今週は、アゴラで保育園をめぐる議論が活発だが、これと震災から5年たっても復興の遅れている福島の問題には、共通点がある。両方とも、複数の官庁がからんで全体の意思決定ができないのだ。

保育園の場合は、保育園は厚生労働省、幼稚園は文部科学省と、同じような施設が別の役所の所管で、「幼保一元化」の議論は10年以上やっているが、進まない。ようやく「認定こども園」という保育園もどきの施設ができたが、補助金漬けの保育園の実態は変わらない。

時代遅れの保育園を廃止して幼稚園に吸収し、小学校を5歳入学にするのが先進国の潮流だが、強い政治力をもつ社会福祉法人が厚労省をバックアップしているため、事態が動かない。官邸が指導力を発揮するしかないのだが、社会福祉法人は票をもっているので、安倍首相は動かない。

同じことが原子力行政にもいえる。澤昭裕氏の遺稿にも書かれているように、経産省と文科省と原子力規制委員会と電力会社がバラバラに動いて、どこに責任があるのかわからない。田中委員長は「無駄な水くみは電力会社の判断でやめろ」というが、電力会社は「私どものほうからは言い出せない」。ここでも首相は、意思決定から逃げている。

こういう「無責任の体系」を指摘したのは丸山眞男だが、それは単なる縦割り構造ではない。意思決定がボトムアップで行なわれ、しかも全員一致が原則なので全員が拒否権をもっていることが日本の組織の特徴だ。

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