全世界で数百万部のベストセラーになったFreakonomicsの続編。話題になっているのは第1章の売春婦の実態調査と第5章の地球工学の話だが、ここでは後者について簡単に紹介しておこう。
これは地球温暖化を防ぐために大気中に粒子を散布するもので、20年以上前からNordhausや元マイクロソフトのMyhrvoldなどが提案している。これについては1992年に全米科学アカデミーも、900ページ以上に及ぶ詳細な環境影響評価の結果、温室効果ガスの削減よりはるかに確実で低コストだという結論を出した。
地球工学による冷却にはいろいろな方法が提案されているが、いちばん簡単なのは、成層圏に届く細い塔を建て、そのてっぺんからSO2(二酸化硫黄)を散布するものだ。その効果は火山の噴火などで実証されており、たとえば1991年のピナツボ火山の噴火では、2年間にわたって地表の平均気温が0.5℃下がった。9/11のあと全世界で航空機が3日間、運休したときは気温が1.1℃も上がった。
SO2が大気汚染になるというのも誤解で、その粒はきわめて微小で(航空機の排気と同様)雲の芯になるだけだ。もちろん対流圏には降りてこないので、健康にも影響しない。排気塔の建設費用は2.5億ドルで、SO2のコストはゼロなので、それ以上の維持費はほとんどかからない。これに対して鳩山政権の依拠しているスターン報告によれば、同様の効果を得るために1兆2000億ドルのコストが毎年かかる。
IPCCのメンバーであるKen Caldeiraや、オゾンホールの発見でノーベル賞を受賞したPaul Crutzenも、地球工学について懐疑的な立場から実証研究を行なった結果、その有効性を認めて学術誌にも発表した(今のところ否定的な研究結果はない)。しかしアル・ゴアはこの提案を「バカな話だ」と一蹴し、費用便益分析を理解できない日本の環境科学者は「倫理的に許されない」などと非難している。
著者もいうように、温室効果ガスの削減という政策は「近代文明の罪をつぐなう」といったキリスト教的な信仰に昇格してしまったので、これを論理的に説得することは容易ではない。しかし人々がいかに固い信仰をもっていても、明白な事実がそれを崩すかもしれない。BBCは、ここ11年間、地表の平均気温は1998年より低く、この原因は太陽活動が減衰期に入り、太平洋の海洋循環が冷却期に入ったためだという分析を紹介している。
計量経済学の専門家(クラークメダル受賞者)であるLevittもいうように、地球のような巨大で複雑な生態系のシミュレーションは、経済学者にとっては気の遠くなるほど困難な仕事で、その結論は不正確にならざるをえない。それに比べれば金融工学のシミュレーションのほうがはるかに信頼度が高いが、それがどういう結果になったかを見れば、IPCCのシミュレーションなんて占いのようなものだと思っておいたほうが安全だ。
これは地球温暖化を防ぐために大気中に粒子を散布するもので、20年以上前からNordhausや元マイクロソフトのMyhrvoldなどが提案している。これについては1992年に全米科学アカデミーも、900ページ以上に及ぶ詳細な環境影響評価の結果、温室効果ガスの削減よりはるかに確実で低コストだという結論を出した。
地球工学による冷却にはいろいろな方法が提案されているが、いちばん簡単なのは、成層圏に届く細い塔を建て、そのてっぺんからSO2(二酸化硫黄)を散布するものだ。その効果は火山の噴火などで実証されており、たとえば1991年のピナツボ火山の噴火では、2年間にわたって地表の平均気温が0.5℃下がった。9/11のあと全世界で航空機が3日間、運休したときは気温が1.1℃も上がった。
SO2が大気汚染になるというのも誤解で、その粒はきわめて微小で(航空機の排気と同様)雲の芯になるだけだ。もちろん対流圏には降りてこないので、健康にも影響しない。排気塔の建設費用は2.5億ドルで、SO2のコストはゼロなので、それ以上の維持費はほとんどかからない。これに対して鳩山政権の依拠しているスターン報告によれば、同様の効果を得るために1兆2000億ドルのコストが毎年かかる。
IPCCのメンバーであるKen Caldeiraや、オゾンホールの発見でノーベル賞を受賞したPaul Crutzenも、地球工学について懐疑的な立場から実証研究を行なった結果、その有効性を認めて学術誌にも発表した(今のところ否定的な研究結果はない)。しかしアル・ゴアはこの提案を「バカな話だ」と一蹴し、費用便益分析を理解できない日本の環境科学者は「倫理的に許されない」などと非難している。
著者もいうように、温室効果ガスの削減という政策は「近代文明の罪をつぐなう」といったキリスト教的な信仰に昇格してしまったので、これを論理的に説得することは容易ではない。しかし人々がいかに固い信仰をもっていても、明白な事実がそれを崩すかもしれない。BBCは、ここ11年間、地表の平均気温は1998年より低く、この原因は太陽活動が減衰期に入り、太平洋の海洋循環が冷却期に入ったためだという分析を紹介している。
計量経済学の専門家(クラークメダル受賞者)であるLevittもいうように、地球のような巨大で複雑な生態系のシミュレーションは、経済学者にとっては気の遠くなるほど困難な仕事で、その結論は不正確にならざるをえない。それに比べれば金融工学のシミュレーションのほうがはるかに信頼度が高いが、それがどういう結果になったかを見れば、IPCCのシミュレーションなんて占いのようなものだと思っておいたほうが安全だ。