「介護の負担は重く、夫婦間でそのバランスが崩れることにより、浮気に発展することがあります。また介護を通じて知り合った人と、深い関係になるケースも」と語るのは、探偵の山村佳子さん。横浜のリッツ探偵事務所の代表だ。

2024年12月27日、厚生労働省は『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等 に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果』(2023年度)を発表。23年度に介護職員から虐待を受けたと確認された相談・通報件数は、3441 件、そのうち虐待判断件数は、1123 件だった。いずれも3年連続増加で過去最多だ。
介護の問題は「介護する側」も「介護される側」も辛いということが難しい点だ。介護に疲れ切って虐待してしまう案件などもあり、社会が支えるシステム作りが必要だ。

母親の介護を機に、妻の異変を感じたという依頼者が、50歳の開業医・洋一さん(仮名)だ。45歳の妻との間には、19歳で留学中の長男と、18歳で大学付属高校に通う長女の4人家族だ。
洋一さんの母は85歳で、現在洋一さんが購入したマンションにひとり暮らし。要介護1の状態で、妻が介護をしている。
前編「開業医の夫が地方から呼び寄せ…85歳の母の介護で妻に抱いた「疑惑」」で詳細を伝えたように、その介護の経緯で妻が浮気しているのではないかと感じたのだという。さらに母も「死にたい」と漏らしたとか。それも心配だ。洋一さんは離婚したいのではなく、浮気をしている場合はきちんと別れさせることを希望している。家族はいったいどんな状況になっているのだろうか。

家庭教師と生徒から始まった

洋一さんと5歳年下の妻との夫婦生活を振り返ります。二人は妻が高校3年生の時に、受験生と家庭教師という関係で知り合います。数学が苦手だった妻を、医学部に通っていた洋一さんが教えて無事国立大学合格。そこから交際が始まります。
一度は多忙から自然消滅したものの、洋一さんは妻のことを思い続けており、社会人になった妻と復縁。妻が26歳の時に妊娠したことを機に結婚。妻27歳、洋一さん32歳の時に長男が誕生、翌年に長女が生まれます。

妻は金融関連会社に勤務していましたが、出産を機に退職。大学病院の勤務医だった洋一さんに妻が資金を提供し、そのアドバイスのもとに開業します。妻は人口が増える地域を特定し、戦略的にクリニックを展開。妻のアドバイスと、洋一さんの医師のネットワークがあり、経営は拡大路線を取りつつ、軌道に乗っていきました。妻は経営者として事業の舵取りをしつつ、ワンオペで子育てをします。

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夫婦関係も順調で、現在19歳の息子はアメリカに留学中、18歳の娘は私立大学附属の高校3年生で、無事に進学も決まっています。。

そんな順風満帆な生活の異変のきっかけは、半年前に洋一さんが北関東から自分の母を呼び寄せたこと。
車がないと生活できない地域に住む85歳の母は、ガードレールに車をぶつける自損事故を起こしたのです。免許を即返納させたあと、洋一さんは妻に相談なく、地元を引き払うことを決めてしまい、妻との関係に亀裂が入ります。当時、妻は母を「知り合いも多い地元の施設に入れた方が安心だ」といいましたが、洋一さんは自宅近くに住ませることにこだわったのです。

高齢ゆえ賃貸物件をみつけられずにマンションを購入しましたが、母は東京に来て早々、慣れない住環境もあり室内で転倒し骨折。リハビリ病院から帰ってきた時は、自力での入浴が厳しくなり、妻がサポートに入ります。
ある日、洋一さんが母に会うと「もう死にたい」と暗い表情で言う。施設に入れようと妻に提案すると、妻は「わがままで頭が悪いお義母さんを施設に入れたら、虐待される」と食ってかかったそうです。

妻は当初、母を施設に入れようとしていたのに、真逆のことを言う。発言が一貫している妻には珍しいことです。3ヵ月前に母の介護が始まってから、妻のボディラインは引き締まり、系列の美容外科クリニックで若返りのために施術を受け、セクシーな下着も購入していました。そこで洋一さんは妻の浮気を疑ったのです。
妻は家族の要であり、複数のクリニックを経営するパートナーでもある。妻に抜けられたらダメージが大きいと感じ、洋一さんは私たちに調査を依頼したのです。

セクシーな下着もみつかった Photo by iStock