服が「鎧」な人、服が「看板」な人
私は通勤服と普段着がはっきりと分かれていて、どちらも「コスプレしている意識」が強い。仕事着は夫に「戦闘服」と呼ばれている。ぱりっとした素材、無彩色、体にぴったりした形が好きで、バッグはレザーの四角っぽいもの、靴は7cm以上のヒールで尖ったデザインのものばかり。気に入ったものを集めただけだと思っていたけど、総合するとかなり攻撃的だ。
一方休日は、夫に「ゆるキャラ」と呼ばれている。ウエストゴムの長いスカート、変てこなメッセージが入ったシャツ、丸っこい帽子。靴も突っ込みどころのあるデザインが好き。こちらも気に入ったものを集めただけだけど、総合するとゆるゆるだ。
私にとって仕事中の服は鎧みたいだ。私には鮮やかな武器なんてないし、色々な人の思惑に絡み取られないようにするのに、女性的な柔らかさでかわす力もない。社会人始まった当初はもっとニュートラルな格好をしていた気がするけれど、年々シャープな服装を選ぶようになったのは、案外気を張っているのかもなあと思う。自信がないのかもしれない。ずっと専門職だというせいもあるかもしれない。中堅になって、ますます専門性を求められるようになった。日々勉強も必要だし、考え続けないとただの「右から左に作業する人」になってしまう。愚痴りたくない。せっかくなら「あなたがいたからうまくいく」と言われたい。家に帰って服を脱ぐと、それだけでさっぱりする。
仕事も休日も変わらず、柔らかい白や花柄の服を着て朗らかに笑っていられる女性には、変な話だけど「勝てる気がしない」。勝負じゃないけれど、鎧なしで勝負できる人ってすごいと思う。そんな話を、いつもふんわりした服装をしている可愛い女友達にしたら、「これはこれで勝負服なんだけど」と憮然とされた。女ごころは難しい。スーパーで買えるようなTシャツと短パンくらいじゃないと、本物の「鎧なし」とは言えないのかもしれない。
「勝てる気がしない」と言えば、夫こそいつだって同じ格好をしている。結婚披露宴にもいつものへんてこなクリエイティブな格好をしていこうとする。夫は服を買うのが好きだ。選んだもの全てが、他人の目線というフィルターなしで「自己表現」だ。だからか分からないけれど、その服を作った人への共感なんてものを大切にするし、服が生まれたストーリーを聞くのが好きだ。夫にとって、服は鎧じゃなくて看板だ。羨ましいなと思う。先日「買い物する意欲が沸かなくなった」というような記事を書いたら、夫はそれを読んで「体は老いるけど服装は常に更新していたい( ̄∇ ̄)(ドヤァ)」とのたまった(←このコメントをブログに載せて欲しかったらしいので、このエントリを書いてみた笑)
「鎧 」と「武器」
服装も仕事も結婚も、何でも自由になっていっている。今や企業のトップでもTシャツでプレゼンすることがカッコいいなんてされている。ゲイであることを表明している。なんでも自由に選べるというのは、弱い人間にとって本当に難しいことだ。何でも選べるようになった結果、何も選ばずに人生の駒を進めていく人が増えていく。次第に何も選べなくなっていくことに気付く。なんとなく仕事に就き、結婚し、子どもをもうけている私は、強い人間なんだろうか。違う。たまたま鎧を上から揃えていっているだけの、弱い人間としては「運が良い」だけなんだと思う。そしてその反面、それが窮屈に感じることもある。
私には人に頼られたり、必要とされることが必要だ。不幸なのは、「自分の人生を選べること」と、そのことが全くイコールではない、あるいは反対を向いてすらいるという事だと思う。別に、就職も結婚も子どもも人生にとって不可欠ではない。強い人間だったら、自分で自分の価値をどんどん上げていくことができる。でも、私のように強くない人間もいる。たぶん強くない人の方が多いはずだ。
「うまく」生きる方法は、学校で教えてくれない。女性が仕事をしたり、子どもを産んだりするときに起こるあれやこれやも、教えてくれない。保険の入り方や、そもそも入るべきか、家を買うべきかどうか、あるいは仕事で必要なコミュニケーション力なんかも教えてくれない。生きるための鎧や武器は日本の学校では装備できないことが多くて、いきなり実戦しながら、自分に合ったものを手に入れることになる。(学校で手に入れられる武器と言えば、「学閥」というチート武器だ。社会人になってみないとその効力は分からない。)実戦する機会がないということは、知らないうちに梯子を外されていくようなものだと思う。何でも選べる社会にすむ以上、繰り返し実戦していったほうがいい。
話を広げすぎてわけわからなくなったけど、私の服は鎧みたいなものだ、と思って書いてみた\(^o^)/
ちなみにこれは「天然ボケ茄子ちゃん」という着ぐるみ。こんな着ぐるみを着ている人は、油断して懐に入れてしまうので要注意だ。良性と悪性がいる。意外とあなたの近くに存在する。