wakamaru
wakamaru(わかまる)は三菱重工業が開発したロボットである。身長100cm、直径45cm、体重30kg[1]。人間とコミュニケーションするロボットであり、周囲の視覚情報から人間を検出してオーナ(2人まで)とオーナ以外(8人まで)の顔を識別したり[1]、音声を認識して簡単な対話をするなどの機能がある[2]。インターネットを通じてニュースなどを受信することもできる[3]、留守番時に外出先から遠隔操作して確認する機能や、自動的に移動物や物音を検知すると指定の連絡先へ通知する機能も持つ[4]。車輪走行で、10 mm までの段差は安定して乗り越えることができるが、原則バリヤフリーな環境での移動を想定している。10 mm を超える段差や障害物を回避するためには超音波センサを装備。本体最外周部にはバンパー、腕には衝突検出センサを装備し、万一何かに当たった場合には即座に停止するシステムとしている[1]。
デザインは喜多俊之。人間が一番信頼できる存在は人間であるという心理を利用して人型のフォルムを採用し、さらに良いパートナーシップを感じさせるために意図的に大きな瞳とし、唇(上顎)は表情を感じさせるラインとし[5]、産業用ロボット的なアームで構成されたロボットと同じ作業をした時の被験者への心理的な反応を比較する実験ではwakamaruの方が評価が高くなる結果が得られた[6]。「wakamaru」の名は源義経の幼名牛若丸にちなむ[5]。
2003年に初めて報道公開された。2005年日本国際博覧会では三菱未来館の案内役を務めた他[7]、2010年にはあいちトリエンナーレにおいて平田オリザが脚本・演出の舞台に出演している[8]。
国際電気通信基礎技術研究所で開発されたRobovieをベースに[9]比較的安価な超音波距離センサとスポット検出型の赤外線距離センサを複数組み合わせることで必要とされる機能を実現し[10]一般ユーザーが購入できるよう[11]モニタ販売され実際の家庭の中で情報提供用ロボットとして使われたが、実用には至らなかった[9]。
外部リンク
[編集]- 三菱重工|wakamaru - ウェイバックマシン(2016年3月28日アーカイブ分)
- 川内直人、古結義浩、長島是、大西献、日浦亮太「ホームユースロボット"wakamaru"」『三菱重工技報』第40巻第5号、三菱重工業、2003年、270-273頁、ISSN 03872432、NAID 80016295775、NCID AN00235114、OCLC 5174504874、国立国会図書館書誌ID:6764850、2023年4月29日閲覧。
- 喜多俊之「プロダクトとしてのロボットデザイン」『日本ロボット学会誌』第22巻第8号、日本ロボット学会、2004年、984-985頁、doi:10.7210/jrsj.22.984、ISSN 02891824、NAID 10017996656、NCID AN00141189、OCLC 834302922、国立国会図書館書誌ID:000000039445、2023年4月29日閲覧。
- 塘中哲也、古結義浩、日浦亮太、杉本喜一、大西献「ホームユースロボット wakamaru の環境認識技術」『三菱重工技報』第42巻第3号、三菱重工業、2005年、40-41頁、ISSN 03872432、NAID 10018132829、NCID AN00235114、OCLC 5174504874、国立国会図書館書誌ID:6764850、2023年4月29日閲覧。
- 山田俊郎、坂口正道、北村喜文「愛・地球博」『日本バーチャルリアリティ学会誌』第10巻第2号、日本バーチャルリアリティ学会、2005年、114-119頁、doi:10.18974/jvrsj.10.2_50、ISSN 13426680、NAID 10016465603、NCID AA11461758、OCLC 9710937869、国立国会図書館書誌ID:000000101641、2023年4月29日閲覧。
- 日浦亮太「wakamaruの挑戦 (特集 ロボットビジネスへの取り組み)」『日本ロボット学会誌』第24巻第3号、日本ロボット学会、2006年、284-287頁、doi:10.7210/jrsj.24.284、ISSN 02891824、NAID 10018132827、NCID AN00141189、OCLC 5176169681、国立国会図書館書誌ID:7932016、2023年4月30日閲覧。
- 柘植綾夫、淺間一、城間直司「ロボットのエンジン・オブ・イノベーション (特集 トップに聞く)」『日本ロボット学会誌』第25巻第1号、日本ロボット学会、2007年、31-36頁、doi:10.7210/jrsj.25.31、ISSN 02891824、NAID 10018695522、NCID AN00141189、OCLC 9660662389、国立国会図書館書誌ID:8635807、2023年4月30日閲覧。
- サイエンスウィンドウ編集部「ロボット今昔ものづくり」『サイエンスウィンドウ』第2巻第7号、科学技術振興機構、2008年、4-5頁、doi:10.1241/sciencewindow.20080207、ISSN 18817807、NAID 130007631963、NCID AA12205185、OCLC 852260514、国立国会図書館書誌ID:000008427278、2023年4月29日閲覧。
- 大塚庄一郎、小松孝徳、米田隆志「親和性のあるロボットデザイン--Virtual Robotを利用した音声教示によるインタラクションと機能的デザインの評価 (特集論文 HAI(Human-Agent Interaction))」『ヒューマンインタフェース学会論文誌』第8巻第3号、ヒューマンインタフェース学会、2008年、343-352頁、doi:10.1299/jsmermd.2008._2P2-I08_1、ISSN 13447262、NAID 10019299305、NCID AA11324440、OCLC 5171789514、国立国会図書館書誌ID:8023190、2023年4月30日閲覧。
- 石黒浩、平田オリザ「ロボット演劇 (特集 ソーシャルロボットと人間理解)」『日本ロボット学会誌』第29巻第1号、日本ロボット学会、2011年、35-38頁、doi:10.7210/jrsj.29.35、ISSN 02891824、NAID 10027648513、NCID AN00141189、OCLC 9660662389、国立国会図書館書誌ID:10956769、2023年4月29日閲覧。
- 石黒浩「持続発展可能なロボット開発におけるマッシブデータフロー (特集 人と環境に見る高次元データフローの生成と解析)」『人工知能』第27巻第4号、人工知能学会、2012年、396-400頁、doi:10.11517/jjsai.27.4_396、ISSN 09128085、NAID 110009477057、NCID AN10067140、OCLC 5183617398、国立国会図書館書誌ID:023878546、2023年4月30日閲覧。
脚注
[編集]- ^ a b c 川内直人 et al. 2003, p. 271.
- ^ 塘中哲也 et al. 2005, p. 40.
- ^ サイエンスウィンドウ編集部 2008, p. 5.
- ^ 川内直人 et al. 2003, p. 272.
- ^ a b 喜多俊之 2004, p. 984.
- ^ 大塚庄一郎, 小松孝徳 & 米田隆志 2008, p. 352.
- ^ 山田俊郎, 坂口正道 & 北村喜文 2005, p. 52.
- ^ 石黒浩 & 平田オリザ 2011, p. 36.
- ^ a b 石黒浩 2012, p. 396.
- ^ 日浦亮太 2006, p. 271.
- ^ 柘植綾夫, 淺間一 & 城間直司 2007, p. 32.