2010.10.01

中身からっぽの「空き菅」政権につけ込む中国、ロシア、アメリカの「パワーゲーム」

「尖閣漁船問題」に続いてメドベージェフが
北方領土上陸を画策

 中国漁船衝突事件をはじめ菅直人政権をとりまく内外情勢があわただしく動いている。一連の展開であきらかになったのは、菅政権が主体性をもって事態に対応しない、あるいは対応できないために、中国やロシアさらには米国のようなパワフル・アクター(当事者)たちから日本が一方的に追い詰められている悲惨な現実である。

 沖縄県尖閣諸島沖で起きた中国漁船と巡視船の衝突事件は、中国が日本人4人の拘束や事実上のレアアース禁輸といった異例ともいえる強腰対応を続ける中、日本側が船長の釈放に応じて一段落した。

 外務省担当者が官邸で協議した後、那覇地検に状況説明し釈放に至った経緯からみて、検察の判断に政権の意向が反映したのは間違いなさそうだ。

 だが、菅政権は釈放はあくまで検察の判断として政治的関与を認めていない。政治判断であることを認めず、それによって政治責任もまた巧妙に避けているのである。

 中国側は船長釈放後、徐々に姿勢を軟化させ、30日には拘束した4人のうち1人を残して3人の身柄を解放した。レアアースの輸出規制も解除に向かった。日本側の対中姿勢が再び硬化しないように、中国は慎重に事態をコントロールしている。

 南の海で起きた中国との対立が解け始めると、今度は北の領土で新たな緊張が発生する。ロシアのメドべージェフ大統領は北方領土について「我が国にとって非常に重要な地域だ」と述べて、近く現地を訪問する意向を表明した。

 メドべージェフ大統領は直前に中国を公式訪問して胡錦涛国家主席と会談し、中国と歴史認識を共有する共同声明を発表している。中国漁船衝突事件で日本が腰砕けになった機をとらえて、ロシアも外交的成果の分け前にあずかろうとしているのはあきらかだ。

 米国も動いていた。

 クリントン国務長官が尖閣諸島にも日米安保条約第5条(共同防衛)が適用されることを表明した舞台裏で、米国は核開発疑惑があるイラン制裁の一環として、日本にイランのアザデガン油田開発から撤退するよう求めていた。

 撤退しなければ、油田開発にかかわっている政府系企業の国際石油開発帝石(INPEX)が米政府の制裁対象企業になり、今後の事業展開が難しくなる事情はあった。だが、漁船衝突問題で借りができた米国に、日本がイラン制裁問題で逆らいにくかったのもたしかである。日本は結局、撤退を決めた。

 こうした展開は相互に関連している。

 ひと言で言えば、日本のパワーが衰えているから、周辺国が相対的にパワーと存在感を強めているのだ。なぜ日本のパワーが衰えたかといえば、根本的には民主党政権に代わって以来、政権自体が空洞化しているからである。

 私は拙著『官邸敗北』で鳩山由紀夫前政権の空洞化状況を「ドーナツ化現象」として説明した。ドーナツは周りがふわふわとして甘いが、中心は空っぽだ。そうした事態を象徴していたのは、米軍の普天間飛行場移設問題だった。

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