高齢者虐待相談件数が過去最多
2024年12月27日、厚生労働省は『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等 に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果』(2023年度)を発表。23年度に介護職員から虐待を受けたと確認された相談・通報件数は、3441 件、そのうち虐待判断件数は、1123 件だった。いずれも3年連続増加で過去最多だ。
虐待の内容(複数回答)を詳しくみると、最も多かったのは「身体的虐待」で51.3%、次いで「心理的虐待」が24.3%、「介護等放棄」が22.3%だった。
在宅介護については、養護者(高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等)が加虐者になる相談・通報件数は、4万386 件、虐待判断件数は、1万7100 件だった。虐待者の続柄は、息子(38.7%)が最も多く、夫(22.8%)、娘(18.9%)の順だった。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「介護の負担は重く、夫婦間でそのバランスが崩れることにより、浮気に発展することがあります。また介護を通じて知り合った人と、深い関係になるケースも」と言う。
山村さんに依頼がくる相談の多くは「時代」を反映している。同じような悩みを抱える方々への問題解決のヒントも多くあるはずだ。個人が特定されないように配慮をしながら、家族の問題を浮き上がらせる連載が「探偵が見た家族の肖像」だ。
今回山村さんのところに相談に来たのは、50歳の開業医・洋一さん(仮名)だ。「85歳の母親を地元から呼び寄せたら、夫婦関係が悪くなり、さらに妻の様子がおかしくなったんです」と山村さんに連絡をしてきた。
ハイブランドに身を包んだ開業医
今回の依頼者・洋一さんは、医師であり、複数のクリニックの経営者です。首都圏に複数のクリニックを展開しており、成功している人特有の豊かな雰囲気を漂わせています。「思い切って連絡しました」と、カウンセリングルームにいらっしゃいました。
ハイブランドのロゴがプリントされたパーカーを着ており、若々しい雰囲気。人気のシルバーアクセサリーブランドのブレスレットを、目立つようにつけています。カウンセリングルームのテーブルに置いた車の鍵には、高級車ブランドのロゴが。
しかし表情は疲れ切っており、「そもそも、僕がうちの母を呼び寄せなければ、こんなことにはならなかったのです」と絶望的な表情を浮かべています。まずは、夫婦の出会いについて伺いました。
「妻とは高校時代に知り合いました。僕が妻の家庭教師をしていたんです。彼女は国立を目指しており、数学を1年ほど教えたら無事に合格。それから付き合い始めたのです」
18歳と23歳で交際をしたものの、その後自然消滅したそうです。
「別の人とお付き合いしたこともあったのですが、やはり彼女がいい。信頼できる人なんです。僕を理解してくれて応援してくれる。妻が26歳で妊娠したときは、“これで彼女と結婚できる”とすごく嬉しかったことを覚えています」