木正敏氏
「ServiceNowの価値が広く認められるようになってきたとの手応えを感じている」
取材の冒頭で「好調ですね」と切り出したところ、鈴木氏はにこやかな表情でこう答えた(写真1)。
ServiceNowの高成長が、ここにきてエンタープライズITベンダーの中でも目立っている。なぜ、高成長しているのか。そこに、企業がDXを進める際の重要なポイントがあるのではないか。今回、筆者が鈴木氏に話を聞こうと思ったのは、そうした問題意識からだ。
ServiceNowはITサービス管理から各種業務、顧客や従業員向けのサービスまで企業全体をカバーするデジタルワークフローを構築することで、組織横断的なDXを支援するクラウドサービスを提供している。2004年設立の同社が注目されるようになったのは、グローバル標準のITサービス管理をSaaSとして提供したのがきっかけだ。だが、もともとは各種業務のワークフローやデータを一元管理する「Now Platform」をPaaSとして提供しており、その上で構築したITサービス管理が注目された形となった(図1)。
図1:ServiceNowのソリューション群(出典:ServiceNow Japan)
同社の高成長ぶりは業績や時価総額の動きを見ると明らかだ。売上高は、2023年度(2023年12月期)で前年度比24%増の89億7100万ドルとなり、2024年度(2024年12月期)には100億ドルを大きく超え、これまでの3年間で倍増する勢いだ。時価総額も2024年に入って現在までに約6割増加している。
なぜ、高成長しているのか。鈴木氏は背景にある動きも併せて次のように答えた。
「端的に言うと、企業のデジタル活用においてまだまだ余地があると、皆さんが気付き始めたからだ。特に日本企業ではこれまで、DXを進めようと言いながらも、実際にIT投資の多くを費やすのは基幹システムなどのSoR(System of Record)領域で、デジタルをビジネスに生かすSoE(System of Engagement)領域に注力する動きは鈍かった。それが、AIをはじめとした新しいデジタル技術が出てきて、それらを使ってSoE領域に積極的に取り組むのが、企業競争力の強化につながるDXだという認識がここにきて非常に高まってきたことが背景にある」
「ServiceNowが提供するNow Platformは、まさしくそのDXを推進するプラットフォームだ。最大の特徴は、このプラットフォーム上でSoR領域を含むさまざまなアプリケーションによる業務プロセスをつなげて利用できるデジタルワークフローによって業務の自動化を進め、人は人にしかできない付加価値の高い仕事に集中できることだ。さらに、この仕組みに生成AIやAIエージェントといった革新的な技術を組み込んで使えるようになったことで、Now PlatformはAIプラットフォームとしても大きな期待をいただいている。こうしたServiceNowの提供する価値が、DXに本格的に取り組み始めた皆さんに認めていただけるようになってきたのが高成長の要因だと考えている」
冒頭で紹介した鈴木氏の「手応え」の発言は、この流れで出てきたものである。