2015年創業の米ベンチャー企業が、「リアルタイム・インテリジェント・アプリケーション開発プラットフォーム」と呼ぶ新たな技術を日本でも本格展開しようと記者会見を開いた。新技術は「リアルタイム×AI×ローコードアプリ開発」を掛け合わせたイメージだ。どんな技術なのか。何ができるのか。非常に興味深く感じたので、今回の「一言もの申す」ではこの技術について探ってみたい。
VANTIQの新技術とはどのようなものか
そのベンチャー企業とは、米カリフォルニア州に本社を置くVANTIQ(バンティック)だ。日本では2019年1月に日本法人を設立し、2024年7月には代表取締役社長として佐藤知成氏が就任。佐藤氏はSAP、Microsoft、Amazon Web Services(AWS)、Cloudflareの日本法人で要職を務めてきた経歴を持つ。筆者も20年ほど前のSAPジャパン時代から、たびたび取材でお会いしてきた。そして、12月10日にはVANTIQ 共同創設者 兼 最高経営責任者(CEO)のMarty Sprinzen(マーティ・スプリンゼン)氏が来日し、佐藤氏と共に同社の技術の日本でのさらなる展開に向けて会見に臨んだ(写真1)。
写真1:左から、VANTIQ 共同創設者 兼 CEOのMarty Sprinzen氏、同社 日本法人 代表取締役社長の佐藤知成氏
本稿ではその会見の内容を含め、その後に筆者が佐藤氏および同氏を通じてSprinzen氏とも3回にわたってメールでやりとりした内容をインタビュー形式でお届けする。以下、回答における両氏の名前は省略する。
--VANTIQのリアルタイム・インテリジェント・アプリケーション開発プラットフォームとは、どんな技術なのか。どのような経緯で開発されたのか。
VANTIQ は、複雑なリアルタイム処理を行うアプリケーションを短時間かつローコードで開発できるプラットフォームを提供している。この技術の発端は、もともとデータベースの開発者だったMartyが、究極のリアルタイムシステムを目指す上で、逆にデータベースに記録することがパフォーマンスのボトルネックになるのを懸念したところから始まった。
そのため、防災やヘルスケアなどの常に変化する情報をデータベースに落とすことなくメモリー上で処理を行う「ストリームデータ処理」を行い、変化する不特定多数の不定形の情報を生成AIとも連携させて処理する技術の開発に挑戦し、成功した。この技術をローコードで簡易的にシステムを構築できるアプリケーション開発プラットフォームとして製品化したのが、VANTIQだ。
Martyはリアルタイムデータの処理や分析がますます重要になる中で、既存のソフトウェアプラットフォームがそうした状況を十分にサポートできていないという問題意識を持っていた。従来のシステムでは、データの収集、処理、分析に時間がかかり、リアルタイムの意思決定やアクションをサポートするのが難しかった(図1)。
図1:VANTIQの技術開発の背景(出典:VANTIQの会見資料)
--VANTIQの技術で何ができるようになるのか。
VANTIQのミッションは、リアルタイムインテリジェンスのデータ利用に革命を起こし、生産性と効率性を向上させることにある。VANTIQはAlを適用したシステムとプロセスをシームレスに統合し、データを実用的なインサイトに変換する画期的なプラットフォームを構築した。リアルタイム生成Alとラピッドアプリケーションの開発によって目に見える効果をもたらし、コストを削減することもできる。
VANTIQは、IoT、ビデオ画像、音声データ、生体情報、気象情報など常に変化している不定形のデータを多数集め、それらを収集する中で生成AIおよび大規模言語モデル(LLM)などのAIの判断を組み入れることにより、防災、医療、防衛などの分野で革新的なシステムの構築を可能とするローコード開発プラットフォームである。