釈徹宗さんと細川貂々さんが「生きづらさ」について考えた!

「生きベタ」対談①
『ツレがうつになりまして。』の漫画家・細川貂々ほそかわてんてんさんと、如来寺住職で宗教学者の釈徹宗しゃくてっしゅうさん。実は「生きベタ」な二人が、これまでの人生から編み出した、「生きづらさを軽くする方法」をまとめた本が刊行されました。今回、その『生きベタさん』から、序章を丸ごとお届けします。

「強制されるのがイヤ!」地獄だった幼稚園

  貂々さんが、「生きづらいなあ」と思い始めたのはいつ頃ですか?

貂々  幼稚園のときです。行くのが辛いし、なにかと強制されるのがイヤでした。もう、お弁当の時間なんて地獄でした。

  なんと!  地獄とはすごいですね。しかし、それはまた何があったんですか?

貂々  お昼のお弁当で、お米を食べるのがイヤだったんです。ウチの家では、炊飯器で炊いたお米をそのままにしていたんです。時間が経つと、だんだん臭くなる。しかも、それをお弁当にして持っていくわけです。私が通っていた幼稚園では、お弁当を温める機械があったんですが、温めるとメチャクチャ臭くなる。「臭いから食べられない」と親に言っても、「ワガママ言ってる」と受け入れてもらえず、それが地獄の始まりでした......。

  ははぁー、なるほど。決まった時間にみんなと一緒に食べることはどうだったんですか?

貂々  やっぱりイヤでしたね。ほかにお昼寝を強要されることもイヤだったし、学芸会で無理矢理お遊戯させられるのも辛かった。そういう管理されることすべてがイヤでした。いろいろあって、途中からは登園拒否して休んでいたと思いま
す。

  強制されることが嫌だったのですか?  それとも上から言われている感じがダメだったんですか?

貂々  理由が分かって、自分が納得できれば大丈夫なんです。「こういう事情があって、だからお昼寝しないとダメなのよ」といったことを言ってもらえれば良かったんです。だけど、ただ「お昼寝の時間だから寝なさい」というのが私にはダメでした......。

学校は、ルールがよく分からないゲーム

  貂々さんのように幼稚園の頃からという人もいると思いますが、多くの人が生きづらさを最初に感じるのは、学校かもしれません。そもそも現在の学校制度そのものが抱える問題点もあるように思いますね。

貂々  なにせ学校は、自分ではどうにもできないことが多いですから。

  そうですね。子どもにとって学校は、ルールがよく分からないゲームに放り込まれたようなものです。学校を動かしているルールも、友達とのコミュニケーションも、どういう理屈で成り立っているのか......。でも、学校で高い評価を得ることができるのは、こうしたルールを簡単に察知できる子たちですよね。

貂々  勉強ができる子だったら、人づきあいが悪くても、「ちょっと変わってるけど」というふうに見てもらえますよね。まわりとは違う言動をしても、「個性だ」ということですむんです。成績が良いということは、学校ではすごく重要なこととされますから。

  そうかもしれません。現実には、何かよく分からないルールを辛抱して受け入れて、ひたすらその時間をやり過ごしている子どもたちが大勢いるんでしょうね。そういう子は、たとえば精神医学やカウンセリングで上手く適応するように導いてもらっても、そのゲーム自体が辛いだろうと思います。

貂々  分からないルールほど、しんどいものはありません。私も、そういう子の一人でしたから......。学校側がこういう子どもたちにも、もっと目を向けてくれればいいのにと思います。

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