アメリカの若者がいま「働かないこと」「大規模な退職」「静かなる退却」の道を選んでいる“本質的な理由”
「Z世代」とは何か。
彼ら、彼女らの価値観をはぐくんだ社会的な背景とは何なのか。
こうした問いと格闘し、大きな話題を呼んでいる『世界と私のA to Z』。
著者で、Z世代当事者でもある竹田ダニエル氏が、いままさにアメリカで起きている「仕事に関する革命」を取り上げながら、Z世代について考える。
Quiet quitting
“Quiet quitting”という概念をご存知だろうか。2022年3月に、あるTikTok動画をきっかけにアメリカの若者の間で広まり、今や社会現象とまで言われている。 端的にまとめると、必要最低限以上の努力や労力を仕事に費やさず、ワークライフバランスを求める動きを表すフレーズだ。
@zaidleppelin On quiet quitting #workreform ♬ original sound - ruby
多くのアメリカのZ世代・ミレニアル世代の若者たちは、なかなか良くならない経済状況の中で、何とか生活していくために長時間労働や副業をする必要があると感じている。特にミレニアル世代の間では、「上昇志向」と「オーバーワーク」を結びつけた考え方、いわゆる「ハッスルカルチャー」が一時ブームとなった。
ハッスルカルチャーとは、「燃え尽き症候群カルチャー」「グラインドカルチャー」とも呼ばれ、仕事上の目標に向かって、毎日がむしゃらに働きつづけなければならないとするメンタリティのことを指す。
SNSにおいてもハッスルカルチャーは「モチベーショナルなもの」として肯定的に捉えられ、かつて日本のCMのキャッチコピーとなった「24時間戦えますか」と似た価値観のもとで、趣味や睡眠を犠牲にしてでも、「ハッスル(努力)」し続けることが美徳と考えられていた。
しかしコロナ禍を経て、「仕事=人生ではない、自分の人間としての価値は生産性で測れない」と主張する脱「ハッスルカルチャー」が徐々に進んでいる。資本主義に毒され、人間を労働力としてしか見ない社会に抵抗する、という意志もその行動に含まれる。