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ダンケルク(2017年、イギリス・フランス・アメリカ・オランダ)

DUNKIRK

公開初日に、いそいそとIMAXで見てきた。

ここのところ見たい作品がなくつまらなかったけど、「ダンケルク」「散歩する侵略者」「三度目の殺人」と3本続けて見たいやつが公開されたのでうろたえてしまった。スケジュール的には1本しか見られない。IMAXで見られる映画館の無料券の期限やら、その直前に行っていたジムの切り上げ時間やらがうまいこと重なり「ダンケルク」となった。

座席は満席だったのになぜか「後方ど真ん中」というマイベスト席がポツンと空いており、すごくラッキーだった(ホビヲさん、やはり後方真ん中ですよ!)。IMAXは画面が大きすぎるので、最後方でもようやく視界に全部収められるほどだ。

公開が楽しみ過ぎたので、前置きが長くなった。

 

結論から言うと、非常に良かった。以下ネタバレ。

 

既に結論の分かっているストーリーで、かといってあまり人物を掘り下げないので物足りないと思う人が多かったようだが、私は「疑似体験できる」という1点で満足だった。戦争を体験させる映画はあるが、ここまで没入できるのはあまりない。冒頭の市街地での襲撃シーンで完全につかまれてしまった。あの短尺で逃げ場のない絶望感を完全に表現していたと思う。

「ノーラン監督はリアリティを重視するため、実際に爆撃し、戦闘機を飛ばしている」という前情報を聞いていた。そのせいか分からないが、役者が爆撃シーンの時に必死に耳をふさいで怯えている様子が新鮮だった。戦争映画では爆弾を投げる前に耳をふさいだり、爆撃されて吹っ飛んだりするシーンはたくさんあるものの、度重なる爆撃に怯えて頭を抱えたり、恐怖で叫び出すシーンはあまり見たことが無い気がする。戦争の資料映像では度重なる爆撃のショックで外傷がないのに体が麻痺したようになる症状をみたことがある。


また、情況的にあたりまえなのかもしれないが、ドイツ側に対して全く好戦的ではなくただひたすら逃げているのも特徴的。スピットファイヤに乗り込んだトム・ハーディーだけ攻撃する側だったが、彼も相手が見方を攻撃するのを防いでいるのみ。追い詰められた兵隊たちが、戦うことではなく生きるために必死になる様がリアルだった。逃げるだけのことが、これほどメッセージ性のある闘いになるとは。


戦争を包む自然描写も魅力的だ。インターステラーのような空からの俯瞰映像の多用も好みで、青天の美しいドーバー海峡で人が波の煌めきに消えていくシーンなど息をのんだ。印象としては「ゼロ・グラビティ」に近く、悲惨な状況をあちこち翻弄されながら進むさまは「クローバー・フィールド」や「サウルの息子」を思わせる。


トム・ハーディーがマッドマックスに続き、再び「めちゃくちゃかっこいい喋らない役」を演じている。あの彼は、最後ドイツ軍に捕らえられてしまった。かなしい。そういえば、他の役者もセリフが少なく、映像を見ているだけで没入できる、非常に直感的な映画だった。(なんだか興奮して繰り返しになってしまった。)ブリッジ・オブ・スパイでトム・ハンクスより目立っていたマーク・ライランスが遊覧船の船長役で出ており、彼は比較的セリフが多かったと思うが、ブリッジ・オブ・スパイの時ほどの印象はなかった。セリフが少ないからか、この映画が初めての長編大作だというフィン・ホワイトヘッドを始め、キリアン・マーフィーなど目の表情が魅力的な役者が多かった。

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キリアン・マーフィー。吸い込まれそうな目をしている


1点不満をあげるとすれば、音響。ただただうるさい。秒針の急かすようなカチカチ音はまだしも、バォーン、ズゥーンという内臓に響く音が前半30分ほどほぼ休みなしで鳴り続けるのはどうか。砲撃の音などが大きいのはいいんだけど、ただ取って付けたような効果音が鳴り響いていて冷めた。イギリスから商船や遊覧船が迎えに来るクライマックスでは、あまりにあっけらかんと「the感動音」みたいなBGMが鳴り響き、まあ感動したんだけど(したんかい)「それにしてもBGMよ…」と思ったのも事実。

そういえば、ゼロ・グラビティではほとんどBGMがなく、無音と浮遊する映像がなんとも印象的だったことを思い出した。ダンケルクは映像が素晴らしいので、邪魔しないような音にしてほしかった。