宇宙から音だけに反応する生物が襲来し、ほとんど壊滅状態になっている地球。そこにかろうじて生き残っている、夫婦と子供二人の家族の話。音を立ててはいけないのでとても静かな映画なのですが、数分に一度「ウワッ!」と驚かすようなことが起こるのでちょっとゲンナリしました。また、この家族がする「ある決断」に「この状況でその選択肢はないだろ…」と心底ゲンナリして、もういいかなという気分になりかけていたのですが、最終的にはとてもいいメッセージが込められており、ゲンナリした自分を恥じたりもしました。荒唐無稽なパニックホラーに思うことも無くはないですが、子ども守る親とその子供の、けして完ぺきではないけれど勇敢な姿を描いたいい話だと思います。
以下ネタバレあり。
本当の夫婦で夫婦役を共演。夫が監督でもあるらしい。
妻役は「プラダを着た悪魔」のエイミー役からどんどん出世しているエミリーブラントであるとして、夫役の人、見たことない役者さんだなーと思っていたのですが、なんとエミリーブラントの実の夫でした。実際にあまり売れていない役者さんのようですが、この映画をヒットさせたので出世作となったのかも。そう考えるとムネアツです。子役の耳が聞こえないお姉ちゃんは本当に耳が聞こえない方らしい。実はこの4人の家族と、後に生まれてくる赤ちゃんと、通りすがりで会った一瞬出てくるおじいさん(とその死んだ妻)しかいないので、夫婦二人の出演料がないと考えるとものすごーく低予算で作られているんです。ずっとトウモロコシ畑とそのわきに建つ家しか出てこないので、絵変わりもしないのですがぜんぜん気になりません。
どんな状況でも子供を守ろうとする親
二人目の子どもが生物に殺された後、新しい子供を産み育てようとする夫婦。そこで「え、うそでしょ」と思いました。こんな他の人類がほとんどいないような状況で、声を潜めて暮らすなんて子供に強要したくありません。
ただ、後半になってようやくわかりました。この夫婦は諦めていないだけなのです。夫は毎日世界中のラジオ局に周波数を合わせて生存者を探し、耳が聞こえない娘のために補聴器を作ろうといくつも試作品を作ります。妻は生活を少しでも楽しく文化的なものにしようと、勉強を教えたり家を飾ったりします。「子供が守れないなら、私たちは何者なの?」というセリフが印象的でした。
弟を死なせてしまってから父とうまくいかなかったお姉ちゃんが、改めて愛されていたことに気づくシーンで泣きました。父親が生物の気をそらせるために犠牲になるシーンは「ああ感動的だなーいいシーンだー」と冷静だったのですが、そのあとに家に戻って補聴器を見つけるシーンが不意打ちで死にました…。お姉ちゃんがまた芸達者なんですよね。
子どもが生まれるシーンではやはり生物の気をそらすために花火を上げるのですが、これめちゃくちゃよくない?(唐突な馴れ馴れしさよ)なんかね、どういう状況でも、日本が衰退していて家が貧乏でも、子どもが生まれるって祝福されるべきことなんですよね。ずっと緊張が続く中での(っていうかほぼ死ぬだろう状況での)突然の祝砲にわたしは打たれましたね。はい。
こういう徹底的にアゲンストな状況で子供を産み育てるというのが、規模は小さいですが働きながら子供を育てる難しさを日々感じている身としては胸に迫るものがありました。
というわけで、お子さんのいる方にはけっこうおすすめの映画でした。