正月に湯浅誠氏からツイッターをもらった。彼の「年越しSOS電話相談」のつぶやきをRTしたお礼である。
@ikedanob ありがとうございました。ツイッター経由で20代の方から相談がありました。年末で「派遣切り」通告され、寮から追われるところでした。また最後の所持金で入ったネットカフェの検索でヒットしたという30歳の方もいました。「消えようと思っていた」と。
彼のこうした努力は貴重だが、申し訳ないが私は『シーシュポスの神話』を連想してしまう。彼らが一人一人の労働者を救済しても、民主党は製造業の派遣労働者50万人の職を奪う法改正をしようとしている。「職を増やすことを考えないと、いたちごっこでしょ」と質問しても、彼は答えない。辻元清美氏に「規制を強化したら派遣労働者が職を失う」と言っても答えない。

ある党の元党首の勉強会ににまねかれたとき、彼が私の『希望を捨てる勇気』にびっしり付箋をつけていて驚いた。「雇用規制を緩和しないといけないことはわかっているが、『労働者をクビにしやすくしろ』などと言ったら絶対に選挙に負ける」という。

みんなわかっているのだ。正社員の過剰保護が諸悪の根源だということを。ニコ生では、藤末健三氏は正直に「リフレより労働生産性のほうが大事だ」と言っていたが、彼も雇用規制の緩和までは言えない。それは連合を基盤とする民主党の本質的な限界である。では自民党が言うかというと、石破茂氏も言えない。

雇用問題は、部落問題や電波利権のようなタブーなのである。それは経済問題ではない。終身雇用・年功序列が企業にとっても労働者にとっても有害だということは、民主党も自民党も公明党も知っている。それは「口に出すと選挙に負ける」という政治問題なのだ。

しかしニューズウィークにも書いたように、日本は明文の雇用規制は強くない。問題は正社員の既得権に手をつけられない大企業の「空気」だから、労基法を改正しなくてもできることはたくさんある。たとえば退職一時金の非課税措置を廃止し、企業年金をポータブルにし、社宅などの付加給付に課税して正社員と非正社員の待遇を平準化するだけでも、空気は変わる可能性がある。

首相のいうように雇用が日本経済の最大の問題だが、雇用を創造するのは政府ではなく民間である。そのためには非正社員の規制を強化する「北風」政策ではなく、企業の雇用負担を減らす「太陽」政策が必要である。民主党がマニフェストを書き直すなら、最重点項目に「雇用創造」を掲げてはどうだろうか。