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吸収オペが「解除の腕試し」に見える理由
 日銀は今日、大量かつ長めの期間の吸収オペを打った。インタバンクでは「解除の腕試しではないのか」との思惑が浮上したようだ。これだけで十分にネタになる(そういう記事が明日出るかもしれない)が、それだけでは表面をなぞったに過ぎないので、ここでは根本的なことも含めて解説してみたい。
 私は、日々のオペにはそれほど関心を払っていない。なぜなら、テクニカルな要因を除けば何も意味しないからだ。つまり、政策的な意図はない、ということだ。これは新法下の金融調節の基本原則であり、金融政策(調節方針)は政策委員会が決め、調節部署はそれを事務的に執行しているに過ぎない。旧法時代、日銀幹部会(マル卓)が政策を決め、政策委員会がスリーピングボード化していたときとは決定的に違う。当時は、営業局に「調節担当審議役」がおり、その人の“趣味的”にオペは打たれていた、という側面が強かった。私はその時代の末期を知っているが、オペは基本的に意味不明であった、と申し上げておこう。
 さて、今日の吸収オペである。どうして「解除の腕試し」とみられたのか。もし、これが事実なら、金融調節課の重大な失策となる。金融政策を決める権限がないのに、解除があるかのようなシグナルを送ったことになるからだ。もちろん、そういうことはあり得ない。
 結論から言うと、オペがおかしく見えたのは、政策委員会のメッセージが対話の体をなしていないからだ。いわば、身から出たサビ、である。解除願望をこれだけ撒き散らせば、市場は疑心暗鬼になり、オペも含めて日銀のやることなすことの全てが解除の地ならしに見えてしまうだろう。あたかも、「不倫願望を露骨にした人間の挙動が怪しい」のと似ている。調節部署としては、オペがシグナルと受け止められたのは、政策委の下手な振る舞いの犠牲者になったようなものであろう。お気の毒である。
by bank.of.japan | 2005-10-13 21:51 | 日銀 | Comments(10)
Commented by 振り向けば札割れ at 2005-10-15 03:11 x
結論までの持って行き方がいささか強引過ぎやしませんか? 長めとはいえ、たかだか1ヶ月くらいの期間の資金吸収オペでしたよね? それなら短国売却オペはどうなるのですか?

個人的にはオペには何かしらの意図が隠されているものと思っています。オペの種類、額、期間、さらに対象銘柄の選別など、日銀サイドも熟慮した末での判断だと推測しています。例えば、以前に比べ短国買切オペを減額しているのは「日銀はもうそこまで面倒見ませんよ、市場で消化してください、消化できないのなら、適正な水準までレートまで上げなさい」というメッセージなのでしょう。
Commented by 振り向けば札割れ at 2005-10-15 03:11 x
売却オペにしろ、短国買切の減額にしろ、短縮化する手形買いオペにしろ、先日の長めの手形売りオペにしろ、すべては解除の腕試しだと思います(勿論資金需給も多々影響しているでしょうが)。なので、あの売り手だけ見て「解除の腕試し」だと今になって気づく市場参加者は非常に鈍感だと思います。もしくは利回りのいい売り手オペに投資家を奪われ3mFBを捌ききれなかった業者が泣き言を言っているようです。

既に解除へ進み始めており、そのシグナルは発せられていると思います。

政策委員のメッセージが対話の体をなしていない、とは思いません。あれはあれでいいのではないでしょうか。下手な振る舞いだというなら、どういう振る舞いがあるべき姿だとお考えですか?
Commented by bank.of.japan at 2005-10-15 23:36
振り向けば札割れさん、どうもです。市場との対話がどうあるべきかは、これまで何度か議論になりました。このエントリー(http://hongokucho.exblog.jp/3468161/)が参考になるかと思います。私は、この中では「システム5.1」さんのスタンスに近いです。日銀も市場も、基本的には政策運営は円滑に行いたい、ことで一致していると思います。無論、中央銀行員も市場参加者も「神」ではないので、将来を正確に見通すことは出来ません。両者ともに間違うこともありますが、ベストエフォートは「今後の経済物価情勢の見方」のすり合わせを両者が行うことであろうと思います。このとき、中央銀行が予め政策変更に絡んだシグナルを送ると、市場はそれに反応し、中央銀行の姿を映す鏡になります。まさにブラインダーの言う「中央銀行が自分の尾を追う犬」になりかねないわけです。その意味で、現在の日銀の対話は、対話ではなく、モノローグになっていると思っており、賛成しかねるわけです。
 私は、日銀の信任がもう一回失墜する姿を見たくはありません。もしかしたら、解除はうまくいくかもしれませんが、そうでない可能性もあります。
Commented by bank.of.japan at 2005-10-15 23:51
植田(前審議委員)さんが言ったように、出口は市場が連れて行ってくれる、という形が日銀の信任を維持する上では望ましいと思います。自分から出口に言及するのは、「連れて行け」に近く、うまくいって当然、ダメならトコトン批判される、というオプション売り型の行動で、リスキーな行動ではないかと心配です。市場は完璧ではないし、よく間違うし、ポジショントークの坩堝でもあり、理想的対話は難しいですが、そういう方向に前進していけばいいと思います。
 それからオペに意図があるかどうかですが、少なくとも政策的意図がないのは確かです。技術的な側面では諸事情があるかもしれませんが、金融市場局は調節目標達成が全てで、腕試しとの見方はちょっと理解しにくいです。日銀の金融調節(市場取引)の大原則は、その影響を最小化(マーケットニュートラル)のはずで、これは今も同様だと思います。
Commented by 振り向けば札割れ at 2005-10-17 17:05 x
今日公表された9月の議事要旨で市場との対話に関する日銀のスタンスがはっきりしたような気がしますね。「(CPI)の前年比のプラス転化が視野に入ってくる中で、量的緩和政策解除の時期や具体的な手順、さらにはその先の金融政策運営に対する市場参加者の関心は高まっており、今後、対外的な情報発信が一段と重要な課題になるとの認識を示した。」
Commented by 振り向けば札割れ at 2005-10-17 17:21 x
市場には今、量的緩和解除のプロセスについてさまざまな見方が入り乱れているように思います。中には来夏に25bpの利上げでは?とか、25bpではなく公定歩合の10bpまでしか上げられないのでは?とか、量的緩和解除をしても2006年中は利上げはできないのでは?などなど。海外の人にしてみればFRBの利上げを経験しているだけに、日銀も利上げすればすぐに50bpまで上げるのでは?とか、ひょっとしたら一気に1%まで、と考える人もいるやもしれません。こうした解除の具体的な手順というのは市場はCPIだけでは推し量れないと思うのですが。なので、ある程度の日銀の情報発信は必要だと思っています。
Commented by bank.of.japan at 2005-10-17 17:21 x
振り向けば札割れさん、どうもです。日銀はまた「将来の金融政策運営の機動性・柔軟性を高める観点から、自然体でオペ期間を短縮していくことが望ましい」と述べ、解除ありきの前提を露骨にしましたね。これを対話と呼ぶかどうかですが、私の周囲では日銀関係者も含めて懐疑的です。もちろん、違う意見もあるとは思います。
Commented by システム5.1 at 2005-10-17 17:38 x
異論はあるでしょうが、日銀の言う市場との対話は彼らからすれば対話なのでしょうが、市場からすれば対話じゃないと見る向きは多いでしょう。
本石町さんの公式見解(?)どおり、「自分の尾を追う犬」ですね。短期のイールド・カーブのスティープ化が、景況感の改善を通じて、ですか(笑)。
Commented by bank.of.japan at 2005-10-17 21:09 x
システム5.1さん、どうもです。「景況感の改善を通じて」が執行部報告に出てきたのはちょっと驚きました。もっとも、そういう解釈にしないと政策委の情報発信の結果と整合性取れないですから…。金融市場局内でも「これが対話かあ」という声は聞かれます。彼(彼女)らも何だかやるせない気分ではないかと思う次第です。
Commented by システム5.1 at 2005-10-18 07:18 x
どうもです。金融市場局内の良識のある方のお嘆き、理解致します。ただ、今の金融政策の進め方に疑問を呈する報道が公式には非常に少ないですね。景気回復や株高によってその(報道の)必要性が乏しくなっているのは、日銀にとってフォローと感じます。
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