Krugman

「俗流ケインジアン」

●Paul Krugman, “Vulgar Keynesians”(Slate, February 7, 1997) *1 経済学の分野も、その他のあらゆる知的な営みと同様に、「学問版・収穫逓減の法則」の影響下にある。時折、偉大な革新者が颯爽と登場し、まるで詩人のような語り口で、自らのアイデアを披…

「尾の振り方」を学ぶためイギリスへ向かう+クルーグマンインタビュー

ハワイで長いバカンスを満喫されていたご様子のレギュラー先生が「リフレ摘発」のニュースに驚いて一時帰国。勘違いだったとわかるや、すぐさまイギリスに旅立たれました。イングランド銀行の新総裁に就任予定のカーニーに「尾の振り方」を学ぶためだそうで…

「通貨戦争をめぐる混乱」+α

●Paul Krugman, “Currency War Confusions”(The Conscience of Liberal, February 15, 2013)所々こちらで勝手に言い回しを変えているところがあるのでご注意を。 最近話題になっている「通貨戦争」(“currency war”)についてどう思うかと尋ねられることが…

「流動性の罠」下におけるインフレーション・ターゲッティング:日本経済に埋め込まれた排中律

●Paul Krugman(1999), “Inflation targeting in a liquidity trap: the law of the excluded middle”パソコンのハードディスクを整理していたら途中まで訳してほったらかしにしていたのを発見。折角なんで最後まで訳してみた。1999年に書かれた論説です。 …

「デレバレッジ・ショックと財政乗数」

●Paul Krugman, “Deleveraging Shocks and the Multiplier (Sort of Wonkish)”(The Conscience of a Liberal, October 9, 2012) ジョナサン・ポルテス(Jonathan Portes)−来週ロンドンで行われる予定の財政政策に関する討論の場では私と彼とは共同戦線を…

「2%じゃ不十分」

●Paul Krugman, “Two Percent Is Not Enough”(The Conscience of a Liberal, January 26, 2012)の訳。コーエンのTED講演の訳も残すは1回。焦らすわけではないですが、クルーグマンの訳を一回挟みます。1月25日(アメリカ時間)に開催されたFOMCの決定(こ…

「バランスシート不況」

「バランスシート不況」を話題にした海外記事のうち個人的に目についたものをメモ。気が向いたら(まだ訳されていない記事のうち)どれか訳す予定。私の気が向く前にどなたかが訳していただいても一向に構わない・・・というか、むしろどなたか訳してくださ…

ドル安恐怖症

●Paul Krugman, “Falling Dollar Phobia”(The Conscience of a Liberal, May 4, 2011) 世の経済・社会問題に熱意をもってマジメに取り組む人々(Very Serious People:以下、マジメな人々)のその見事な手腕、日常生活の中から我が国を苦しめている深刻な…

流動性選好説、貸付資金説、ニーアル・ファーガソン(オタク系)

●Paul Krugman, “Liquidity preference, loanable funds, and Niall Ferguson (wonkish)”(Paul Krugman Blog, May 2, 2009) ジョー・ノセラ(Joe Nocera)がさる木曜日に行われたイベント(このイベントには僕も参加したんだけれど、経済問題がテーマとな…

僕を困惑させるラインハート=ロゴフ

●Paul Krugman, “Reinhart And Rogoff Are Confusing Me”(Paul Krugman Blog, August 11, 2010) ラインハートとロゴフ(以下、R-R)がVOXに新しい記事を寄せている。彼らが主張するところでは、この記事の目的は「問題(あるいは主張の意味内容)をハッキ…

日本の金融政策(オタク系)

●Paul Krugman, “Japanese Monetary Policy (Wonkish)”(Paul Krugman Blog, July 30, 2010) (追記)文中で取り上げられているサムナーの論説についてはmaedaさんによる邦訳が存在する。是非ともご一読を。●“美しいモデルと不都合な事実 by Scott Sumner”…

高失業の永続化

●Paul Krugman, “Permanently High Unemployment”(Paul Krugman Blog, July 26, 2010) デロング(Brad DeLong)がマンキュー(Greg Mankiw)に対して以下のようなコメントを寄せている。 マンキューの議論の大まかなポイントをまとめると以下のようになる…

追加的な財政刺激をプッシュして絶望させられる僕

●Paul Krugman, “More Stimulus Despair”(Paul Krugman Blog, July 18, 2010) 今日はちょっと率直に語らせてもらおうと思う。この1年半ぐらいの間、財政刺激策をめぐって議論してきたけど、その過程において僕は経済学の現状にすっかり絶望させられること…

学習性無力感に囚われたマクロ経済学

●Paul Krugman, “Learned Helplessness In Macro”(Paul Krugman Blog, June 29, 2010) マーク・ソーマ(Mark Thoma)とブラッド・デロング(Brad DeLong)がそれぞれ自分のブログでジェームス・モーリー(James Morley)の現代マクロ経済学批判(pdf)を取…

ケインズも仰せのように「長期的にみると、我々はみな死んでしまう」んだよ

●Paul Krugman, "In The Long Run, We Are Still All Dead"(Paul Krugman Blog, June 25, 2010) Mohamed El-Erianの記事を読んだんだけど、彼が一体何を言わんとしているのか理解しかねてちょっと当惑してしまっている。彼が推奨しようとしている政策は正…

クルーグマン「スタグフレーション vs ハイパーインフレーション」

●Paul Krugman, “Stagflation Versus Hyperinflation”(Paul Krugman Blog, March 18, 2010)どこからともなくこのコラムを訳すよう促す天の声が聞こえてきたような気がしたので訳してみた。ただし、このコラムに関しては既にoptical_frogさんによる素晴らし…

利用されるクルーグマン

日々の喧騒にかまけてブログウォッチをサボっていたらその間にクルーグマン絡みであれこれ騒動があったようだ。このあたりの事情はhimaginaryさんが手際よくまとめてくださっている(感謝 m(_ _)m)。こちらとこちらを参照。 koiti_yanoさんのエントリーを読…

流動性の罠の下における名目賃金と失業との関係

●Paul Krugman, “NOTES ON NOMINAL WAGES AND EMPLOYMENT(pdf)” 総需要曲線(AD曲線)が通常の形状をとる(=右下がりのAD曲線)ならば、名目賃金の上昇は失業を増加させるということになろう(名目賃金の上昇は総供給曲線をAS1からAS2へとシフトさせるた…

ノーベル経済学賞(補足)

前回エントリーが追記だらけになったので別途エントリー。毎度のごとくリンク貼るだけですけど。 まずはディキシット先生によるクルーグマンの業績解説2篇。●Avinash Dixit, “Why Krugman got the Nobel Prize: Economics, not polemics”(VOX, October 17, …

ノーベル経済学賞

Krugman、キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!以上。 (追記) The Royal Swedish Academy of Sciences has decided to award The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 2008 toPaul Krugman Princeton Univ…

マイナスの実質金利

●Paul Krugman,“In praise of expected inflation”(@The Conscience of a Liberal) But I think these worriers are missing the main point: mainly, what we’re seeing is an economic environment so weak that real interest rates need to be negati…

クルーグマンの『一般理論』論<吉報>

山形浩生氏(“先生”と呼びたいところだけども)がクルーグマンによる『一般理論』のイントロダクションを全訳してくださいました。関連エントリーに注釈つける(エッセンスの4番目に。ケインズは生粋の金融政策無効論者ではなかったということ(をクルーグマ…

クルーグマンの『一般理論』論(補足)

クルーグマンの『一般理論』イントロ<完全版>を読んで興味を引かれた箇所があったので引用しておきます。 So the crucial innovation in The General Theory isn’t, as a modern macroeconomist tends to think, the idea that nominal wages are sticky. …

クルーグマンの『一般理論』論

Brad DeLong's Semi-Daily Journal; Krugman's Intro to Keynes's General Theory http://delong.typepad.com/sdj/2006/03/krugmans_intro_.html クルーグマンが考えるケインズ『一般理論』のエッセンス。 1.Economies can and often do suffer from an ove…

クラウディング・アウト

マンキューとデロング、そしてクルーグマンの三者間でクラウディング・アウト談義が行われたとのこと(Economist's ViewにおけるMark Thomaの(IS-LM図を用いた)まとめ参照)。マンキュー 「LM曲線は(FRBが特定の利子率水準を維持すべく金融政策を運営する…

需要は有限か

西部邁氏が先導した「出エジプト」(塩沢由典教授による命名)の動きに共鳴し反経済学の道をまっしぐらに突き進んでいたあの頃(そう昔のことではないけれども)、佐伯啓思著『「欲望」と資本主義』の以下の一節を読んで目から鱗が落ちる思いをしたものであ…

洋の東西を問わず

「清算主義」的な考えというのはある種の普遍性を有しており、洋の東西を問わず人々を魅了するようである。Krugmanは“The Hangover theory”という論考の中で、オーストリア学派の景気循環論の背後に流れる清算主義的な世界観の匂いを嗅ぎ取り、批判を加えてい…