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すずつき (護衛艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
すずつき
基本情報
建造所 三菱重工業 長崎造船所
運用者  海上自衛隊
艦種 汎用護衛艦(DD)
級名 あきづき型
建造費 726億円
母港 佐世保
所属 第4護衛隊群第8護衛隊
艦歴
計画 平成21年度計画
発注 2009年
起工 2011年5月18日
進水 2012年10月17日
就役 2014年3月12日
要目
基準排水量 5,100トン
満載排水量 6,800トン
全長 150.5m
最大幅 18.3m
深さ 10.9m
吃水 5.4m
機関 COGAG方式
主機 SM1Cガスタービンエンジン × 4基
出力 64,000PS
推進器 スクリュープロペラ × 2軸
速力 最大30kt
乗員 約200名
兵装 62口径5インチ単装砲 × 1基
高性能20ミリ機関砲CIWS) × 2基
90式SSM 4連装発射筒 × 2基
Mk.41 Mod29 VLS (32セル)
HOS-303 3連装短魚雷発射管 × 2基
搭載機 SH-60K 哨戒ヘリコプター ×1/2機
C4ISTAR MOFシステムSUPERBIRD B2)
海軍戦術情報システム
OYQ-11 ACDSリンク 11/14/16
FCS-3A FCS
レーダー FCS-3A 多機能レーダー × 1基
OPS-20C 対水上レーダー × 1基
ソナー OQQ-22 統合ソナー・システム
電子戦
対抗手段
NOLQ-3D 統合電子戦システム
Mk.137 6連装デコイ発射機 × 4基
その他 曳航具4型 対魚雷デコイ
投射型静止式ジャマー (FAJ) 4連装発射機 × 1基
自走式デコイ (MOD) 4連装発射機 × 1基
テンプレートを表示

すずつきローマ字JS Suzutsuki, DD-117)は、海上自衛隊護衛艦あきづき型護衛艦 (2代)の3番艦。艦名は「爽やかに澄み切った秋の月」[1]に由来する。この名を受け継ぐ日本の艦艇としては旧海軍秋月型駆逐艦3番艦駆逐艦涼月」に続いて2代目である。

本記事は、本艦の艦暦について主に取り扱っているため、性能や装備等の概要についてはあきづき型護衛艦 (2代)を参照されたい。

艦歴

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「すずつき」は、中期防衛力整備計画に基づき平成21年度計画5,000トン型護衛艦2246号艦として、三菱重工業長崎造船所で2011年5月18日起工され、2012年10月17日に進水、 2014年3月12日に就役し、第4護衛隊群第8護衛隊に編入され、佐世保に配備された。

2016年7月10日第25次派遣海賊対処行動水上部隊として護衛艦「いなづま」と共にソマリア沖・アデン湾へ向けて佐世保基地から出航し[2]、翌年1月12日に帰国した[3]

2017年10月13日から11月25日までの間、ハワイ周辺海域に派遣され、米国派遣訓練に参加した[4]

2018年8月26日から10月30日まで護衛艦「かが」、「いなづま」とともにインド太平洋方面派遣訓練に参加し、インドインドネシア共和国シンガポール共和国スリランカ民主社会主義共和国フィリピン共和国を訪問[5]9月13日には南シナ海潜水艦くろしお」と合流し、対潜戦の訓練を実施した[6][7]

2019年4月21日、中国人民解放軍海軍創設70周年を記念し山東省青島付近で4月23日に開かれる国際観艦式参加するため青島に入港した。海自艦艇の訪中は2011年12月以来、約7年半ぶり[8]

2020年8月15日から17日までの間、東シナ海において米海軍駆逐艦マスティン」と日米共同訓練を実施した[9]

2021年8月25日、東シナ海において、海上保安庁不審船対処に係る共同訓練を実施した[10]。海上保安庁からは巡視船しきしま」、巡視艇うけゆり」、回転翼機機動救難士が参加し、各種共同対処訓練(通信訓練、洋上救難訓練、発着艦訓練等)を行った[10]

2022年3月12日から4月28日にかけて、令和3年度外洋練習航海(飛行)に参加する。第74期飛行幹部候補生課程修了者54名(うち女性3名)が乗艦し、ベトナム社会主義共和国カムラン)、シンガポール共和国チャンギ)、フィリピン共和国スービック)、アメリカ合衆国グアム)に寄港する[11]。同年3月30日、タイランド湾においてタイ海軍哨戒艇タピ」と日タイ親善訓練を実施した[12]。同年4月9日、スービック沖においてフィリピン海軍フリゲートホセ・リサール」と日比親善訓練を実施した[13]

同年9月17日、第43次派遣海賊対処行動水上部隊として佐世保基地から出港した[14](当初の予定は9月18日)[15]。佐世保を出港した後は、新型コロナウイルス感染症拡大の状況を踏まえ、派遣に向けた準備の一環として乗組員全員に対しPCR検査を実施するとともに、日本近海において14日間にわたり訓練等を行いつつ乗組員の健康観察を実施した上で、ソマリア沖・アデン湾に向け進出した[15]

2023年1月9日から1月14日にかけて、アデン湾西部及びアラビア海北部において、仏空母打撃群(米艦艇を含む)との間で共同訓練を実施した。仏海軍航空母艦シャルル・ドゴール」、駆逐艦「フォルバン」、「プロヴァンス」、補給艦「マルヌ」、米海軍駆逐艦「トランクストン」が参加し、防空戦訓練、クロスデッキ、洋上補給、写真撮影を実施した[16]。同年2月9日から2月14日にかけて、アラビア海北部海空域において実施されたパキスタン海軍主催多国間共同訓練(AMAN23)に参加した[17]。 同年3月13日から14日にかけて、スリランカ東方海域において、日仏米豪印英加新共同訓練(ラ・ペルーズ23)に参加した。フランス海軍強襲揚陸艦ディクスミュード」、フリゲートラファイエット」、米海軍沿海域戦闘艦チャールストン」、オーストラリア海軍フリゲート「パース」、インド海軍フリゲート「サヒャドリ」、補給艦ジョッティ」、イギリス海軍哨戒艦テイマー」、カナダ海軍ニュージーランド海軍司令部等が参加し、各種戦術訓練(対水上射撃、防空戦、戦術運動、クロスデッキ)を実施した[18]。同年4月5日に佐世保基地に帰港した[19][20]

同年6月2日から7月13日にかけて、搭載航空機とともに令和5年度米国派遣訓練(護衛艦)に参加する[21]。派遣期間中の6月23日、ハワイ周辺海域において、米海軍の支援の下、対空ミサイルESSMの発射訓練を実施した[22]。同年7月11日、四国南方の海空域において、米海軍揚陸指揮艦「ブルー・リッジ」と共同訓練を実施した[23]

2024年7月4日の午前、本艦が中国東部浙江省の沖合を航行し一時、中国の領海内に入った[24]。本艦は当時、中国軍軍事訓練の監視任務に当たっていて、中国側から退去勧告を受け領海の外に出た[24]。海自艦艇が事前に通告せず中国領海に入ったのは1954年に自衛隊を創設してから初めてだった[25]中国外交部林剣副報道局長によると、日本側は技術的なミスだったと釈明しているという[26]。 国連海洋法条約によって沿岸国の安全を害する行為を行わない限り、領海を航行できる無害通航が認められているが、本艦は中国軍の演習を監視するという情報取集活動をしていたときに中国の領海内に入った。このことについて、日本国政府防衛省は無害でない通航と規定した国連海洋法条約第19条2項(j)の「調査活動又は測量活動の実施」に該当するか否かを明言していないが[27]、日本政府が艦長が正確な位置を把握せず誤って領海侵入したと中国側に伝達したことが9月22日に分かった。海自は重大なミスがあったとして艦長を事実上更迭し、乗員の処分も検討しているという[28]

歴代艦長

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歴代艦長(特記ない限り2等海佐
氏名 在任期間 出身校・期 前職 後職 備考
艤装員長
- 恒益俊春 2012.10.17 - 2014.3.11 防大29期 大湊海上訓練指導隊副長
兼 指導部長
すずつき艦長
 艦長
1 恒益俊春 2014.3.12 - 2015.8.3 防大29期 すずつき艤装員長 横須賀システム通信隊司令
2 菊地良勝 2015.8.4 - 2016.3.17 防大34期 舞鶴海上訓練指導隊船務航海科長 海上訓練指導隊群司令部勤務  
3 中山健太朗 2016.3.18 - 2017.3.23 防大32期 佐世保海上訓練指導隊副長
兼 指導部長
佐世保基地業務隊本部補充部付
4 衣山丈夫 2017.3.24 - 2018.10.18 防大35期 佐世保海上訓練指導隊船務航海科長 護衛艦隊司令部
5 川田英司 2018.10.19 - 2019.12.1 防大35期 呉地方総監部管理部総務課長 指揮通信開発隊副長
6 相馬美佳 2019.12.2 - 2021.2.4 中央大学 海上自衛隊第1術科学校主任教官 海上幕僚監部防衛部防衛課
7 岩森雄飛 2021.2.5 - 2023.4.0 防大45期 いせ砲雷長
8 野口祐太 2023.4.0 - 2024.5.19
9 髙畑康博 2024.5.20 - 2024.7.0
10 2024.7.0 -

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ 海上自衛隊公式サイト:命名・進水式 なおこのページでは基準排水量が約5,100トン全長151m 幅18.3m 深さ10.9mとなっている。
  2. ^ 派遣海賊対処行動水上部隊の交代について (PDF)
  3. ^ 海上自衛隊公式フェイスブック(2017年1月12日)
  4. ^ 平成29年度米国派遣訓練(護衛艦)について (PDF)
  5. ^ 平成30年度インド太平洋方面派遣訓練の実施について (PDF)
  6. ^ “中国をけん制、南シナ海で潜水艦訓練…海自公表”. 読売新聞. (2018年9月18日). オリジナルの2018年9月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180918193723/https://www.yomiuri.co.jp/politics/20180917-OYT1T50081.html 2018年9月18日閲覧。 
  7. ^ 対潜戦訓練の実施について (PDF)
  8. ^ “海自艦7年半ぶり訪中 青島に入港、観艦式参加へ”. 産経新聞. (2019年4月21日). https://www.sankei.com/world/news/190421/wor1904210006-n1.html 2019年4月21日閲覧。 
  9. ^ 日米共同訓練について (PDF)
  10. ^ a b 不審船対処に係る海上保安庁との共同訓練について (PDF)
  11. ^ 令和3年度外洋練習航海(飛行)について (PDF)
  12. ^ 日タイ親善訓練について (PDF)
  13. ^ 日比親善訓練について (PDF)
  14. ^ 海上自衛隊佐世保地方総監部【公式】 [@jmsdf_srh] (2022年9月17日). "【すずつき 出国行事🚢】". X(旧Twitter)より2022年9月17日閲覧
  15. ^ a b 派遣海賊対処行動水上部隊の出港について 統合幕僚監部(2022年9月6日) (PDF)
  16. ^ 仏空母打撃群との共同訓練の実施について 統合幕僚監部(2023年1月17日) (PDF)
  17. ^ パキスタン海軍主催多国間共同訓練(AMAN23)について 海上幕僚監部(2023年2月15日) (PDF)
  18. ^ 日仏米豪印英加新共同訓練(ラ・ペルーズ23)について 海上幕僚監部(2023年3月15日) (PDF)
  19. ^ 第43次派遣海賊対処行動水上部隊の帰港について 統合幕僚監部(2023年3月29日) (PDF)
  20. ^ 海上自衛隊佐世保地方総監部【公式】 [@jmsdf_srh] (2023年4月6日). "【すずつき 帰国行事】". X(旧Twitter)より2023年4月6日閲覧
  21. ^ 令和5年度米国派遣訓練(護衛艦)について 海上幕僚監部(2023年5月26日) (PDF)
  22. ^ 護衛艦「すずつき」の対空ミサイル(ESSM)発射訓練について”. 海上自衛隊 自衛艦隊 オフィシャルサイト (2023年6月26日). 2023年6月26日閲覧。
  23. ^ 日米共同訓練について 海上幕僚監部(2023年7月12日) (PDF)
  24. ^ a b 海自の護衛艦 一時 中国領海を航行 防衛省がいきさつを調査”. NHK (2024年7月11日). 2024年8月29日閲覧。
  25. ^ “中国領海への誤侵入、艦長更迭 海自艦、位置把握せず”. 共同通信社. (2024年9月23日). https://www.47news.jp/11523200.html 2024年9月23日閲覧。 
  26. ^ “海自艦、中国領海に一時侵入 「技術的ミス」と釈明”. 日本経済新聞. (2020年7月11日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM119IG0R10C24A7000000/ 2024年7月18日閲覧。 
  27. ^ “海自護衛艦、中国領海を一時航行 中国「深刻な懸念」伝達 政府関係者「法的問題ない」”. 産経新聞. (2024年7月11日). https://www.sankei.com/article/20240711-2HO757X2WZO5XOHNZXLCWBUOXE/ 2024年7月11日閲覧。 
  28. ^ “中国領海への誤侵入、艦長更迭 海自艦、位置把握せず”. 東京新聞 TOKYO Web. (2024年9月23日). https://www.tokyo-np.co.jp/article/355972 2024年9月23日閲覧。 

関連項目

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